382. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/09/18(日) 15:52:23.74 ID:I2Rn+i7W0
前回までの状況(トレーナとポケモン)                                            

梓          ゆい  ハッサム  ヘルガー  イーブイ   ニューラ   ガルーラ  カイリュー  ポリゴン2  プテラ  ラプラス

澪          ゼニガメ   エビワラー  デンリュウ

律          リザードン  サワムラー  ニョロボン  レアコイル  ゴローニャ  ゴルダック

ムギ        フシギバナ  カポエラー  ギャラドス

純          うい   カビゴン  ゲンガー   エレブー  カイリキー

ポケモンリーグ編⑦    「決勝戦・梓VSAYU〜決勝前夜〜」
383. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/09/18(日) 15:54:11.08 ID:I2Rn+i7W0
梓の部屋

梓「……」

紬「お茶が入ったわよ〜」

ゆい「わ〜い」

律「ケーキは?」

紬「ふふふ、ちゃんとあるから安心して。ほら、澪ちゃんも」

澪「え、えっと……」

ゆい「澪ちゃんも遠慮しないで食べなよ。おいしいよ〜」

澪「で、でもな……」

梓「……はあ。いいですよ、遠慮しなくても。もう、慣れましたし」

澪「……悪いな」

律「遠慮すんなよ。どんどん食べろよ」

梓「律先輩は少しは遠慮してくださいよ。1回戦終わってから、ずっといるんですから」

澪「そ、そうなのか?」

律「ん?ああ。まあな」

ゆい「昨日は楽しかったよね」

紬「ええ」

澪「……」

律「ん?どうした、澪」

澪「いや……どうして、昨日呼んでくれなかったのかなって……」

律「そりゃあ、梓が嫌がったから」

澪「そうなのか!?」

梓「違いますよ。そんな嘘つかないで下さい」

澪「り〜つ〜」

律「悪い、悪い。単純に邪魔しちゃ悪いと思ったからな」

澪「梓はいいのか?」

律「……このケーキうまいな」

梓「ちゃんと答えましょうよ」

律「まあ、さすがに今日は遠慮するよ」

梓「そういえば、澪先輩は3位決定戦は……」

澪「……対戦相手のういちゃんから、辞退したらしいから、不戦勝で3位だよ」

梓「……そうですか」

……純。
384. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/09/18(日) 15:55:54.31 ID:I2Rn+i7W0
ゆい「それでね……」

梓「ん?何を話してるんですか?」

ゆい「べ、別になんでもないよ。ねえ、ムギちゃん」

紬「ええ。なんでもないわよ。それよりも、梓ちゃん。ここの大浴場にでも入ってきたら?疲れを明日に残さないためにも」

梓「?  まあいいですけど。皆さんは?」

紬「私達はちょっと用事があるから」

梓「そうですか。じゃあ、行きましょうか、ゆい先輩」

ゆい「ご、ごめんね、あずにゃん。せっかくのお誘いは嬉しいんだけど、私にも用事があるから……」

梓「何の用事ですか。まあ、いいです。皆さん、行かないなら、私も部屋のシャワーですませま……」

紬「それなら、安心して。澪ちゃんが付き合うから」

梓「え、澪先輩が?」

澪「え、私?」

紬「だからね、ゴニョゴニョ」

ヒソヒソ

澪「え、それは梓に直接言えば、いいじゃん」

ヒソヒソ

律「分かってねーな。隠れてやるのがいいんだよ」

ヒソヒソ

ゆい「そうだよ」

ヒソヒソ

梓「さっきから、何を話してるんですか?」

ゆい「なんでもないよ」

梓「?」

紬「ほら。着替えも用意したから、澪ちゃんと行って来て」

梓「は、はあ……」

澪「ほら、行こう、梓」

梓「わ、分かりました」

私は急ぐ澪先輩を追いかけるように部屋を出ました。

385. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/09/18(日) 15:57:36.76 ID:I2Rn+i7W0
ゆい「行ったね……」

律「そうだな」

ゆい「それじゃ、特訓をするよ!」

律「でも、前日にやってもな……」

紬「それでも、何もやらないよりもましよ。ポケモンの場合」

律「そうだけどさ」

ゆい「ふふふ、この特訓の成果が明日出れば……」

ゆい・妄想

ゆい「ゆいちゃん・パンチ!」

AYU「うわー、やられたー」

実況「梓選手の優勝だー」

ゆい「わーい」

梓「ゆいせんぱーい」

ゆい「あずにゃん、私、やったよ〜」

梓「さすがはゆい先輩ですね!」

あずにゃんは私を抱っこする。

ゆい「えへへ〜、そんなことないよ〜」

梓「いえいえ。ゆい先輩がいなかったら、優勝できませんでしたよ。これはお礼です」

チュッ。

ゆい「……ふおおおおおおおおおおおおおおおお」

ゆい・妄想終了

ゆい「えへへ〜。こうなること間違いなしだね!!」

律「随分、都合のいい妄想だな」

紬「まあ、妄想ってそういうものだし……」

ゆい「とにかく、特訓だよ。サムちゃん達は?」

紬「ええ。偽造も完璧よ」

律「こえーな、おい」

ゆい「それじゃあ、出発!」

386. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/09/18(日) 16:00:15.53 ID:I2Rn+i7W0
梓「それにしても、変でしたね、皆さん」

澪「そ、そうかな。私には何も変わってないように見えたけどな」

梓「そうですかね」

澪「と、ところで、純ちゃんのところには行かなくていいのか?」

梓「……」

澪(って、何を聞いてんだ、わたしーーー)

梓「……」

澪「……」

澪(気まずい。私のせいだけどさ)

梓「……純にはういがついてますしね。私達が行っても、迷惑ですし」

澪「……」

梓「それに、どうせ行くなら、優勝してから行きますよ」

澪「……そっか」

梓「ちょっと、しんみりしちゃいましたね。さっさとお風呂に行きましょう」

澪「そうだな」

私達は浴場に向かおうとすると、正面から、フードをしたローブの女、AYUが歩いてきました。

AYU「ヤッホー」

澪「……梓、無視しよう」

ゴニョゴニョ。

梓「それもいいですけどね」

ゴニョゴニョ。

梓「こんちには。いえ、そろそろ、こんばんわでしょうか」

澪「あ、梓……」

AYU「……へえー。てっきり、無視されるかと思ったのに」

梓「それでもいいんですけどね。あなたに聞きたいことがあります」

AYU「何でも聞いていいよ。でも、その前に……」

梓「その前に?」

AYU「お風呂にでも入ってきなよ。それから、じっくりお話ししよう。部屋の番号は……」

AYUは私達に番号を教えます。

AYU「その代わり、あなた達、2人で来てね。そうじゃなきゃ、質問には答えないよ」

梓「……分かりました」

澪「あ、梓……」


387. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/09/18(日) 16:00:51.01 ID:I2Rn+i7W0
その頃のゆい達

ゆい「みんなー、動きが鈍いよー」

ヘルガー「ヘルッ!」

ヘルガーの牙をニューラは軽やかにかわす。

ゆい「こらー。ちゃんと当てないと駄目だよー。ニュー太はその動きはいいよー」

律「なあ、ゆい」

ゆい「なんだい、りっちゃん」

律「ゆいは戦わないのか?」

ゆい「私は……ゴホン。腰が……」

律「ジトー」

紬「ジトー」

ゆい「うっ、視線が痛い」

律「お前なー」

ゆい「分かってるよ。今のは冗談だよ。どれ、私の相手は……」

ハッサム「サム!」

ゆい「……やっぱり腰が」

律「おい」
388. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/09/18(日) 16:03:18.43 ID:I2Rn+i7W0
梓「……」

澪「ふう〜、いいお湯だったな」

梓「……そうですね」

澪「?  どうしたんだ?」

梓「……いえ、なんでもありません」

梓(たった1年違うだけなのに、この差は一体……)

澪「ところで、梓」

梓「何ですか?」

澪「……どうしても行くのか」

梓「ええ。別に怖いなら、来なくてもいいですよ」

澪「こ、怖いわけないだろう。さあ、行こう!」

AYUの部屋

梓「……ここですね」

澪「そ、そうだな」

梓「あの、怖かったら……」

澪「だ、大丈夫だ、問題ない」

梓「そうですか。では……」

コンコンと、ドアをノックします。

AYU「ほーい」

AYUはドアを開けて、私達を迎え入れます。

AYU「よく来たね。どうぞ、座って」

梓「失礼します」

私達は椅子に腰掛けます。

AYU「それで聞きたいことはなんだい?」

梓「……分かりませんか?」

AYU「まあ、大体分かるよ。純ちゃんだね?」

梓「そうです!どうすれば、眼を覚ますんですか!?」

AYU「うーん、結論からいうと、どうにもならないんじゃないかな?私自身、あの技を使って、元に戻したことないしね」

梓「なんですって……」

AYU「まあまあ、そんなに怒らないでよ」

梓「ふざけないでください!」

澪「落ち着け、梓」

澪先輩は私をなだめます。しかし、私をなだめる手も震えているので怒っているのでしょう。


389. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/09/18(日) 16:04:13.36 ID:I2Rn+i7W0
澪「ところで、部屋の中でもフードをつけているのか」

AYU「まあね」

澪「変わってるな」

AYU「えへへ、格好いいでしょ?」

屈託なく、笑うAYU。

澪「で、どうしてだ?」

AYU「何が?」

澪「どうして、あんなことをしたんだ」

AYU「別に純ちゃんを攻撃したかったわけじゃないんだけどな〜」

梓「純はういを庇って……」

澪「梓!!」

梓「くっ……すいません」

AYU「まあ、どっちにしろ、かまわないんだけね。どうせ、君達はしんじゃうんだし」

澪「……どういうことだ。お前は何者なんだ?」

AYU「そう、それ。それを最初に聞いてくれればいいんだよ」

AYUは席を立つ。

AYU「ちょっと、長くなるけど大丈夫かな?」

澪「……ああ」

梓「……ええ」

AYU「それじゃあ、まずは立って」

梓「どうしてですか?」

AYU「まあ、いいから、いいから」

私達は言われたとおりに目をつぶりました。

390. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/09/18(日) 16:05:57.16 ID:I2Rn+i7W0
AYU「目を開けていいよ」

梓「一体これで何が……!?」

私達は目を開けると、廃墟のようなビルや瓦礫の山がそこらへんにたくさんありました。

梓「ここは一体……」

ガサゴソ、ガサコソ。

澪「ひいい」

AYU「安心していいよ。ただの風だからね。ここには人間どころか、ポケモンすらいないから」

梓「ポケモンすらいない……」

AYU「お話しようか。未来の地球に何があったのか」

その頃のゆい達

ゆい「とりゃー」

バシンッと、力強く、パンチをする。

ゆい「ふう〜、いい汗をかいたよ」

律「何やってんだよ」

ゆい「特訓だよ、特訓」

律「それは分かるが……お前、自分のぬいぐるみで遊んでるだけじゃん。他のポケモンは私達のポケモンとかと組み手とかしてんのに」

ゆい「うっ……分かってるよ」

律「本当かよ……」

うい「……お姉ちゃん、皆さん」

ゆい「あ、ういだ!おーい」

うい「何をしてるの?」

ゆい「特訓だよ、特訓。それよりも、純ちゃんは?」

うい「……まだ」

ゆい「そっか……。でも、大丈夫!私とあずにゃんで、純ちゃんを元に戻してみせるよ!!」

うい「……本当に出来る?」

ゆい「ほへ?どういう意味?」

うい「今のままじゃ駄目だよ」

ゆい「でもでも、どうすればいいのか、分からないし」

うい「……本当はやりたくないけど、フィールドに出て、お姉ちゃん」

ゆい「ほへ?」

うい「戦おう、お姉ちゃん。私がお姉ちゃんの練習台になるよ」

391. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/09/18(日) 16:07:48.88 ID:I2Rn+i7W0
AYU「結論から言うとね。近い将来、人類は滅びちゃうんだ」

梓「……はい?」

AYUは突然、訳の分からないことを言い出しました。

梓「突然何を言い出すんですか」

澪「いや、梓。だとしたら、この光景が説明できる」

梓「どういう意味ですか?」

澪「分からないか?これは未来の地球の光景だよ」

梓「未来の地球?」

AYU「くすくす、正解だよ、澪ちゃん。梓ちゃんは察しが悪いな〜」

梓「……話を続けて下さい」

AYU「ほいほいっと。そうだね、聞きたいんだけど、ポケモンって便利なものだと思わない?例えば、空を自由に飛べたり、水中を自由に行
けたり」

梓「たしかに。でも、人間にも飛行機とか、船とかもありますからね」

AYU「そうだね。でも、それってお金かかるでしょ?」

梓「それはまあ……」

AYU「でも、ポケモンなら、お金はかからないでしょ?だとしたら、どっちがより多く利用されるかな?」

澪「しかし、微妙なところだな。お金がかかるといっても、安全に行けるわけだし」

AYU「そうだね。難しいところだね。まあ、それ以外でも、建設現場や災害救助、他にもいろいろな面で助け合ってきたんだよ」

梓「いいことですね」

AYU「……そうだね。それだけなら、よかったんだよ」

澪「何か、含みのある言い方だな」

AYU「助け合ってきたと言っても、ポケモンを人間が一方的に使ってるようにも見えるよね?」

梓「嫌な言い方をすればそうかもしれませんね」

AYU「でも、それでもよかったんだよ。平和だったし。でも、人間はやってはいけないことをしてしまったんだ」

梓「それはなんですか?」

AYUはあまり、言いたくないのか、顔を歪めながら言いました。

AYU「ポケモンの……軍事利用」
392. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/09/18(日) 16:11:04.06 ID:I2Rn+i7W0
梓「ポケモンの軍事利用?」

澪「つまり、ポケモンを武器として使うってことだな」

梓「そんな……」

AYU「この時代ではそこまでの研究は行ってないけどね。いずれはね……」

梓「軍事利用って……具体的には?」

AYU「そうだね、例えば……マタドガスの出す、毒ガスをね。……細菌ウイルスを出せるようにするとかカメックスのロケット砲から、ロケ
ット弾やマシンガンのような物を発射できるようにするとか」

梓「……反対運動とかは?」

AYU「もちろんあったみたいだよ。見たわけじゃないけどね。でも、反対は無駄だったよ」

梓「無駄?」

AYU「反対派もデモとかもしたみたいだけどね。国とかは無視したみたいだし。あまりにうるさい奴は摘発とかされたみたいだし」

梓「そんな……」

AYU「まあ、かの国の侵略とかもあったみたいだけど、そこらへんはいろいろあって、よく分からないけどね」

澪「それで、続きは?」

AYU「……ポケモンだってね、戦うのは好きだけどさ。それは戦うことを通じて、心を通わせるためだよ。決して、傷つけることが楽しいわけじゃないんだ」

梓「……」

澪「……」

AYU「まあ、それでも、人間のためにポケモンは働いたよ。……最初はね」

梓「最初は?」

AYU「そう、最初は」

澪「何があったんだ」

AYU「……暴走したんだよ」

梓「暴走?」

AYU「そう。暴走。ある日ね、研究所からポケモンが脱走したの」

梓「脱走……」

AYU「そのポケモン達はね、マシンガンとかいろいろな兵器を搭載してたんだ」

梓「……」

AYU「そのポケモン達なら、何とかなったかもしれないけどそのポケモン達はね、危険なポケモン達も解放してしまったの」

梓「危険なポケモン?」

AYU「そう……。例えば、毒ガスとかを使うポケモンね」

AYUは言葉を躊躇いながら、続けます。

AYU「その結果、その研究所の近くにいた人間が死んだんだ。もっと、対策をしろよって思うかもしれないけど、今までポケモンが人間に逆らうって事がなかったからね」

梓「それでどうなったんですか」

AYU「ポケモンと……人間の戦争が始まったんだよ」

梓「戦争……」

AYU「人間は兵器を搭載したポケモンを駆除しにかかった。でも、ポケモンは異常に生命力もあるしね。それに、自分達で作り上げた、ミュ

ウツーとかも敵にまわっちゃってね」

澪「ということは・・・…タマムシシティで戦ったミュウツーはお前がロケット団に教えたのか」

AYU「そうだよ。正解だよ、澪ちゃん」

パチパチと拍手するAYU。

澪「おかしいと思ったんだ。ただのマフィアのロケット団があんな研究をしてたなんて……」

393. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/09/18(日) 16:14:16.29 ID:I2Rn+i7W0
AYUは一呼吸を置く。

AYU「一方のポケモンも人間の暴走を止めることができなかった。その結果、戦いは長期戦になった。泥沼のね。例えば、人間はポケモンを止めるために、そこに逃げ遅れた人達がいるにもかかわらずに、毒ガスや爆弾を使ったりね。一方のポケモンも、同じように、まだ仲間が戦っているのに一つの町をその仲間ごと消しちゃったとかね」

梓「……悲惨ですね」

AYU「そうだね」

澪「つまり、ここはその戦いのなれのはてか」

AYU「そういうこと。そんな泥沼の戦いでね、たくさんのポケモンや人間も死んじゃったんだ。それだけなら、まだ復興とかもできるかもだけど、ポケモンを制圧するのに、各地で核爆弾とかを使ったりとかね。……人間もポケモンも犠牲になったよ」

AYUは周りの光景を何かを思い出すかのように見ます。

AYU「そのせいで、人間の人口もだいぶ減っていった。同様にポケモンの数も減少していった。そんな時にある科学者達が集まって、隠れて、ある研究をしていたの」

澪「そんな時まで、研究をしていたのか」

AYU「その研究は別に破壊のためじゃないよ。どうやったら、この世界を救えるかという研究だよ」

梓「世界を救う……」

澪「こう言うのは失礼だと思うが、かなり厳しいと思うんだけど……」

AYU「そうだね、まったくその通りだよ。でもね。皆には希望が欲しかったんだよ」

梓「希望ですか」

AYU「そう。その希望の象徴として……マサラタウンのゆいが選ばれた」

梓「ゆい先輩が?」

AYU「私達の未来でも、梓ちゃんとゆいの伝説が語りつがれていたんだよ」  

澪「伝説?」

AYU「ただの17歳の少女がカントー地方で勢力を強めていたロケット団を壊滅に追い詰めて、ポケモンリーグで純ちゃんとういちゃんのコンビとの死闘の末の優勝、その後、マサラタウンに戻り、『放課後ティータイム』とかなんとかで、デビューして、ポケモンと人間との共存の
ために活動したんだよ。後の世では『カントーの英雄』といわれてたね」

梓「ちょっと、待ってください。ロケット団のことはまだしも、ポケモンリーグは……」

AYU「別に間違ってないよ」

澪「意味が分からないぞ」

AYU「それは後で、説明するから、まずは話を聞きなよ」

澪「分かった。続けてくれ」

AYU「ゆいはポケモンがメインボーカルとして、人気もあったしね。そのおかげかどうか知らないけど、カントーではポケモンの軍事利用の
反対が多かったみたいだね。だから、国は『放課後ティータイム』を売国奴みたいな扱いとして、けなしまくってたね。まあ、ここらへんは蛇足だけど」

梓「それで、ゆい先輩が選ばれた理由は?」

AYU「その研究者達はね、その希望の象徴として、ミュウツーのようにゆいの遺伝子を使って、クローンのようなポケモンを造ろうとしたん
だよ。その過程でたくさんのポケモンとゆいの遺伝子を掛け合わせた。たくさんの失敗の中で、1匹だけまともなものが生まれた」

梓「そのポケモンって……まさか」

AYU「そう。それが私だよ。AYUって名前はかつての英雄、ゆいとそのトレーナーの梓ちゃんの頭文字を取ったんだよ」

私達の間にしばしの沈黙が流れました。

AYU「……それでね」

AYUは再び、話し始めます。

AYU「私は頑張って、ギターの練習をしてきたんだよ。たくさんの人に幸せになってもらうために」

AYUは昔を懐かしむような眼をして語り始めます。
394. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/09/18(日) 16:16:21.08 ID:I2Rn+i7W0
回想

AYU「これから、歌を歌うよ。題名は『ふわふわ……』」

未来人A「うるせー、ひっこめ、ひっこめ!」

未来人B「ふわふわって、たしか、糞ポケモンが歌ってた奴だよな。とすると、こいつはポケモン側のスパイかもしんねーぞ」

AYU「た、たしかに私はポケモンだけど……」

未来人C「やっぱりスパイだな。人間みたいな体しやがってよ」

皆が私達に向かって、石を投げてくる。

AYU「そんなつもりはない……痛い、痛いよ」

こんな感じでひどかったね。それでも、私は頑張った。その甲斐があったのか、少しずつ、私の歌を聴いてくれる人が増えてきた。気づけば、
この平和の時代でいえば、小さいファンクラブが出るくらいの人気になっていった。そんなある日……。

軍人A「ここで集会をやっているのはお前達だな」

たくさんの銃を持った、軍隊の人達がたくさんやって来た。その日はご主人様とかはいなかったから、私だけだった。ああ、いつもは手伝ってくれたからね。初めての1人でのライブ。ちょっと、緊張してたんだよね。そんな時にやってきたわけだよ。

軍人A「お前達は何の目的でここに集まっている」

AYU「私は歌を歌って、皆さんはそれを聞き……」

その直後、ズガガガガガガンという音ともにマシンガンの音が聞こえた。

AYU「や、やめてよ。何をするの!!」

軍人B「私達が得た情報によれば、お前はポケモンだな」

AYU「そ、そうだけど……」

軍人B「つまり、お前はここで集会をして、人間をスパイとして洗脳し、送り込もうとしていたわけだな」

AYU「ち、違うよ!私は皆に歌を聞いてほしくて……」

軍人A「うるさいっ!!お前ら、ここにいる人間どもを皆殺しにするぞ」

軍人の人達はマシンガンを観客達に向けられる。

AYU「や、やめ……」

軍人A「うてー!」

軍人の掛け声で、マシンガンが乱射された。

AYU「う……うわあああああああああああああああああああああああああああああ」


博士「ど、どうしたの、これは……」

博士の声で気がつくと、私は軍人達と観客達の死体の中で座っていた。

AYU「ご、ご主人様……」

博士「……だいたい、事情が分かったよ。さあ、AYU。研究所に戻ろう」

AYU「……はい」

博士「もう、分かったよ。きっと、この世界は救えない」

AYU「ご主人様……」

博士「だから、AYUには任務を与えるよ」

AYU「任務?」

博士「そう。人間がいるから、この世界は腐っていくんだよ。だから、過去に戻って、人間を滅ぼすんだよ。そのための研究はまだ不完全だけどね」

AYU「……」

博士「この任務が成功したら、もしかしたら、あなたは消えちゃうかもしれないけど、地球は救える。そうしたら、あなたはかつてカントー地方を救った伝説のポケモン『ゆい』になれる」

AYU「ゆいに……」

博士「あなたには伝説のゆいの遺伝子がある。これを達成することであなたはゆいを超えることもできるのよ」

395. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/09/18(日) 16:23:12.23 ID:I2Rn+i7W0
回想終了

AYU「それから、私はあなた達が旅立つ5年前くらいにタイムマシンで来てね。いろいろと準備をしてきたわけだよ。例えば……曽我部さんとかね」

梓「……」

AYU「本来の歴史では彼女は何も関わらずに終わるはずだったんだよ。ロケット団もヤマブキシティを占拠するんじゃなくて、シルフカンパニーを占拠するだけでおしまい。当然、伝説のポケモンも使ってこなかった」

澪「おかしいな」

AYU「何が?」

澪「どうして、サッサと人類を滅亡させないんだ?」

たしかに、そうですね。

AYU「それは……私の我侭だよ。私は戦いたかった。ポケモンリーグで優勝した、梓ちゃんとゆいと。それともう一つ、事情があってね。私が力を使うには体内のあるエネルギーが必要でね。普段は自分で賄えるんだけど、人類を滅ぼすほどのエネルギーとなるとね」

梓「……私が必要ということですか」

AYU「そうだよ〜、『あずにゃん』」

梓「そのあだ名で言わないで下さい。あなたには言われたくありません」

AYU「くすくす。ところで、私が曽我部さんを使ったのはね、彼女の取り組みも面白かったからだよ」

澪「どういうことだ」

AYU「私の目的は人類を滅亡させて世界を救うこと。でも、人類を滅亡させる以外の方法があれば、そっちをとるよ。……あればね。その中で、人類の人口を減らすのもいいと思ってね。……さて、この世界ももういいかな」

私達はもう一度、目をつぶり、元の部屋に戻りました。

AYU「私はこの任務を成功させて、伝説の英雄、ゆいになる」

梓「……あなたでは無理ですよ」

AYU「言うね。……まあ、いいや。ここで、提案したいことがあるんだ」

AYUは椅子に腰掛けます。

AYU「あなたのお友達の純ちゃんを助けてあげてもいいよ」

梓「えっ……」

AYU「ただし、あなたが決勝戦を辞退したらね。そうしたら、あなたの仲間達も人類滅亡からは救ってあげる」

澪「ちょっと待て。お前は戦いたかったんだろ?梓とゆいと」

AYU「そうだよ〜。でも、梓ちゃんを手にかけたくないからね。エネルギーがなくなれば、用なしだし。あなたと梓ちゃん。それに女の子2
人と純ちゃんにういにゆい。これだけの人間くらいなら、生き残っても、子種を残せないだろうしね」

梓「……」

AYU「さて、私の話は終わりだよ。で、どうする、梓ちゃん」

梓「私は……」

AYU「まあ、ここで出す結論でもないからね。じっくり考えてよ、『あずにゃん』」

梓「2度とそのあだ名を口にしないで下さい。次は容赦しませんよ」

AYU「いい答えが出ることを期待してるよ、あずにゃん」

梓「……失礼します」

私はサッサと、AYUの部屋を出ました。



396. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/09/18(日) 16:26:53.46 ID:I2Rn+i7W0
澪「……」

私も梓に続いて、部屋を出ようとして、振り返る。

澪「……梓はお前には負けないよ」

AYU「ふふふ、それは楽しみだね」

澪「それにお前は決して、ゆいにはなれないよ」

澪「さあね。自分で考えなよ」

私はそれだけを言い残して、部屋を出た。


梓「どうしたんですか、澪先輩」

澪「別に何もないよ。さあ、戻ろう」

梓「そのわりには……足が震えてますよ」

その頃のゆい達

ゆい「ひゃああああああ」

私は地面に叩きつけられる。

紬「大丈夫、ゆいちゃん!!」

律「おいおい、ういちゃん。もう少し、手を抜いても……」

ゆい「大丈夫だよ、りっちゃん。それにこれは大事な儀式だからね」

律「儀式?」

ゆい「そう。次で、48個目。これで……」

うい「お姉ちゃんはひらさわ家48の殺ポケ技をマスターできるんです。そうすれば、お姉ちゃんは……『パーフェクト・お姉ちゃん』になれます!」

ゆい「パーフェクト・わたし!そうなれば、きっと……」

妄想

梓「すごいですね、ゆい先輩!!」

ゆい「当然だよ!フンス」

梓「お礼にギュッてしてあげます!」

ゆい「仕方がないな〜」

梓「今日は抱っこして寝てあげますね」

ゆい「今夜は寝かさないぜ、子猫ちゃん」

妄想終了
397. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/09/18(日) 16:28:29.21 ID:I2Rn+i7W0
ゆい「えへへ〜」

律「本当に梓かよって、妄想してるな」

紬「だから、妄想ってそういうものよ」

うい「隙ありだよ、お姉ちゃん」

私が妄想をしていると、ういが私を掴んで上にジャンプします。

うい「これが最後だよ。ひらさわ家48の殺ポケ技の1つ『ひらわわバスター』」

ういは私の足を持って、私の首をういの肩口で支える体勢になります。そして、地面に落下します。
ドカンッ!!!

地面に着地した衝撃が辺りに響き渡ります。

ゆい「……強くなったね、うい」

うい「……お姉ちゃん」

ゆい「私は明日勝つよ。ここまでしてくれた、ういや皆のため。そして、あずにゃんのために」

うい「……頑張ってね」

ゆい「うん……グハッ」

ういは手を離し、私は地面に落下し、気絶してまいました。

紬「ゆいちゃん!」

律「気絶してるだけみたいだな」

うい「ハア……ハア……」

律「ういちゃんもお疲れ様」

うい「いえ……。お姉ちゃん達は勝てるでしょうか?」

律「さあな。こればかりは時の運だよ。ただ、やるべきことはやったんだ」

紬「とりあえず、梓ちゃんのポケモンとゆいちゃん。それから、ういちゃんもポケモンセンターに行きましょう」

律「そうだな」
398. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/09/18(日) 16:30:59.11 ID:I2Rn+i7W0
梓の部屋

梓「ところで、これは何ですか?」

ゆい「すぴー、すぴー」

私達が部屋に戻ると、ゆい先輩が抱きついてきて、そのまま寝てしまいました。

律「……大人にはいろいろあるんだよ。子供の梓には分からないだろうけどさ」

梓「……そうですか。ところで、アイスを買ってきたんですけど、大人の律先輩は要りませんよね。大人ですもんね♪」

ゆい「じゃあ、りっちゃんのアイスは私がもらうよ」

澪「アイスで起きたのか!?」

律「ごめんなさい、梓様」

澪「そして、お前は謝るのか!?」


梓「ところで、律先輩達にお話があります」

律「何だ?まさか、アイスの代金を払えと」

ゆい「私、お金持ってないよ!?」

梓「違いますよ。実は……」

私は澪先輩とAYUから聞いた話を話しました。

律「……なるほどな。……それで、梓はどうするんだ?」

梓「どうしましょうか?」

律「……それは梓が決めることだ。私は梓がどっちを選んでも恨まないよ」

律先輩は席を立ち、歯を磨きました。

律「じゃあ、私は寝るから、ゆっくり考えてくれ」

律先輩はベットに横になり、布団を被って寝てしまいました。……私の寝る場所なのに。

紬「私が言えるのは梓ちゃんの悔いの残らないようにしてね」

梓「ムギ先輩……」

澪「そうだな、それが一番だよ」

ムギ先輩も澪先輩も歯を磨くと、ベットに入り、寝てしまいました。皆さん、寝る前には歯を磨いて下さいね。……それにしても、私の寝る場所が……。

ゆい「さてさて。悩める、あずにゃんにはゆい先輩がお話を聞いてあげよう」

梓「そうですね……」

私はゆい先輩とソファーに腰掛けます。

梓「私がAYUから、聞いて思ったことがあるんです」

ゆい「ほうほう」

梓「私は人間とポケモンが仲良く暮らしていく未来を想像してました。でも、話を聞いて、不安になりました」

ゆい「……」

梓「私は旅を通じて、たくさんのいい人にも出会いました。それだけなら、未来にも希望があるんでしょうけど、ポケモンを悪用する人がいたり、戦いの道具にしてるような人たちもいましたからね。そんな未来もあるのかなって考えちゃって……」

ゆい「……」

梓「それにあの人の言う未来だったとしたら、人間を滅ぼすのが早いっていう考え方もあるとは思います。でも……」


399. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/09/18(日) 16:32:03.07 ID:I2Rn+i7W0
ゆい「……あずにゃんは」

私が言いよどんでいると、ゆい先輩が話し始めました。

ゆい「あずにゃんはAYUっていう人の言う未来を信じてるの?」

梓「え……」

ゆい「例えば、あずにゃんは明日カリカリ君を食べるって未来が分かったとしよう。あずにゃんは未来を変えたいと思ったら、カリカリ君を食
べる?」

梓「そりゃ……食べませんよ」

ゆい「でしょ?未来なんてそんなもんだよ。だから、あのとおりに未来がなるとは限らないよ」

梓「それはそうですけど……」

ゆい「未来なんて、どうなるか分からないよ。逆に分かったって変えることはできるよ」

梓「……たしかにそうですね」

ゆい「私はそんな未来よりも、人間とポケモンがいつまでも仲良く出来るような未来を信じるよ」

梓「……ゆい先輩」

たしかにそうですね。私はあんな光景を見たから、暗くなってしまったのかもしれない。

梓「私は……私もゆい先輩の言うような未来を信じます」

ゆい「……そっか」

ゆい先輩はふぁ〜と欠伸をして

ゆい「じゃあ、私達も寝ようか」

梓「……私はやることがあるので先に寝ていて下さい」

ゆい「……ん、分かったよ」

ゆい先輩が寝たのを確認し、私は明日のメンバーを決めにかかりました。

病室

うい「……純ちゃん」

コンコン

うい「ん?こんな遅くに誰だろう」

私はドアに向かいます。

うい「どちら様です……あなたは!?」
400. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) 2011/09/18(日) 16:33:41.10 ID:I2Rn+i7W0
翌朝

ゆい「いよいよ、決勝戦だよ!!」

澪「朝から元気だな」

ゆい「やっとここまで来たからね!!」

澪「それはいいんだけどさ……」

ゆい「何か、言いたそうだね」

澪「まだ、朝の5時だ!!」

ゆい「おおっ!」

律「……うるさいな、澪」

紬「……朝から、何を騒いでるの……」

澪「いや、ゆいが……」

律「ん?ゆいがどうしたんだ?」

澪「どうしたって……ゆいが朝早くから起きて……」

紬「ゆいちゃんは寝てるわよ、梓ちゃんの横で」

澪「え?」

ゆい「すーぴー」

澪「いつの間に……」

律「まったく、梓が起きたらどうするんだよ」

紬「きっと、澪ちゃんにもいろいろあるのよ」

澪「人を可愛そうな目で見るな!!」

朝食後

梓「さて、会場に向かいましょうか」

澪「……そうだな」

梓「どうしたんですか、澪先輩。何か、疲れてますけど」

律「澪にもいろいろあるんだよ……」

紬「そうよ、梓ちゃん。あまり、触れないであげて……」

澪「人を可愛そうな人扱いするな!!」

ゆい「澪ちゃん、朝から元気だね!」

澪「一体誰のせいでこんな目にあってると思ってるんだ……」


最終更新:2011年09月22日 21:44