シルフカンパニー前

ギャラドス「ドス!」

ギャラドスはシルフカンパニーの前でガードマンのように仁王立ちしている。あの後、私達は何とか逃げて、今、もう一度戻ってきた。

律「くそ。ポケモンさえ、元気なら……」

私達は物陰から、ギャラドスの様子を見る。

澪「だが、ギャラドスだけでも十分に強いからな。いないよりもましだけど、どっちにしたって厳しいさ」

紬「でも、やっぱり他の町のポケモンセンターを利用した方が……」

律「それじゃ、時間がかかりすぎるだろ。その間に梓達がどうなるか……それに利用できるかも分からないし」

ジムリーダーの人達は他の町のポケモンセンターに向かっていったが、さっきの3匹の攻撃で町がボロボロになっている。うまく利用できるとも限らないから、律の言ってることは間違っていない。私達は梓が心配だからここで様子を見ているわけだけど……。

澪「なんとか、現状を打開できないものか」

律「難しいな」

紬「見て!!ロケット団員が中から出て来たわ」

律「何だと!?」

ムギの言うとおり、カイリキーに抱きかかえられたロケット団員がいた。

澪「あれは……女か?」

律「なんか、ぬいぐるみみたいなのを抱いてないか?」

紬「ゆいちゃんに少し、似てないかしら」

澪「だとすると、梓を襲って……」

律「あいつめ……」

紬「見て!何故か、ギャラドスと戦い始めたわ」

純「そう言えば、下にもいるって、言ってたわね」

襲い掛かってきたギャラドスに私はゲンガーを出して、対抗する。

うい「ごめんね。私が戦えたら……」

純「ういはもう十分働いたわよ。他のポケモンにも活躍してもらわなくちゃね。……うん?」

私が周りを見渡すと、こっちを見ている3人の女の人がいた。

純「なんだろ?とりあえず、あそこに逃げるわよ、ゲンガー!」

ゲンガー「ゲンガー!」

ゲンガーはシャドーボールを発射し、ギャラドスをけん制しながら、そっちの方向に向かった。

澪「おい!!こっちに来たぞ、どうする!」

律「どうするって言ってもな」

紬「相手がカイリキーだとね。逃げ切れそうにないわね」

澪「何で、お前ら冷静なんだよ」

純「すいません、ここはき……」

澪「わっ!そうこうしているうちにロケット団員が来たじゃないか!」

純「ロケット団?……あ。いや、これは違うんです。私はロケット団じゃないです」

律「じゃあ、何でそんな格好してるんだ?」

純「これにはいろいろと事情がありまして……」

うい「今は説明してる時間も惜しいよ」

紬「こんな小さい女の子を連れて……、このロリコン!!」

純「別にそんなつもりじゃ……」

澪「おい。ギャラドスがこっちに向かってくるぞ」

純「くっ。ゲンガー、シャドーボールで牽制して!」

ロケット団(?)のゲンガーはシャドーボールギャラドスに向かって発射するも、ギャラドスの尻尾に弾かれる。

純「やっぱり、上のカイリューと同じような強さか……」

澪「カイリュー!?あなたは屋上にいたのか?」

純「まあ、一応……屋上で、あず……友達がいるので……」

律「ロケット団なのに?」

純「私の名前は鈴木純で、ロケット団ではなく……かくかくしかじか」

紬「なるほど。疑ってごめんなさい」

澪「便利な言葉だな」

律「とにかく、梓の友達なら、私達とも友達だな。ところで、その小さいのは……」

うい「あ、私の名前はういです。よろしくお願いします。これでも、ポケモンです」

澪「うい……。ゆいと何か関係があるのか?」

うい「お姉ちゃんです」

律「ゆいに妹がいたのか。それにしても……」

律・澪・紬(姉に似ないでしっかり者だな)

律「梓は屋上か。早く助けに行かないとな」

紬「もっとも、あのカイリュー相手じゃ、手も足も出ないかもだけど……」

澪「そうだな……ん?」

空から、何か、優しい歌声が聞こえてきました。

律「この声は……ゆい?」

紬「それに何か、降ってきたわ」

ムギの言うとおり、小さいツインテールの女の子のようなものが降ってきました。

澪「これは……梓?」

私はそれに触れてみた。他の皆も私に続いてそれに触れてみる。

澪「うわっ!」

私がその小さい梓に触れると、弾けて消えてしまった。

律「何なんだ、一体」

紬「でも……なにかしら、この感じ」

澪「なんだか、優しい気持ちになる」

純「周りを見てください!」

鈴木さんは周りを指差す。いろいろな所に小さい梓が降ってきて、弾けて消える。すると、壊れていた建物が元通りになった。

澪「これは……」

うい「きっと、お姉ちゃんの技だよ……」

律「ん?」

澪「どうした、律」

律「私のモンスターが回復してる!!」

澪「え?」

紬「あ、本当。私のも!」

純「私のもです。それにういも!ついでに私の足も!」

うい「あ、本当だ」

澪「待てよ。なら、ロケット団のポケモンとかも回復してるかも」

紬「それはないわ。あれを見て」

ムギの指差したところにはロケット団の置いていったポケモンがあるが回復してる様子はない。

紬「どうやら、敵には効かないみたいね」

澪「そうみたいだな」

律「これなら、いける!」

純「皆さんは屋上に梓を助けに行ってください。ここは私が防ぎますので」

澪「でも、あいつは強いぞ」

純「私のういは伝説のポケモンを3匹も倒したので、大丈夫です!」

うい「ちょ、ちょっと、純ちゃん」

律「それなら、安心だな。時間もないし、積もる話も後でな。じゃあ、任せた!!」

その場を鈴木さんに任せ、私達は屋上に向かっていった。


シルフカンパニー・屋上

曽我部「何よ、これ……」

曽我部さんは次々と直っていく町の様子を見て、驚愕の声を上げる。

曽我部「これじゃ、私のやったことが……」

梓「無駄ですね。もっとも、成功しても無駄ですけど」

曽我部さんは私を掴んでいた手に力を込める。

曽我部「あなたに私の何が分かるの……」

梓「何も分かりませんよ。私が分かるのはあなたがゆい先輩の力を甘く見たことです」

曽我部「……くっ」

曽我部さんは図星をつかれたかのように顔をそらします。

曽我部「でも、私にはまだカイリューがいるわ。あなた達には到底倒せないわ」

律「それはどうかな!」

バンッ!!!

という、どでかい音とともに律先輩達が現れました。

梓「律先輩!澪先輩!ムギ先輩!」

曽我部「のこのこ何をしに来たの?もう手持ちポケモンもないでしょうに」

律「それはどうかな?」

澪「さっきの技で私達のポケモンは全員回復した」

紬「つまり、これから、私達のポケモン全員とあなたのカイリューはまた戦えるのよ。その体力の減っているカイリューとね!!」

曽我部「なんだと!?」

その時、さっきまで聞こえていた優しい歌声が止み、ゆい先輩が落下してきました。

梓「ゆい先輩!」

私は曽我部さんを振り切り、ゆい先輩を受け止めました。

ゆい「あずにゃん……私の歌、届いたかな?」

梓「……はい。とっても、良かったです」

ゆい「ありがと。えへへ」

私は曽我部さんを睨みつけます。

梓「さあ、決着をつける時です。夢を叶えようともしないあなたとね!!」

曽我部「……どういう意味よ」

梓「あなたは所詮は夢を諦めたんです。何もしないで!!」

曽我部「私がどれほど努力をしたと思ってるの?」

梓「じゃあ、あなたはポケモンと人間が仲良く暮らせるような世界を創るために何をしたんですか!!」

私は少年漫画の主人公のように語りかけます。

梓「私は心無いトレーナーの人達に捨てられたポケモンを拾って、一生懸命面倒を見てる人を知っています。その人のやっていることだって、小さいことかもしれないけど、ポケモンと仲良く暮らすために頑張っています。あなたはそういうことをしたんですか?」

曽我部「……黙れ」

梓「たしかに、心無い悪い人もいます。でも、一部の悪い人達のためにたくさんのいい人達を犠牲にするなんて間違っています」

曽我部「黙れ!!じゃあ、お前の夢は何なのよ。夢なんてものは必ずしも叶えられるわけじゃない。どんなに綺麗事を言っても、人間を滅ぼさなければ、ポケモンは滅ぼされるのよ。人間によってね」

梓「私は……ポケモンマスターになる女です!!!」

私は大きな声で宣言しました。

曽我部「……」

フフフ、私の宣言にびっくりして、言葉も出ないようです。

曽我部「プッ」

曽我部さんは腹を抱えて笑い始めます。

律「プッ、ククククク」

澪「クククク、律、笑うなよ、梓は真剣なんだぞ。クククク」

紬「そういう澪ちゃんだって。フフフフフフ」

梓「何で、皆して笑うんですか!!」

律「いやー、真剣な場面でそんな某海賊漫画の主人公みたいな宣言されてもな」

澪「なんていうかな、そのー」

紬「なんか、中学生の男の子みたいねえ」

梓「……」

言われてみれば、恥ずかしいかもしれません。

ゆい「大丈夫!!とっても、可愛かったよ!!」

梓「微妙に褒められてない気もしますが……とにかく!!」

私は曽我部さんを睨みつけます。

梓「どっちが正しいか、あなたに見せてあげます。皆さんは下がっていてください」

私は皆さんを後ろに下げます。

梓「皆さん、手を出さないでくださいね」

澪「大丈夫か?」

律「そりゃ、ポケモンマスターになる女なんだから、大丈夫だろ」

梓「……」

澪「おい、律!!」

曽我部「舐められたものね、私も」

梓「あなたが人間を滅ぼさなければ、ポケモンが滅びるというなら、そのふざけた幻想をぶち壊してやるです。やってやるです!!」

律「なあ、梓に何があったんだ?あんな中二病みたいな台詞を……」

ひそひそ

澪「きっと、アニメでも見たんじゃないか?」

ひそひそ

紬「だとしてもね……あの台詞は……」

ひそひそ

ゆい「まあ、展開がけいおんっていうよりも少年漫画に近いから、そっちに合わせてるんだよ」

ひそひそ

律「そんなに少年漫画に近いか?ただ、言いたかっただけじゃね?」

ひそひそ

梓「さっきから、ひそひそとうるさいですよ!!」

曽我部「いいわ。かかってきなさい」

梓「来てください……」

ゆい「さあ、私の出番だね!あずにゃん、私を下ろし……」

梓「ハッサム!!」

ゆい「え~!!」

梓「だって、さっきので、ゆい先輩、疲れてるでしょ?」

ゆい「まあ、そうだけどね」

曽我部「ハッサム……あなたのエースモンスターね」

私のハッサムと曽我部さんのカイリューは西部劇の決闘のように対峙して睨みあいます。そして、わずかの沈黙が訪れます。そして、どちらと
もともなく、バトルが始まります。

梓「……行きますよ。ハッサム、おんがえし!!」

ハッサムの体からオーラが発生させ、そのオーラを右手に集中させ、カイリューに向かって、突撃します。

梓「いっけー……」

梓・ゆい「スクラップ・フィスト!!!」

曽我部「カイリュー、げきりんよ!!」

バシーーーーーーーン

ハッサムのハサミとカイリューの拳が激突し、その振動で私達のところまで、風が吹き抜けます。

カイリュー「リュー」

カイリューの拳から血が噴出し、拳を押さえて、苦しそうに膝をつきます。

曽我部「な!?」

梓「今です、シザークロス!!」

ハッサム「サム!!」

ハッサムは手をクロスさせ、カイリューの胸をXに切り裂きます。

カイリュー「……リュー」

カイリューはバタンと力尽き、倒れました。

梓「あなたは強かったです。のも含めて、たった2匹でここまで戦ったんですから」

曽我部「……戻りなさい、カイリュー」

曽我部さんはカイリューをボールに戻します。

梓「私の勝ちです。さあ、どうしますか」

曽我部「……そうね。今回はあなたの勝ち、いえ、あなた達の勝ちね。それは認めてあげるわ」

曽我部さんはボールを2個、取り出す。そして、片方を私達のところに投げます。

梓「これで何を……」

曽我部「来なさい、ケーシィ」

そのボールから、煙が噴射され、あたり一面が真っ白になる。

曽我部「また会いましょうね。テレポート」

その言葉を最後に曽我部さんは姿を消しました。


シルフカンパニー前

ギャラドス「……ドス」

ギャラドスはういの拳の前に倒れた。

うい「ふー、それにしても、ギャラドスも強かったね」

純「それにしても、どっちも強かったわね。こんなポケモンを育てるなんて、曽我部ってのが真面目にポケモントレーナーになったら、どうなってたことか」

うい「そうだね」

曽我部「それは光栄ね」

その時、曽我部さんが私達の前に現れた。

純「なっ……!?な、何で、ここに」

曽我部「……ギャラドスもか」

曽我部さんは私の問いに答えずにギャラドスをボールに戻しました。

曽我部「今回はあなた達、姉妹にやられたわね。次に会う時は容赦しないからね」

そう言うと、テレポートで姿を消しました。

純「なんなのよ、一体。でも、ギャラドスも、ってことは……」

うい「お姉ちゃん達が勝ったってことだね」

純「そうなるわね。あー、疲れた」

私はその場を去ろうとする。

うい「あれ?梓ちゃん達に会っていかないの?」

純「この戦いが終われば、もうポケモンリーグよ。嫌でも会うわよ。それに……」

うい「それに?

純「もう、疲れた。眠い。サッサと寝ることにしたい。以上」

うい「……そうだね。私も眠いや」

私達はヤマブキシティを出て、ホテルに向かう。

純「後、脇役はこんなものでいいのよ」

うい「それは……自虐的過ぎない?」


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最終更新:2011年09月21日 01:35