朝、少女が目を覚ます
「・・・」
チュンチュン
小鳥が囀る
サヤサヤ
夏が過ぎ、少しだけ冷たさを帯びた風が部屋に流れる
縮こまった体を伸ばす少女
「・・・~」ノビノビ
一日が
―――――始まる
「・・・?」
「???」
コンコン
「紬お嬢様、時間です」
紬「・・・」
「?」
コンコン
紬「・・・」
「お嬢様?」
テクテク
ガチャ
紬「・・・」
「おはようございます。紬お嬢様」
紬「・・・」コクリ
「・・・?」
紬「・・・」
「朝食の用意ができましたので」
紬「・・・」
「・・・どうかなさいましたか?」
9月1日
『おはようございます。
今日から新学期ですね、
放課後に演奏するのが楽しみです!』
「・・・足りないかな」
ピッピッピ
『おはようございます、むぎ先輩
今日から新学期ですよ!
部室で待ってます!』
「待ってますって、なんか違うような・・・」
テクテク
「おはよう梓~、メールしながら歩くと危ないよー」
梓「うん~」
ピッピッピ
『おはようございます。むぎ先輩
今日から新学期ですね、
放課後にみなさんと演奏しましょう!』
梓「あれ、最初とあまり変わらないな・・・」
「恋人同士かよ・・・」
梓「・・・ま、いいか。あ、おはよう純」
ピッ
ドンッ
梓「にゃっ」
ポロッ
「おっと」
カラカラカラ
純「だから危ないっていったじゃん」
梓「すいません」
「こっちこそ余所見してたから。ごめん」
梓「いえ・・・」
ヒョイ
「あーずにゃーん!」
梓「それでは」ペコリ
タッタッタ
「・・・俺の携帯・・・あった」
ヒョイ
――――
梓「おはようございます唯先輩、和先輩、憂」
純「おはようございます」
唯「おっはよ~!」
和「おはよ」
憂「おはよ~」
唯「みてたよあずにゃん!」
梓「なにがですか?」
和「ぶつかった所よ」
唯「ひと夏のアバンチュールだね!」
憂「もう秋だよお姉ちゃん」
梓「さ、行きますよ」
テクテク
純「そっけないな」
唯「甘く危険なアバンチュールだよ!」
梓「・・・」
和「アバンチュールって言いたいだけじゃないの?」
憂「あれ、梓ちゃんストラップは?」
梓「むぎ先輩と買いに行くって約束したから、あれは外したんだよ」
純「・・・もはやなにも言うまい」
和「まだ病にかかっていたのね」
唯「むぎちゃんとアバンチュールだね!」
「傍から見ていたら恥ずかしいヤツだな唯は」
「・・・大して変わらないけどな律も」
律「なんだと!」プンスカ
「怒る所じゃないんだけど・・・」
梓「おはようございます。澪先輩」
澪「おはよう」
律「あれ、私は?」
梓「・・・律先輩」
律「付け足すな!」
和「朝から元気ね・・・校舎に入るわよ」
テクテク
純「・・・マイペースです」
律「今日から新学期かー」
唯「この夏は楽しかったよね」
憂「うん」
純「特別でしたね」
澪「むぎのおかげだ」
梓「・・・」
和「・・・耽っていると遅刻するわよ」
唯「もぉ~和ちゃんってば~」
澪「そうだな、ちゃんと前をみなくちゃな」
律「よぉーし!行くぞー」
純「はい!」
憂「なんだか新鮮な気分」ウキウキ
梓「・・・」
唯「どうしたの、あずにゃん?」
梓「いえ・・・、なんでもないです」
唯「行くよ~」
梓「・・・なんだろう、新鮮な気分だけど・・・ざわつく気分も混じってる・・・?」
ザワザワ
唯「あれ、むぎちゃんは?」
律「来ないな・・・もうすぐさわちゃん来るのに」
澪「珍しいな」
和「・・・確かに珍しいわね」
ガチャ
さわ子「はい、席につきなさーい」
唯「来ちゃったよ」
和「・・・」
さわ子「HRを始めるわよ」
律「さわ、先生ー、むぎから連絡来ていますかー?」
さわ子「風邪ひいたみたいだから病院へ行くと連絡がありました」
ザワザワ
澪「むぎが風邪・・・?」
「律じゃあるまいし」クスクス
律「そうですね、って誰が病原菌だコラァ!」
「お、ノリツッコミ覚えたのか律!」
「あははは」
ワハハハ
さわ子「はい、みなさんしずかにしてね」
唯「・・・」
澪「・・・」
律「・・・」
和「・・・」
さわ子「それじゃこれでHRはおしまい」
ザワザワ
さわ子「真鍋さん、ちょっと」
和「? はい」ガタッ
スタスタスタ
唯「?」
律「まさか、むぎが風邪をひくなんてな」
澪「新学期早々な・・・なんだろ、この違和感」
律「明日になれば回復するだろ」
澪「そうだな。けど、梓がっかりするかも」
唯「そこでわたしの出番ですよ」
律「キーボード弾けるのかよ」
唯「そこはむぎちゃんのポジションですから、無理です」
澪「じゃどうするんだ?」
唯「抱きしめます!」
律「さて、体育館に移動するか」
澪「そうだな」
唯「・・・」シーン
和「・・・」
唯「さわちゃん、なんだって~?」
和「いえ・・・、わたしたちも移動するわよ」
唯「・・・」
和「・・・」
唯「・・・和ちゃん」
和「・・・・・・放課後・・・ね」
唯「・・・」
―――――昼
梓「・・・」ボケー
純「どうしたの梓は?」
憂「よく分からないよ」
梓「・・・」
純「食べないの?」
憂「どうしたの?」
梓「・・・うん」
pipipipipipi
梓「きたっ!」
バッ
ピッ
純「この間、時間にして0.3秒である」
梓「あれ・・・電話?」
憂「?」
『てつ・・・くん・・・?』
梓「???」
『もしもし・・・轍くん?』
梓「誰ですか?」
『あ、すいません。番号かけ間違えました』
梓「いえ・・・」
『失礼しました』
プツッ
梓「・・・あれ?」
純「どうした?」
梓「待ちうけが・・・」
憂「待ち受け画面?」
梓「変わってる・・・」
純「どうせ紬先輩とのツーショットだったんでしょ?」
梓「うん」
純「おいっ!」ビシッ
憂「梓ちゃん?」
梓「・・・あれ?」
pipipipipipipipi
梓「芹沢暦・・・って誰?」
純「知らないよ」
プツッ
梓「も、もしもし」
『あれ・・・、轍くんの携帯電話ですよね?』
梓「え・・・?」
『もー、貸しなさいよ暦!』
暦『あっ』
『ちょっと!その電話にぃにぃのなんだけど!?』
梓「に、にぃにぃ?」
純「セミの季節は終わったんだよ・・・」ガックリ
憂「そうだね・・・」
『テツにぃにぃの電話だって言ってるでしょ!?』
梓「え・・・ちょっとまってください、一旦切ります!」
『ちょっと!』
プツッ
梓「・・・」
ピッピッピ
梓「あい・・・ま・・・そうま・・・てつ・・・?」
憂「どうしたの?」
梓「このケータイ私のじゃ・・・ない・・・」
純「えっ!?」
憂「梓ちゃんの番号にかけてみるね」
ピッピッピ
trrrrrrr
梓「あ、朝のあの人!」
純「あーあの時か」
梓「・・・入れ替わっていたなんて」
純「お間抜けめ」
梓「ぐっ・・・」
憂「出ないよ~」
trrrrr
梓「ハァ・・・むぎ先輩にメール送ったきりなんだけど」
純「気にする所そこなんだ」
pipipipipi
梓「はい・・・」
『いきなり切らないでよ!』
梓「すいません、この電話は相馬轍さんのみたいです」
『・・・そうでしょ、だからなんであなたがにぃにぃの電話もってんのよ』
梓「色々あって・・・」チラッ
憂「・・・」フルフル
純「出ないのね」
『Who are you』
『私は真鶴・天継・テイラー。・・・真鶴でいいわ』
梓「・・・はぁ」
真鶴『で、にぃにぃは?』
梓「ここにはいません」
真鶴『どういうこと?』
―――――かくかくしかじか
真鶴『分かりました。それでは、にぃにぃに返したら電話するように伝えてください』
梓「うん」
真鶴『失礼します』
プツッ
純「なんだって?」
梓「12歳のハーフなんだって」
憂「そうなんだ」
純「いや、重要な所はそこじゃない」
最終更新:2011年10月02日 23:29