##18

梓「…――えっ、日曜日ダメなの?」

純「うん、部活。コンテストがあるから」

憂「そっかぁ…それじゃあ仕方ないね」

憂「日曜は私と梓ちゃんで行こっか」

純「私も試写会行きたかったなー。チケットの日付が来週だったらよかったのに」

梓「そういえば純は前も試写会に行けなかったよね」

純「あれ、そうだっけ?」

梓「そうだよ。覚えてないの?」

純「あー…言われてみればそうだったような」




同級生「純、部活行かないのー?」


純「あっ、今行く行く!」

純「じゃあ二人とも、私行ってくるね」タタッ

憂「行ってらっしゃーい」

梓「…そういえば、今が一番忙しい時期って言ってたっけ」

憂「ジャズ研もコンテストが終われば三年生が引退しちゃうらしいから。忙しいのもしょうがないよ」

梓「……うん」

憂「梓ちゃんは今日部活ある?」

梓「ううん、ないよ。今日は音楽準備室使えないって言われたから」

憂「じゃあうちに来る?」

梓「えっ、でも悪いんじゃない? 唯先輩とか勉強してると思うし」

憂「大丈夫だよ、梓ちゃんが来てくれた方がお姉ちゃんもやる気出すだろうし」

梓「それは……どうかな」

・・・・・

日曜日

――学校前

純「ふわぁ~……」

同級生「おはヨーグルト……」

純「おはようかん……」

同級生「ねむー……はぁ……」

純「んーっ……はぁ。こんな早く起きるの慣れてないから辛い」

先輩A「オ……オハ……」フラフラ

同級生「わひゃっ!?」

先輩A「オハ…ヨウ……」

純「だ、大丈夫ですか!? めちゃくちゃ体調悪そうなんですけど」

先輩A「ダ…ダイジョウブ……オキテル…オキテ……」

同級生「センパイどうしたんですか? 金縛りにでもあいました?」

先輩B「あ~大丈夫大丈夫。ウルトラ低血圧なだけだから」

先輩A「ウ~……ア~……」

同級生「わ…いつも清楚可憐なセンパイが今日はゾンビみたい」

純「そういえば前に部長の家に泊まっときも朝つらそうだったっけ…」

先輩A「ア……アゥ……」

先輩A「ウぅ~……あれ……なんかこのピアノ調子悪い……」モコモコ

純「あの……それピアノじゃなくて私のぼんぼんです」



顧問「全員いるー? そんじゃあバス乗って」


ゾロゾロ ゾロゾロ


同級生「純、どの席座る?」

純「うーん……」

同級生「後ろの方行く?」

純「まって、確か今日のラッキーナンバーは2だったから……二番目の席に」

同級生「えー、そんな適当なー。前の方じゃん」

純「いいじゃん、人生は前へ前へと進んだ者だけが勝つってね」

同級生「なにそれ……まぁいいけどさ」

純「えーっと、二番目の席は……あっ、部長!」

先輩B「ん?」

純「ラッキー! 部長、隣の席座ってもいいですか?」

先輩B「いいよ~」

純「じゃ、お邪魔しまーす」

同級生「えー…一緒の席じゃないの?」

純「あっ、ごめん。帰りにね」

同級生「……じゃあ私は一つ後ろの席に」

先輩A「スー……スー……」

同級生「センパイ、センパイ」

同級生「席、隣いいですか?」

先輩A「ウぅ~ん……いいけど……」



顧問「おーい、どこでもいいから早く座れー。もうすぐ出発するぞー」


純「そういえばセンパイ達って同じ席じゃないんですか?」

先輩B「うん?」

純「ほら、副部長は前の席にいるし」

先輩C「……」

先輩B「あ~…あれは乗り物酔い酷いから。横でゲーされると困るし」

先輩C「私が吐くわけ……ない…だろ……」

純「後ろは?」

先輩A「あ~ん……この人形かわいい~。誰が買ってきたの~……」スリスリ

同級生「ちょっ、私ですって! 人形じゃなくて!!」

純「……」

先輩B「寝ぼけがひどいから~、巻き込まれないようにこっちの席にした」

純「なるほど……」


顧問「はいみんなー、出発するよー」

・・・・・

先輩B「……」

純「センパイ。センパイって何座ですか?」

先輩B「ん~? ……みずがめ座だよ~」

純「あっ、実はテレビでやってた朝の占いだと今日の一位はみずがめ座だったんですよ!」

純「今日は良いことあるかも……やりましたね!」

先輩B「私が見た番組の占いでは、最下位だったけど」

純「えっ」

先輩B「ぶっちぎりで最下位だったよ~」

純「そ、それはですね……あれですよ、嘘ですよ!」

先輩B「気ぃ~つかわなくても、占いなんて信じてないから大丈夫だって」

先輩B「ちなみに前の席にいる子は乙女座だよ」

純「乙女座は…6位でしたね。たぶん」

先輩B「微妙だナ」

先輩C「……」

純「大丈夫ですか?」

先輩C「だ、大丈夫だ……ちょっと……話かけないでくれ……」

先輩C「外の景色を……な、眺めて……いたいんだ……」

純「ダメそうです」

先輩B「じゃ、ほっとけ」

先輩A「スー……スー……」

同級生「あの……こっちは抱きついたまま寝てるんですけど」

先輩B「適当な時間になったら起こしてあげて」

純「センパイは昨日ちゃんと寝れました?」

先輩B「ばっちり8時間睡眠」

純「へー、私なんて昨日は緊張して7時間しか眠れませんでしたよ」

先輩B「それも十分だろ~」

先輩B「それよか、純でも緊張することあるんだ」

純「ありますよ!」

先輩B「そういえば~……純は部活紹介の時、緊張して噛んだんだっけ」

純「ぎゃっ!? そんなこと忘れてたのに……」

先輩B「今となってはいい思い出じゃん」

純「よくないですよ……」

先輩B「まぁあの失敗があったからこそ、今の自分があると思えばいいんだよ」

純「えー、でもなぁ…。あの失敗なんの役に立ったんだろう」

先輩B「心配しなくても、純はちゃんと成長してるよ」

純「本当ですか!」

先輩B「胸が大きくなったよね、一年のときより。女の子っぽくなった」

純「そ、そういうことじゃなくてですね……」

先輩B「あはは…そうそう、そういえば春休みに先生と三人でこうやって遠出したっけ」

純「あぁ…先生とサックス買いに行ったときですよね」

先輩B「あのとき純、サービスエリアんとこでナンパされてたよね~」

純「あれはセンパイがナンパされてたんじゃないですか」

先輩B「あれ、そだっけ」

純「そうですよ。私なんか無視されてたし」

先輩B「けどまぁ、ああやって遠く行くのも楽しかったじゃん。ね、せんせ~」


顧問「……zZZ」


先輩B「寝ちゃってる」

純「ですね」

純「あっそうだセンパイ、お菓子食べますか?」

純「ほら見てください、いっぱい持ってきたんですよチョコとか色々、ほらこんなたくさん!」

先輩B「ありがとね~」


純「あんたも食べる?」

同級生「ちょうだいちょうだい!」

先輩A「私も…お願い……ふわぁ」

純「あっ、センパイおはようございます」

先輩B「もう大丈夫なの?」

先輩A「まだちょっとぼーっとするけど…平気よ」

純「副部長も食べますか?」

先輩C「いや……いい……」プルプル

純「そうですか」

先輩B「あっ、ジンギスカンキャラメル」

純「お母さんが旅行に行って買ってきたんです」

先輩B「こんなの食べれるの先輩だけじゃん~」

純「一応お菓子ですし」

先輩B「まぁいいや、後で誰かに食べさせよう」

先輩B「そういや」

純「はい?」

先輩B「純がジャズ研入ったのって先輩目当てだっけ~」

純「ぶふっ!?」

純「な、なに言ってるんですかもー」

先輩B「隠さなくても分かってたって~」

純「いやまぁ…確かにそういう動機もありましたけど……目当てとかじゃなくて純粋にかっこいいと思ったっていうか」

先輩B「ちなみに私はかっこよくないの?」

純「センパイはかっこいいっていうか、かわいいっていうか……なんでしょうね」

先輩B「えーなんだそりゃ。気分が悪いな~……純を部長にしてあげようと思ったのに、やっぱやめた」

純「えぇっ!?」

先輩B「な~んてね。冗談だって」

純「なんだ……」

純「えっ、あれ……部長の話、冗談ですか?」


先輩B「ん? ん~……」

先輩B「純は部長やりたい?」

純「うーん……」

先輩B「前はやりたいとか言ってたような気もするけど…」

先輩B「まぁ純は部長向きって感じじゃないけどね~」

純「そんなきっぱりと!?」

先輩B「私も部長向きじゃないけどさ、先輩に言われてとりあえずやってたって感じだし」

先輩B「大変だよ~、部長って。部活のスケジュール管理や部員の面倒みなきゃいけないし」

純「うわ……大変そう」

先輩B「純はそうだね~…部長って言うより副部長向きかナ。部長を支えたりフォローしたりするのが似合うと思うよ~」

純「そう…ですか?」

先輩B「ま、部長にしろ副部長にしろやりたかったら声かけて。候補には入れてあるから」

純「とりあえず…考えておきますね」

・・・・・

――コンクール会場

ガヤガヤ
    ガヤガヤ


後輩c「わぁ……」

後輩a「すごいね、知らない学校の人たちがいっぱいだ」

後輩b「ほら、みんな行ってるよ。わたし達も行こ」

後輩a「あっ、まってー」

後輩c「よいしょっ……」

純「大丈夫?」

後輩c「あっ…純先輩」

純「一年は荷物もちだっけ。大変だけどがんばってね」

後輩c「は、はひっ」

純「今日は私も応援がんばらないとなー、っと」

後輩c「じゅ、純先輩……」

純「うん?」

後輩c「き、緊張して足が……」

純「なんで!?」

後輩c「こういう所に来るの初めてで……」

純「まぁ…わたし達が出るわけじゃないんだし、気楽にね?」

後輩c「は、はい」

純「ほら……荷物持ってあげよっか?」

後輩c「い、いえ、純先輩のお手をわずらわせるわけには…・・・きゃっ!?」ドタッ

純「大丈夫!?」

後輩c「す、すいません……大丈夫です」

先輩C「……はぁ」

先輩A「大丈夫?」

先輩C「…お前の方こそもう平気なのか?」

先輩A「私はとっくに目が覚めたから大丈夫」

先輩B「手のかかる二人だナ~」

先輩C「普段手のかかってるやつが何を言ってるんだ」

先輩B「私は普段いい子だよね?」

先輩A「うーん……50%かな」

先輩B「えぇ~」

先輩C「ほらみろ!」

先輩A「言っておくけど、人のこといえないからね」

先輩C「そうだぞ! 人のこと……え?」

先輩A「それより、そろそろ気合を入れていかないと」

先輩B「力いれすぎてガチガチになるなよ~」

先輩C「はぁ…お前は少しぐらいガチガチになった方がちょうどいいかもな」

先輩A「……」

先輩C「どうした?」

先輩A「ううん……今日はがんばらないとね」

先輩B「いつもどおりでいいよ」

先輩A「え?」

先輩B「いつも頑張ってんじゃん」

先輩C「……ま、確かにいつも通りの実力を出せばなんの問題もないな」

先輩B「わたし達、最強だからね~」

先輩C「それぐらいの気概でいかないとな」

先輩B「珍しく気が合うじゃん」

先輩C「合わせてやってるだけだ」

先輩A「……ふふっ」


34
最終更新:2011年09月28日 23:57