和「あら・・・」

唯「おかえり~」

和「ただいま。唯もおかえり」

唯「ただいま~」

和「見つかった?」

唯「えへへ」

和「ヒントは見つかったみたいね」

唯「うん!」

和「よかったわね」

唯「・・・うん」

和「・・・」

唯「・・・」

和「・・・」

唯「風のようにね」

和「?」

唯「風のように時が流れていくんだよー」

和「風のように・・・」

唯「うん。あずにゃんが坂道の場所を教えてくれたんだ」

和「・・・」

唯「坂の下から坂の上へ風が流れる場所なんだよ
  とってもゆるやかに流れるんだ・・・」

和「・・・」

唯「自転車を降りて、坂を歩いて登ってみたんだ。風が背中を押してくれるんじゃないかって」

和「・・・」

唯「そんな事はなくて・・・。私の横をするりと駆け抜けていくだけだった」

和「そう・・・」

唯「・・・・・・うん」

和「・・・」

唯「時間が・・・今が・・・・・・わたしの・・・っ・・・よこを・・・」グスッ

和「・・・」

唯「するって・・・・・・風のように・・・っ・・・なが・・・っ・・・れて・・・」グスッ

和「・・・」

唯「いって・・・しまう・・・よ・・・」グスッ

和「・・・」

唯「いや・・・だよぉ・・・」ボロボロ

和「・・・うん」

唯「・・・はなれるるの・・・やだ・・・よぉ」ボロボロ

和「うん」

唯「・・・っ」ボロボロ

和「・・・」

唯「・・・ごめ・・・ん・・・ね」ボロボロ

和「風が背中を押してくれるように」

唯「・・・?」グスッ

和「唯の背中を押してくれるように、私が唯と一緒に歩くわ」

唯「??」グスッ

和「風を受け止める面積が広ければ・・・少しは押してくれるでしょ?」

唯「うん・・・」

和「二人じゃあまり遮れないから・・・人数を増やせばいいのよ」

唯「うん」

和「風が・・・時間が駆け抜けていかないように・・・ね」

唯「うんっ」

和「・・・何を言っているのかしら」

唯「えへへ、変な和ちゃん」

和「唯の喩えがおかしいのよ」

唯「そんなことないよっ!」

和「でも、時が風のように・・・。いい言葉ね」

唯「そでしょ・・・。って違うよ!」

和「え?」

唯「風のように時が。だよ!」

和「一緒よ」

唯「ぜんっぜんちがうよー」

和「・・・」

唯「えへへ、ありがと」

和「帰りましょ」

唯「うん!」


―――――カメラ屋

ウィーン

姫子「受け取りに来ました」

「はい。仕上がってますよ。ちょっと待っててくださいね」

姫子「はい」

エリ「・・・」ワクワク

姫子「・・・」

アカネ「・・・」ワクワク

姫子「あの・・・その・・・」

エリ「写真楽しみだね、アカネ」

アカネ「うん」

姫子「・・・ゴメン」ボソッ

エリ「?」

アカネ「・・・ひょっとして」

「おまたせしました~。14枚の焼き増しと、一つはサービスです」

姫子「大きくプリントしてくれたんだ・・・」

エリ「おぉー・・・お?」

アカネ「・・・やっぱり」

姫子「キレイに撮れてる」

「カメラマンの腕がよかったみたいですね。いい写真です」

姫子「・・・はい」

「ありがとうございました~」

ウィーン

エリアカネ「「 うわーん! 」」

姫子「・・・ごめんね」

エリ「河川敷じゃないー!」

アカネ「・・・キャンプ場で、私たちは当然いない」

姫子「・・・」

エリアカネ「「 うわーん! 」」

姫子「誰か・・・助けて・・・」

「うわー子供が二人喚いてるよ」

姫子「助けてよ・・・」

エリ「私たちの気持ちなんか分からないよ!」

アカネ「うん!」

「なんの話?」

姫子「話せば長くなるから・・・」

「大丈夫。話は好きだから」

エリ「私たちを置いてキャンプに行ったのは聞いたでしょ?」

「うん・・・。たしか信代も行ったという」

アカネ「そうそう。その写真の現像を受け取りに来たんだけど」

姫子(勝手に付いて来たんじゃ・・・)

「でも、キャンプに参加していないんだから、受け取りに来る意味ないよね」

エリ「河川敷で撮った一枚に私たちも写ったの!」

アカネ「うん」

「それで?」

姫子「・・・写っていなかった」

エリアカネ「「 うわーん! 」」

「奇怪な話?」ワクワク

エリ「ちゃんと話聞いてよ!」

「うぅん~?」

アカネ「集合写真は二つあって、もう一つの写真を現像に出していたって事」

姫子「これ」ペラッ

「あ・・・。いいね、みんないい表情してる」

エリ「うわーん!」

アカネ「・・・」

エリ「あれ?タイミング間違えた?」

アカネ「もういいかなって」

エリ「見捨てられたー!」

「うるさいな、今日のエリは・・・」

姫子「帰っていいかな・・・。今日は疲れたんだけど」

「部活?」

姫子「と、探検」

アカネ「探検って・・・?」

姫子「遊んだって事かな」

エリ「楽しかったね」

姫子「・・・うん」

アカネ「うわーん」

「・・・」

姫子「あとヨロシクね、潮」

潮「なにを・・・頼まれたの?」



―――――夜・立花邸

姫子(この大きいの貰おうかな・・・)

ガチャ

母「おかえり」

姫子「ただいま」

母「お父さんが呼んでるよ」

姫子「どうして?」

母「バイク・・・の免許取るって・・・」

姫子「うん」

母「その話」

姫子「分かった」

スタスタ

母「嫌がると思っていたのに・・・」




―――――ガレージ


姫子「今日はメンテしないの?」

親父「・・・そこ座れ」

姫子「質問は無視かよ」

ストッ

親父「なんで急に興味をもった」

姫子「・・・」

親父「憧れや興味だけで手を出すな。命に関わるものなんだぞ」

姫子「知ってる」

親父「・・・」

姫子「興味を持つことは悪いことじゃないって言ってたじゃん親父」

親父「それとこれとは話は別だ。俺を納得させろ」

姫子「できなかったら?」

親父「それだけの理由でバイクには乗せないな」

姫子「どうして?」

親父「俺の娘だからだ」

姫子「押さえつけているんじゃないの?」

親父「もがいてみろと言っている」

姫子「かっこつけやがって」

親父「最後の関門だろ。かっこつけさせろ」

姫子「・・・」

親父「・・・」

姫子「・・・」

親父「なんだ特に理由はないのか・・・」

姫子(そんなの、あの人に出会った時で決まっている)

『・・・うぅ』

姫子「クスクス」

親父「?」

姫子「これ・・・みて」ペラッ

親父「キャンプの写真か・・・?」

姫子「うん」

親父「・・・ふむ」

姫子「なんか恥ずかしいから、もういいでしょ」

親父「それがどうした」

姫子「親父がバイクと出会う事になった写真・・・と、繋がっている人が撮った写真」

親父「!」

姫子「直接ではないけど、色々な糸が絡まって繋がっている人だった」

親父「・・・」

姫子「私はこの写真を撮った人に憧れている」

親父「・・・」

姫子「その人は―――」

・・・・・・

・・・

姫子『えっと・・・その・・・バイクに乗って・・・どう変わりましたか?』

『うぅ・・・ん・・・眠いから後でね・・・』

いちご『・・・ひどい』

姫子『・・・』ションボリ

『景色が狭まった』

姫子『狭まった?』

『集中して前だけを見ないといけないから、視界が鋭くなった』

姫子『・・・』

『そんなもんだよ』

いちご『・・・』

姫子『そうですか・・・』

『そうですか・・・じゃないよ』

姫子『?』

『そうなんだ・・・だよ』

いちご『?』

『私は、二台目になるけど。あのバイクと共に歳を取っていく』

姫子『・・・』

『そして、旅の仲間と出会っていく・・・。これくらいかな』

姫子いちご『『 そうなんだ 』』

『そうなんだよ~』

姫子『クスクス』

いちご『クスクス』

・・・

・・・・・・

姫子「・・・」

親父「・・・」

姫子「『バイクと共に歳を取っていく』って」

親父「・・・」

姫子「たくさんの景色をみせてくれるバイクと共に・・・私も」

親父「ただの受け売りじゃねえか」

姫子「!」

親父「それはその人の経験を培ったものだ。おまえの経験ではない」

姫子「あたりまえじゃん」

親父「なに?」

姫子「私とその人が目指している場所は違うんだから」

親父「・・・」

姫子「影響を受けたのは事実だけど、その人と自分を置き換えてモノを言うほど
   私は子供じゃないつもり」

親父「・・・」

姫子「・・・」

親父「そうか。それで、おまえが目指す場所ってのは・・・?」

姫子「・・・」

親父「・・・」

姫子「分からない」

親父「・・・」

姫子「でも、バイクに乗ってたくさんの景色をみれば・・・」

親父「景色って・・・おまえはバイクに乗ったこと」

姫子「あるよ。小さい頃に」

親父「・・・」

母「覚えていたの?」

姫子「思い出した。最近バイクの後ろに乗せてもらったから」

親父「・・・」

姫子「親父じゃないの?私をバイクに乗せたの」

母「おとうさん・・・」

親父「・・・」

姫子「?」

親父「小学校に上がる前だな。俺が運転しているバイクからおまえが落ちそうになったんだよ」

姫子「・・・」

親父「それからは、おまえをバイクに乗せるのが怖くなって一人でしか乗らなくなった」

母「・・・」

姫子「そんな事があったんだ」

親父「あぁ。一度に大切なものを二つ失う所だったからな」

母「もう・・・」

姫子「・・・」

母「姫子とバイクを天秤にかけて同じ重さっていうわけじゃないの」

姫子「?」

母「その事があってから、お父さんは1年くらいバイクに触っていなかったわ」

親父「・・・」

姫子「・・・」

母「姫子はまだ乗せてってせがんでいたんだけど・・・お父さんが頑なに拒否したのよ」

姫子「・・・」

母「だけどね、あたながこう言ったの」

姫子「私が?」

母「えぇ。『バイクに乗ってるお父さんカッコイイのに』」

親父「・・・」

姫子「・・・」

母「それからまた・・・元通り。姫子はもうバイクに乗ること自体に興味を持っていなかったけど」

姫子「・・・」

親父「話を戻す。バイクの免許を取る事に納得できないぞ、まだ」

姫子「・・・うん。私がたくさんの景色をみる手段がバイクだったってだけ」

親父「・・・」

姫子「あんまり人に言う事じゃないと思うけど」

母「?」

姫子「私・・・視野が狭いっていうか、つまらない目線でモノを見ていたんだと思う」

親父「つまらない目線ってなんだ?」

姫子「簡単に言うなら興味を持つことができないって事かな」

母「・・・」

姫子「だけど、同じクラスの子たちにたくさんの視点があるって事を教えてもらって・・・」

親父「・・・」

姫子「もっとたくさんの事に興味をもってみたいって思えた」

親父「どうしてだ」

姫子「みんな楽しそうだったから」

親父「・・・」

姫子「・・・それだけなんだけど」

母「お父さんの負けですね」

親父「別に勝ち負けではなくてだな」

母「ちゃんとした知識をつけるのよ?」

姫子「分かってる。事故の怖さも教えてくれたから」

母「それなら私は反対しないわ」

姫子「ありがと」

親父「金はださねえからな」

姫子「最良のものを自分で手に入れろって言ってた」

親父「最良のもの・・・それがバイクか?」

姫子「うん」

親父「アテはあんのか?」

姫子「なんの為にバイトしてきたと思ってるの」

母「・・・バイクを買う為」

姫子「違うよ。いや、そうだけど・・・。この時の為だって意味だよ」

母「あら、そうなの」

親父「・・・分かった」

姫子「ありがと」

親父「・・・素直に礼を言うな・・・。なんか寂しい」ボソッ

母「姫子・・・それは?」

姫子「キャンプの写真だよ」

母「みせてみせて」

姫子「ほら」

母「まぁ~」キラキラ

姫子「この子とこの子とこの子は2年生で、他は同じクラス。この子とこの子が姉妹」

母「そっくりね~」

姫子「この子とこの子が幼なじみ」

母「このメガネの子しっかりしていそうね」

姫子「・・・そっちはあまり見た目で判断しないほうがいいみたい」

母「あらそうなの?」

親父「免許取ったら一緒にツーリングするか!」

姫子「それはない。・・・こっちのメガネの子がしっかりしている
   この子がたくさんの事を教えてくれた」

母「なんだかふわふわした子ね」

姫子「うん」

母「楽しい話ね、もっと聞かせて?リビング行きましょう」

姫子「うん・・・。メンテの仕方教えてね」

スタスタ

親父「・・・」ズドーン


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最終更新:2011年10月03日 23:23