―――――病院


夏「なんで!?なんで冬ばっかりこんなっ!」

母「夏・・・」ギュウ

夏「おかしいよ!こんなの!!」

母「大丈夫だから・・・」

夏「なんで・・・!」

ガラッ

医「・・・大丈夫ですよ。熱が急に上がったせいで体がビックリしたんでしょう」

母「・・・そうですか」ホッ

夏「なんで!?私じゃ元気をあげられないの!?」

医「・・・」

夏「冬のように私頑張っているのに!それでも足りないの!?」

医「いや・・・そんなことは」

夏「そんなことあるよ!また病院に戻ってきたもん!!」

医「・・・」

看「夏ちゃん、冬ちゃんが呼んでるわ」

夏「!」

テッテッテ

医「・・・」

母「先生の言うとおり元気を貰っていたみたいです。しばらくは安定していましたから」

医「・・・そうですか。・・・失礼します」

スタスタ

看「先生までそんな顔して・・・」

ガラガラ

夏「冬~?」

冬「あ・・・来てくれたんだ・・・」

夏「毎日来るって言ったよ」

冬「・・・うん」

夏「じゃーん、梨!」

冬「わぁ・・・」キラキラ

夏「今食べる?」

冬「食べる」

看「これから検査があるからダーメ」

冬「明日にしましょう」

看「こっちの都合もあるのよ!?」

夏「・・・」シュルルルル

看「こらっ!ダメって言ったでしょ、・・・相変わらず上手ねぇ」

夏「これくらいお安い御用です」

看「・・・」

夏「はい、冬」

冬「ありが」

シュッ

看「もぐもぐ」

夏冬「「 あぁー! 」」

看「ジューシーねぇ」

冬「なんてことを・・・」

「あの看護師さん本当に看護師さんなんですか?」

「あぁ、キミは今日入院してきたのか・・・。この部屋の名物だよ」

「名物?」

「そう、三人によるささやかなコント」


――・・・


夏「はい、卒業証書」

冬「ありがとう」

夏「結局今日まで退院できなかった・・・」

冬「その袋はなに?梨?」

夏「正解。・・・と雑誌」

冬「いつもありがとね夏・・・」

夏「いいって~、気にしないで。ほら」

冬「あれ・・・?旅行の雑誌なんだ・・・」

夏「うん、旅行した気分になれるかなーと思ってさ~」

冬「うんうん、いいね」

夏「北海道特集だって」

冬「わぁ」キラキラ

夏「どれどれ」

冬「利尻島だって」

夏「行ってみたいねぇ~」

冬「覚えてないの?」

夏「釧路には行ったけど、利尻には行ってないよ?」

冬「お父さんと周ったような・・・」

夏「覚えてないや」

看「まだ梨剥かないの~?」

夏「冬の為に剥くんです。看護師さんにはありません」

看「ふふっ、それは残念。はい体温測ってね」

冬「はーい」

看「そうそう。順調にいけば来週辺り退院できるわよ」

夏冬「「 本当ですか!? 」」


―――――・・・商店街

冬「大丈夫?」

夏「知恵熱でそう・・・」

冬「歩きながらはダメだよ」

夏「でも、そうしないと覚えられないよ」

冬「おうち帰ったら集中して勉強すればいいんだよ」キリ

夏「はいはい・・・えーと」

ドンッ

「おぉっとぉ」

夏「あ、ごめんなさい」

「おぉ、受験生だね!」

冬「あ・・・その制服・・・」

「ん?」

夏「いえ、なんでもないです」

「そう?」

「おーい、早くこーい」

「・・・」

「はいよ~。じゃあね~」フリフリ

タッタッタ

冬「すいませんでしたぁー」

「気にしないで~」

夏「優しい・・・」

冬「来年会って、また挨拶しようね」

夏「その為にも合格するぞー!」

冬「おー!」

「・・・」

タッタッタ

夏「あ・・・あの人も桜が丘高校なんだ・・・。さっきの人と友達なのかな」

冬「なんだかふわふわした人だね・・・」

母「どうだった・・・?」

冬夏「「 バッチリ! 」」

母「そう、よかったわ」

冬「合格発表の日が待ち遠しい」

夏「えぇー・・・、私は・・・うん、待ち遠しいや」

母「うふふ」

冬「ちょっと疲れちゃった・・・部屋にもどるね・・・」

トボトボ

母「?」

夏「聞いてよお母さん、今日が本番なのにさ消しゴム忘れた子がいて、その子髪の毛がボンバーなんだよ」

母「うふふ、楽しい学校になりそうね」

夏「それと冬とお喋りした子がおっとりしていて、姉に渡されたお守りを自慢したんだって」

冬「・・・ぅん」

夏「冬!」

冬「夏・・・、ここは・・・?」

夏「・・・はぁ、よかったぁ」

冬「・・・病院?」

夏「待ってて、先生呼んでくる」

テッテッテ

冬「・・・手を・・・?」

夏「・・・証書」スッ

冬「ありがとう・・・。また卒業式に参加できなかったね」

夏「・・・うん」

冬「終わってすぐ来たの?」

夏「・・・うん」

冬「ダメだよ、卒業写真の後ろに寄せ書きを書いたりとか、写真を撮ったりとか」

夏「今日じゃなくてもいいよ」

冬「今日だから撮るの。大切な日なんだから」

夏「別に・・・」

冬「もぅ~」

看「はーい、検温の時間でーす」

冬「よいしょっと」

夏「辛くない?」

冬「これくらい・・・けほっ」

夏「ほ、ほらっ」

看「辛いようなら寝ててもいいのよ?」

冬「けほっ・・・だ、大丈夫ですよ」

看「はい、体温計」

冬「はい・・・けほっけほっ」

夏「・・・」

看「入学式までに退院できるように頑張るわよ」

冬「はいっ」

夏「うん!」

冬「私も早く着たいなぁ・・・」

夏「うん、きっと似合うよ」

冬「・・・・・・うん」

夏「今日さ面白い事があったんだよ」

冬「どんな?」

夏「なんか、変な着ぐるみ着て新入部員勧誘してる人たちがいた」

冬「ふふっ」

夏「ウマ、トリ、イヌ、ネコの4人で・・・。ネコの人に渡されたのがこれ」ペラッ

冬「軽音部?」

夏「面白そうな人たちだったよ」

冬「へぇ~、見てみたかったなぁ」

夏「・・・」

冬「あれ?夏はソフトボール部に入ったんだよね?」

夏「あ、うん・・・。キャプテンって人に勧誘されて・・・そのまま」

冬「強引に?」

夏「強引に」

冬「あははっ・・・けほっけほっ!」

夏「だ、大丈夫!?」

冬「だいじょうぶだよ・・・。・・・ソフト部はどう?」

夏「正直ね・・・つまんない。最初っからやりたくて入ったわけじゃないからね」

冬「辞めちゃうの?」

夏「それがさ~・・・ププッ」

冬「?」

夏「先輩でノーコンな人がいるんだよ、ソフト部なのに」

冬「・・・」

夏「たまたまキャッチボールの相手にされたんだけど、全然私の方に投げてくれないの」

冬「・・・」

夏「最初嫌がらせだと思ったくらいだよ」

冬「・・・」

夏「でもね、その人真剣に私に投げてるの。だから取ってみたくなってさ」

冬「・・・」

夏「私も真剣になってボールを追いかけてた」

冬「楽しいんだ・・・」

夏「とーっても楽しかった!だから続けてみるよ」

冬「うん」

夏「そんなに面白い話だった?」

冬「うん、面白い」

夏「その人ね、立花姫子って言うんだよ。姫子先輩!」

ガラガラッ

夏「冬~」

「あら、夏ちゃん。冬ちゃん今眠っているのよ」

冬「」スヤスヤ

夏「そうですか・・・、こんにちは」

「こんにちは、今日もお見舞いに来たのね。おばちゃん関心しちゃうわ」

夏「当然ですよ~」ブィ

「さわがしくて迷惑だね」

夏「・・・ひどい」

「ふんっ」

夏「迷惑をかけてるお詫びにと持ってきたんだけど・・・」

「・・・」

夏「それじゃこの林檎私たちだけで食べましょうか!」

「あらいいわね、お茶用意するわね」

「ぐっ・・・」

夏「しずかに食べましょうね」

「・・・相変わらず口が減らないよね」

夏「お互い様」

「ふふっ」

夏「あっはっは」

冬「・・・ぅん?」

看「またこの部屋に来て・・・、先生が探していたわよ?」

「待って・・・林檎を食べてから帰るから」

看「食べたらちゃんと部屋に戻るのよ?・・・まったく」

「はいはい」

夏「はいどうぞ」

「さんきゅ、もぐもぐ」

「うふふ、なんだかんだで仲がいいのね~」

「ごちそうさま夏ちゃん」

夏「あはは、またね~」フリフリ

看「もぐもぐ」

冬「・・・」ボケー

「夏ちゃん、お茶をどうぞ」

夏「ありがと~」

「皮剥くの本当に上手ね」

夏「へへっ、任せてください」

ピピッピピッ

冬「・・・」

看「なかなか熱下がらないわね・・・」

冬「・・・ふぁ」

夏「夜ちゃんと寝てるの?」

冬「・・・うん、寝てるよ」

看「寝てるんだけどね・・・」

夏「・・・林檎食べる?」

冬「・・・」

夏「梨の方がいい?」

冬「・・・うん」

看「意外と我がままね」


――・・・


冬「・・・」ペラッ

夏「またその記事読んでるの?」

冬「うん・・・」

夏「新しいの買ってきたからこれ読みなよ」

冬「後でね・・・」

夏「それ中学二年生の時に買ったやつでしょ・・・?」

冬「うん・・・」

夏「ふうらい・・・ねぇ・・・」

冬「この人の書く記事がいいの」

夏「ふーん」

冬「観光名所と名所は違う場所なんだって」

夏「・・・よく分からないな」

冬「じゃあ『最高の場所』は?」

夏「なにそれ・・・?」

冬「誰もが持っている大切な場所なんだって。その場所が人を強くするって」

夏「・・・」

冬「この人の記事は人情味があって、私の心も旅をしているような気分になるんだ・・・」

夏「・・・へぇ」

冬「私も見つけたいなぁ・・・」


――・・・

ガラガラ

夏「冬~」

冬「けほっ・・・夏・・・」

夏「あれ、誰も居ないの?」

冬「けほっけほっ・・・うん・・・」

夏「外出許可出たって言ってたっけ・・・。今日は冬の貸切だね」

冬「けほっけほっ」

夏「ちょっと、さっきから変な咳してるけど、大丈夫?」

冬「・・・うん」

夏「じゃじゃーん、梨!」

冬「・・・・・・ありがと」

夏「・・・。お父さんとお母さんは後で来るって」

冬「・・・うん」

夏「・・・今日も部活で疲れちゃった」

冬「・・・頑張ってるんだね・・・けほっ」

夏「ほら、横になって」

冬「・・・うん」

夏「梨は後でいい?」

冬「・・・うん」

夏「・・・」

冬「今日はどんな事があったの・・・?」

夏「それがさ、姫子先輩が~・・・」

ギュウ

冬「・・・けほっ」

夏「」スヤスヤ

冬「・・・・・・一生懸命・・・体動かしたんだもんね・・・」

夏「」スヤスヤ

冬「ごめ・・・んね・・・」

夏「」スヤスヤ

冬「たくさん・・・っ・・・心配かけて・・・けほっ」

夏「」スヤスヤ

冬「姉・・・しっ・・・かく・・・だ・・・・・・よ・・・ね・・・」

夏「」スヤスヤ

冬「・・・っ!」

夏「」スヤスヤ

冬「・・・はぁ・・・っ・・・はぁっ・・・
  ちょっと・・・眠るだけだから・・・」

夏「」スヤスヤ

冬「手を・・・握ってて・・・・・・っはぁ・・・・・・はぁ・・・っ・・・」

ギュウ

夏「」スヤスヤ

冬「・・・すぅ・・・はぁ・・・」

夏「」スヤスヤ

冬「・・・・・・・・・すぅ・・・・・・・・・はぁ・・・・・・」

夏「」スヤスヤ

冬「・・・すぅ・・・・・・」

夏「」スヤスヤ

冬「・・・」

夏「」スヤスヤ

冬「」




夏「ふ・・・ゆ・・・ねぇ・・・?」




看「冬ちゃんッ!!」

夏「・・・え」

冬「」

看「冬ちゃん!冬ッ!!」

夏「・・・・・・」

医「どいて、夏」

夏「な・・・に・・・・・・」

医「夏、しっかりしろ」

夏「・・・!」

医「何時からだ」

看「分かりません、私が検診に来た時から」

医「ICUへ」

看「はいっ」

夏「な・・・に・・・こ・・・れ・・・」

医「呼びかけるんだ、夏」

夏「・・・」

冬「」

夏「な・・・・・・ん・・・・・・で・・・・・・」

医「・・・っ」

看「・・・っ!」

ガラガラガラガラ


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最終更新:2011年10月04日 23:04