―――――平沢邸

ガチャ

唯「ただいまー」

和「おかえり」

唯「今日も頑張ったよ~」

和「そう・・・。お疲れ様」

唯「えへへ」

律「いやいや、ちゃんとツッコミ入れろよ」

澪「ど、どうして和が・・・?」

梓「?」

紬「・・・?」

和「一足先にお見舞いに来ていたのよ」

唯「そういう事だよ!」

和「唯怒ってるの?」

唯「聞いてよ和ちゃん!みんなひどいんだよ!」プンスカ!

律「だからゴメンって」

和「どうしたのよ・・・」

唯「私が練習している間におやつ食べたんだよ!」

和「そう・・・」

唯「それだけじゃないんだよ!姫ちゃんが来ていたのに教えてくれなかったんだよ!」

和「それはひどいわね」

澪(子どもの愚痴を聞くお母さんみたいだな)

梓(お母さんみたいです)

紬「・・・」コクリ

唯「それだけじゃないんだよー!私が作詞した曲も見送りされたんだよ!」」

和「確か・・・おかずはごはん、だったわね」

唯「逆だよ!ごはんはおかず、だよ!」

和「それはどうして?」

律「いや・・・むぎが書いてきたのと比べたら・・・むぎかなぁ・・・って」

紬「・・・」テレテレ

梓「です」

唯「ひどいよねっ!?」

和「そうね・・・。でも新曲枠は二つでしょ?あと一つは?」

澪「さっき一生懸命探していたようだったから・・・」

梓「です」

和「その曲分を空けておくのね」

唯「そうなの?」

律「あぁ・・・。それでやろうかと思ってだな」

唯「よぉし!」フンス!

憂「みなさん・・・玄関でお話もなんですから・・・居間へどうぞ」フラフラ

梓「憂!」

憂「お・・茶・・・を・・・お持ちしま」フラフラ

和「ちょっと!」


―――――・・・憂の部屋

憂「」スヤスヤ

和「・・・後は任せて」ヒソヒソ

紬「・・・」コクリ

ガチャ

バタン

紬「・・・」

澪「それじゃ、お大事に」

唯「うん。一緒におかゆ作ってくれて助かったよ」

梓「・・・」

唯「和ちゃんもいるし、だいじょーぶだよあずにゃん」

梓「は、はい」

紬「・・・」

律「じゃ、私らはこれで」

ガチャ

唯「明日はあずにゃんの街を探索するんだよね」

紬「・・・」コクリ

梓「はい、そうです」

澪「河川敷で待ち合わせだからな」

唯「おっけー。明日には憂も回復してるよきっと」

律「あぁ」

唯「みんなありがとね~」

律「お大事にな」

澪「ゆっくり寝かせてあげてな」

梓「唯先輩、おやすみなさいです」

紬「・・・」フリフリ

唯「うん、ありがとう。また明日ね~」フリフリ

バタン

律「帰るか」

澪「うん」

梓「・・・」

紬「・・・」

スタスタ

律「あ・・・、影が出ていると思ったら・・・」

澪「月明り・・・」

紬「・・・」

梓「キレイですね・・・。雲が青白く反射しています」

紬「・・・」コクリ

律「この空を写真に収められたらいいのにな」

澪「私たちの技術では無理じゃないかな」

梓「残しておきたい空ですね」

律「・・・」

梓「・・・」

紬「・・・」

澪(むぎは・・・今)

むぎは・・・今、何を想っているんだろう

空を眺めて

まだ満ちていない月を眺めて

月が放つ光に染められた雲を眺めて

むぎはなにを想っているのだろう

聞くのは簡単だけど

それを説明させるのは困難だ

梓も似たような表情をしている

律も

私は

この時間が止まればいいなと想う

けど

今は憂ちゃんが風邪をひいて寝込んでいる

その妹を姉はとても心配している

だから止めちゃいけないんだ

時間は―――切ない



最近

むぎはよく空を眺めている




9月15日


―――――河川敷

律「夏に撮った写真でさぁ」

澪「あの旅の?」

律「うん・・・。出会った人たちと一緒に集合写真撮った写真な」

澪「うん」

律「澪がむぎにカメラ貸したじゃん?」

澪「うん」

律「写真少なくないか?」

澪「・・・うん。私もそう思ったんだ」

律「むぎがカメラを持って、観光して、集合写真を撮ってもらったんだよな?」

澪「そうだよ」

律「他にも写真があるはずなんだけど、見せてもらってない・・・よな」

澪「・・・うん」

律「見たいなーって思わないか?」

澪「思うけど・・・。どうしたんだいきなり」

律「ふと、気になってだな」

澪「・・・」

律「あとで聞いてみてもいいよな・・・?」

澪「どうして慎重になる」

律「むぎが見せたくないのかもしれないじゃん?それを聞くのはアレかなーって」

澪「遠慮する間柄じゃないだろ」

律「そりゃそうだ」

澪「私も見てみたくなった」

律「あ、来た・・・」

キキーッ

梓「お待たせしました」

律「おぅ・・・。梓はマウンテンバイクか」

梓「そうです。・・・ママチャリもあったんですけど、こっちにしました」

澪「運転しやすそうでいいな」

梓「はい!」

律「折りたたみはキッツイかな~」

澪「多分な」

梓「澪先輩はモトクロスバイクですね」

澪「うん、パパ・・・いや」

律「・・・」

梓「パパイヤ?」

澪「父さんが持っていたやつを借りたんだ」

梓「どうしてパパイヤが出てきたんですか?」

律「・・・」プクク

澪「た、食べたくなったんだ」

梓「そうなんですか」

律「沖縄では炒め物にも使うらしいぞ」

澪「えっ・・・果物なのに?」

律「あぁ・・・。スクガ・・・なんとかといい、変わった食べ物が多いよな」

梓「・・・」

チリンチリン

梓「あ・・・むぎせんぱいです」

紬「・・・」フリフリ

律「おはよー・・・って、むぎはママチャリか」

梓「選択間違えた・・・っ」

澪「お揃いがいいんだな」

紬「・・・」キリ

律「気合入ってんな」

梓「後は・・・唯先輩と・・・」

唯「みんなー!」

キキーッ

唯「またせたよっ!」

律「揃ったし行くか」

澪「そうだな」

唯「ちょっとおまちよ」

律「なんだよ」

唯「今のかっこよかったでしょ?」

紬「・・・」コクリ

梓「そうですね」

澪「それじゃ行くか」

唯「ちょいとおまちよ」

律「んだよー」

唯「ギューンと来てキキイーッ・・・だよ?」

紬「・・・」コクリ

梓「そうですね」

澪「憂ちゃんは来なかったの?」

唯「うん、病み上がりだからね」

律「治ってよかったな」

唯「うん!」

律「じゃ行くか」

唯「もぉー」ブーブー

紬「・・・」プッププー

唯「えへへ」テレテレ

梓「・・・」

律「褒めてもらえてよかったな・・・。いい加減に出発するぞ」

澪「ちょっとまって」

紬「・・・?」

梓「どうしたんですか?」

律「あ、忘れてた」

澪「エリ・・・」

エリ「」スヤスヤ

梓「こんなところで・・・。先輩方のクラスの方ですよね?」

紬「・・・」ププップー

梓「たき・・・エリ・・・さんですか」

律「起きろ!」

エリ「・・・ぅ・・・んー?」

チリンチリン

紬「・・・」ニコニコ

エリ「ポカポカ陽気だからつい寝ちゃった」アハハ

律「なにが『つい』だよ。しっかり横になっていただろ」

エリ「休みの前の日って夜更かししちゃうよね」

澪「最近はそうでもないけど」

エリ「高校生らしくしようよ」

律「高校生らしく忙しくしているんだぜー」

エリ「それならいいんだけどー」

澪「あ・・・、二人ともストップ」

律「お、なにか見つけたのか」

エリ「・・・?」

澪「どうした?」

唯「あずにゃんがね~」

梓「いえ・・・」

紬「・・・」

律「ここになにかあるのか?」

梓「あったんです。一本の木が」

エリ「なるほど、その木は梓ちゃんにとってとても大切な思い出があったんだね」

梓「それが、ないんですよ」

紬「?」

律「それじゃどうして止まったんだよ」

梓「そんなに大きいわけでもなくて・・・。注目されるような木ではなかったんです」

澪「うん」

梓「違いますね・・・。悪いほうで注目されていました」

紬「・・・」プッププー

梓「はい。木の実がよく落ちて、道路を汚していたんです。木の実を食べる動物もいなくて
  靴に着いてしまうから、その時期になると大人はこの木の下を避けていました」

エリ「・・・」

梓「私の記憶はそれだけなんです。ここにあった木とはそれだけ・・・」

唯「他にもいい思い出になることはなかったの?」

梓「はい。私が物心ついたころからありましたけど・・・。特別なものはありません」

紬「・・・」プップー

梓「え・・・?」

エリ「紬さんはなんと・・・?」

唯「それが」

紬「・・・」プッププー

梓「そうですか・・・。そうだとしたら・・・ちょっと寂しいですね」

エリ「・・・?」

唯「それが特別な思い出なんだって」

エリ「えぇと・・・、どういう事?」

梓「失ったものを思い出した事が、木と私の思い出になったんです
  木がここに存在し続けていたら、この記憶は甦らなかった訳ですから・・・」

澪「そうか・・・。だから寂しいのか」

梓「はい。いつなくなったのかさえ知らないですけど、私の中では存在している木です」

紬「・・・」コクリ

梓「発見がありましたね」

律「あぁ・・・。じゃ次行こーぜ!」

唯「行こう行こう!」

澪「さ、騒ぐな」

エリ(・・・失って存在する・・・・・・)

カランカラン

「いらっしゃいませ~」

唯「ジャンボパフェ!」

「え、えぇと・・・」タジタジ

律「ねえよ。とりあえず7人ですけど」

「後から一人いらっしゃるんですね?」

紬「・・・」コクリ

澪「大所帯だな・・・。二席に別れるか」

「7人席ありますよ」

梓「あるんですか。そこでお願します」

「こちらへどうぞ~」

スタスタ

エリ「ジャンボなパフェってどういうんだろ」

紬「・・・」プッププー

(鍵盤ハーモニカ持参!?)

唯「木以外になかったの?」

梓「ない事もなかったんですけど」

澪「小さいことでも聞かせてくれないか?」

梓「聞いてもつまらないと思いますけど・・・」

紬「・・・」

エリ「どうしてみんな興味津々なの?」

律「少しでもヒントになれるものは無いかと探しているんだよ」

エリ「・・・そっか~」

「こちらの席です」

姫子「ありがとう」

唯「こんにちは、姫ちゃん」

律「おう・・・って、珍しい組み合わせだな」

澪「本当だ」

「そこで姫子さんと一緒になって」

紬「・・・」フリフリ

「こんにちは紬さん」

エリ「どうしたのお母さん」

母「散歩していてね、せっかくだからって顔を出しただけなんだよ」

唯「ゆっくりしていきなされ」

姫子「みんなご飯食べたの?」

梓「まだです」

母「外食ばっかりでは体によくないよ」

律「お母さんか!」

澪「だからお母さんだろ」


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最終更新:2011年10月03日 23:18