―――――放課後

梓「どうしたんですか唯先輩・・・?」

唯「・・・うん」

律「今日の唯はずっとこんな感じだったな」

澪「上の空っていうか・・・らしくないな・・・」

和「・・・」

純「あの・・・」

さわ子「・・・なに?」

憂「どうしてわたしたちまで部室に・・・?」

さわ子「ちょっとね・・・」

梓「・・・」

コンコン

唯「!」

さわ子「わたしが行くから、みん な座ってて」

律「・・・」

澪「・・・」

和「・・・」

純「・・・」

憂「・・・」

梓「・・・」

ガチャ

さわ子「・・・入って」

紬「・・・」コクリ

梓「!」

律「むぎ!」

澪「風邪ひいたって聞いてたんだけど・・・?」

唯「むぎ・・・ちゃん・・・」

紬「・・・」フリフリ

テッテッテ

梓「む、むぎ先輩・・・」

紬「・・・」ニコニコ

梓「・・・?」

和「・・・」

憂「・・・?」

純「・・・?」

律「おい・・・むぎ?」

紬「・・・」

澪「どう・・・したんだ・・・?」

紬「・・・」ニコ

唯「むぎちゃん・・・」

紬「・・・」

梓「むぎ・・・せん・・・ぱい・・・?」

さわ子「・・・むぎちゃんは」

紬「・・・」スッ

さわ子「分かったわ」

テクテク

純「ホワイトボード?」

憂「?」

和「・・・」

紬「・・・」カキカキ

唯「『声が』」

律「・・・『出なく』」

澪「・・・・・・『なったの』」

梓「え・・・」

純「うそ・・・」

憂「そ、そんな・・・」

和「・・・」

紬「・・・」コクリ

律「な、なんでだよ!」

澪「どうして!」

唯「・・・」

梓「・・・」

ガチャ

さわ子「入ってください、斉藤さん」

斉藤「失礼します」

紬「・・・」

純「あ・・・」

斉藤「本日の朝、起きた時からこの症状が始まっていたそうです」

律「朝・・・」

斉藤「病院へ行って検査を行いましたが、原因究明に至っておりません」

澪「え・・・」

梓「す、すぐ治るんですよね・・・?」

斉藤「しばらくはこのままではないかと診断されました」

梓「・・・」

斉藤「一過性のものかもしれません」

唯「そ、それじゃあ・・・」

斉藤「持続性のものかもしれません」

憂「そんな・・・」

斉藤「精密検査に入るところでしたが、紬お嬢様が学校へ行くと仰いました」

純「・・・」

斉藤「明日も病院で検査をしますので、放課後の登校になります」

和「・・・」

斉藤「それでは、後ほど迎えに参ります。失礼します、紬お嬢様」

紬「・・・」コクリ

紬「・・・」

唯「・・・」

律「・・・」

澪「・・・」

純「・・・」

憂「・・・」

和「むぎ・・・紅茶淹れてくれる?」

さわ子「そうね。むぎちゃんもいる事だし、ティータイムにしましょ」

紬「・・・」コクリ

テッテッテ

梓「なんで・・・むぎ・・・せんぱいが・・・」

pipipi

梓「なん・・・で・・・!」

pipipipi

梓「なんで・・・っ!」

唯「あずにゃん・・・」

pipipipipipipi

梓「・・・なんでッ!!」

律「梓ッ!」

梓「!」ビクッ

律「ちゃんと前を向けって・・・」

澪「・・・・・・電話・・・鳴ってるよ」

pipipipipipi

梓「ぁ・・・」

ピッ

梓「・・・はい」

『桜が丘でいいんだよね?』

梓「・・・はい」

『・・・・・・忙しいなら待つけど?』

梓「今・・・行きます・・・」

『分かった』

プツッ

梓「ちょっと・・・外へ・・・行ってきます」

ガチャ バタン

和「危なっかしいわね」

唯「わたし行ってくるよ」

律「頼む」

ガチャ バタン

紬「・・・?」

純「朝、ケータイを取り違えてしまって・・・」

憂「間違えた人が今来ているので、返してもらいに行きました・・・」

さわ子「そういう事ね」

紬「・・・」コクコク

澪(梓は・・・まだ・・・)

ナニアノヒトー

「女子高だったのか・・・。気まずい」

アノバイクカッコイイ

「相棒を褒めてくれるなんて・・・」

ポンポン

・・・

梓「・・・」テクテク

唯「あずにゃん」

梓「・・・」テクテク

唯「・・・」

梓「今朝、普段通りだったんですよ」

唯「うん・・・」

梓「普段通りにごはん食べて」

唯「・・・うん」

梓「普段通りに仕度して」

唯「うん」

梓「夏が始まる前と同じように家から出て」

唯「うん」

梓「でも、少しずつなにかがズレ始めて・・・」

唯「・・・」

梓「完全におかしくなりました」

唯「おかしくなってないよ」

梓「おかしいですよ!」

唯「ううん」

梓「なんであんなに優しい人がッ!」

唯「・・・」

梓「なんであんなに暖かい人がッ!」

唯「・・・」

梓「なんであんなに素敵な人がッ!」

唯「・・・」

梓「なんでむぎ先輩なんですかッ!」

唯「むぎちゃんはむぎちゃんだよ」

梓「ッ!」

唯「わたしも和ちゃんの雰囲気がおかしかったから不安だったんだけどね」

梓「・・・」

唯「さっきのむぎちゃんの笑顔をみたら安心しちゃった」

梓「どうして・・・笑顔で・・・いられるんですか・・・」

唯「多分むぎちゃんだから・・・」

梓「分からないです・・・」

唯「うん・・・。わたしも分からないや」

梓「なんですか・・・それは・・・」

「『最高の場所』」

梓「え・・・?」

「そこを知っているから・・・じゃないかな」

唯「お兄さんは誰ですか?」

「相馬轍・・・。はい、返す」

梓「はい・・・」

唯「・・・」

轍「迷惑かけたね。それじゃ」

ピッピッポ

trrrrr

梓「・・・『最高の場所』・・・ってなんですか・・・?」

轍「え・・・、あ、おやっさん?金が尽きそうだからさ・・・」

スタスタ

唯「行こう、あずにゃん」

梓「・・・」

唯「あずにゃん?」

梓「・・・」

轍「うん、サンキュー。それじゃ」

プツッ

スチャッ

ドルルルルン

轍「これで今週は持つな・・・助かった・・・」

梓「あの・・・」

轍「ん?」

梓「さっき言った『最高の場所』ってなんですか・・・?」

轍「ひとそれぞれ、もっている大事な場所」

梓「どうやって見つけるんですか・・・?」

轍「探して・・・だよ。それじゃあね」

ドルルルン

ドルルルルル・・・

唯「探さないとみつからないもんね・・・」

梓「・・・」

唯「行こう、むぎちゃんが待ってるよ」

梓「・・・はい」


――――

律「みおが教科書忘れてさ~」

澪「忘れるくらい誰にでもあるだろっ」

和「よりによって遠い教室でね」

澪「う・・・」

紬「・・・」ニコニコ

純「という事は到着してから気づいたんですか?」

律「そういう事だ」

憂「クスクス」

澪「た、偶々だ」

さわ子「遅刻しなかったでしょうね」

澪「ぴぃ~ぷぅ~」

さわ子「遅刻したのね」

純「み、澪先輩が・・・白を切った・・・」

和「レアね」

紬「・・・」コクコク

梓「・・・」

唯「普段通りだね」

梓「どうして・・・」

唯「むぎちゃんが笑ってくれているからだよ」

梓「・・・」

唯「あずにゃん」

梓「・・・はい」

唯「わたしたちは多分、斉藤さんよりもむぎちゃんの声が聴こえると思う」

梓「・・・どうして、そう言いきれるんですか」

唯「音楽があるから」

梓「!」

唯「だからゆっくり耳を傾けようよ」

梓「・・・」

唯「むぎちゃんが支えてくれるなら、わたしたちも支えられるように頑張ろう!
  なんてね、えへへ~」

梓「・・・」

澪「そういや、唯が朝言っていたアバンチュールってケータイの人?」

さわ子「話題変えたわね」

紬「・・・?」

和「男の人とぶつかって、携帯電話を間違えて拾っちゃったのよ」

紬「・・・」コクコク

憂「それでお姉ちゃんがアバンチュールと」

紬「・・・」

律「いや、心配しなくても大丈夫だろ。取りに行っただけだし」

紬「・・・」

澪「唯も一緒に行ったから心配する事ないよ」

紬「・・・」コクリ

憂「お昼に電話がかかってきたんですけど、女性の方でしたよ」

純「二人のうち一人は12歳でハーフらしいです」

律「なんだそれは」

和「よく分からない情報ね」

さわ子「そんなに悪い人でもないって事?」

憂「見た感じそうですね」

律「じゃあもう1人の方が彼女さんか」

紬「・・・」コクコク

純「なーんだ。アバンチュールは無しか」

ガチャ

紬「!」

唯「誰がアバンチュールするの!?」

律「しないっつの」

タッタッタ

紬「・・・」

梓「むぎ・・・先輩?」

紬「・・・」

梓「?」

さわ子「梓ちゃんがその人とアバンチュールするんじゃないか心配だったんだって」

和「・・・」

梓「し、しませんよ!」

唯「ちぇー」

梓「自分でしてくださいよ」

紬「・・・」スッ

梓「私のケータイがどうしました?」

紬「・・・」チョンチョン

唯「・・・ストラップ?」

梓「あ・・・今日買いにいく予定でしたね」

紬「・・・」ションボリ

梓「気にしないでください。いいですよ」

紬「・・・」

ギュ

梓「?」

紬「・・・」スラスラ

梓「あ・・・し・・・た・・・」

唯「あずにゃんの掌に文字を書いてるんだね・・・?」

紬「・・・」スラスラ

梓「か・・・い・・・に・・・っ」

紬「・・・」ニコニコ

梓「・・・っ」

律「あー、すとらっぷかえたくなったなー」

澪「また棒読み」

純「わたしもかえよっかなー」

憂「私もそうしようかな」

紬「・・・」

グイグイ

梓「・・・っ」

紬「・・・」ポンポン

梓「・・・・・・はい」チョコン

紬「・・・」

コポコポ

梓「ありがとうございます」

紬「・・・」ニコニコ

唯「むぎちゃんや、私もおねがいしますだ」

紬「・・・」コクリ

テッテッテ

コポコポ

唯「ありがと~」

紬「・・・」ニコニコ


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最終更新:2011年10月02日 23:31