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純「…――それで、やっぱり今年はやらないことになったんだ? クリスマスパーティ」

梓「うん…」

憂「そういえばもうすぐセンター試験だもんね」

梓「うん…」

純「…ていうか、毎年パーティやってたの?」

憂「そうだよ、うちに集まって」

純「なんで私とはそういうのないの…?」ウルッ

憂「じゃ、じゃあ今年はやろう! 今年は!」

梓「……」

憂「なに考えこんでるの梓ちゃん?」

純「先輩たちに何かしてあげていんでしょ?」ナデナデ

梓「撫でないでよも~」

憂「梓ちゃん健気~♪」

純「それじゃあさ、クリスマスライブプレゼントするとかどうよ! シークレットで」

憂「あ、それいいかも!」

梓「クリスマスライブ……」

純「それなら唯先輩達も喜ぶんじゃない?」

梓「・・・うん、ありかも!」

梓「よし、やろっかクリスマスライブ!」

憂「私も手伝うよ、梓ちゃん」

純「仕方ない、私も手を貸してあげるとしよう」

梓「ほんと!?」

憂「三人で頑張ろうね!」



――平沢家

純「憂はギターやるの?」

憂「うん、今回はギターに挑戦してみようかなって。家にギー太もあるし」

梓「よーし、それじゃあ練習しよっか!」

純・憂「おー!!」

憂「なんの曲やる?」

梓「やっぱりクリスマスっぽい曲をアレンジして……」

ベベン!!

梓「あれ? 純…それ10円玉?」

純「え? これは、えっと……」

梓「純って硬貨でベース弾くんだ、かっこいい! 通だね!」

純「あ、うん…すごいでしょ」

純(ピック忘れただけだけど…)

梓「よし、じゃあやるよ!」フンス

憂「あっ、今の動きお姉ちゃんっぽかった」

梓「へっ!?」

純「唯先輩のまね?」

梓「べ、別にそういうのじゃないて!」

梓(無意識に真似しちゃってたかも……)

梓「と、とりあえず練習! 練習!!」

純「はーい」

・・・30分後

梓「ふぅ、少し休憩しよっか」

純「はやっ!?」

梓「え…早かった?」

純「もうちょっと練習しないの? まだ30分ぐらいしかやってないじゃん」

梓(た、確かに休憩早かったかも…)

憂「お茶持ってきたよ~」

純「憂まで!?」

憂「あれ、休憩って言ってたから。違うの?」

梓「や、やっぱりもうちょっと練習しようってことになって」

憂「そっか…お茶とお菓子用意したんだけど、しょうがないね」

純「待って、せっかく用意したんなら食べなきゃ」

梓「結局休むの!?」

・・・・・

モグモグ

純「うむ、美味」

梓「それにしても、純ってベース上手くなったよね」

純「え? そう?」

梓「うん、前にセッションした時よりもかなり上手くなった」

純「まぁね! なんだかんだで毎日練習してますから!」

憂「純ちゃんえらーい」

梓「純って意外と努力家なんだね」

純「意外ってなによ意外って!」

梓「あっ、そろそろ練習再開するよ」

憂「はーい」

梓「純も用意して!」

純「はいはーい」

梓(先輩たちへのクリスマスライブ……がんばらなくちゃ!)

純「……って梓」

梓「なに?」

純「口、ケーキのクリームついてるよ」

梓「え……あっ!!」ゴシゴシ

純「しっかりしてよね」

梓「い、いいから再開!」

ガチャッ

唯「ただいまー」

憂「あ、おかえりお姉ちゃん」

純「おじゃましてまーす」

唯「あれ? みなさんおそろいですな!」

唯「三人集まって楽器持ってなにやってるの?」

梓「!!」

梓「あ…え、えっと、これはですね……」

梓(しまった…憂の家だから唯先輩もいるんだった)

唯「あ、分かったさては…!」

梓「……ばれちゃったら仕方ないです。実は」

唯「コイバナですな?」

梓(楽器関係ない!!)

憂「梓ちゃんにギター教えてもらってたんだー」

唯「なーんだ、そっか」

梓(憂、ナイスフォロー!)

唯「あずにゃんっていろいろ知ってるもんね」

梓「唯先輩が知らなすぎるだけです!」

唯「それじゃあ、よいしょっと」

純「……?」

梓「…なにやってるんですか」

唯「私にも教えてください先生!」

梓「勉強はいいんですか…?」

唯「えへへ~」

梓「…はぁ」

唯「おっ?」ジーッ

純「な、なんですか?」

唯「純ちゃんのそれ、かわいいね!」

純「あっ、このベースですか?」

純「形がかわいくて気に入って、がんばってお金ためて中古で…」

ぎゅっ

純「わっ!?」

唯「純ちゃんの髪の毛かわいい~!」モコモコ

純「ひいいいぃぃ!!」

憂「いいなー、純ちゃん」

梓「純も唯先輩の洗礼を…」

ぎゅ~っ

純「ゆ、唯先輩いい加減はなれてください…」

唯「え~、もうちょっとだけ」

梓「唯先輩、もうそこらへんに…」

唯「……スヤスヤ」

梓・純(寝てる!?)

憂「お姉ちゃんおきてー」

唯「…はっ……つい寝ちゃった」

純「梓…あんたいつも大変だったんだね」

梓「まぁね…」

憂「ほら、お姉ちゃんは勉強がんばらないと」

唯「そうでした!」

梓「しっかりしてくださいよ唯先輩。大学落ちたらどうするんですか」

唯「あぅ~…それは言わないで~」

梓「なら勉強してください!」

憂「お姉ちゃんファイト!」

唯「はーい…」

唯「それではみなさん!」

梓「なんですか?」

唯「私のことは気にせずコイバナの続きをどうぞ」

梓「だから違いますって!」

梓「はぁ…唯先輩はもう」

純「相変わらずだね」

梓「あの調子で受験大丈夫なのかな…」

純「唯先輩だけ落ちたりして」

憂「お、お姉ちゃんだけ……」プルプル

純「あっ…じょ、冗談だって冗談! 唯先輩なら大丈夫だから! たぶん…」

梓「そ、そうだよ憂、唯先輩なら受かるよ! たぶん…」

憂「たぶん…!?」ガーン

純「とりあえず私達は練習しないと! そうでしょ梓?」

梓「うん! なんとかバレずにすんだし、クリスマスライブの練習に集中…」

唯「うい~、台所にポテチなかったっけ?」トテトテ

梓「ぎゃ-!?」


・・・翌日

梓「今日は軽音部の部室で練習しようと思う」

純「大丈夫なの? 唯先輩たち来たらバレるじゃん」

梓「みんな今日は家で勉強するらしいから、大丈夫」

憂「軽音部の部室で練習するんだ、なんかワクワクしちゃうなー」

梓「じゃあ掃除が終わったら部室に」

純「りょーかい……あっ、私ちょっと遅れるかも」

梓「え?」

純「ジャズ研の用事があるから。すぐ終わると思うけど」

梓「そっか、分かった。じゃあ私と憂で先に練習してるね」

憂「うん」


――ジャズ研 部室

純「おまたせー」

同級生「遅いよ純」

純「掃除遅れちゃって。でもいいじゃん、ちょうど時間通りなんだし」

同級生「じゃあ純も来たことだし始めよっか、会議」

純「部長と副部長を決める会議かぁ…」

「誰かやりたい人いる?」

しーん・・・・

同級生「純やりたくないの?」

純「うーん…いざ考えてみると大変そうだし」

「話し合いで決まらない場合は、確かセンパイ……」

純「センパイが決めるの?」

「が作ったクジで決めろだって」

純「クジ!?」

同級生「わ…部長バージョンと副部長バージョンの両方作ってある」

純「部長の方に二本、副部長の方に三本……」

純「これ引いて出てきた名前の人が部長と副部長をやるってわけ?」

「そうみたい」

純「じゃあそれでいいんじゃない? 話し合いじゃ決まらないみたいだし」

「それじゃ…部長のクジから引いてみる。えいっ」

同級生「だ、誰?」

「……あっ、私だ」

純「じゃあ部長決定ってことで」

パチパチパチ

「い…いいのかな、こんな感じで」

純「副部長のクジは私が引くね」

純「誰が出るかなー」ガサゴソ

純「そりゃっ!」

「あれ…私の名前だ」

純「あっ、ほんとだ。じゃあ副部長決定」

パチパチパチ

「ど、どうもどうも」

同級生「なんか…あっさりと決まっちゃったねー」

純「うーん…」

同級生「自分が当たると思ってちょっと期待してた?」

純「べ、別に?」

純「でも一応誰が候補になってたのか確認してみようかなー」ガサゴソ

純「あっ、副部長クジの方に私の名前あった!」

同級生「ほんとだ。私は私は?」

純「えーっと……」ガサゴソ

純「副部長には入ってないみたい」

同級生「じゃあ部長の方か。あー外れちゃって残念だなー」

純「……」ガサゴソ

純「…あのさ、残念なことに部長の方に入ってないよ」

同級生「はぁえっ!?」

同級生「そんな、本当にないの!? どこかにあるはずだよ!」ガサゴソ

純「どっちの候補にも入ってなかったってことだって。現実は見な」

同級生「うわ…なんかちょっとショック……」

「こ、今度から部長をやらせてもらいます。がんばりますのでよろしくお願いします」
「副部長ですっ、頑張りますのでよろしくお願いします!」

パチパチパチパチ

「えーっと、じゃあ部長と副部長は決まったことだし、これで会議は終わりになります」

純(やる気があったわけじゃないけど、外れたのはちょっと悔しいかなー…)

同級生「純、この後用事ある?」

純「え?」

同級生「駅前においしいシュークリーム屋さんができたんだって。一緒に行かない?」

純「ごめん、この後軽音部に行かなきゃいけないの」

同級生「軽音部? なんで??」

純「梓が軽音部の先輩達にシークレットライブをやりたいっていうから、その手伝い」

純「ほら、軽音部って二年生が梓一人でしょ? 一年生はいないし人手が足りないの」

同級生「ふーん……?」

純「というわけだから、今日はごめん。また今度ね」

同級生「わかったー。…あっそうだそうだ、ねえねえ関係ないんだけどクリスマスは空いてる?」

同級生「暇なみんなで集まってさ、どっか行かない?」

純「ごめん、クリスマス無理」

同級生「クリスマスも!? なんで!?」

同級生「まさか彼氏でもできたの!?」

「えっ、純ちゃんって彼氏できたの?」
「うそっ!」
「いいなー」

ヒソヒソ

純「ち、違うって! 全然違うから!!」

同級生「えー、じゃあなに?」

純「そのシークレットライブをクリスマスの日にやろうってことなの!」

同級生「へー……なんか安心した。彼氏とデートじゃないんだね」

純「だから違うっての…」

同級生「でも~、なんでクリスマスに純が軽音部の手伝いを…」

純「人手が足りないって言ったでしょ。助っ人ベーシストの私が必要なの」

同級生「なんか腑に落ちないけど…まぁいいや。わかった」

同級生「じゃあー、クリスマスはしょうがないってことで」

純「また来年のクリスマスにでも遊びに行こ」

同級生「そうだね…って、来年は私たちが受験じゃん」

純「あっ、そっか」


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最終更新:2011年09月29日 00:07