―――――昼
『むぎが勧めてくれたCD聴いたよ
いい旋律だった。もっとゆっくりした時間にじっくりと聞いてみるよ
やっぱりクラシックはいいな
コンサートで聴いてみたい。今度時間が出来たら行かないか?
律と唯は寝そうだけどな
今日もしずかで、ちょっと違う一日だ』
ピッ
澪「・・・」
律「・・・」モグモグ
唯「・・・」モグモグ
和「・・・」モグモグ
澪「・・・こら」
律「なんですか?」
唯「・・・」モグモグ
和「・・・」モグモグ
澪「りんごウサギがいなくなっているんだけど?」
律「弁当箱の中が窮屈だから逃げ出したのさ」キラン
唯「おぉ、メルヘンチック」
和「おいしかったわ」
澪「和が食べたのか!?」
和「ごめんね。私の弁当箱の中に迷い込んでいたの」
唯「おぉ」
澪「くぅ・・・」
律「おびき出したの私だけどなっ!」
唯(わたしも言ってみたい!)フンス!
澪「本望だったのかもしれないから・・・いいよ」ウルウル
和「・・・。代わりと言っちゃなんだけど、いちごをどうぞ」
唯「苺だね・・・。ストロベリー・・・いちご・・・エーアトベーレ・・・」ブツブツ
澪「しょうがないな」キラキラ
律「・・・それ奪い取ったらどうなるんだろ」
澪「天と地をひっくりかえす」
律「やめとく」
唯「うーん」
和「・・・今日も違う一日ね」
澪「読んだのか!?」
和「?」
澪「?」
律「どうした?」
唯「・・・うーん」
澪「・・・むぎに送ったメールと同じ事言ったから」
和「読んでいないわよ」
澪「だよな。ビックリした・・・」
唯「いちご・・・」
いちご「・・・なに?」
唯「おぉ」
和「果物よ、あなたじゃないわ」
いちご「・・・そう。一つ聞いていい?」
律「?」
唯「澪ちゃんに用事?」
いちご「うん。・・・朝話していた事」
澪「!」
唯「?」
いちご「・・・どうして、あんな言い方したの?」
澪「・・・」
和「?」
いちご「・・・普通じゃないって言ってるようなもんだよ」
澪「うん・・・」
律「・・・」
いちご「・・・」
澪「嘘を言って誤魔化したり、はぐらかしたりしてはいけない事。だから」
いちご「・・・それも、普通じゃないけどね」
澪「・・・」
いちご「・・・じゃ」
スタスタ
律「・・・そろそろ、さわちゃんと話した方がいいかもな」
和「そうね。食べ終わったら行きましょうか」
澪「・・・うん」
唯「・・・」
コンコン
ガチャ
澪「失礼します」
律「さわちゃ」
さわ子「・・・」ギロッ
律「やまなかせんせーにようがあってきましたー」
さわ子「ここじゃなんですから、廊下にでましょうか」
澪「は、はい」
ガチャ
さわ子「どうしたのよ?」
律「むぎの事なんだけどさー」
さわ子「むぎちゃん?」
和「・・・」
唯「・・・」
澪「なにか、聞いていますか?」
ザワザワ ワイワイ
さわ子「・・・中庭に移動しましょ」
スタスタ
梓「・・・あ」
さわ子「・・・明日も休むって、斉藤さんから連絡があったわ」
澪「え・・・」
律「マジか・・・」
和「明日も・・・」
唯「明日金曜日だよ」
澪「土日はさんで会うのは月曜日・・・か」
さわ子「・・・えぇ、そうなるわね」
律「・・・」
和「・・・検査の結果とか、聞いていますか?」
さわ子「・・・具体的な内容は聞いていないわ」
和「そうですよね・・・」
さわ子「・・・ごめんね」
和「え・・・?」
律「どうしてさわちゃんが謝るんだよ?」
さわ子「・・・」
唯「・・・」
澪「・・・月曜の朝まで」
和「そうね・・・」
さわ子「なにかあったの?」
律「クラスの何人かがむぎの事で不安になってるんだよ」
さわ子「そう・・・」
唯「わたしたちの口からは言えないから・・・」
さわ子「そうよねぇ」
澪「一緒に歩いている所みられていて・・・」
和「校舎を歩いている所もね」
さわ子「こればっかりはしょうがないんだけどねぇ」
唯「わたしたちが不安な顔していたら、むぎちゃんが帰ってきたとき寂しい顔するよ」
澪「・・・そうだな。私たちはいつもの場所でいつものように待っていなきゃ」
律「・・・」
梓「はい」
和「いたのね」
律「うぉっ!」
澪「ビックリした・・・」
唯「あっずにゃん!」ダキッ
ササッ
さわ子「あのねぇ・・・」
唯「おぉ、さわちゃんあったかいよ!」
さわ子「残暑きびしいのよ!離れなさいよ!」グググ
唯「よい・・・ではなのぁ・・・いくぁ・・・」ムググ
梓「・・・」
キーンコーンカーンコーン
澪「戻るか」
和「梓はどうしてここに?」
梓「さわ子先生にむぎ先輩の事を聞こうと思いまして・・・」
律「・・・」
―――――放課後
澪「どうかな」
律「紙に書いた鍵盤か・・・」
唯「わたしも描いたんだよ!」
梓「どっちで練習しましょうか」
律「じゃあ多数決だな」
梓「澪先輩の鍵盤がいいと思う人」
唯「はいっ」ズバッ
梓「決定ですね」
律「愛着心くらいもってやれよ」
澪「コピーしてくる?」
唯「そうだね」
澪「待ってて」
タッタッタ
ガチャ
律「・・・」
梓「むぎ先輩と打ち合わせしましたから、改訂版でいきましょう」
唯「そうだね」
律「よっしゃ。紅茶淹れてきてやるぜー」
梓「・・・」
唯「・・・」
律「・・・」
梓唯「「 え? 」」
律「なんだよ今の間は!」
梓唯「「 いや・・・ 」」
律「狐につままれた顔しやがって」
梓唯「「 紅茶・・・? 」」
律「なんだよその同調は・・・」
梓唯「「 まさか、そんな・・・ 」」
律「見てろよ!」
タッタッタ
梓「これは夢ですか?」
唯「そっか・・・ビックリするはずだよ」
梓「あの味を出せるわけが無いじゃないですか」
唯「そうだよね~」アハハ
律「聞こえてるぞー」
梓「黒鍵は変更なしですから」
唯「ドを『T』レを『K』ミを『M』ファを『H』ソを『N』ラを『R』シを『S』で、一つ高いドを『Y』」
梓「ですね」
唯「そんで、名前を呼ぶときはコードを使用します」
梓「はい」
唯「私『ゆい』は『メジャーのC#』!」
梓「どうしてですか?」
唯「早い者勝ちだよ」フフン
梓「それじゃ私の名は『メジャーのA』ですね」
唯「あずにゃんのAだね」
梓「そうです」
澪「そうか・・・それなら私は」
律「みおは『ミ』と『ラ#のお』でいいじゃん」
澪「そうだな・・・特別コードだ」
律「私はむぎに決めてもらうとして、だ」
唯「本当に淹れたんだね」
梓「はやいですね・・・」
律「実を言うと準備してあったんだよ」
梓「・・・」
律「よし、みお、飲んでみてくれないか」
澪「練しゅ」フガッ
律「黙って飲め!」
澪「・・・内緒なのか」
唯「?」
澪「・・・」ズズー
律「どうだ」
澪「うん、おいしい」
梓「・・・」
律「なんだよ梓っ感情を表せよ!」
唯「むぎちゃんが隠れて淹れたんだね!見つけてくるよ」
タッタッタ
律「・・・そこまでか」
澪「飲んでみて」
梓「・・・はい」ズズー
律「どうだ!?」
梓「・・・どうしたんですか」
律「感想を言え!」
澪「驚いている事が感想だろ」
律「・・・まぁ、あの味は出せないけどな」
梓「・・・でも、おいしいですよ」
律「そっか」
唯「むぎちゃんいなかったよ・・・」ションボリ
唯「澪ちゃん、その描いた鍵盤のコピーまだある?」
澪「4枚しかないな」
唯「そっか、それならもう少しコピーしてくるよ」
タッタッタ
澪「あ、カードが必要なの知っているのかな」
律「多分知らないな」
澪「だよな」
タッタッタ
梓「・・・」
律「・・・」ズズー
梓「・・・」
律「・・・やっぱ味気ないな」
梓「おいしいですよ」
律「さんきゅ」
梓「練習・・・していたんですか・・・?」
律「練習というか、夏に入る前にむぎに教えてもらってな」
梓「・・・」
律「家で淹れてみたらまっずくて、意固地になったわけだ!」
梓「それなのに、これくらいの味を・・・?」
律「むぎの事があって真剣になってみた」
梓「・・・」
律「すげえよ、こんなに細かくて難しいなんて思ってもいなかった」
梓「それなのに・・・すごいです・・・」
律「むぎが戻ってきたら私はもう二度と淹れないだろうなぁ」ズズー
梓「どうして・・・」
律「むぎの味と比べるから」
梓「・・・」
律「比べて惨めになるのが嫌って訳じゃなくて、むぎとの時間を思い出すから」
梓「え・・・」
律「あ、ごめん。こんな話しなくていいな」
梓「・・・」
律「唯のコードボイスには驚かされたけど、澪にも驚いているんだよなー」
梓「そうですね、お二人の行動は想いがあります」
律「そうなんだよ。・・・私は」
梓「・・・」
律「・・・」
梓「どうしたんですか?」
律「ん?」
梓「・・・律先輩じゃないみたいです」
律「あぁ・・・、確かに」
梓「・・・」
律「多分・・・この状況を傍観しているだけなのかなってさ」
梓「傍観・・・」
律「ん~・・・、みんなから一歩退いて眺めているだけのような気がしてさ」
梓「・・・」
律「むぎを中心に動いているのに、変化しているのに、な」
梓「・・・さっきの、むぎ先輩といる時間を思い出すってどういう意味ですか?」
律「・・・」
梓「嫌って事ですか?」
律「うん、嫌だな」
梓「そん・・・な・・・!」
律「私1人――」
梓「撤回してくださいッ!」
律「え・・・?」
梓「どうしてそんな事が言えるんですかッ!」
律「・・・」
梓「こんな味が出せるまで頑張ったんじゃないんですかッ!?」
律「でも、この紅茶には想いが込められてない」
梓「ッ!」
律「私は、私の紅茶をむぎの紅茶と比べて、思い出すのが嫌なんだよ」
梓「もういいですッ!!」
ダダダダッ
ガチャ バタンッ
律「・・・はぁ」
ガチャ
唯「りっちゃん!」
澪「まって、唯」
唯「でもっ」
澪「はやく追いかけろよ」
律「・・・変わらないだろ」
澪「変えようとしなければ当然だろ」
律「・・・ちぇー」
タッタッタ
澪「おまえも不器用だな」
律「うるさいよ」
ガチャ
唯「もぅ!」
澪「まったく・・・、言葉足りずだ・・・」
律「純、梓は?」
純「おぉ、名前で呼んでくれた」
律「梓は?」
純「・・・捕まえるなら校門だと思います」
律「さんきゅ」
タッタッタ
純「・・・」
律「梓ッ!」
梓「・・・」
スタスタ
律「待てって」ガシッ
梓「離してください」
律「話を聞けって」
梓「・・・聞きません」
律「・・・」
梓「離してください」
律「ちょっと来い」グイッ
梓「嫌です!」バッ
律「・・・」
梓「私にとって部室で過ごした時間は大切でッ」
律「・・・」
梓「むぎ先輩と一緒にいる時間はとても大切なんです!」
律「・・・うん」
梓「その時間を・・・ッ!」
律「だから来いって!」グイッ
梓「嫌ですッ」
律「周りの目があるんだよ!」
梓「ッ!?」
「痴話げんか、か」
「律、男らしく謝りなよ」
律「うっさい、早く帰れ!」
「バイバーイ」
「明日ね~」
梓「・・・」
律「むぎとの時間を嫌だって思う人がこの世にいるのかよ」
梓「・・・?」
最終更新:2011年10月02日 23:39