律「こんっちわー」
純「い、いらっしゃいませー!」
律「あれ? 鈴木さん所の純ちゃんじゃない。なんでここにいるの?」
純「わ、私ジャズ研に所属してるんで」
澪「へー」
純(あわわ…み、澪先輩だ! めちゃくちゃ見られてる!?)
澪「……」ジーッ
純(メ、メイド服の恥ずかしさが……今になって理解できた……)
律「そのメイド服って……ひょっとしてさわちゃんのお手製?」
純「あっ、はい。そうらしいです」
律「やっぱりなー。こんなの作るのさわちゃん以外いないだろうし」
澪「ごめんな、うちの顧問が」
純「い、いえいえ! むしろありがたいです!」
純「それよりお二人とも、どうぞ席に」
後輩a「ど、どどどどぞうこちらにぃ」
律「どっこらせと」
澪「けっこう本格的な作りなんだな」
純「ご注文がお決まりでしたらど、どうぞ」
律「うーん、何にしよっかな……」
後輩b「すごっ、本当に来たよ澪先輩」
後輩c「あの……おデコの人が澪先輩?」
後輩b「違う違う。黒髪の人が澪先輩」
後輩b「あのおデコの人はえっと、田……田……」
後輩b「田中先輩だったかな。ドラムの」
後輩c「そうなんだ」
律「んじゃー、サンドイッチとドリンクで」
澪「私も同じやつを」
純「か、かしこまりました!」
後輩a「ササササンドイッチ用意しないと」
後輩b「落ち着きなって」
律「メイド服かー…そういえばわたし達も着たっけ」
澪「あんまり良い思い出、ないけどな」
純「お二人は今自由時間なんですか?」
律「そっ、ライブ前に英気を養わなきゃいけないからな」
純「頑張ってくださいね! 私、見に行きますから!」
澪「ありがとう」
後輩c「ドリンク、おまたせしました…」
後輩a「ササ、サンドイッチどぞ」
律「あっ、どうもー」
後輩c「どうぞ…」
後輩c(この人は田中先輩だっけ……)
澪「おいしそうだな」
後輩c(こっちは澪先輩……純先輩の憧れの人)
純「味はどうですか?」
澪「うん、美味しいよ」
純「よかったぁ」
後輩c(純先輩、嬉しそう…)
澪「鈴木さんのメイド服姿って、なんか新鮮だな」
純「そ、そうですか? えへへ」
後輩c「……」
・・・・・
律「ごちそうさんっ、美味しかったよ」
澪「ごちそうさま」
純「満足してもらえてよかったです」
後輩a「あっ、ああああの澪先輩!」
澪「え?」
後輩a「も、もしよろしかったら、あっ、あああ握手してもらってもいいですかっ!?」
澪「あ、握手? 別にいいけど……」
律「おーおー澪ちゃんは大人気でちゅねー」
澪「ちゃ、ちゃかすな!」
後輩c(わぁ……本当に人気のある人なんだ)
純「あっ、私もいいですか?」
後輩c(純先輩まで!?)
澪「あぁ…うん、いいよ」
純「やった!」
後輩c「……」
後輩c(嬉しそう……)
澪「じゃ、頑張ってな」
律「ばいば~い」
純「ありがとうございましたー!」
後輩a「はぉお~…この手しばらく洗えないよぉ」
後輩b「大げさすぎだって」
純「はぁ幸せ。今日はもう十分幸せ」
後輩c「……」
後輩c(なんだかよく分からないけど……もどかしい…気がする)
後輩c「あ、あの…純先輩」
純「なに?」
後輩c「その……えっとぉ……」
後輩c「あのぉ……」
純「あっ、もしかして澪先輩と握手したかったの?」
後輩c「へ?」
純「もぉー、だったら言えばよかったのに」
後輩c「ち、違うんです…その……」
純「たぶん、また会えると思うからその時に頼みなよ」
後輩c「わ、私は…!」
純「あっ、いいこと思いついた」
後輩c「え?」
ギュッ
純「はい、間接握手。これで澪先輩と握手したと思って」
後輩c「!!?」
後輩c(じゅっ……純先輩に手を握ってもらえた!?)
純「どう?」
後輩c「う、嬉しいです…」
純「うん、よかったよかった」
後輩c(幸せ……はっ)
後輩c「そ、そうじゃなくて!」
純「?」
後輩c「あ、あの! わ、わわわ私はですね!」アタフタ
後輩c「え、えっと…あの……あのぉ~!!」アタフタ
後輩b「あれもあれで大変そうね」
後輩a「なになに? どうしたの?」
・・・・・
純「あっ、そろそろ時間だからクラスのとこ行ってくるね。もう少ししたら他の人来ると思うから」
後輩a「はーい。了解です」
純「そんじゃ、あとよろしくっ」タタッ
後輩c「……はぁ」
後輩c(結局ちゃんと言えなかった……)
後輩c(でも、特に言うことも思いつかなかったし……)
後輩a「今日は最高だねー。ライブめいいっぱい応援しちゃおっ」
後輩b「ライブの時間はクラスの手伝いがあるでしょ」
後輩a「あっ、そうだった!?」
後輩a「せっかく澪先輩の演奏見れると思ったのにぃー……はぁ~ぁ」
後輩c(澪先輩……)
後輩c(なんか分からないけど、あの人には負けたくない……!)メラメラ
後輩a「なに、なんで燃えてるの?」
――2年1組
梓「あれ? 純は?」
憂「ジャズ研の方にいるんじゃないかな?」
梓「そっか…」
憂「梓ちゃんは時間大丈夫?」
梓「うん。ライブまでまだあるから、クラスの仕事手伝うよ」
憂「ありがと。とりあえず今は…」
「やっほー、憂」
憂「あっ、みんな!」
梓「!!」
「約束どおり来たよー」ゾロゾロ
梓(この人たちって、この前駅にいた憂たちの同級生……?)
「憂の格好かわいいじゃん」
「へー、お茶屋さんやってるんだぁー」
憂「えへへー」
梓「……」
梓(なんか…気まずいような……)
「あっ、ひょっとして梓ちゃん?」
梓「え?」
「ギターやってるんでしょ?」
「へー、この子が梓ちゃんかぁ」
「かわいいー」
梓「あ、あの……え?」
梓「憂…これは?」
憂「梓ちゃんのこと、みんなに話したんだ」
梓「ええっ!?」
「ねーねー、梓ちゃんってギター上手いんでしょ?」
「メルアド教えてよ」
「好きなミュージシャンは?」
梓「え、えっと……」
ガヤガヤガヤガヤ
純「おまたせー…ってどうしたの?」
憂「梓ちゃんすごい人気だよ」
純「あちゃー……絡まれちゃってるのか」
「梓ちゃんってギターいつからやってるの?」
梓「こ、子供の頃から…」
「えー、すごーい!」
純「こらこら、あんまり梓をいじめないの」
「あっ、純」
「別にいじめてないよぉー」
純「はいはい、梓に質問があるなら一人ずつね」
梓(はぁ…助かった)
「ねぇ梓ちゃん、今日ライブがあるんでしょ?」
梓「う、うん」
「見に行くね」
「私コンサートとか初めて!」
梓「あ、ありがとう」
梓(案外親しみやすい人たちかも……)
・・・・・
憂「梓ちゃん、そろそろ時間じゃない?」
梓「あっ、ほんとだ。部室行ってくるね」
憂「うん、いってらっしゃーい」
純「がんばるのよー」
梓「うん!」タタタッ
純「…さーてと、わたし達はもう一仕事してから講堂に行くとしますか」
憂「……」
純「憂?」
憂「あっ…うん、そうだね。こっちも頑張ろうね」
純「どうしたの? 疲れた?」
憂「ううん、そうじゃなくて……」
憂「軽音部の人たちみんな頑張ってたから、本番成功するといいなぁって思って」
純「大丈夫だって。憂のお姉ちゃん達って本番に強いんでしょ?」
憂「うん…そうだね」
純「そうそう! だからわたし達は楽しみに待ってよ?」
憂「うんっ!」
純「よし、じゃあ働くとしますか」
憂(最後のライブ、成功しますように)
―――――――――
――――――
―――
――ジャズ研 部室
先輩B「なんかお客さんの出入り減ったね~」
先輩A「みんな講堂に行ってるんじゃない? ほら、ちょうどライブが始まったころだから」
先輩B「あ~そっか~」
先輩C「……」
先輩B「見に行きたかったら別にいいけど~」
先輩C「行くわけないだろ。行くつもりだったら最初からこの時間は空けてる」
先輩A「あっ、ひょっとして平沢さんとまだ仲直りしてないの?」
先輩C「そうじゃない。……それに今は別に仲が悪いってわけでもない」
先輩A「そうなの?」
先輩C「一応…な」
ガチャッ
顧問「あっ、いたいた」
先輩A「あっ、先生」
顧問「今三人だけ?」
先輩B「そうですよ~。他の子はクラスの手伝いやら自由時間やらで」
顧問「あぁ、なるほどねぇ」
先輩A「先生は何してるんですか?」
顧問「見回りついでに様子をね。どう? 順調?」
先輩B「今は絶賛閑人中です」
顧問「ありゃ、そうなんだ。まぁ終わりの頃になればまた一気に来ると思うよ」
先輩B「そうだといいんですけどね~」
顧問「私もこのお店に貢献しちゃおっかなー。ドリンクちょうだい」
先輩A「はーい」
先輩B「ドリンク、一番高いやつにしといて」
先輩C「ああ、分かった」
先輩A「今ならケーキとのセットもおすすめですよ」
顧問「え? じゃあケーキも頼んじゃおうかな」
先輩B「ケーキも高いやつにしといて」
先輩C「今やってる」
顧問「あんた達……まぁいいけどさ」
先輩B「すいませんね~、こっちも商売なもんで」
先輩A「はい、どうぞ。味は美味しいですから満足できると思いますよ」
顧問「どうも」
顧問「……それにしてもさ、あんた達って三人でいること多いよね」
先輩B「え?」
顧問「ほら、いつもこうやって三人並んでるじゃん」
先輩B「そうなの?」
先輩C「さぁな」
先輩A「確かにそうねえ…同じクラスになってからは特に」
顧問「そうだ、演奏してくれないの? 演奏」
先輩A「演奏?」
顧問「ジャズ喫茶なんだから、やってくれるんでしょ? 生演奏」
先輩C「今は演奏の時間じゃ……」
先輩B「いいじゃん、他にやることないんだし」
先輩C「……それもそうだな」
先輩A「今準備するんで、ちょっと待っててくださいね」
顧問「はいよ」
先輩C「それにしてもこの服、動きづらいな…」
先輩B「演奏にはとりあえず支障ないし、大丈夫でしょ」
先輩A「よし、いつでもいいわよ」
先輩B「今講堂でやってるライブ以上に盛り上がろっか~」
先輩A「お客さんは一人だけだけど、ね」
先輩B「そんじゃ、いきま~す」
顧問「……」
顧問(ほんと、この子達の演奏を聞けるのもあと何回ぐらいだろうね……)
最終更新:2011年09月28日 23:54