律「その時間の中で貰ったものを、返せない自分がいた事を思い出すって意味だ」

梓「・・・」

律「来い」グイッ

律「私は、時間が解決してくれると心のどこかで思っていたんだ」

梓「・・・」

律「夏前と同じように、朝、むぎが登校してきて・・・っ」

梓「・・・っ」

律「ふ・・・だん・・・どおり・・・に・・・会話をするもの・・・だと・・・思っていたんだよっ」

梓「・・・っ」

律「おはよー・・・って・・・言ってくれると・・・思っていたんだよ・・・」

梓「・・・っ」グスッ

律「なんで梓が泣くんだよ」

梓「泣きそうな声だからですよっ」グスッ

律「・・・」

梓「・・・っ」グスッ

律「唯や澪みたいに受け入れることもできなくて」

梓「・・・」

律「梓のように抗うこともできなくて」

梓「・・・」

律「私1人、別の場所にいるみたいで、そんな自分がいた事を思い出すのが嫌なんだよ」

梓「・・・それなら、むぎ先輩といる時間を思い出すことは」

律「むぎから貰ったものを返したい、それだけのことができないんだ」

梓「・・・」

律「だから嫌なんだよ」

梓「・・・」

律「過ごした時間が大きければ大きいほどな」

梓「・・・」

律「・・・多分これから先もなにもできない」

梓「むぎ先輩がそうして欲しいと言ったんですか?」

律「・・・」

梓「1人でかっこつけないでください」

律「ぐっ・・・」

梓「・・・見損なう所でしたよ」

律「なんまいきだなっ」ガシッ

グリグリ

梓「ちょっ、痛いですから!」

律「当たり前だ、痛くしてんだからなーっ」

グリグリ

梓「離してくださいっ!」ジタバタ

律「拗ねていたのかもしれない」

梓「?」

律「むぎのそばで大きくなっていく梓を、進化していく澪を、強くなっていく唯を」

梓「・・・」

律「私は・・・ってな」

梓「そうだったんですか」

律「・・・なんでこんな事言ってんだよ私は」ブツブツ

梓「・・・」

律「・・・」

梓「・・・澪先輩にも、純にも言われたんですけど」

律「ん?」

梓「私・・・成長していたんですか・・・?」

律「・・・」

梓「・・・」

律「・・・さぁなー」

梓「な、なんですかそれは」

律「・・・自覚が無いのはいいことだけど、その逆も危ういってな」

梓「・・・」

律「・・・」

梓「・・・」

律「・・・最近の私らってらしくないよなぁ」

梓「・・・はい」

律「・・・」

梓「・・・」

ガチャ

ゴスッ

澪「あいたっ」

唯「いたっ」

律「なにしてんだよ」

澪「え、えぇとだな・・・」

唯「聞き耳を立てていたんだよ」

律「素直に白状するなよ。・・・別にいいけどさ」

梓「・・・あれ?」

純「・・・」

律「なんで志村さんがいるんだよ」

純「サ行に挑戦ですか!」

律「そうだぜ!『せ』、と『そ』が残っているからお楽しみに!」

純「予告ですか・・・」

澪「・・・」

唯「どうしよっか」

梓「律先輩、純に披露してはどうですか」

律「えぇ-」

純「なにをお披露目してくれるんですか?」

澪「いいじゃないか」

律「しゃーないな。もう二度とない限定版だからなー味わって飲め!」

梓「むぎ先輩も飲みたいと言うハズです」

澪「・・・どうするんだ?」

律「・・・」

純「・・・」

律「・・・知らない」

スタスタ

澪「やれやれ」

梓「純はどうしてここに?」

純「さっきすれ違ったの気づかなかった?」

梓「・・・うん」

純「気になったからだよ」

梓「・・・」

唯「一期一会だよ」

澪「・・・」

梓「・・・そうですね」

純「なるほどー」

唯「いちご・・・いちえ・・・」

梓「どうして二回言うんですか」


澪「じゃ、明日な」

律「じゃーな!」

唯「じゃあね、純ちゃん、あずにゃん!」

純「はい、では明日」

梓「明日です」

唯「和ちゃん今日来なかったね~」

律「昨日、今日の私に頑張ってもらうって言ってたからな」

唯「違うよ。昨日、明日の私に頑張ってもらう。だよ」

律「いやいや、今日の和が軸になっているんだから、今日の和が頑張っている事になる、だからそれでいいんだよ」

唯「でも、昨日言った事は昨日の事だから、正確に言うなら明日の私が正しいんだよ」

澪「・・・」

律「いいか唯。時間は常に流れているんだから、和自身もその流れに乗せなきゃいけないんだぞ」

唯「・・・」

律「昨日の和は今日頑張る事に決めたんだから、今日頑張っている和で正しいだろ?」

唯「そうだね」

澪「・・・」

律「昨日今日明日の時間を見比べるとき、中心となるのは今日だから、そう応用したほうが分かりやすい」

唯「でもさ、昨日言った事を変化させるのはおかしいよ」

律「・・・」

唯「昨日、和ちゃんが言った事はこの先変わらないんだよ?」

律「そうだな」

澪「・・・」

唯「今日に合わせることで、言った事を変えちゃったら意志まで変えちゃいそうだよ」

澪「9月2日に言った和でいいんじゃないか?」

律唯「「 そういう問題じゃないんだ(よ) 」」

澪「・・・そうか、悪かった」

律「今日、昨日をみて明日の和・・・ん?」

唯「昨日の和ちゃんは明日の和ちゃんでは・・・え?」

澪「・・・」

律「・・・」

唯「・・・」

澪「どう結論付けるんだ?」

律唯「「 和(ちゃん)は頑張っている! 」」



梓「・・・」

純「結論が出たみたいだし、行こうか」

梓「・・・うん」



梓「どうして今日も送るの?」

純「うーん・・・」

梓「なんで悩むかな」

純「和先輩が危なっかしいって」

梓「・・・」

純「・・・」

梓「・・・だからなの?」

純「憂が言ってた・・・」

梓「?」

純「呆れた顔をしてないって」

梓「なにそれ」

純「違うな。呆れた顔しながらも笑ってないって」

梓「・・・」

純「笑ってないでしょ」

梓「・・・笑え・・・ないでしょ」

純「・・・」

梓「・・・笑える訳が・・・ない・・・よ」

純「・・・そうだね」

梓「・・・」

純「・・・」

梓「・・・」

純「梓が律先輩を怒った理由は知らないけど」

梓「・・・」

純「梓自身が少し変な方向にいっている・・・といいますか」

梓「・・・うん」

純「・・・」

梓「律先輩がそういう事言わないの知っているのに。知っていたはずなのに」

純「・・・」

梓「話を聞けなかった・・・」

純「真面目すぎるなー。梓は」

梓「・・・」

純「さっき、律先輩が言っていた事で思い出したことがあるんだけどさ」

梓「?」

純「時間は川の流れと同じ。・・・らしい」

梓「・・・」

純「河川敷行きますか」

梓「・・・うん」

唯「じゃあね~」フリフリ

律「気をつけろよ~」

澪「・・・明日な」

唯「大丈夫だよ~」

テッテッテ

律「・・・」

澪「帰るか・・・」

律「おっ、かっこいいバイクだ!」

澪「・・・」

律「流行の型ではないな」フムフム

澪「・・・」

律「しかし・・・持ち主の心が宿っているようだ」フフン

澪「・・・」

律「・・・」

澪「・・・」

律「今のコメントどうだった?」

澪「バイクに詳しかったっけ?」

律「なんとなく言っただけ」

澪「そうか・・・行くぞ」

スタスタ

律「こ、コメントどうだった!?」



―――――夜

日常が非日常になることなんて

そうそうある事じゃないと思っていたのに

一つのピースが欠けたら

その代わりを探せばいいと思っていたのに


代わりはいない

欠けさせたくない

非日常なんてすぐそこにあるんだ


『・・・最近の私らってらしくないよなぁ』

そうだな

だけど

これは

リセットしてはいけない



みんなに

ついて来いって

言えるくらいの

―――強さが欲しい




9月4日

カンカンカンカンカン

ダカダダーンッ

ダダダダンッ

律「」スヤスヤ

This song is for my friend in summer time

ドンドンッ

「ねーちゃん、うるせー!」

律「」スヤスヤ

Every day,Every day,Every day Pray the music

ジャカジャカ

ドンドンッ

「起きろー!」

律「・・・ぅん?」

ダンダンダンダンッ

「音止めろー!」

律「・・・ふぁ」

「起きろってばー!」

ジャカジャカ

ドンドン

律「あいつ、ドラムの才能あるんじゃないのか・・・。曲のドラム音と同調してやんの」

ダンダンダダダン

「うるせー!」

律「はいはい、すいませんねー・・・」

ピッッピッピ

律「・・・なんでこんなに音大きくしたんだ・・・?」

ジャカジャカ

Oh, my joy for world, ever more...

  With the music!
律「音楽とともに・・・か」

ダダダンッ

律「久しぶりに眠れた感があるな・・・ん~」ノビノビ

律「出だしのドラムがいいんだよな~」

澪「どうせ寝てて聞いてないんだろ」

律「そうですとも!だから聞きなおしましたさ!」

澪「行くぞ」

律「はいよ~」


バタンッ

「ん?」

澪「り、律!」

「どうした澪?勢いよく扉開けて・・・」

「元気いっぱいの秋山さんって新鮮だね・・・」

「どうしたんですか?」

「大きな声で挨拶するとか?」

澪「ち、ちがう!」アセアセ



和「注目の的ね」

唯「どうしたんだろ」



律「どうしたんだー?」

「澪が元気よく扉を開けたからさ、なにかの意思表示かと思って」

律「え・・・?」

澪「白々しいぞ!」ゴスッ

律「あいたぁ!」

「なんだ、律の仕業か」

「はい解散解散」

「なーんだ~」

さわ子「今日もお休み・・・と」

ザワザワ

「新学期始まって一度も来ないね」

「風邪ってこんなに長引くものかな」

律「・・・」

澪「・・・」

いちご「・・・」

信代「・・・」


唯「姫子ちゃん」

姫子「?」

唯「月曜日に来るからね」

姫子「・・・」

和「・・・」

唯「・・・」

姫子「・・・うん」



―――――昼

トントントントン

唯「『みち』だよ!」

和「正解よ」

唯「どうですかりっちゃん!」

律「二文字で威張るなよ」フフン

澪「じゃ私が弾くから」

トントントトントントントントトントントン

律「・・・」

和「律、やるわね」

唯「頑張ったんだね」

澪「梓もビックリだ」

律「答えてないんですけど・・・」

和「長かったから分からないわよね」

唯「そうだよね~」

澪「私が悪かった」

律「ぐっ・・・」

「鍵盤・・・?」

唯「そだよ~」

「・・・」

「私も気になってたんだけど・・・それなんの練習なの?」

律「音を拾えるようになるための練習だ」

「・・・ふーん」

「そうなんだ・・・」

澪「・・・」

「和も?」

和「えぇ」

「・・・」

姫子「春子も風子もちゃんと聞いたらいいよ。気になるんなら」

唯「うむ。どんと来たまえ」

春子「風邪じゃないでしょ?」

律「うん」

春子「あんたたちの雰囲気が夏前と違うから気になっていただけ。そんじゃ」

スタスタ

風子「昨日秋山さんと中島さんの会話聞こえてたから」

澪「・・・そうだよな。いちごに聞かれたくらいだからね」

風子「いつ学校に来るの?」

和「月曜日ね」

風子「そうなんだ・・・。邪魔してごめんね」

スタスタ

姫子「聞かれたらちゃんと答えるんだ」

律「おぅよ!」

澪「でも、核心ついた質問はしなかったな」

和「そうね」

唯「うん」

姫子「練習の邪魔してごめんね。オヤスミ」

律「彼女はその言葉を吐き捨てるとイヤホンを耳につけ、机に伏せて眠るのであった」

唯「彼女の聴いている曲は、かの有名なきらきら星であった」

姫子「ちがう」

澪「再生してないの?」

姫子「・・・眠るのにボリューム上げないでしょ?」

和「背骨が曲がるわよ」

律「お母さんか」


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最終更新:2011年10月02日 23:44