―――――夜

最低で最高の一日だった

ごめんなさい

むぎせんぱい

ありがとう

むぎせんぱい



限りある時間を大切にします




9月8日



―――――2年生クラス

梓「・・・」

純「・・・」

梓「おはよ」

純「おはよ」

梓「・・・」

純「・・・」

憂「どうしたの?」

梓純「「 別に・・・ 」」

憂「昨日の今日だから照れくさいんだね」

梓純「「 いうなっ! 」」

憂「クスクス」

梓「・・・むぎ先輩の家まで行ったの?」

純「ふふん」

梓「ぐっ・・・」

純「行ってないよ~、途中で斉藤さんが迎えにきてた」

梓「ふふん」

純「いや、意味が分からない」

憂「先生くるよ~」



―――――3年生クラス


プップププー

「?」

春子「なにを弾いているんだよ紬?」

姫子「『おあお』だから、『おはよー』かな」

紬「・・・」コクリ

信代「そこまで読み取れるのか姫子」

姫子「・・・なんとなくだけどね」

紬「・・・」テクテク

唯「おはよー」フリフリ

和「おはよう、むぎ」

姫子「おはよ」

紬「・・・」フリフリ


春子「あれ・・・?」

風子「どうしたの?」

春子「姫子が輪の中に入ったような・・・」


信代「男子だ」

姫子「え・・・?」

和「そんな雑誌読むなんて珍しいわね」

唯「バイクに目覚めたんだね!風になるんだね!」

姫子「なろうかな~って」

信代(急にどうしたんだろう・・・)

紬「・・・」プッププー

姫子「・・・?」

唯「昨日の・・・?」

紬「・・・」プププー

和「はな・・・い・・・、昨日の話?」

紬「・・・」コクリ

姫子「そう・・・うちの父さんがバイク持っているからさ」ペラ

紬「・・・」ププー

唯「昨日の話ってなんだい?」

姫子「車の免許とバイクの免許どっちがいいかって話」

紬「・・・」フルフル

信代「ちがう・・・?」

紬「・・・」プッププー

唯「うし・・・ろ・・・に?」

和「・・・」

紬「・・・」プップププー

唯「だれを・・・」

姫子「・・・」

紬「・・・」プププッププー

唯「乗せるか・・・って話!」

姫子「してないよ」ペラ

信代「・・・」

唯「私だよね!」

姫子「してないって」

和「どうして唯なのよ」

唯「私も風になりたいんだよ」

和「それじゃあ自分で・・・いえ、何も言ってないわよ私は」

姫子「責任逃れだね」

信代「唯がバイクに乗るのは想像できない・・・」

唯「え~」

紬「・・・」ニコニコ

律「はよ~ん」

「おはよー」

いちご「おはよ」

澪「おはよう」

いちご「あのさ・・・」

律「ん?」

いちご「・・・どうして鍵盤でやりとりするの?」

澪「・・・」

いちご「・・・ケータイやホワイトボードなら」

律「それだと伝わるものも伝わらなくなるからな」

いちご「・・・」

澪「読み取る事じゃなくて、聴き取る事が大切。そう、唯が言ってた」

いちご「・・・手間じゃない?」

春子「ちょっといちご!」

風子「いいすぎだよ」

いちご「・・・」

律「私ら義務だとか、やらなきゃいけないとかこれっぽちも思ってないぜ~」

澪「聴きたいから、それだけなんだ」

いちご「・・・そう」

春子「姫子も?」

律「ん?」

春子「なんか、あんたらの輪に入った感じだからさ」

風子「・・・そうだね」

澪「昨日・・・」フガッ

律「言うなよ」ヒソヒソ

いちご「?」

澪「なんでだよ」ヒソヒソ

律「川で遊んでいました、なんて言えるかよ」ヒソヒソ

澪「そ、そうだな」ヒソヒソ

いちご「なに?」

律「な、なんでもないぜー」

澪「そ、そうだ。なんでもない」

春子「だから、姫子はどうしてって聞いているんだけど」

律「知らない」

澪「・・・」

風子「・・・」

律「聞いてきたら?」

春子「・・・よし」

テッテッテ

風子「・・・」

テッテッテ

律「あれ・・・いちごまで」



春子「姫子~・・・って何読んでるの?」

姫子「バイク雑誌」

いちご「・・・」

唯「私だよ!」

風子「?」

和「姫子のバイクの後ろに乗るのは予約済みって事よ」

春子「え!?」

風子「免許取るの?」

姫子「・・・」

紬「・・・」プッププー

いちご「?」

唯「わ・・・たし・・・?」

紬「・・・」ププップー

唯「が・・・の・・・る・・・?」

和「予約殺到ね」

姫子「取る事に決まったのかな・・・」

春子「バイクか・・・」フムフム

風子「興味持ったんだね」

いちご「・・・」

紬「・・・」プップププー

いちご「・・・なんて言ったの?」

唯「・・・」

和「・・・唯?」

紬「・・・」ニコニコ

姫子「唯でも聴き取れなかったの?」

唯「うん~?」

紬「・・・」ニコニコ

唯「むぎちゃん・・・昨日・・・その音は適当って言ってたよね」

紬「・・・」ニコニコ

春子「どのバイク買うの?」

姫子「私より真剣じゃないの春子・・・?」

風子「・・・バイクかぁ」



・・・・・・



律「そろそろさわちゃん来るな」

澪「りつ・・・」

律「ん~?」

澪「相馬さんに旅の話するの?」

律「なんだよいきなり」

澪「・・・」

律「まぁ、機会があれば・・・かな」

澪「どうして?」

律「・・・特に理由は無いけど」

澪「・・・」

律「なんだよ」

澪「・・・別に」

律「聞かれて困るような事なんてないだろ」

澪「そうじゃないよ」

律「じゃあなんだよ」

澪「・・・後で話す」

律「・・・?」

ガチャ

さわ子「ほら、席につきなさい」

ザワザワ


―――――昼

澪「私は嫌・・・かな」

律「どうしてだよ」

澪「なんて言うか・・・距離感?」

律「他人だからか」

澪「他人だったら話は簡単だ」

律「・・・」

澪「梓に言葉をかけたでしょ?」

律「あぁ。『最高の場所』の事か?」

澪「うん・・・。それを教えたのに、今度は梓を揺さぶった」

律「私は梓を引き寄せたように見えたけどな」

澪「・・・どういう事?」

律「うーん・・・」

澪「とにかくだ。次は私たちの旅に興味を持ったと言った」

律「・・・」

澪「その理由は覚えてる?」

律「さわちゃんが言ってたな・・・梓の表情がどうとかって」

澪「そう・・・。だから嫌なんだ」

律「・・・」

澪「あの時・・・旅の話をしていた時の梓の心境はとても揺れていたハズだ」

律「あぁ・・・そうだな・・・」

澪「だけど、それをさらに揺さぶった」

律「うん・・・」

澪「あの時は私も、梓を探っていると思っていたんだ」

律「・・・」

澪「例え探って、それを梓自身に気づかせる為だとしても
  それを旅の記事のネタにするような考え方はどうかと思う」

律「・・・」

澪「興味を持ったきっかけが嫌なんだよ」

律「そうか・・・」

澪「・・・りつは・・・どう思う?」

律「正反対だ」

澪「え・・・」

律「あの時・・・バイクを倒した時・・・梓を引っ張っただろ」

澪「・・・うん」

律「亡くなった親友の・・・とても大事なバイクをだ」

澪「・・・」

律「そんな人が書く、私らの旅の記事を読んでみたくなった」

澪「朝といってる事が」

律「授業中に考えていたんだよ」

澪「・・・私が言った事は、どうなるの?」

律「正直分からないだろ」

澪「・・・」

律「私らの旅をテーマにするのか、梓の心境をテーマにするのか、なんてさ」

澪「・・・」

律「とりあえず、話をしない事には進まないな」

澪「そうだな・・・」

律「・・・どうした?」

澪「え?」

律「そんな事言うなんて珍しいよな・・・嫌だ・・・なんてさ」

澪「ちょっと・・・焦ってる、のかも」

律「・・・」


姫子「」スヤスヤ

律「お、今日は寝てんのか」

澪「今日もじゃないのか」

唯「どのバイクにしてもらおうかな~」ペラッ

紬「・・・」スッ

唯「いいですな」

和「勝手に選ぶのはよくないわ」

律「というか、取るのか?」

澪「昨日の話?」

紬「・・・」コクリ

唯「私たちもドライブしたいな~」

和「楽しそうね」

律「この中で誰が一番早く取るのかな」

澪「やっぱり和かな?」

紬「・・・」ズバッ

唯「ん?」

紬「・・・」キリ

澪「?」

紬「・・・」

律「?」

紬「・・・」アセアセ

和「?」

紬「・・・」フリフリ

澪(なんでもない・・・て・・・事・・・か)

律(姫子が寝ているから・・・鍵盤ハーモニカは使わないんだな・・・)

和(伝える事・・・諦めたのね・・・)

唯(むぎちゃん・・・)

紬「・・・」

澪「・・・」

和「・・・」

律「・・・」

唯「・・・」

姫子「」スヤスヤ


いちご「・・・伝える手段ってそれだけなの?」

紬「・・・?」

いちご「鍵盤だけ・・・なの?」

律「うーむ」

唯「body language」

和「発音いいわね」

澪「やってみよう」

紬「・・・」フンス!

いちご「・・・」

紬「・・・」ヒョイヒョイ

唯「私・・・?」

紬「・・・」ピン

律「いち・・・?」

紬「・・・」バシッ

和「・・・奪い取る・・・?」

いちご「私が一番最初に取る?」

紬「・・・」コクコク

澪「・・・」

律「ダークホースだな」

唯「ふふん、私がすでに持っているとしたら・・・みなさんどう思いますか?」

和「嘘でしょ?」

唯「嘘ですよ」

いちご「・・・もう通っている・・・とか・・・?」

紬「・・・」フルフル

律「さっきの自信はどこからきたんだよ」

いちご「ふふっ」

姫子「」スヤスヤ

澪「・・・」


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最終更新:2011年10月03日 00:09