和「学生の本分を全うしようとしている幼なじみの邪魔はできないわ・・・」

唯「ちゃんとした勉強じゃないんだよ!」

和「なによそれ」

唯「知ってるくせに~」

和「はいはい、分かったから離して」

唯「練習道具取ってくるからまってて」

タッタッタ

和「私がいる事には触れないのね」

プップー

和「『え、あ』・・・かしら」

唯「・・・」フルフル

和「・・・難しいわね」

憂「今のは、『い、あ』だね」

唯「正解だよ」

和「黒鍵ですらこれなのよね・・・」

唯「和ちゃん、一緒に頑張ろう」

和「弱音を吐いたわけじゃないわよ」

憂「休憩しよっか、和ちゃん、食べていくよね?」

和「遠慮しとく、夕食すませてからまた来るわ」スッ

ガシッ

唯「そんな~!」

和「また来るって言ったわよ。離して」

唯「そんなぁ~」

ズルズル

和「・・・唯、しっかり食べてる?」

唯「え・・・うん」

和「軽いわよ」

唯「太らないんだよ」

和「・・・」

唯「?」

憂「食べていく?」

和「・・・そうね」

憂「お姉ちゃん相馬さんと話してたの?」

唯「そだよ~。その後にりっちゃんと澪ちゃんと座談会したよ」

和「誰?」

唯「あずにゃんとぶつかった人だよ」

和「?」

憂「ケータイの人だよ」

和「あぁ」

唯「えぇー、分かんなかった?」

和「火曜日・・・の話でしょ?ピンとこなかったわね」

唯「明日は日曜日・・・」

憂「一週間経つんだね」

和「なんだかじっくり歩んだ一週間だったわね」

唯「そうだね・・・」

憂「・・・」

和「ごちそうさま、美味しかったわ」

唯「ごちそうさま~」

憂「お粗末さまです」

和「・・・」

唯「歯を磨いてくるよ」

テッテッテ

憂「鍵盤ハーモニカを吹くからね」

和「よく持っていたわね」

憂「押入れにあったの」

和「・・・そう」

憂「・・・」

和「・・・いつもちゃんと食べてるの?」

憂「夕食はあまり食べてなくて・・・」

和「色々考えちゃうのかしらね」

憂「・・・うん。でも、今日は和ちゃんがいてくれてよかった」

和「・・・」

憂「・・・」

和「むぎが戻ってきたら・・・またいつものように戻れるわ」

憂「・・・うん」

和「なにかあったの?」

憂「梓ちゃんが・・・ね」

和「・・・そう」

憂「・・・」

和「ひょっとしたら・・・」

憂「?」

和「・・・なんでもないわ」

唯「さぁ、練習するよ~!」

憂「食器片付けてくるね」

和「洗うの手伝うわ」

唯「その横で弾いてるよ!」


ジャカジャカ

Love my days, we're in the laze.

純「梓に教えてみようかな、この曲」


・・・・・・


『否定された気分になる隙が空いていたんじゃないの?』

梓「・・・知った風な・・・・・・」


・・・・・・


澪「ひょっとしたら、梓の・・・いや、私達の旅は終わっていないのかな」

律「・・・だな」

澪「・・・」

律「?」

澪「どうして私の部屋にいるのかなって・・・」

律「ヒマをツブシにキマシタネ」



9月6日

――――――夕方

唯「やっほ~」

律「よっ」

梓「あれ、澪先輩と一緒じゃないんですか?」

律「いつも一緒って訳じゃないぞ」

唯「用事があるんだって」

梓「そうですか・・・どうしたんですか?呼び出すなんて珍しいですね」

律「のんびりしようかと思ってな!」

唯「たい焼き買ってきたよ!」

梓「・・・」

pipipipipipi

澪「・・・さわ子先生?」

ピッ

澪「はい」

『澪ちゃん、今家に居る?』

澪「は、はい。いますけど」

『時間あるかしら?』

澪「・・・はい」

『出てきてくれる?今澪ちゃんの家の前にいるから』

澪「はい・・・?」


――――

唯「三日月だね」

律「ほっそいな!」

梓「・・・頼りないです」

唯「儚いんだよ」

律「なんだよ頼りないって」

梓「満ちては欠けるんですよ・・・心細くなるじゃないですか」

唯「・・・」

律「・・・」

梓「繰り返し・・・永遠のループです」

唯「終わりのないループだと思うの?」

梓「・・・はい」

律「満月の時よりは光も弱い感じではあるな」

梓「だから・・・頼りないんです」

唯「十五夜毎欠けてもまた満ちる力を持っているんだよ」

律「・・・いいこと言うじゃないか」

梓「・・・」


――――

さわ子「悪いわね、わざわざ」

澪「用事が済んだ所でしたから・・・平気ですけど、どうしたんですか?」

さわ子「車に乗って」

澪「え・・・」

さわ子「警戒しないでよ~」

澪「・・・」

さわ子「話があるのよ」

澪「?」

さわ子「むぎちゃんの事でね」

澪「むぎの・・・?」

さわ子「ここじゃなんだから、移動するわよ」

澪「・・・」

さわ子「どこかいい場所ある?」


――――

梓「先輩方は・・・どうなんですか・・・?」

唯「・・・」

梓「いつもと変わらないようにしてますけど」

律「・・・」

梓「・・・むぎ先輩がいないんですよ?」

唯「そうだね」

梓「どうして・・・一昨日の雨の日に、はしゃいでいられるんですか・・・」

律「・・・はぁ」

梓「なんですか」

律「梓はむぎしか見てないのな」

梓「なんですかそれは」

唯「私も見てって事だよ」

律「ちげえよ・・・ってか、真面目な話してるんだからボケるなよ」

唯「すいやせん」

梓「・・・」

律「そこしかみてないから、隙が生じてるんじゃないのか」

梓「っ!」

唯「あの時、雨に濡れながらはしゃいだ時、
  むぎちゃんがいたらどんなだったかなって、そう想っていたよ」

律「・・・多分、澪もな」

梓「・・・」


――――

さわ子「どうして河川敷なのよ・・・?」

澪「なんとなく・・・」

さわ子「まぁいいわ」

澪「・・・」

さわ子「・・・」

澪「・・・話って・・・なんですか・・・?」

さわ子「悪い話じゃないから身構えなくていいわよ」

澪「そうですか・・・」

さわ子「あなたたちにとってはね」

澪「?」

さわ子「斉藤さん経由で聞いた話で、むぎちゃんは口止めしているみたいなんだけど」

澪「・・・」

さわ子「むぎちゃん・・・今、ドイツにいるのよ」

澪「えっ!?」


――――

律「じゃあな~」

唯「ちゃんとあったかくして寝るんだよ」

梓「明日・・・です・・・」


――――

澪「どうして・・・梓じゃないんですか・・・」

さわ子「今の梓ちゃんは、むぎちゃんの意志を汲み取れないでしょ」

澪「どうして・・・律じゃないんですか・・・」

さわ子「りっちゃんにはみんなを違う位置から引っ張って欲しいのよ・・・」

澪「どうして・・・唯じゃないんですか・・・」

さわ子「りっちゃんと同様ね」

澪「・・・」

さわ子「・・・夏の旅であなたが一番成長したように見えたからよ」

澪「スタート地点が違えば・・・そう見えるのも当然・・・です・・・」

さわ子「澪ちゃんも自分を過小評価しすぎよ・・・」

澪「月曜日に・・・むぎの顔をどう見たら・・・」

さわ子「決まってるじゃない、いつものように・・・よ」

澪「無理です・・・嬉しい反面・・・辛いですよ・・・」

さわ子「・・・」

澪「どうして・・・私なんですか・・・?」

さわ子「あなたはベースでしょ・・・みんなを支えてあげて」

澪「・・・」

さわ子「むぎちゃんと旅をしてきたでしょ・・・その自分を誇りに思っていいと思うわ」

澪「・・・」


―――――夜

会いたい

会って話をしたい

言葉が無くても

ただ、一緒に同じ景色をみるだけでいい


でも、最近の私は

周りに迷惑をかけているだけ

むぎ先輩に迷惑をかけるのだけは嫌だ

そんな自分を許せない


『十五夜毎欠けてもまた満ちる力を持っているんだよ』

頼りない三日月月明かり

終わりの無い運命

頼りなく萎みそうになる想いを

十五夜毎欠けてもまた満ちる力を



―――会うのが怖い



9月7日

夏の旅で

むぎ先輩と一緒にたくさんの人と出会って

別れて

大切な事をたくさん教えてもらって

大切な時間が存在する事を学んだ

夏前と同じように接しればいいんだよね

うん

―――大丈夫


和「あれ・・・来てないの?」

澪「・・・」

唯「来てないね~」

律「まだ来てないな」

和「山中先生は来るって言っていたわよね」

唯「うん」

律「・・・」

澪「・・・」

和「とりあえず、席に行きましょう」

唯「はいよ!」

テッテッテ

律「・・・どうしたんだよ」

澪「・・・」

律「・・・」

『時期が来たらみんなに教えてあげて』

澪「・・・いや、なんでも」

律(私に隠せると思ってんのかよ・・・)


さわちゃんと来るのかな

そうだよね

みんなにちゃんと説明しなきゃいけないもんね

ちょっと緊張しちゃうな

わたしはとってもびっくりしたけど

だけどむぎちゃんはむぎちゃんだもんね

怖い事なんてないよね

和ちゃんの背中が少し堅い気がするな

姫子ちゃんもちょっと強張ってるかな

信代ちゃんも

りっちゃんは相変わらずかな

澪ちゃんの様子が少しおかしい気がするな

あ・・・




ガチャ

さわ子「はーい席についてー」

紬「・・・」





来た

変なの

4日会わなかっただけなのに

それ以上会わない日なんて、何度もあるのに

久しぶりで、会えてとても嬉しいよ

―――むぎちゃん


ザワザワ

紬「・・・」

「どうしたの?」

「どうして琴吹さんと先生が一緒に入ってくるんですか?」



理由があるんだよ

みんなに伝えなきゃいけない事がな



さわ子「みんなしずかにして、大事な話だから」

紬「・・・」コクリ



みんなそれを感じ取ったみたいだな

急に静まり返った

いや、沈黙かなこれは



紬「・・・」

さわ子「琴吹さんは―――」



やべえ

現実を突きつけられるようで

怖い


さわ子「―――声を発する事ができなくなりました」

紬「・・・」コクリ

「―――え」

姫子「・・・」

信代「・・・」

いちご「・・・」

春子「・・・」

風子「・・・」

「うそ・・・」


時間が止まったような

自分だけが置いていかれるような感覚になるよな

一番前の席でよかった

みんなの表情をみずにすんだ

それをみたら多分、飲み込まれたかもしれない



春子「どうして・・・ですか?」

さわ子「失声症とは違うみたいだけど、今は説明省くわね。時間が無いから」



時間が無いってなんだよ

授業より大事なことじゃないのかよ

ちゃんと教えてくれよさわちゃん



紬「・・・」コクリ

さわ子「・・・どうしてもやるの?」

紬「・・・」コクコク

テッテッテ

ガチャ

バタン

「・・・え?」



そうだよな

なんで出て行ったのか分からんよな

さわちゃんを除いたこの部屋の人全ての頭の上に疑問符が浮かんでいるだろうな

ん?

なんで私をみるんだよ、さわちゃん


さわ子「・・・入ってきて」

ガチャ

スタスタ

紬「・・・」ペコリ

スッ

カツカツカツ



黒板に

琴・・・吹・・・紬・・・って

自己紹介してどうすんだよ

あ・・・もしかして・・・

分かったよ、乗ってやるよ

しょうがないな

ヤタガラスは太陽の化身だって言うからな

頼むぜー守護神様

教室の空気が凍ってるから、力を貸してくれ

一緒にこの空気を溶かそうぜ

―――むぎ


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最終更新:2011年10月02日 23:56