… … …

恵「サインコサインタンジェント」

和「水兵リーベ僕の船」

桜高生徒「はっ!? あれは桜高生徒会の曽我部会長とその右腕と称される真鍋さんではっ!」

恵「相対性理論がホニャララ」

和「ニュートリノがニョホホホン」

「さ、さすがレベルの高い会話をしているわっ!」

「もはや私たちにはついていけないっ!」

恵「ミノフスキー粒子散布下では有視界戦闘を余儀なくされ、そのためにMSは人型である必要性があり」

和「A.T.フィールドが無効化されると、生命体は個々の形を維持できなくなりL.C.L.に還元され」

「見て、あれが将来この日本を背負って立つ二人の姿よ……」

 … … …

恵「サザエさんこそ至高wwwwwwwww」

和「コボちゃんこそ究極wwwwwwwww」

   ブーッ! ブーッ!

和「あ、すみませんちょっと携帯です」

恵「構わないわよ」

和「もしもし? 唯? ええ、今終わったところよ。
  え? あの唯が行きたがってた喫茶店ね。わかったわ、いいわよ」

和「あ、ちょっと待ってね」

和「すみません、曽我部会長。ちょっとこの後友達と約束があって」

恵「ええ、いいわよ。楽しんでいらっしゃい」

和「本当にすみません」

恵「じゃあ、また明日ね真鍋さん」

和「はい、また明日」

和「もしもし? ごめんごめん。え? 澪も一緒に来るって?」

恵「!?」

和「ええ、いいわよ。じゃあまた後でね」ピッ

恵「あの~……、真鍋さん?」

和「え? まだいらしたんですか?」

恵「うん、なんだか急に喉が渇いた気がしてね」

和「あっちに自販機ありますよ」

恵「うん……そうね」

和「それじゃあ、お疲れさまでした」

恵「ちょっと待って! 真鍋さんっ!」

和「あの……私急いでるんで手短にお願いします」

恵「ああ、ごめんなさいね。でもね、喉が渇いただけじゃなくって
  ちょっと甘いものも食べたいかなぁ~って……」

和「コンビニだったらこの先に」

恵(くっ……! 生徒会の仕事は察しがいいのに
  なんでこういうときに限ってこんなに鈍いのかしらっ!)

和「それじゃあ」

恵「真鍋さん! 見損なったわ!」

和「!?」

恵「私が悩んでいる時、苦しんでいる時には常に傍らに貴女がいて
  いつも的確なアドバイスをしてくれた」

恵「そして貴女のメガネがズレそうな時、そんな時には正常なポジションになるよう
  常に私は心の中で貴方に訴えかけていたのよっ!」

恵「そうやって、常に二人は支えあってきたじゃない」

和「……」

恵「それは何故なの?」

和「……そうでした」

恵「そう……思い出したようね」

和「はい、なぜなら二人は……」

恵「 生 徒 会 だからっ!」シャキーン!!

和「お疲れさまでした~」スタスタ

恵「あ!? えっ!? うそっ!?」

「ママぁ~」

「しっ! 見ちゃいけません!」

恵「……」

恵「真鍋さん、そこまでして私を秋山さんと会わせないようにするっとこは
  やっぱり二人は付き合ってるってことなんじゃ……」

恵「それとも……」

恵「……はっ!?」

恵「もしかして、真鍋さんは私のことが、好き……?」

恵「だから他の女に会わせないようにしたり
  嫌がらせにも似た愛情表現を駆使して私に気づかせようとしてる……」

恵「好きな人には嫌がらせしたくなるものだし……」

恵「そう考えると、今までの私への辛辣な言葉や態度が説明できる」

恵「でもごめんなさい真鍋さん、その気持には応えることはできなくってよ!」

恵「なぜなら私はこの身も心も秋山さん色に染まっているから……」

恵「真鍋さん、残念だけどその恋は永遠に実ることはないわ……」

恵「ああ! なんて悲劇的なの!? シェイクスピアもビックリ!」

「ママぁ~」

「早く行きますよ!」


 そして数日後…

恵「ち、ちょっと! 真鍋さん!?」

和「ど、どうしたんですか!? そんなに慌てて」

恵「貴女、先日軽音部に講堂使用届け持って行ったわよね!?」

和「はい、確かに渡しましたし、提出期限も伝えましたけど」

恵「さっき実行委員の人が来て、軽音部の申請書が未提出だから軽音部不参加で時間を調整します
  って言いに来たんだけど!!」

和「え……そんな……」

恵「いったいどうなってるのよ!」

和「そういえば……軽音部の部長が風邪を引いたりしてそのゴタゴタで
  申請書も忘れられたのかもしれません」

恵「しっかりしろよ部長! ってかそんな大事なこと忘れんなよ軽音部っ!!」

和「仕方ないですね」

恵「真鍋さんのお友達も沢山軽音部にいるんでしょ!?」

恵「澪、和 ってお互いを呼び合う秋山さんもいるっていうのに!」

恵「なのになんでそんなに落ち着いていられるのっ!?」

和「でも、締め切りは締め切りですし」

恵「締め切りがなんぼのもんじゃい!!
  こうなったら書類を偽造して実行委員にねじ込んでやる!!」

和「やめて下さい曽我部会長! 
  権力を行使する者は常に冷静で公平でなければいけないと日頃から仰ってるじゃないですか」

和「それに規則を破ったとなると今まで築いてきたこの生徒会の権威はどうなるんですか!?」

和「会長自身の信念や矜持はいったいどうなるんですか!」

恵「真鍋さん……」

和「私は、そんな権力を盾に振るう曽我部会長を見たくありません……」

恵「だってライブ見たいんですものっ!」

和「子供じゃないんですから」

恵「私だけじゃないのよ! 軽音部の演奏を心待ちにしてる人が沢山いるの!」

恵「具体的に言うと27人!(現・秋山澪ファンクラブ会員総数)」

和「またえらく具体的な数字ですね」

恵「それに、なにより今年演奏できない秋山さん達が可哀想よ!」

和「まぁ、今年は残念なことになってしまいましたけど、まだ一年がありますから」

恵「そうよ……貴女たちはいいわよ……、だって来年もあるんですもの」

恵「私は今年が最後の学園祭なのよ……」

和「会長……」

恵「しかもそんな最後の学祭で参加できない部活動がある」

恵「ましてや、私が指揮する学祭で、例え軽音部側に不備があったからとはいえそんな悲劇耐えられないわ」

恵「桜高の生徒たるもの学校行事には参加する権利があるはずじゃない!」

和「なるほど一理あります。しかしその権利を放棄したのも軽音部自身の問題ですし」

恵「わからず屋っ! バーカ! メガネッ!」

和「私だって本当は唯のため、軽音部のためになんとかしてやりたいです」

和「でも、公明正大であるべき生徒会がそうやって公私混同するのは一番醜いことじゃないですか?」

恵「私、知ってるのよ」

和「何をです?」

恵「昨年真鍋さんが軽音部のために部活申請書を偽造したこと」

和「……」

恵「確か、部活申請届けは新年度になってから1ヶ月以内が提出期限だったわよねぇ~」

恵「それを過ぎてからは例え4人以上であっても届出がない限りは部活動として認められない」

恵「確かそのはずよね?」

和「はい、その後は翌年の部活申請更新時まで同好会としての活動を余儀なくされます」

恵「うんうん。だけど軽音部は貴女が申請書を偽造したおかげで学園祭に出ることができた」

恵「あれあれ? 公私混同がいけないって偉そうに仰ってたのはどこのどなたでしたっけ?」

和「……」

恵「おやおやぁ~? 黙んまりでちゅか~?」

和「会長は何か勘違いをされてますね」

恵「は?」

和「私が作成した軽音部の申請書は部活申請じゃなくて同好会申請書ですよ」

恵「え? どゆこと?」

和「同好会は同じ志を持つ者が2人以上集まればいつでも申請が可能です」

恵「そ、それくらい知ってるわよ。でも、秋山さん達は軽音部として学祭の舞台にあがってたんじゃ……」

和「まぁ、一昨年まで軽音部は存在してましたし、まさか一度廃部になっていたなんて知ってる人もいないでしょう
  この際名称はどうでもいいんじゃないですか?」

和「それに、同好会でも校内活動の自由はある程度保障されています、すなわち学祭の参加になんら制限はありません
  部室にしたって他の部活動から意見や不満の声がなければどの空き教室を使ってもいいとされています」

和「ちなみに軽音部が使っている音楽準備室は元々軽音部の部室だったこともあり
  特に他の生徒から意見がなかったので問題はありませんでした」

和「顧問については同好会にはいてもいなくても構いません
  しかし、翌年部活動へ昇格したときには顧問が必要になるため
  私はあえて、顧問を探すように提案しました」

和「そして、今年度新たに軽音部は部活申請届けを提出して
  晴れて桜高軽音部としての活動が認められたわけです」

和「では、部活動と同好会にどのような差があるかと言いますと」

恵「同好会には部費が下りない……」

和「はい、実際昨年度の予算では軽音部への部費は1銭たりとも承認されていません」

恵「だったらあの子たちは全額自腹で消耗品を買ったり、合宿へ行ってたってこと?」

和「部費なんかよりも、一人の金持ちがいればなんとかなるんでしょうね」

恵「へー……」

和「それと、同好会は桜高としての公式な校外活動は認められていません」

和「インターハイやその他大会の公式戦、文科省が認定するコンクールなどは
  部活動しか参加できないことになっています」

和「まぁ、これも軽音部としては何も問題はありませんでした」

恵「……」

和「他に何かありますか?」

恵「いいえ……」

和「もしかして本気で私がそのようなヘマをしでかすとでも?」

恵「……」

和「これでおわかりでしょう。私は不正など一切していません」

恵「それでも……」

恵「それでも私は、軽音部に舞台で演奏してもらいたい」

和「曽我部会長……」

恵「ねぇ、真鍋さん。なんとかならない?」

和「ちょうど、去年も同じように軽音部に頼まれた記憶があります」

恵「真鍋さんの悪知恵ならなんとかなるでしょ?」

和「会長は常に人の上に立ってきたから他人にお願いごとをする態度ってのがよくわからないんですね」

恵「真鍋様のその悪巧みを上手く考えつく御頭でどうぞ私めに助言をいただきとうございますだぁ~」

和「私の方が出来た人間なので私の方が折れます。ええ、折れますとも」

恵「さすが真鍋さん! 私変なプライドが邪魔してどうしても素直にお願いできないの」

恵「見つめ合うと素直にお願いできなぁい」

和「とにかく、会長がここでわーわー喚いててもどうにもならないですし」

和「ここは軽音部自身に実行委員会へ直訴させるのがよろしいかと」

恵「なるほど……情に訴えるわけね」

和「会長が仰られた『桜高の生徒たるもの学校行事には参加する権利がある』
  これにはさすがの私も心に響きました」

和「この辺りを実行委員の人たちに訴えかければ、どうにかなるかもしれませんよ」

恵「自分でさすがの私って言っちゃう所なんか、さすが真鍋さんよね
  明らかに天狗になってる。このメガネ天狗!」

和「私、通信空手習ってますよ」

恵「やだ……怖い……ごめんなさい」

和「とにかく、私は今から軽音部へいって彼女たちを呼んできます」

恵「み、みんなここに来るってことよね!」

恵(もちろんその中にはあの秋山さんも!)

和「はい、会長は実行委員の人をここへ呼んできて下さい」

恵「ち、ちょっと待って!」

和「はい?」

恵「もっと可愛い下着つけてきてもいい?」

和「じゃあ呼んできます!」スタコラサッサ

恵「ああっ!?」

 … … …

律「すみません! すみません!」

和「あ、会長に謝るんじゃなくて、そっちの実行委員の人に謝った方が」

恵「締め切りは締め切りだから」しれっ

和「……」

和「は?」

律「そこをなんとか!」

恵「権力を行使する者は常に冷静で公平でなければいけないと私はいつも自分に言い聞かせてるの」

恵「例えどんな理由があろうと、期限までの提出を怠ったあなた達の責任なのよ」

恵「そうお思いではありませんか? 実行委員のみなさん」

実行「当然です、スケジュールを組まなければいけない身にもなってください」

律「そんな……」

和(え? なにこの展開。なんで会長はしれっとした顔で正論吐いてるの)

澪「確かに……提出を怠った私たちの責任だよな……」

紬「私たちのワガママで他の人に迷惑をかけるわけにもいかないもんね……」

唯「残念だけど、今年は諦めるしかないね……」

律「ごめん……みんな……私のせいで……」

澪「いいや、律だけの責任じゃないよ」

紬「そうよ、りっちゃん」

唯「ごめんね、あずにゃん」

梓「仕方ないですよ、また来年があります」

唯「うん……」

和(え? このままじゃ本当に軽音部不参加ってことに……)



恵「ちょっと、真鍋さん」

和「会長、なんであんなこと言っちゃったんですか!?」

恵「どうしよう……」

和「いや、どうしようったって……」

恵「なんだかこんなに人がいるから突然いいカッコしたくなっちゃって……」

和「……」

恵「気づけばこんなことに」

和「とにかく、前言は撤回して軽音部側についていただかないと」

恵「あれだけ大見得を切ったのに!?」

和「このままじゃライブ中止ですよ」

恵「それは嫌よ!」

和「だったら」

恵「……あ、いいこと思いついたわ!」

和「なんです?」

恵「真鍋さん、貴女私に頭を下げて軽音部がライブできるよう卑しく懇願なさい」

和「は?」

恵「貴女ほどの才女が頭を下げるとなると、きっと実行委員会の人も心が揺れ動くはずよ」

和「なんでそんなこと……」

恵「このままじゃ、軽音部のライブが中止になっちゃうのよ!」

恵「それを考えたらそれくらいは安いもんでしょ」

和「嫌です」

恵「真鍋さん、貴女って薄情な人ね! 
  軽音部のため、ましてや親友のために頭を下げるのがそんなに我慢できないの?」

和「このややこしい状況を生み出した張本人に言われたくありませんね」


3
最終更新:2011年10月01日 07:59