―――――料理班


梓「どうしてここにいるんですかっ!?」

玉恵「へ?」

梓「・・・」

和「落ち着いて梓・・・玉恵さんのテントはあれよ」

純「近ッ!!」

玉恵「ん?」

律「てか、なんでこの人が自然に混ざり合ってんだよ」

玉恵「だ、ダメ?」

律「ダメじゃなくて・・・なりゆきを説明して欲しいんだが」

澪「そうだな・・・」

玉恵「お腹が空いてて・・・食材も手に入らなくて」ションボリ

和「だからよ」

純「短ッ!!」

姫子「いいじゃん、一緒に食べよう」

玉恵「姫ちゃん良い子だね~」ホノボノ

姫子「はぁ・・・玉恵さんまで・・・」

唯「私悪くないよ~」

憂「澪さん、山中先生はいつごろ到着しますか?」

澪「あと一時間くらいかな」

律「丁度いいな」

唯「さわちゃんだけ置いてけぼりはかわいそうだもんね」

玉恵「さわちゃん?」

純「先輩方の担任の先生です」

玉恵「仲がいいね~」

唯「でっへっへ~」

信代「紬は・・・?」

風子「・・・いないね」

梓「どこへ・・・?」

いちご「・・・あっちでボンヤリしてる」

梓「・・・」

春子「どうしたんだろ?」

梓「ちょっと散歩してきます・・・30分くらいで戻ってきますから」

風子「うん・・・分かった」

唯「・・・」ヒョイ

ポチャン

憂「お姉ちゃん!」

唯「でへへ」

いちご「・・・何を入れたの?」

唯「チョコだよ、隠し味だよ」

律「ルーを入れる前にいれやがった・・・」

唯「麦チョコだよ、むぎちゃんだけに」

梓「むぎ先輩」

紬「・・・?」

梓「なにが見えるんですか?」

紬「・・・」スッ

梓「キレイな夕焼けですね」

紬「・・・」コクリ

梓「台風のせいで・・・いえ、台風のおかげで空気がキレイになったんですね」

紬「・・・」ニコニコ

梓「湖まで散歩しませんか?」

紬「・・・」コクコク

梓「では行きましょう」

タッタッタ

澪「私も行くよ!」

梓「行くです」

紬「・・・」ニコニコ

玉恵「ちょっとこっちきて」カムカム

律「なんだよ?」

玉恵「澪ちゃんの事で聞きたいことが」

律「・・・」

純(なんだろ、ついて行ってみよう)

和「・・・」

スタスタ

玉恵「律・・・ちゃん・・・」

律「その呼び方は・・・」

玉恵「じゃあリッチャンでいい?」

律「あ、あぁ・・・」

玉恵「・・・澪ちゃん・・・ちょっと頑張りすぎてない?」

律「・・・どうしてそんな事が言えるんだよ」ムッ

玉恵「・・・笑顔が・・・不自然になる時がある」

和「・・・」

純「・・・」

律「むぎの事情知ってんだろ?」

玉恵「うん・・・、梓ちゃんと執事さんが話しているのを聞いたから」

律「あんたに・・・澪のなにが分かるんだよ」

玉恵「怒った?」

律「ちょっとな」

玉恵「怒らせちゃったついでにちゃんと言うよ」

律「なんだよ」

玉恵「そのうち転ぶよあの子」

律「っ!」

玉恵「梓ちゃんは前を向こうとしている」

律「知ってるよ」

玉恵「澪ちゃんは足元を見ている」

律「知ってるって!!」

純「!」ビクッ

和「・・・」

玉恵「・・・」

律「・・・っ」

玉恵「・・・意味分かるでしょ?」

律「あぁ・・・!」

玉恵「足元を見ていたら迫ってくる壁には気づかないんだよ」

律「・・・」

玉恵「壁に弾かれて転ぶんだ」

純「・・・」

和「・・・」

玉恵「・・・」

律「私と澪は一緒なんだよ・・・」

玉恵「そっか・・・」

律「・・・足元を見ていないと、しっかり立てないんだよ・・・私たちは」

玉恵「・・・」

純「・・・」

和「・・・」

玉恵「私はね・・・前を見ないで、足元すらみないで歩いてて、壁にぶつかって、
   転んで、その壁が倒れてきて・・・潰されたんだよ」

律「っ!」

玉恵「なんちゃって、潰されそうだった」

和「どういう事ですか?」

玉恵「バイクがあったから・・・そのバイクに乗って旅をする事ができたから」

律「・・・」

純「・・・」

玉恵「・・・倒れてくる壁から、なんとか避けられたのかな~」

律「なんだよそれ」

玉恵「うまい喩えだったでしょ」

律「知るかっ」

純「・・・」ホッ

和「・・・」


―――――湖

澪「・・・」

紬「・・・」ボケー

梓「・・・」ボケー

澪(私だけ違うところにいるみたいだ・・・)

紬「・・・」

梓「・・・」ボンヤリ

澪「・・・」

紬「・・・」チョンチョン

澪「ん?」

紬「・・・」

梓「?」

澪「・・・どうした?」

紬「・・・」

ギュ

澪「・・・」

紬「・・・」スラスラ

澪(ど・・・う・・・し・・・た・・・の・・・)

紬「・・・」

澪「・・・たそがれているだけだよ」

梓「・・・」

紬「・・・」スラスラ

澪「・・・?」

紬「・・・」アセアセ

梓「・・・」

紬「・・・」スラスラ

澪「・・・ごめん・・・分からない・・・」

紬「・・・」フリフリ

澪「ごめん・・・」

紬「・・・」スラスラ

澪「・・・っ」

梓「むぎ先輩、私にも書いてくれませんか?」

紬「・・・」コクリ

ギュ

澪「・・・」フゥ

紬「・・・」スラスラ

梓「・・・これ、漢字じゃないですか?」

紬「・・・」コクリ

澪「え・・・」

梓「澪先輩はひらがなだと思っていたはずですよ」

紬「・・・」ウッカリ

澪「・・・」

梓「もう一度書いたら分かると思います」

紬「・・・」

ギュ

澪「・・・っ」

紬「・・・」スラスラ

澪「黄・・・?」

紬「・・・」スラスラ

澪「昏・・・黄昏・・・?」

紬「・・・」キラキラ

梓「さっき、澪先輩がたそがれているって言ったから、今の時間の黄昏時をかけたんですよ」

紬「・・・」フンス!

澪「黄昏時にたそがれている私・・・」

紬「・・・」キリ

澪「ぷっ・・・」

梓「・・・」

澪「あっはっはっは」

紬「・・・」ニコニコ

梓「・・・ふふっ」

澪「なんだそれ・・・ふふっ・・・あははっ」

紬「・・・」フフン

梓「いえ、むぎ先輩の言った事が面白かったわけではないと思いますよ」

紬「・・・」ガーン

梓「しょうがないですね」

澪「ふふっ・・・ダメだっ・・・笑ってしまうっ」

紬「・・・」プクー

梓「・・・」

澪(よかった・・・聴こえた・・・。諦めず伝えてくれてありがとう、むぎ)



―――――料理班


轍「うわっ!本当にいる!」

唯「あ、うまさんだ」

憂「あ・・・」

轍「しかもいっぱい人がいるっ!」

姫子「・・・思い付きから始まったイベントですけど」

春子「誰・・・?」

風子「・・・誰?」

いちご「・・・」

轍「思いついたの二日前だよね・・・?」

唯「実行力を甘く見ない事ですよ」フフン

轍「すご・・・」

憂「ビックリしてるね」

姫子「よくよく考えたらビックリするもんだけどね」



・・・・・・



玉恵「まだなのさわちゃんは」

律「もうそろそろじゃねえか?」

純「あと10分くらいですね」

玉恵「まだまだじゃない・・・うそつき」

律「いやいや、どんだけ時間間隔離れてんだよ」

和「あれ・・・って・・・相馬さん?」

玉恵「え・・・?」



・・・・・・



轍「あぁ、炊事施設そろっていたなここは」

唯「そう教えてくれたよ」

轍「俺は生活用具持参しているから使わないんだ」

憂「昨日の夜ってどう過ごしたんですか?」

轍「屋根があるところに泊まったんだ」

姫子「あれでテント張っていたら・・・よほどの物好きですよね」

風子「物好きって話ではすまないよ・・・」

律「なんだよ来てたのか」

轍「話をしてくれるって言っていたような・・・」

いちご「話・・・って・・・?」

律「私らが行った旅の話だ」

玉恵「・・・」コソコソ

和「?」

純「どうしたんですか、玉恵さん?」

玉恵「純ちゃん、しーっ」

轍「・・・?」

姫子「旅の話聞きたい」

いちご「聞きたい」

唯「言いたい」

風子「聞きたい」

春子「聞きたい」

さわ子「ご飯できた~?」

玉恵「そうそう、ご飯食べようってあなたは誰・・・?」

さわ子「こっちの台詞ですよ」

玉恵「わ、わたしは・・・えと、山田・・・たか子です」

律「誰だよあんた・・・」

轍「・・・???」

唯「どしたの、うまさん?」

轍「いや、どこかで見た顔・・・?」

和「こちらは、私たちの担任の山中さわ子先生です」

さわ子「よろしく」

玉恵「よろしく~」

和「さきほど出会いまして、テント設営に協力してくれたお礼に、一緒にご飯を食べる事になった」

玉恵「山根・・・真綾です」

律「本当に誰だあんた・・・」

轍「・・・」

和「滝沢玉恵さんです」

玉恵「えへっ」

唯「かわいいよ!」

轍「あぁーっ!!」

玉恵「ひ、ひさしぶりー」

轍「なんでここにいるんだよ玉恵!」

玉恵「旅に来てるからだよ」

轍「そんな事知らねえよ!」

玉恵「摩周湖へ行くって言ったから退いたんだよ私は」

轍「退いたって言わないね、スッポかしたって言うんだよ!」

玉恵「昔の話じゃん~」

轍「あ の な !」

玉恵「会いたかったの?」

轍「違う!旭川でどれだけ待ったと思ってるんだよ!」

律「痴話げんかか・・・」

唯「ふむふむ」メモメモ

玉恵「なにをメモってんの唯ちゃん?」

唯「ん?彼女さんに報告するんだよ」

轍「しなくていいよ!って、やましい事もないよ!!」

玉恵「へぇ~」ニヤリ

轍「なんだよ」

玉恵「よかったねぇ」ポンポン

轍「うっさい」

律「旭川?」

唯「摩周湖?」

轍「・・・『俺は』北海道の道東を旅していたんだよ」

玉恵「『私たちは』北海道を旅していたんだよ」

轍玉恵「「 4年前に 」」

律「・・・」

唯「でっかいどー・・・」

さわ子「唯ちゃん、むぎちゃん達呼んできてくれる?」

唯「ん?」

さわ子「ご飯の準備できたわよ」

律「いつの間に!?」

さわ子「そこの二人が騒いでいる間にね。後はよそうだけ」

玉恵「やった~」

轍「・・・よかったな」

スタスタ

さわ子「あら・・・?」

律「ん?」

さわ子「相馬さんの分も用意するつもりだけど・・・いらないのかしら」

律「・・・呼んでくる」

タッタッタ


律「手際がいいな」

轍「まぁね」

律「あっという間にテント完成だ」

轍「好きでやってることだから、慣れたもんだよ」

律「・・・いいのか?」

轍「うん・・・あの中で男が俺一人ってのも居心地悪いからさ」

律「準備してあるって言ってるぞ」

轍「・・・悪いね」

律「無理強いはしないけどさ、多分、最後のチャンスだぞ」

轍「最後?」

律「私は前を向く為に、あの夏の旅は封印する」

轍「・・・」

律「玉恵ちゃんに言われた・・・。『足元をみていたら壁にぶつかって転んでしまう』って」

轍「そんな事言ってたのか・・・」

律「みんな聞きたがっているから、今がチャンスなんだと思う」

轍「・・・」

律「唯は知らないけど、澪はアンタに言わないだろうな。梓も」

轍「・・・」

律「どうするんだ?」

轍「・・・分かった」

律「どうしたー?」

唯「あずにゃん達を呼びにいくところだよ」

玉恵「そういう事」

轍「・・・」

玉恵「まだ怒っているの~?」

轍「なんで俺が怒るんだよ」

律「じゃついでに一緒に行くか」

唯「行こう行こう!」

玉恵「旭川に置いてけぼりにされたから」

轍「やっぱりすっぽかしだったか・・・」

玉恵「・・・うん」

姫子「律と唯は私たちを置いていきましたけど・・・」


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最終更新:2011年10月03日 00:23