2日後

唯「ふぅー寒いねー!こんなに寒いと朝起きるのも大変だよー」

憂「もう。お姉ちゃんはいつもでしょ?」

唯「えへへ。まあねー」

憂「あれ?あそこ歩いてるの澪さんじゃない?」

唯「本当だ!澪ちゃーん!」

澪「……」

唯「おはよー!」

憂「おはようございます」

澪「……」チラッ

澪「うん……」

唯「あれ?なんか澪ちゃん元気ないね」

澪「……」

唯「っていうか?なんかぼーっとしてるっていうか」

憂「澪さん、体調悪いんなら保健室行きますか?」

澪「……平気だから」ボソッ

唯「そう?じゃあ今日も部活がんばろうね!りっちゃんのためにも!」

澪「……!」

唯「澪ちゃん何かあったの?」

澪「な、なにもないよ」



放課後

唯「今日のお茶もおいしいねー」

紬「ありがとう♪」

澪「……」ズズ

紬「み、澪ちゃんはどうかな?」

澪「……」

紬「……」

澪「……おいしいよ」

紬「あ、ありがとう」


ガチャ

さわ子「3人そろってるわね」

唯「あ、さわちゃん先生ちょりーっす」

さわ子「みんな、落ち着いて聞いてくれる?」

唯「え?」

紬「どうしたんですか?」

澪「……」

さわ子「りっちゃんが……」

澪「!!り、律がどうしたんですか!」

さわ子「……自殺未遂で病院に運ばれたわ」


澪「自殺未遂!?」


紬「そんな……」

唯「あわわわわ」ガタガタ

澪「律は無事なんですか!」

さわ子「落ち着いてって!未遂って言ったでしょ?無事よ。でも」

澪「でも?」

さわ子「昏睡状態で意識が戻らないらしいわ……」

澪「……!」

紬「先生!どこの病院ですか!?」

さわ子「隣町の県立病院って聞いてるけど、やっぱり行くわよね」

澪「当たり前じゃないですか!唯、ムギ」

唯「わわわわわ」ガタガタ

澪「唯!」

唯「あ、うん!もちろん行くよ!」

澪「とりあえずバスで……いや、タクシーのほうが」

紬「大丈夫よ。今、家の者に連絡して車を呼んだわ。10分くらいで来ると思う」

澪「あ、ありがとうムギ」

さわ子「家から連絡が来たのは今日の朝だったんだけどね」

澪「じゃあなんで教えてくれなかったんですか!?」

紬「澪ちゃん!」

さわ子「教えたらあなたたち、確実に授業そっちのけで行っちゃうでしょ?
    私にも立場があるのよ……ごめんなさい」

唯「なんでりっちゃんは自殺なんかしようとしたの?」

澪「!」


さわ子「それは家族の方もわからないみたいね」

紬「あの、どうやって自殺しようとしたかっていうのは」

さわ子「歩道橋から飛び降りたって言ってたわ。幸い車には轢かれなかったみたいだけど」

唯「痛そう……」

澪「……私のせいだ」

紬「え?」

澪「私のせいなんだよ!律が飛び降りたのは!」

さわ子「どういうこと?」

澪「私が、私が律を……家に呼んじゃったから、それで、うわああああ」

紬「澪ちゃん、無理にしゃべらなくていいから、ね?」

唯「どうしたんだろう……」

澪「うう……律」

紬「そろそろ車が来るころだから、みんな出ましょう」

唯「さわちゃん先生も来るよね?」

さわ子「ごめんなさい。私はこのことで職員会議やらいろいろやることがあるから」

唯「そんなあ」

さわ子「行ってらっい。音楽室の戸締りはしといてあげるから」

紬「ありがとうございます。さ、澪ちゃん行こう?」

澪「うん……」



病院

唯「ここの病室だよね……」

紬「唯ちゃん、静かにね」

澪「律……!」

ガラガラガラ…

聡「澪さん!?」

澪「聡……久しぶりだな。親は?」

聡「先生の話を聞きにいってるよ」

澪「そうか。律は……」

律「…………」

聡「まだ目を覚ましてくれない……」


唯「りっちゃん。来たよー」

律「…………」

紬「りっちゃんの分のケーキ、持って来たわよ?」

律「…………」

澪「律。ごめん、私のせいで……」

律「…………」

澪「りつう……」

律「…………」



次の日 放課後

さわ子「そう……容体は安定してるのね」

紬「はい、でもずっと目を覚ましてくれないんです」

唯「私たちも家族の人も、面会時間ぎりぎりまでずっと声をかけてたんだけど……」

澪「……もう行っていいですか?今日の昼は家族の方が来れないから私たちが律を見てやるって約束したんです」

さわ子「ちょっと待って。みんなに少しやってほしいことがあるの」

澪「なんですか?」

さわ子「よくあるじゃない?意識不明の人に、愛する人の声が届いて目が覚めるっていう話」

唯「だから今日も声かけに行くんだよ」

さわ子「あなたたちは軽音部でしょ?声よりもいい音があるじゃない」



………………………

律「ここはどこだろう」

律「私は何をやってるんだろう」

律「なんだろうな……体が軽い。ふわふわする」

律「あ、思い出した。私飛び降りたんだっけ」

律「じゃあここはあの世かあ」

律「澪にあんなひどいことしちゃったんだから、当然の報いだよな」

律「澪は優しいから許してくれるんだろうけど、私が生きてたらまた同じことするかもしれないし……ほかの皆にも……」

律「しかしいつまでここでふわふわしれればいいんだあ? 迎えの天使とか、三途の川の渡し船とか来ないのか?」


『りつ!』

『りっちゃーん!』

『りっちゃん!』

なんだあ?この声は澪と唯とムギだよな

モワモワモワ

唯『りっちゃんおいっす!』

唯?何しに来たんだお前

唯『アイス食べたい』

モワモワオワ

本当に何しに来たんだよ……

ああこれはあれか。死ぬ間際に思い出をたどるっていう……走馬灯だっけ?
なんかそんな感じだな



あれでも走馬灯って死んだ後じゃなくて死ぬ寸前に見るんじゃなかったっけ?
まあいいか。せっかくだし楽しもう

モワモワモワ

紬『ごきげんよう』

おお、今度はムギか

紬『りっちゃん、ケーキはいかがかしら?』

おお。ムギのケーキおいしいんだよなあ。くれよ

モワモワモワ

唯『りっちゃんが食べないなら私がもらっちゃうよー』

また来たのかよ。っていうか私が食べるって言ってるだろ

紬『唯ちゃん、あとであげるね』

唯『わーい』

モワモワモワ

おいちょっと待ってよ。食べるって言ってるじゃん。
私のケーキ!



モワモワモワ

澪『律』

おお、澪か。ごめんな。澪には謝っても謝りきれないよ。

澪『ごめん』

いやなんでお前が謝ってるんだよ。悪いのは私だって

澪『お願いだから謝らせてくれ』

私が悪いって言ってるのに。強情だな澪は

澪『いくらでもお尻撫でていいから!』ペロン

うひょお!澪のお尻!

澪『ほら!』

っていうか死んでまでお尻に興奮する私って。でも幻影だからいいか。
触っちゃえ!ほれ

澪『きゃあ!』

モワモワモワ


ええー!?このタイミングで消えちゃうの?しかもきゃあって。ショックなんだけど。


5
最終更新:2010年01月24日 05:31