和「じゃ、行きましょう。悪いけど、一応監視役として私が同行するわ」
紬「うふふ」
律「琴吹さんも来るのか?」
紬「ムギ、って呼んで。私も一緒にお買い物に行っていいかな?」
律「そりゃもちろんいいけど……お嬢様なのに何か買うものがあるのか?」
紬「私、一度でいいから下町で買い物してみたくて……一人で行くと私みたいなのは睨まれちゃうから」
唯「え、どうして?」
晶『ノイシュタットはまだまだ貧富の差が改善されてないみたいだからな。富豪の娘がのこのこ現れたらそりゃ白い目で見られるだろ』
和「でもムギ、お菓子買いに行くわけじゃないんだから……そんなに下町のほうには行かないわよ?」
紬「そんな……」シュン
律「……まあ、後で連れてってやるって!」ポンポン
唯「そうだよ、お菓子は大事だよ!」
澪「そういう意味じゃないだろ……」
―――
「大作戦開始?」
律「なんだか一気に話が大きくなっちゃったな~」
澪「そうだな……この楽器にそんな過去があったなんて知らなかった」
幸『今まで黙っててごめんね』
菖『りっちゃんたちまで捕まっちゃったりしたら嫌だったからね! 結局捕まっちゃったけど』
律「ま、結果オーライだぜ!」
唯「悪者退治かあ……なんか大作戦って感じでわくわくするよね!」
律「お、わかるわかる! なんつーか、選ばれし戦士たちって感じだよな!」
澪「調子に乗るな! 相手は強いんだぞ?」
晶『そうだぞ。特に唯! お前は今日から特訓だー!』
唯「ひゃいっ!?」
紬「ふふ、みんなパートナーと仲がいいのね」
菫『そうですね……やっぱり、壊すなんて間違ってるんでしょうか』
紬「それが菫ちゃんの使命なら、頭ごなしに否定はしないけど……ゆっくりでいいから、考えてみてね」
菫『……はい!』
―――
「政府との兼ね合い」
澪「ねえムギ、ムギたちは私たちの楽器を壊さないっていう立場だけど……政府は違うんだろ?」
紬「そうなの……絶対に破壊すべきって言って、本格的に動き始めてるわ」
律「でも、その任務を受けたムギと和がこんなんだもんな」
和「ええ……だから私たちも、あまりあなたたちを擁護しすぎると政府に目をつけられるわね」
紬「今も、作戦に参加させるって名目で処分を先送りにしてるだけなの。だからこの作戦が終わったら……」
澪「楽器を破壊しろ、って命令が来るのか……」
紬「そう。それまでに対策を考えなきゃ!」
―――
「デスデビルって何者?」
晶『デスデビルってのはいったいなんなんだ? バンド名か?』
紬「デスメタルバンドらしいわ。派手な格好をしてるから目撃情報は多いみたい」
唯「たしかに、すごい格好だったよ~!」
菖『おかしいな~……そんなバンド聞いたことないよ?』
晶『確かに、あの時代に活動してたなら私らが知っててもおかしくないな』
紬「それに、なぜ私たちと同じくレンズの埋め込まれた楽器を持っているのかしら……謎が多いわ」
晶『ま、デスデビルとかいうダサい名前のバンドに私たちが負けるはずないだろ』
澪(恩那組ってバンド名もなかなかのセンスだと思うけどな……)
―――
「奥田さんって何者?」
唯「ねえギー太、あずにゃんのむったんって……」
晶『ああ、私も同じことを考えてた。コトブキグループに認識されてないし、梓がデスデビルのメンバーってこともないだろうし……なんなんだろうな』
唯「うーん、ムギちゃんに聞いてみようかな?」
晶『いや、やめとけ、唯。存在が知られたらあいつのギターも破壊されることになるぞ』
唯「……そうだね。このことは私とギー太だけのひみつだよ!」
晶『いや、菖たちにもしゃべっただろ……」
―――
「キーボードの戦い方」
唯「ムギちゃんはどうやって戦うの?」
紬「私は主に晶術で戦うわ。菫ちゃん、全属性の晶術を使えるのよ~」
唯「へえー、すごいね!」
菫『そんな、とんでもないです! 私、キーボードのくせに音楽は初心者なんで、せめて晶術だけでもと……』
唯「あれ、もともとキーボード弾きじゃなかったんだ?」
菫『はい。私はただ選ばれてこのキーボードに人格を投射しただけですから』
晶(苦労人だなこいつは……)
―――
「コトブキグループ3」
菖『ねえムギちゃん、コトブキグループっていつの間にフィッツガルドに移ったの?』
紬「オベロン社の支社がノイシュタットにできたころに一緒に移住してきたの」
晶『なるほどな。発展途上の時に進出して富豪に成り上がったわけか』
菖『じゃあほんっとにホントのお嬢様なんだね!』
晶『そんなにお嬢さまなら、唯みたいな馬鹿と話が合わないんじゃね?』
唯「ひ、ひどいよギー太!?」
紬「そんなことないわ。唯ちゃんもみんなも優しくしてくれるし、すっごく楽しい!」
晶『へー。ま、実はお金目当てで優しくしてるだけかもな』
紬「」ウルウル
菖『……』ボウッ
晶『うわ、熱い熱い!!』
唯「こら、ギー太! おしおきだよ!」グイッ
晶『じょ、冗談だって! ちょ、唯! 火の方に向けるなって……熱っ!?』
紬「そんな……私のお金が目当てだったのね……」ウルウル
幸(……おもしろい)
―――
「憂はどこに?」
唯「ねえ和ちゃん。憂はどこにいるの?」
和「……あなたを探して旅立ったわ。今頃ファンダリアかしら」
唯「ええーっ!! 入れ違いになっちゃったよお……」
律「ふむふむ、唯の妹にしてはすごい行動力だな。さしずめ晶の言ってたことも間違いではないかもしれん」
澪「一人旅か……大丈夫なのか? 特に戦闘訓練を受けてるわけじゃないんだろ?」
和「憂なら心配ないわ」
晶『彼女なら大丈夫そうだな』
律澪((いったいどんなやつなんだ……!?))
……
紬「あ、駄菓子屋さん!」
律「お、行くか~ムギ?」
紬「うん! りっちゃん、連れてって!」
律「よーし、行っくぞ~!」ダッ
澪「お、おい律! 装備を整えなきゃ……」
律「何か適当に買っといてくれ~!」タッタッタッ
澪「はあ、まったく律は……」
唯「あ、アイスキャンディーだ!」ダッ
和「ちょっと、唯! 待って!」
唯「和ちゃんも一緒に食べようよ~!」タッタッタッ
和「……もう、唯ったら……」
澪「はは、なんだか」
和「境遇が似てるわね」
……
唯「アイスおいし~」ペロペロ
和「そうね」ペロペロ
澪「結局みんなで寄り道しちゃったな……」ペロペロ
和「食べたらすぐ買い物に行きましょう」
駄菓子屋
紬「すごい、これが駄菓子屋?」
律「そ! このへんにあるのは大体20~30ガルドだから、気にせず買えるぞ~」
紬「ほんと? これも、これも? すごいわ! 価格破壊はこんなところまで進んでたのね……」
律「なんの話だ……?」
菖『楽しそうだね~ムギちゃん!』
菫『はい、紬お嬢さまはすごく庶民の生活に憧れてて、いつも下町に行きたいって言ってました』
菖『へー、お金持ちなのにこんなのが好きなんて意外だね』
菫『だから、お嬢さまはいつかノイシュタットの貧富の差を埋めてくれるんじゃないかと思います』
notice
紬は称号:「庶民派富豪」を取得しました
道具屋
和「唯、何やってるの?」
唯「あ、和ちゃん。あと一個でアップルグミが15個なんだ~」プニプニ
和「そうなんだ、じゃあ私武器屋行くね」
唯「うん!」
晶(……!? 何だ今の会話は……和のスルー力がすごいのか、唯の気にしなさが異常なのか……)
晶『……ってか、商品のグミで遊ぶな!!』
唯「うわっ!? ご、ごめんなさい~」
notice
和は称号:「スルーの達人」を取得しました
……
澪「ふう、あらかた準備はできたかな」
和「そうね。あとは律とムギが……」
律「お~い!」
紬「お待たせ!!」
唯「おかえり~!」
澪「まったく……ほら、荷物持て!」
律「はは、わりいわりい……」
紬「それじゃ、作戦は明日実行するから、今日は私の家に泊まっていって?」
律「え、いいのか!?」
澪「あの豪邸に?」
紬「ええ、どうぞ♪」
唯「やったー! きっとふかふかのベッドだね! ギー太、一緒に寝ようね?」
晶『や・め・ろ!!』
紬「ふふ。じゃあ帰りましょう?」
唯律澪「「おー!!」」
唯(あずにゃん、大丈夫かな……? 心配だよ)
ファンダリア 梓の小屋
コンコン
梓「……? 誰だろう、こんなところまで……はーい!」ガチャ
?「こんにちは。ちょっといいかい?」
梓(うわ、すごい格好……金髪、短髪、ちょっと怖いな)
梓「はい、なんでしょうか?」
?「私は高純度のレンズを探してるんだけどね……あ、それそれ。君が首から掛けてるやつ」
梓「これが……どうかしましたか?」
?「それを譲って欲しいんだ。お金なら出すよ。10000ガルドでどうだい?」
梓「いえ……すみません、これは大事なものなので……」
?「へえ……そうかい」ニヤリ
梓「――!?」
……
憂(フィッツガルド中を探し回ったけど、お姉ちゃんは見つからなかった……もしかしたら、こっちの大陸まで流されてきたのかも)
憂(お姉ちゃん……絶対、どこかで生きてるよね? 信じてるよ!)
街中
憂(寒いな……装備を買わなきゃ。でも、そろそろお金が足りなくなってきた)
憂(モンスターを倒して稼ぐしかないかな? ちょっと街の外に出てみよう)
モンスター「グギャァァ!!」ドサッ キラッ
憂「ふう、結構たまったかな……あ、レンズだ」ヒョイ
憂(あのときお姉ちゃんが売ったレンズ、きれいだったな……なんだったんだろう)
?「レンズ、いっただき~~!!」サッ
憂「!? ――ふっ!!」ブン ゴチン!
?「ぐはっ!?」ドサッ
憂「あ、す、すいません! 大丈夫ですか!?」アタフタ
?「」キュ-
……
?「……う、うーん」
憂「あ、気がつきましたか? すみません、突然殴っちゃって……」
?「え? あ、えっと……大丈夫大丈夫!」アセアセ
憂「突然現れたからつい体が勝手に……ほんとにすみません! 何か御用でしたか?」
?(レンズを盗もうとしたことは気づかれてないみたいだ……黙っとこ)
?「い、いやーなんかモンスターと戦いまくってたから、大丈夫かなーと思って、ちょっと声をかけてみたり~……?」
憂「そうなんですか、ありがとうございます。……あの、ちょっといいですか?」
?「は、はいっ!?」ビクッ
憂「私と似た顔で、レンズの埋め込まれたギターを持った人、見かけませんでしたか? 探しているんです」
?「……いや、見てないなあ」
憂「そうですか……」
?(レンズの埋め込まれたギター? これはレア物の予感……ふふふ)
?「もしよかったら、私も一緒に探してあげようか?」
憂「ほんとですか? 助かります……ファンダリアは初めてなもので」
純「私、純っていうんだ。この辺には詳しいから、案内してあげるよ」
憂「ありがとうございます! 私は憂です。よろしくお願いします」ペコリ
―――
「レンズハンター」
憂「えっと、純さんは……」
純「そんな敬語使わなくてもいいよ、気軽に純って呼んで!」
憂「……ふふ、じゃあ純ちゃん。純ちゃんはファンダリアの出身?」
純「うんにゃ、セインガルドだよ。私の住んでた街はほとんど壊滅しちゃったら、こうやってレンズハンターとして旅しながら生きてるんだ」
憂「レンズハンター?」
純「そ。モンスターとか遺跡とかからレンズを集めて、売るの。でも最近はレンズの需要があんまりなくてね~……」
憂「オベロン社がつぶれちゃったもんね」
純「そーなの! あ~あ、そろそろこの生活もおさらばしてどっかに住もうかな~」
最終更新:2011年09月26日 01:08