純「年下の梓があの人に言っていい言葉ではないと、ちゃんと理解できたはずでしょ」

梓「見透かし・・・たよう・・・に言わ・・・ないで」

純「人に使っていい言葉じゃないし、・・・私たち人に使えるほどの人生歩んでないよ」

梓「・・・っ」

純「・・・」

憂「私も純ちゃんと同意見だよ」

梓「・・・」

憂「今までの紬さんを見ているのか、違う世界の紬さんを見ているのか、分からないけど
  今の紬さんをみていないのは事実だよね」

梓「っ!」

憂「なにがあっても、なにが起こっても、紬さんは紬さん・・・だよね」

梓「っ・・・ぅん・・・」

憂「・・・」

純「ったく・・・紬先輩だけじゃないでしょ、梓をみてくれているのは」

梓「うん・・・ごめん・・・っ・・・ご・・・めん・・・っ」グスッ

憂「梓ちゃん・・・」

純「なにに謝ってんだか」

梓「むぎ先輩の声・・・治るかもしれないって・・・」グスッ

憂純「「 え・・・ 」」

梓「でも、治すの時間がかかるから・・・『今』は『今』しか・・・ない・・・から・・・っ」

憂「・・・」

梓「今の・・・この・・・場所を選ん・・・でくれ・・・たんだって・・・」グスッ

純「・・・っ」

憂「そうだったんだ・・・」

梓「でも・・・時間が過ぎれば・・・治らなくなる・・・って」グスッ

純「うそっ・・・」

梓「・・・だけど・・・この・・・場所を・・・むぎ先輩は・・・選んでく・・・れたっ」ボロボロ

憂「・・・」

梓「そ・・・れ・・・なのに・・・それなのにっ・・・」ボロボロ

純「・・・」

梓「むぎ先輩の手を・・・振り・・・払って・・・っ・・・しまった・・・」ボロボロ

憂「!」

純「梓・・・」

梓「じ・・・ぶん・・・が・・・許せ・・・な・・・い・・・」ボロボロ

憂「梓ちゃん」ギュウ

梓「!」

憂「・・・そうだったんだね、偉そうな事言ってごめんね」

純「ごめん」グスッ

梓「ううん・・・あり・・・がと・・・」

憂「・・・」

梓「・・・二人の言うとおり、私・・・むぎ先輩を見ていなかった」

純「・・・」

梓「見ていないから、違うむぎ先輩を見ていたから・・・隙が生まれたんだと思う
  そして、そんな自分を見て見ぬフリしてきたんだと・・・思う」グスッ

憂「・・・」

梓「そのせいで・・・みんなに・・・むぎ先輩に・・・」グスッ

純「・・・私はいいけどさ」

憂「うん・・・」

梓「・・・」

純「顔洗ってくる・・・」トボトボ

梓「どこ・・・で?」

純「そこに水が流れているでしょ」

梓「そうだね」トボトボ

憂「水・・・」

純「落ち着いた?」

梓「・・・うん」

憂「・・・」

純「・・・憂はどうしてここに?」

憂「私も考え事をしていたんだよ」

純「そっか・・・」

憂「そしたら梓ちゃんが来て」

梓「・・・」

純「・・・」

憂「しばらくボンヤリしていようか」

梓「・・・うん」

純「・・・」

憂「・・・」

梓「・・・」ボー

純「憂・・・」ヒソヒソ

憂「?」

純「どうしてさっき梓を抱きしめた?」ヒソヒソ

憂「・・・えぇと」テレテレ

純「びっくりしたんだけど」ヒソヒソ

梓「・・・」ボー

憂「梓ちゃんと紬さんの間にあるものが愛おしくて」ポッ

梓「ちゃんと謝りたい」

純「学校戻る?」

梓「・・・うん」

憂「今日も暑かったね~」ニコニコ

純梓「「 はい? 」」

プー

梓「『メジャーのA』?」

紬「・・・」プー

梓「むぎ先輩!?」

純「おぉ!・・・おぉ?」

憂「来たね」

律「待たせたな!」ドン

澪「・・・」

唯「来たぞ~!」

さわ子「ありがたく思いなさいよね~」

和「私は見物」

梓「・・・?」

純「なんでジャージ?」

憂「お姉ちゃん、私たちの分は?」

唯「あるよ~」

律「ほら、早く着ろよ」

純「なぜ・・・?」

梓「むぎ先輩・・・さっきは」

紬「・・・」

ギュ

梓「あ・・・」

紬「・・・」スラスラ

梓「・・・謝るのは私の方ですよ・・・。すいませんでした」

紬「・・・」フルフル

梓「・・・」

紬「・・・」スラスラ

梓「っ!」バッ

紬「!」

梓「もういいです。私が悪いんですから」

紬「・・・」フルフル

ギュ

梓「・・・」

紬「・・・」スラスラ

梓「っ!」バッ

紬「!」

和「なにやってるのあれは?」

澪「謝りたいむぎと、謝らせたくない梓だな」

律「なんでジャージ着ないんだよ和は」

さわ子「水着でもいいのよ?」キラキラ

唯「そっちがいいよ」

純「水着でも、って?」

律「お、着たか・・・そんじゃ行くかー!」

唯「よっしゃー!」

テッテッテ

ジャブジャブ

律唯「「 冷たーい! 」」

憂「ふふっ」

純「えぇー・・・」

澪「や、やっぱり私はいいや」

さわ子「せっかく着替えたのに~」

梓「着替えたの間違いだったかな・・・」

紬「・・・」ギュ

梓「ちょっ!」

グイグイ

紬「・・・」ニコニコ

梓「ちょっ、ま、待ってください!」

純「諦めるか、いくぞー」

憂「行こう~!」

紬「・・・」キリ

梓「・・・そんな意気込まなくても」

澪「しょうがないな」

和「結局行くのね」

さわ子「あら、いつの間に着替えたの?」

和「ちょっと行ってきます」

テッテッテ

さわ子「意外とノリいいのね」

梓「いやいやいや、まってください」

紬「・・・」ギュ

梓「さすがに・・・」

紬「・・・」ブンブン

梓「ちょっ、った、うわっ」

唯「振り回されております」

律「すごい遠心力です。むぎしかできないでしょう」

澪「あ、ちょっと浮いた」

和「放り投げるのね、意外と攻撃的ね」

紬「・・・」フラフラ

梓「目を回してるっ!」

律「いい感じにこっちくるな」

フラフラ

ジャブジャブ

紬梓「「 ! 」」

ザブーン

梓「にゃー!」ブルブルッ

紬「・・・」ブルブルッ

梓「もー、むぎ先輩・・・」

紬「・・・」ニコ

梓「ふふっ」

紬「・・・」ニコニコ

梓「あはははっ」

律「ちぇー、やっぱむぎかよ」

唯「私たちでは役不足ですな」

梓「あっ!みてください!」

紬「?」

律「あっ!」

唯「おぉ」

澪「た、高いよ」

純「そ、そんな事ないですよ」

澪「・・・逝くぞ純!」

純「不吉な言葉使いませんでした?」

ピョン

澪「・・・!」

純「おぉー」

ザッブーン

律「飛んだ!」

唯「すっごい!」

紬「・・・」キラキラ

梓「ダメですよ、マネしちゃ」

和「意外と温かいのね・・・」

憂「そうだね、日中で温まったのかな」

律「浸かってんじゃねえ!」

唯「温泉だよ!」

澪「ふぅ~楽しかった」

純「楽しかったですよ」

律「唯、行くか!」

唯「だね、りっちゃん隊員!」

さわ子「もうダメよ、お巡りさんよばれたら私の立場がないじゃない」

律「なにー!」

唯「そんな!」

澪「残念だな」キラキラ

純「残念ですね~」キラキラ

和「ここ掘ったら沸かないかしら」

憂「人の目があるから無理じゃないかな」

梓「・・・変なの」

紬「・・・」コクリ

梓「・・・ありがとうです、むぎ先輩」

紬「?」

梓「ちゃんと御返しするです」

紬「・・・?」


―――

姫子「・・・」

轍(川を覗いているのかなこの子・・・?)

姫子「・・・」

轍(あ・・・)

―――


和「・・・」スィー

唯「背泳ぎ!」

紬「・・・」スィスィ

澪「この泳ぎ方はなんだ?」

梓「忍者みたいですね」

律「どこで習ったんだよ」

純「・・・」スィスィ

憂「・・・うん」

純「空しくなってきた・・・」

憂「犬掻きだよね・・・」

純「・・・うん」

律「ここって結構いい深さだよな」

紬「・・・」コクコク

澪「水もキレイだ」

唯「プールと違って流れてるからいいよね」

梓「子供たちが水遊びしてるのよくみかけましたよ」

純「え・・・」

澪「・・・」

律「・・・」

憂「・・・」

和「現実に戻されたわね」

律「なにやってんだ私ら」

澪「い、いうな・・・」

純「で、出ましょうか」

憂「そ、そうだね」

律「目が覚めて・・・わっ」

ザッブーン

純「転ばないでくださいよ・・・うわっ」

ザッブーン

澪「どうしたんだ?」

和「水中になにかいるわね」

澪「え!?」

憂「・・・」

律「ちくしょー、誰だよ足引っ張ったのはー」

純「わ、私も引っ張られました」

澪「こ、怖い事・・・ぅっ」

ザッブーン

律「・・・そこだっ!」バシャ

唯「ごぼごぼ」

律「一匹確保」

唯「ごぼごぼっ」

律「なんだって?」

唯「ごぼごぼごぼっ」

律「聞こえませーん・・・ぉわっ」

ザッブーン

唯「げほっ・・・た、助かったよ和ちゃん」

和「狩るほうに回った方がお得よね」

澪「唯か!」

唯「違うよ、澪ちゃんを転ばせたのはむぎちゃんだもん」

澪「むぎー!」

和「あっちで梓と無邪気に水をかけあってるわ」

純「憂も・・・いつの間に」

澪「よし・・・リベンジ・・・つっ」

ザッブーン

律「へっへー、一度は狩らないと・・・うっ」

ザッブーン

和「・・・二度も狩られたわね・・・甘いわよ律」

ヒョイ

和「唯もね」

ザバァ

唯「ちぇー・・・。むぎちゃんとこ行こう」

和「そうね」

姫子「和まで・・・」

轍「知り合い?」

姫子「・・・?」

轍「あ・・・しまった」

・・・・・・

真鶴『にぃにぃ、誰にでも声をかけるから』

暦『・・・』ジト

・・・・・・

轍「・・・」

姫子「誰・・・ですか?」

轍「えー・・・と」

さわ子「うちの生徒になにか?」

姫子「あ・・・」

轍「生徒?」

さわ子「えぇ、この子の担任ですが・・・」

轍「・・・」

姫子「・・・」

さわ子「場合によっちゃ警察に突き出しますけど」

轍「う・・・」

姫子「まって、聞かれただけですから」

さわ子「?」

轍「・・・」ホッ

姫子「私はあの子たちの同級生です」

轍「そっか・・・」

さわ子「それで?」

姫子「・・・」

轍「ちょっと、夏の旅の話を聞きたいと思いまして、探していたんです」

さわ子「旅・・・?」

姫子「唯たちが行った旅行・・・?」

轍「明暗をハッキリ分けた子がいて、少し興味を持ちました」

さわ子「あなたは?」

轍「俺は相馬轍、旅を題材にした記事を書いています」

さわ子「・・・」

轍「あの子たちが旅を通してみてきた景色、
  そして、住み慣れたこの土地の景色がどう変化したのか
  それを記事のヒントになればいいな、と」

さわ子「そうでしたか」

姫子「・・・」

轍「君もごめんね、いきなり声かけちゃって」

姫子「いえ・・・」

轍「この土地の者じゃないから、気軽に声をかけてしまって・・・悪い癖だ」

さわ子「・・・」

轍「名刺を渡しておきます。このまま去ったらただの不審者ですから」

さわ子「もう疑っていませんよ」

轍「・・・?」

さわ子「でも、今日は遠慮した方がよさそうですね」

轍「そうですね・・・それでは」

スタスタ

姫子「・・・」

さわ子「なんだか幽霊みたいな人ね」

姫子「どういう意味ですか?」

さわ子「実態がつかめないというか、曖昧というか・・・ね」

姫子「あぁ・・・なんとなく分かります」

さわ子(土地の者じゃないから・・・そんな空気を纏っているのかしら)

姫子「そ、それでは・・・さわ子先生」

さわ子「待ちなさい」

姫子「う・・・」


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最終更新:2011年10月03日 00:03