律「なんだなんだ、着いたのにまだ船から降ろしてくれないのか?」
澪「港が騒々しいな……なにかあったんだろうか」
乗組員「いました。こいつらです!」
兵士「どれどれ……ふむ、そこの楽器を持った三人。ここに残れ。他の客は降りていいぞ!」
律「私たちになんか用か?」
澪「へ、兵士……? どうしよう律、私たち何か悪いことしたか?」
晶『……恐れてたことが起きちまったな』
兵士「お前らの持っているその楽器は、コトブキグループ及びフィッツガルド政府に所有権がある。こちらへ渡せ」
律「はあ? なんでだよ! これは私らのものだっつーの!」
唯「そーだよ! 私ちゃんとお金払ったんだよ!?」
兵士「ええい黙れ! 神の眼の騒乱を忘れたか!? そのような高度に濃縮されたレンズは災厄のもとになるのだ!」
澪「災厄って……これは楽器だ! そんな物騒なものじゃない!」
兵士「かのソーディアンのような強力な晶術を使えるものは災厄以外の何ものでもない! 我々の手によって破壊する!」
唯律澪「「そんなっ!?」」
晶『残念だけど、ここまでか……いいよな、菖、幸?』
菖『そうだね……しょうがない。りっちゃんたちに迷惑かけられないよ!』
幸『……』コクン
晶『唯、捕まりたくなかったら私を差し出して逃げろ。律と澪もだ』
唯「ギー太……どうして!?」
菖『こいつらの言ってることはだいたい合ってるよ! 本当は私たちは壊されなきゃいけないんだ……でも私たちのわがままでずっと逃げてきた』
唯「いやだよ……ギー太が死んじゃうなんて、そんなのいや!」
澪「私だって嫌だ! こんなところでお別れなんて……」
幸『でもこのままじゃ捕まっちゃうよ……?』
律「はっ、だからってそう簡単にパートナーを捨てられるかよ。――行くぞ、澪、唯! 強行突破だ!!」チャキッ
唯澪「「お~!!」」チャキッ
菖『りっちゃん……』
晶『はあ……バカだな。後悔すんなよ!!』
兵士「貴様ら、歯向かう気か!? おい、応援を呼べ! 実力行使だ!!」
律「ちょっ、多過ぎだろ!?」
澪「よし、晶術で一気にまとめて――」
兵士A「敵は晶術を使ってくるはずだ! 一気にかかれ! 詠唱の隙を与えるな!!」
兵士B‐H「「おおおお!!」」ドドドド
律「うわあっ!? 来るな! 魔神剣!!」ギュイイン
兵士B「ぐおっ!?」ドサッ
兵士C‐H「「うおおお!!」」ドドドド
律「だー、きりがねぇ! 分散するぞ!」サッ
澪「わかった!」サッ
唯「えっ、えっ?」オロオロ
兵士C「喰らえ!」
唯「きゃあっ!」ザクッ
晶『何やってるんだ! 早く距離をとれ!』
唯「いたた……」トテテテ
兵士C「逃がさ――」
澪「グレイブ!」
兵士C「ぐふっ!?」ドサッ
兵士D「仲間を助けてる場合か? 隙あり!!」
澪「うわあっ!?」ザクッ
澪「……血、血がぁぁぁ! いやあぁぁぁぁぁ!!」ダッ
兵士D,E「「待てい!!」」ダッ
律「魔神剣! 魔神剣! 魔神剣!」ギュイイン
兵士F「ええい、何だこいつは!?」
兵士G「近づけん!」
唯「はあ、はあ……」トテテテ
兵士H「追い詰めたぞ……」
兵士A「おとなしく降伏し、そのギターを渡せ!!」
晶『唯、早く回復――』
澪「――いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」タッタッタッ
兵士D,E「「待てーい!!」」タッタッタッ
晶『……! 澪を回復するんだ!』
唯「え? ……わかった、ファーストエイド!」キュルリン
澪「ああぁぁぁぁぁ……あれ? 血が止まった……よし、ソニックレイブ!」ギュイイン
兵士D,E「「ぐおっ!?」」ドサッ
兵士A「チッ……喰らえ、ギター女!!」
唯「う、うわっ! し、し~びれ~るぅぅ~!!」ビリビリ
兵士A,H「「ぬわ~っ!?」」ビリビリ
澪「今だ……エアプレッシャー!」ドォォォン
兵士A,H「「ふぐっ!?」」ドサッ
律「はあ、はあ……もう魔神剣撃てましぇん……」
兵士F「ぜぇ、ぜぇ……もう弾切れのようだな……」
兵士G「覚悟しろ……!」
律「……と見せかけて時間稼ぎ終了! イラプション!」ゴォォォォ
兵士F,G「「があぁ!?」」ドサッ
律唯澪「「やったあ~!」」
レベルアップ
唯 Level 11 かわせマーチを習得
律 Level 15 虎牙破斬を習得
澪 Level 16
兵士「お、おのれ……!」
律「はあ、はあ、やったぜ……どんなもんだい!」
澪「よし、今のうちに……」
?「何の騒ぎ!?」
兵士「! これは剣士殿! こやつらが例の……」
?「……わかったわ。私に任せなさい」
?「あなたたち、兵士に対してこのような暴挙、許さないわよ」シャキン
律「くそっ、また敵かよ……」
唯「――和ちゃん!?」
律澪「「えっ?」」
和「……唯!? 生きていたのね!!」
律「なんだ知り合いか……じゃここは唯に免じて、見逃して……」
和「……それはできないわ。あなたたちのやったことは重罪よ」
律「ふっざけんな! もともとあんたらがこの楽器を奪おうとしたんじゃないか!」
和「それとこれとは別。言い訳は無用、行くわよ!!」
唯「和ちゃん……やめてよ!」
和「唯……ごめんなさい、これは私の義務なの」
律「この……魔神剣っ!」ギュイイン
和「風神剣!」ギュイイン
律「打ち消された!?」
和「覚悟しなさい!」ダッ
澪「く、来るな! ストーンブラスト!!」
和「うっ!?」ゴチゴチ
律「よし、今のうちに詠唱を……」
和「させないわよ……陽炎!」ヒュン
律「うわあっ!? ワープしやがった!!」
澪「唯、唯! 援護してくれ、このままじゃ……」
唯「うぅ……」
和「……ごめんなさい、唯。行くわよ!」
和「見せてあげるわ!」
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和「ただでは済まさないわよ!」シャキーン
律澪唯「「きゃあああぁっ!?」」ドサッ
敗北した……
和「この者たちを連行しなさい」
兵士「はっ! さあ、楽器を渡してもらおう」
律「ちっくしょー、離せー! 菖を返せ~!!」ジタバタ
兵士「ええい、おとなしくせんか!!」
澪「ああ……私たち、もう終わりだ……」ウルウル
和「楽器はすぐに壊さずに、コトブキグループの令嬢のもとに届けて」
兵士「……はい? 今すぐ破壊すべきでは……?」
和「……いいから」
兵士「剣士殿がそう言うなら……わかりました」
唯「和ちゃん……」
和「唯……今はおとなしく捕まってちょうだい。後で話を聞かせて? 大丈夫よ、私はあなたの味方だから」
唯「うん……」
律「はあ、散々だな……菖たちも奪われちゃったし」
澪「私たち……どうなっちゃうんだろ」
律「さあな……」
唯「きっと大丈夫だよ」
澪「唯……?」
唯「和ちゃんは、私の味方だって言ってくれたもん……」
兵士「――こちらです、剣士殿」
和「ありがとう。……みんな、出てちょうだい」ガチャン
唯「和ちゃん!!」
律「てめえは……!」
澪「……私たちをどうする気?」
和「本来は重罪だけど……条件付きで釈放が決まったわ」
律「へ、まじで?」
兵士「こちらの剣士殿や、コトブキグループの令嬢が直々に申し出てくれたおかげだ。感謝するんだな」
和「余計なことは言わないで」
兵士「す、すみません……」
澪「その条件ってのは?」
和「ついて来て。あなたたちの楽器もそこにあるわ」
琴吹邸 会議室
和「ここよ」ガチャン
紬「いらっしゃい」
唯「あ、あの時の!!」
紬「ええ。無事でよかった……。他のお二方は初めまして。
琴吹紬と申します」
律「琴吹って……コトブキグループの関係者か?」
紬「ええ、そうよ。私と和ちゃんは今回の……『言葉を話す楽器』の件について担当しているの」
和「まず、あなたたちの楽器を返すわ」ゴトン
唯「ギー太! よかったあ~」
晶『ハッ、命拾いしたな、唯』
澪「よかった……傷とかついてないよな?」
幸『ふふ、大丈夫だよ』
律「菖! 会いたかったぜ~!!」
菖『りっちゃんも元気そうでよかったー!!』
……
律「さて……私は何がなんだかさっぱり分かんないんだが、一体何だってあんたらは菖たちを壊そうとしてるんだ?」
澪「確か災厄だとかなんとか……」
紬「それについては、私のキーボード……菫ちゃんから説明してもらうわ。菫ちゃん、よろしく」
菫『は、はい! え、えっと……初めまして、斎藤菫と申します』
晶『その声、聞き覚えあるな……? そうだ、お前コトブキグループのメイドだろ!?』
菫『ひぃぃぃぃ!?』
菖『こらー、晶! 菫ちゃん怖がってるでしょ!!』シュボッ
晶『うわっ!? 火を出すなって!!』
律「だー、お前ら落ち着けって! で、菫ちゃんはこいつらと面識あるのか?」
菫『は、はい……琴吹家に恩那組の方々がいらっしゃってたときに、応対したことがあります』
律「えー、あー、いつの話だ?」
紬「菫ちゃん、順を追って話さないと……」
菫『はい、すみません!』
澪「メイドも大変だな……」
……
菫『えっと、今から約600年前のことです』
菫『コトブキグループは、カルバレイスにて、人格を投射した高純度のレンズと楽器を融合することのできる研究所跡を発見しました』
菫『それはソーディアンを作るための装置に似ていましたが、当時既に天地戦争のことはほとんど忘れ去られていたため、そのことには気づきませんでした』
菫『そしてコトブキグループは、楽器とシンクロして演奏能力を上げる装置として、当時活動していたバンドを招いてその技術を提供しました』
晶『そのバンドのうちの一つが私たち恩那組だ』
律「そういうことだったのか……」
菫『しかし、そのうちその楽器の危険性が判明します』
澪「それがさっき言ってた……災厄とかか? 晶術が使えるからとか言ってたけど」
菫『そうです。演奏とは関係なく、レンズを用いて強力な晶術を使うことができるので、悪用して罪を犯す者も出てきたんです』
菫『さらに、同一の人格が存在することで精神に悪影響を及ぼすこともわかりました』
菫『そこで、コトブキグループはすべての楽器を回収、破壊することに決めたんです。でも……その、えっと』
晶『私たちはそれに反発して逃げた。他にも逃げたバンドはいたみたいだが、あらかた捕まったらしいな』
菫『は、はい……恩那組の方々以外のすべての楽器は破壊しました』
唯(あれ、あずにゃんのむったんは……?)
晶(梓の持ってた奥田とかいうやつはバンド組んでないって言ってたな……うまく逃れたのか)
菫『結局、その後恩那組の方々は見つかりませんでした……』
菫『でも、このことを後世に伝え、いつか必ず見つけ出して破壊するために、琴吹家に使える斎藤家から、私が選ばれてこのキーボードに人格を投射しました』
菫『そして琴吹家に代々伝わってきたのですが……私の声が聞こえたのは結局、紬お嬢さまだけで……』
澪「600年間、使命を果たせず過ごしてきたってこと……?」
菫『はい……寂しかったです……』グスン
紬「よく耐えたわ、菫ちゃん……」ヨシヨシ
紬「それで、菫ちゃんから事の詳細を聞いて、うちのグループと政府で協力して捜査を開始したの」
紬「そしたら、政府のほうが妙に張り切っちゃって……とにかく楽器を壊す壊すって言って聞かないの」
律「……? 壊すのが目的じゃなかったのか?」
紬「私も、菫ちゃんのマスターだもの。あなたたちと一緒で、壊そうだなんて思ってないわ」
和「私も同じ意見よ。唯がギターを買って楽しそうにしてたのを見てたしね」
唯「和ちゃん……えへへ」
紬「でも、この楽器が危険なものであることは事実。だから、壊さないにしても全ての楽器の所在を掴んでおきたかったの」
和「さっきはごめんなさい……私も政府の命令で動いてるからああするしかなかったのよ」
律「……ま、こっちの味方ってことならいいって!」
澪「それで、さっき言ってた釈放の条件ってのは?」
和「最近、高純度のレンズを狙った盗掘や強盗事件が多発していて、それの解決に協力してもらうのが条件よ。晶術は大きな戦力になるから」
唯「あのぴかぴかのレンズのこと?」
和「たぶんそうよ。そのときレンズを買い取っていったのが……おそらく一連の事件の犯人、『デスデビル』のうちの一人よ」
唯「うーん、でもあの人、お金くれたよ?」
和「もしそれでも断っていたら、襲われていたでしょうね……」
唯(え、じゃあ……あずにゃんが、危ないよ!)
紬「もう一つの問題は、そのデスデビルのメンバーもレンズの埋め込まれた楽器を持っているということなの」
晶『何だって? 全部破壊したんじゃなかったのか?』
菫『そのはずだったんですけど……コトブキグループ以外の人が作成したのかもしれません』
律「晶術を悪用して強盗か……そいつらこそ、とっちめてやんないとな!」
和「ええ。作戦はすぐにでも開始したいから、今日は街で準備を整えてちょうだい」
唯澪律「「了解!」」
最終更新:2011年09月25日 22:57