―――――・・・


パキパキパキ

律「・・・それからというもの、夜な夜な湖を眺める女性の姿が目撃されたという」

澪「・・・」ブルブル

姫子「どうして怪談話になってるの?」ヒソヒソ

和「さぁ・・・?」

律「女性は湖にどんな想いを抱いているのであろうか・・・。おしまい」

紬「・・・」

さわ子「なかなかいい話だったわ」

憂「ちょっと切ないですね」

玉恵「うん・・・」シクシク

唯「ひっく・・・」シクシク

信代「・・・」

いちご「ハンカチ使って」

風子「ないでっだいよっ」

純「声が潤んでますけど」

梓「それで、どうしているんですか?」ジロ

轍「えー・・・と・・・」

春子「そろそろ誰か教えてくれませんか?」

玉恵「あっはっは、轍さん正体不明だ!」

信代「あなたもですけど・・・」

玉恵「うっ・・・」

律「あれ、紹介してなかったっけ?」

いちご「してない・・・」

澪「・・・どうぞ」

轍「じゃあ俺から。旅を題材にした記事を書いている相馬轍です」

玉恵「私は滝沢玉恵。私も轍さんと同じ仕事をしています」

轍「えっ!?」

さわ子「どうしたんですか?」

轍「最初にあった時・・・4年前になりますけど、ずいぶん変わったと思ってびっくりしたんです」

玉恵「4年あれば充分変われるよ人は」

梓「・・・」

紬「・・・」コクコク

轍「変わりすぎだろ・・・最初はこいつ、テントの張り方も知らなかったんですよ」

唯「最初は誰でも初心者だよ」

純「そうだそうだ」

和「私たちのテントを立てるときはスムーズで、指示をくれてとても動きやすかったです」

春子「うん・・・」

轍「へぇ・・・」

玉恵「ふふん」

澪「相馬さんと同じく、一人旅してるんですか・・・?」

玉恵「いつもは二人旅だよ。ツーリングでね」

姫子「・・・」

律「・・・」

春子「バイクかぁ・・・」

憂「・・・読んでみたいですね」

和「そうね・・・」

風子「どうして今日は一人なんですか?」

玉恵「午前の台風で予定がズレちゃってね・・・私だけ先に来たってわけ」

信代「おぉ~」

純「仕事熱心ですね」

玉恵「ふふん」

和「行き倒れていたけどね」

唯「なんとっ!」

玉恵「うっ」グサッ

姫子「お腹が空いてね」

玉恵「それ以上言わないで~」

轍「無計画なのは変わってないのか」

玉恵「う・・・」グサッ

律「そんじゃ、次は私の番だな」

さわ子「また怪談話?」

律「・・・夏の旅の話だ。一応約束だからな」

轍「約束として受け取ってくれていたんだ」

梓「・・・」

紬「・・・」キラキラ

姫子「・・・やっと聞ける」

いちご「・・・うん」

風子「・・・」

信代「・・・」

春子(けいおん部の雰囲気が変わった理由・・・)

パキパキ

梓「・・・」ヒョイ

パキパキパキ

唯「あずにゃん、今カッコ良かったよ!」

梓「え・・・?」

澪「無言で枝を放り込んだ事?」

唯「そうだよ!」

純「・・・」ヒョイ

コロコロ

春子「外してやんの」

純「うぅ・・・」

紬「・・・」ヒョイ

パキパキパキ

紬「・・・」ホッ

さわ子「火の中に入ってよかったわねぇ」

律「あの・・・喋っていいですかね」

轍「・・・」

「「 ・・・ 」」シーン

律「うわ・・・喋りにくい・・・」

玉恵「じゃあ聞かないフリしているからさ」

憂「こっそり聞いているわけですね」

和「意味あるのそれ・・・」

律「私たちは列車で日本縦断の旅をしたんだ。私たちは途中下車をしたけどむぎは縦断達成を成し遂げた
  色々な土地で、色々な人に出会って、色々な景色をみてきたんだ」

いちご「・・・景色ってなに?風景とは違うの?」

律「辞書で調べれば一緒なんだろうけど、私は違うニュアンスだな」

轍「・・・教えてくれるかな」

澪「・・・」

律「うーん・・・言葉にするのはちょっと難しいな
  例えば、隣にいる人が見ているモノを表現した時、そのモノの見方が自分と異なっている事があるだろ?」

いちご「・・・うん」

律「言葉ではもちろん、行動でも変わってくるんだ。
  一人でボンヤリ見ている景色と、二人でボンヤリ見ている景色は別物だ
  自分と隣の人との見たモノが重なったとき、それが同じ景色を見ている事になる
  二人で共に行動を起こさないと見れないモノ。それが私の言う景色。・・・なんだけど」

澪「一緒だ」

紬「・・・」コクリ

梓「・・・」コクリ

唯「一緒だよ~」

律「そっか・・・。良かった」

轍「・・・」

いちご「・・・」

さわ子「そんなに深く考えなくていいのよ。今日、いちごちゃんとりっちゃんが共に過ごして
    同じ経験をしてきた事が、その景色という風に捉えてもそう遠くないわ」

いちご「・・・はい」

律「教師みたいだ・・・うまくまとめた」

唯「びっくりだよー」

さわ子「・・・」

律唯「「 ごめんなさい 」」

玉恵「?」

純「無言の圧力ってやつです」

姫子「律は・・・。律にとって特別な景色ってあったの?」

律「あった。まぁ、全部が特別なんだけど、更に特別な出会いと景色があった」

澪「・・・」

風子「特別な出会い・・・」

律「その子は・・・自分に自信がなくて、いつも周りに迷惑をかけている自分が嫌いだったんだ
  それが原因で自分をみてくれている人たちの前から逃げ出した」

玉恵「逃げ出した・・・」

律「あぁ、大好きな人たちに嫌われるのが怖くて逃げ出したんだ」

轍「・・・」

澪「・・・」

律「でも、それはその子がとっても優しいからなんだ。
  自分のせいで周りに迷惑をかける事にとても心を痛めていた」

紬「・・・」

律「私はその子の近くにいて、とても大切なことを教わった」

轍「それは?」

律「ありのままの自分を出す事ができる。そんな場所が存在することだ」

信代「へぇ・・・」

純「おぉ・・・」

律「それは私だけじゃなく、もう一人いるんだけど・・・それはまた話が違ってくるから割愛だ」ウシシ

唯「不憫な子」シクシク

梓「・・・む、むぎせんぱい・・・」

紬「・・・?」

梓「な、なんでもないです」

紬「・・・」ニコニコ

律「その子は旅を通して気づくんだ。逃げ出した事で自分の周りの人たちを傷つけた事に
  その人達を信じていない自分自身を・・・な」

澪「・・・うん」

姫子「・・・」

律「旅を終える理由が『帰って謝りたいから』なんだ。
  自分自身が嫌いだけど、人を好きになる自分を好きになりたいと強く笑って帰って行ったよ」

梓「・・・」

姫子「連絡先・・・とか、交換したの?」

律「いや、彼女とはそれっきりだ」

いちご「・・・仲良くなったのに」

澪「そうだな。でも今思えば、そのまま別れる事が自然のような気がする」

律「『出会い』に『別れ』、それが旅だからな」

轍「・・・」

玉恵「・・・そうだね」

紬「・・・」

律「と・・・こんな感じだ」

姫子「それが律たちがしてきた旅・・・」

春子「なるほどねぇ・・・」

律「まだまだ話は尽きないけど、とりあえずどうだ?」

轍「うん・・・」

玉恵「・・・みんなが纏まっている理由が分かったよ」

唯「でへへ」

律「やっぱり記事のネタにはならないよな・・・」

轍「あ、いや・・・面白い話だった。俺がこの土地で出会った人がこんな視野を持っているって事で
  記事になるよ。ありがとう」

律「でも、スッキリしてない顔してるじゃんか」

轍「あー、それは・・・その・・・」

律「?」

梓「ずいぶん前のような、昨日の事のような、とても不思議な感じがしました」

澪「そうだな・・・」

紬「・・・」ニコニコ

憂「律さんにそんな事が・・・」

唯「ういも一緒にみてきたはずだよ」

憂「え・・・あ、そっか・・・」

唯「一緒に観光もしたからね~」

純「くぅ・・・私だけその人と喋ってない・・・」

信代「・・・なんか、律が違ってみえる」

さわ子「変わったのだから当然よ」

風子「・・・」

轍「あの子が中野さんの大切な人・・・なんでしょ?」

律「うん」

轍「話に出てこなかったから、不完全燃焼・・・かな」

律「私は大分端折ったからな・・・、むぎが関わっていないわけじゃないんだけど・・・
  そうだな、澪が見てきた景色の方が分かりやすいかも」

轍「そっか・・・」

唯「はいっ!」ズバッ

律「じゃー次は唯!」

唯「なにから話そうか」ウキウキ

和「ライブはどうかしら」

唯「でも・・・」チラッ

さわ子「放課後ティータイムで話をすればいいじゃない」

唯「そだね」

風子「?」

信代「?」

律「私ら名古屋でライブしたんだぜー」

唯「おぉーっとりっちゃんやい!私の出番を奪わないでおくんなまし!」

梓「・・・」

律「わーかったよ、分かったから」

轍「ライブ・・・?」

梓「・・・」

さわ子「この子たちは学校で、けいおん部に所属して活動しています」

轍「・・・なるほど」

玉恵「澪ちゃん達それぞれ景色が違うの?」

澪「それぞれの出会いがありましたから
  一緒に旅行をしてきましたけど、旅をしたのはそれぞれ違うから景色も異なります」

姫子「そうか・・・和が言っていた事って」

いちご「・・・そういう事なんだ」

和「澪たちそれぞれが目的地へ辿り着く事ね」

純「さすが澪先輩です。かっこいい」キラキラ

唯「・・・」ポツーン

紬「・・・」ヒョイ

パキパキパキ

憂「名古屋でのライブはとても良かったよお姉ちゃん」

唯「でへへ、楽しかったよ」

風子「唯ちゃんも・・・特別な出会いがあったの?」

唯「・・・うん、あったよ~。あの子はね、二つの顔を持っていたんだ」

春子「二つの顔・・・?」

唯「そうだよ、おとなしくて真面目で素直で、とっても可愛い一つの顔
  活発的で元気ではっちゃけてて、とっても可愛い一つの顔」

憂「・・・」

唯「活発的な顔を出しちゃうと周りの人たちに迷惑をかけちゃうんだ
  だけど、仕方がなくって、そうしなくちゃいけなくて・・・
  おとなしい顔になると、とても反省して
  だけどまたはっちゃけた顔を出さなきゃいけなくて
  また反省しちゃって・・・ずっと繰り返して一人で抱えていたんだよ」

和「・・・」

唯「誰も『嫌なら辞めればいい』とは言えないの
  だって・・・とっても健気に頑張っているんだもん」

梓「・・・」

紬「・・・」コクリ

姫子「あ、なんとなく分かっちゃった・・・」

春子「あぁ・・・私もそれが誰なのか分かった」

轍「・・・参加していないんでしょ?」

梓「分からないならしずかにして欲しいです」

轍「・・・」グサッ

玉恵「・・・そっか、夏以来劇的に変化した子がいたよね」

唯「でへへバレちゃった~」

信代「うん・・・。そっか、唯がそうさせたのか」

唯「違うよ~。今のあの子があるのはむぎちゃんのおかげだもん」

紬「・・・」フルフル

唯「ううん。むぎちゃん、私は一緒にいただけだよ。
  あの子の背中をドンと押したのはむぎちゃんだよ」

ギュ

梓「・・・?」

紬「・・・」スラスラ

唯「・・・」

梓「ゆい・・・先輩が・・・ひっぱった」

紬「・・・」スラスラ

梓「一緒にいた事がたいせつ・・・。だそうです」

唯「わ・・・わたしっ・・・は」グスッ

澪「・・・」

紬「・・・」スラスラ

梓「・・・ゆうき・・・を・・・与えたのは・・・ゆい・・・先輩」

唯「うっ・・・っ・・・あり・・・がとぅ」ボロボロ

憂「・・・っ」

いちご「・・・」

玉恵「・・・」

さわ子「私たち置いてけぼりよ」

律「いや、さわちゃんも一緒にいただろ」

さわ子「誰かが言わないと私達以外わからないじゃない」

律「まぁ・・・そうだけどさ」

唯「ご・・・ごめんねっ・・・っ・・・」グスッ

梓「・・・ハンカチ使ってください」

唯「あり・・・がと・・・」ビィイイイイ

姫子「鼻かんだ・・・」

澪「お約束だよな」

梓「そうです」

紬「・・・」ニコニコ

轍(なるほど・・・)

唯「自分の夢があってね、その夢を叶える為に頑張っていたんだよ
  だけど、社会の厳しさが、現実の厳しさが、あの子の夢を潰そうとするの」

和「まだ高校一年15歳の子が・・・ね」

風子「あ、そうか・・・あの子がそうだったんだ」

律「やっと気づいたか風子~」

風子「だ、だって・・・前のあの子の姿見たことないから。私あまりテレビみない」

轍(テレビに出てくる子なのか・・・。アイドル・・・?)

唯「その夢はとっても素敵なんだよ。『みんなが笑顔』という言葉が入っているんだもん」

姫子「うん、素敵な夢だね」

唯「道が険しくても、見えない力で潰されそうでも、あの子は頑張ったんだよ。頑張っているんだよ」

轍「勇気を貰ったから・・・貰っているから、じゃないかな・・・」

紬「・・・」コクリ

梓「・・・」

唯「そうだと嬉しいよ~」

純「そうですよ、今でもこれからも応援していくじゃないですか!」

唯「そうだよ!」

和「ふふっ、あの子も大変ね、止まる事は許されないみたいじゃない」

唯「疲れたら休んでいいよ~」

憂「そうだね、ゆっくり休んで・・・いいよね」

唯「そうだす!」

律「うわ、また使い出した」

いちご「?」

澪「お気に入りらしい」

姫子「ふふっ、変なの」

玉恵「人は独りでは生きていけない。生きちゃいけないんだね」

唯「うん・・・だって、寂しいもん」

澪「そうだな・・・」

風子「・・・ふぅ」

信代「どうしたのさ?」

風子「話が少し大きくて・・・お腹いっぱい・・・」


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最終更新:2011年10月03日 22:52