正直、苦手になってきたな

むぎせんぱいの今の様の笑顔が

誤魔化されているようで

なんでもないって言っているようで

私には伝えてくれないのかな

伝える手段が無いから?伝える事が難しいから?

伝えられる自信がないから?私には伝わらないから?



『隙が空いていたんじゃないの?』

また―――繰り返すのかワタシは



唯「あっ、澪ちゃーん!」

澪「みんな!楽しんでるな!」キラキラ

律「あなたが一番楽しんでいます」

風子「あ、姫ちゃんやっと来たんだ!」

姫子「遅れてごめんね」

夏「姫子先輩!次のアトラクション一緒に乗りましょう!これとか面白そうです!」

澪「フリーフォールか、いいな!」キラキラ

姫子「・・・」

律「びっくりしてやんの」ウシシ

純「もちろんお供します!」

唯「私も乗る!」フンス!

憂「私も乗ります!」

紬「・・・!」フンス!

梓「・・・」

純「・・・あれ・・・梓?」

律「まてまて、お昼食べてからだ。お腹が空いては遊べないぞ」

和「そうね、ひとまず移動しましょう」

英子「みんなテンション高い~」グルグル

冬「英子先輩が目を回してます!」

夏香「しょうがないな・・・」ガシッ

風子「なっちゃん来たんだ」

夏香「あのメール見たら気になるでしょ」

風子「そうだよね~」

唯「おーい、はやくおいで~!」

夏「お昼ご飯が逃げちゃいますよ~!」

姫子「逃げないって」

紬「・・・」フルフル

姫子「え、逃げるの?」

紬「・・・」コクリ

梓「目の前で売り切れるという前例がありますので・・・」

姫子「そっか・・・夏フェスの話だっけ・・・」

梓「そうです」

冬「夏ってば・・・」

夏香「・・・」

紬「・・・」スタス

梓「ちょっと待ってください、むぎせんぱい」

ギュ

紬「?」

梓「えっと・・・その・・・」

冬「?」

梓(しまった・・・今する事じゃなかった・・・)

夏香「・・・みんなお店に入ったよ・・・?」

紬「・・・?」

梓「あ・・・ぇ・・・と・・・」

姫子「先に入ってるからね、行こう冬」

冬「は、はい・・・」

紬「・・・」

梓(うぅ・・・先走ってしまった・・・)

夏香「どこ行ってたの姉さん」

姉「ぬいぐるみと談笑してた」

夏香「談笑って・・・風船まで貰って・・・」

姉「可愛かったからつい貰ってしまったのよ」

梓「あ、すいません。それください」

紬「?」

姉「いいよ。どうぞ」

梓「ありがとうございます」スッ

スィ~

姉「手放したよね?」

梓「はい」

紬「・・・」

夏香「・・・姉さんちょっとこっちに来て」

姉「・・・?」

梓「見てくださいむぎせんぱい、どんどん風船が昇って行きます」

紬「・・・」コクリ

梓「その向こうに月がありますよね。白くて儚くて、
  それでもそこにいると存在を示すように白い光を放つ月です」

紬「・・・?」

梓「さっきあの月を見て、むぎせんぱいは何を想ったんですか?」

紬「・・・」

梓「どんなに時間がかかっても、伝えにくい事でも、私は聴きたいです」

紬「・・・」

梓「むぎせんぱいと同じ景色をみたいんです」

紬「・・・」ニコ



よかった

さっきとは違う いつもの笑顔だ



ギュ

紬「・・・」スラスラ

梓「・・・月がですか?」

紬「・・・」コクリ




なんだ きれい って3文字で済む事だったんだ

私はまた一人彷徨っていたんだ

でも 伝わったことが 伝えられたことが とても嬉しい



梓「そうですね『きれい』な月ですねー」ボケー

紬「・・・」ボケー



単純な事ほど伝えにくいのかもしれない

伝わったのは言葉だけ

そんな関係 私は嫌だ



姉「・・・」

夏香「入ろうか姉さん・・・。みんなにどう紹介しようかな・・・」

姉「・・・」

夏香「姉さん・・・?」

姉「あの二人・・・姉妹じゃないよね?」

夏香「顔似てないでしょ」

姉「私たちは似てないけど姉妹でしょ」

夏香「・・・あの二人は先輩後輩の関係だよ」

姉「冬ちゃんと夏ちゃんみたい・・・」ボソッ

夏香「え・・・?」

姉「ううん、なんでもない。あの二人に会うの一年ぶりだから楽しみ」ウキウキ

夏香「やっぱり患者さんだったんだ」

律「誰・・・?」

唯「どなた様?」

憂「?」

和「夏香のお姉さんですね」

姉「そうです、妹がお世話になっております」

夏香「・・・」

風子「気まずい顔してる」プクク

英子「こら、ふぅ」

夏冬「「 あれ・・・? 」」

姉「・・・」

冬夏「「 あっ! 」」

姫子「・・・?」

夏冬「「 看護師さんっ! 」」

姉「久しぶり~!元気だった!?」

冬「はいっ!」

夏「うん!」

純「・・・看護師?」

澪(この人が・・・)



梓「私もあの風船のように月を目指して昇っていきますからね」

紬「・・・」ニコニコ

ギュ

梓「むぎせんぱいが月ですから」キリ

紬「・・・」ニコニコ

律「なんだあの二人」

澪「いい事でもあったのかな・・・」

姫子「仲いいねぇ・・・」

風子「手なんか繋いじゃって・・・」

英子「拗ねているようだよ、ふぅ」

純「・・・」

夏香「ほら、座って姉さん。店員さん困ってるよ」

姉「うん?」

店員「・・・どうぞお座りください」

姉「あ、じゃあこっちの席に失礼するよ」

冬「どうしたんですか、ビックリしました!」

姉「なつ・・・夏香が遊園地に行こうってせがむから・・・」

姫子「・・・へぇ」ニヤリ

夏香「連れてこなければよかったぁ・・・!」

唯「まぁまぁ、お水をどうぞ」

夏香「・・・ありがと」ゴクゴク

和「姉妹にしては似てないわね」

夏香「私と姉さんは血が繋がっていないの」

和「へぇ、そうなんだ」

唯「軽く受け止めたよ!」

夏香「母が再婚して、再婚相手に姉さんがいただけだから。重い話じゃないよ」

唯「ノットヘビィだね」

夏香「う、うん・・・?」

夏「・・・」チラッ

純「気になるならあっちの席に座ればいいじゃん」

夏「べ、別に・・・!」

憂「・・・」

梓「なにを食べますか?お勧め品がありますけど」

紬「・・・」スッ

梓「お子様ランチ・・・ですか・・・」

純(同じもの頼もうとしたんだろうなぁ・・・どうするんだろ)ウシシ

夏「・・・」チラッ



・・・・・・



冬「夏香先輩のお姉さんだったなんてビックリですよ!」

姉「ビックリしてばっかりだね、冬ちゃんは」

冬「だって、ビックリしましたから!」

姉「あはは、私も・・・ビックリしたよ」

澪(今、間があった・・・)

冬「姫子先輩!私が入院していた頃にお世話になった方です!」

姫子「え?・・・さっき聞いたけど・・・」

律「テンション高くなるとアホな子になるんだな冬は」

英子「そんな風に言わないの」

律「お母さんだ!」

澪「だからお母さんだろ」

冬「クスクス」

姉「・・・」

風子「注文しようよ、お腹空いたよ」

律「あぁ・・・忘れてたな・・・」グゥー

冬「それで・・・お医者さんとは・・・」

姉「子供の癖に生意気なっ!」ビシッ

冬「あいたっ!」

風子「叩くの禁止!」

姉「・・・!」スッ

冬「・・・?」

姫子「どうしたんですか?」

姉「少し熱があるわね・・・。体の調子はどう?」

冬「大丈夫ですよ。熱気にあてられたせいだと思います」

姉「・・・」

澪「無理するのは無しだぞ?」

冬「は、はい・・・。大丈夫です」

風子「アトラクションにはなにに乗ったの?」

冬「え・・・と、観覧車とメリーゴーランドと・・・ティーカップですよ」

英子「そんなに激しいアトラクションじゃないんだ・・・」

律「調子悪くなったらすぐに言えよ?」

冬「は、はい・・・」

姉「・・・」

姫子「・・・」

冬「・・・」スッ

ピンポ~ン

店員「はーい!」

律「こらっ!」

冬「わ、私決めました」

律「こっちはまだ決めていないんだよ!」

澪「えぇと、なににしよう」アセアセ

風子「お子様ランチはありかな?」

英子「なしかな・・・」

店員「ご注文をお伺いします」

姫子「お子様ランチ二つと」

律「誰と誰だよ!」

姫子「冬と風子」

風子「ごめんなさい!言ってみただけです!量的になしです!」

英子「見栄え的にはありなんだよね」

冬「私はオムライスで」

律「ちゃんとリアクションしろよ!」ビシッ

冬「いたっ!」

風子「だから叩くの禁止!」

姉(はしゃぐ気持ちも分かるわね・・・)

店員「あのぉ・・・」

店員「ありがとうございました~」

夏「ごちそうさまでしたー」

律「食べた食べた、お腹いっぱいだー」

唯「パフェ食べたかったのに~」

澪「後で食べような」

憂「また別れて行動するんですか?」

律「そうだな、秋山澪チームはスリルのあるものばかりになるから要注意だ」

冬「は、はい」

夏「じゃあ澪先輩チームで」ウキウキ

純「むっ」

澪「それじゃ、行くか!」キラキラ

和「食べてすぐ乗るの?少し落ち着いたほうがいいわね」

澪「時間は待ってくれないんだぞ和!」キラキラ

和「えぇ、もちろんそうなんだけど。それでも時間の中身を凝縮してしまうのはもったいないわ」

澪「凝縮なんてしないさ、ただ引き伸ばしているだけだ。一秒を濃くしていけばそれだけ長くいられる」キラキラ

和「澪の一秒と私の一秒は異ならないかしら」

澪「一緒にいて、同じものをみることで時間を共有できるんだ。それは同じ一秒だ」キラキラ

和「急ぎすぎじゃない?そこにはちゃんと道ができるのかしら」

澪「もちろんできているさ。楽しかったという思い出として存在し続ける。今日という宝だ」キラキラ

律「うわ、こっちが照れるっ」

姉「これは・・・ケンカ?」

夏「うーん・・・」

冬「というより・・・」

唯「ディ・・・ディスタンスだよ」

憂「ディベートだよ、お姉ちゃん」

姫子「あのさ」

夏香「どうしたの?」

姫子「どうして冬を担当した看護師のお姉さん・・・を連れてきたの?」

夏香「・・・私もあの二人が気になってて、姉さんから聞いていた話と違うから別人だと思っていたんだけど
   話で聞いたとおりの雰囲気も垣間見せるから、どうなんだろうって事で実際に連れてきたって訳」

姫子「・・・そうなんだ・・・二人の事聞いてみようかな」

英子「姫子さん、どこまで二人の事知っているの?」

姫子「結構・・・深く・・・」

夏香「私と英子が聞いた話は中学1年生の時に退院したところまで、それからは話さなくなった
   患者さんの話をペラペラと話をしていたあの時が変だったんだと思っていたけど」

風子「・・・けど?」

夏香「そうじゃないみたい。・・・これは私の勘」

姫子「・・・そっかぁ・・・うーん」

風子「・・・もしかして、思いとどまっているの?」

姫子「まぁね・・・、中途半端に踏み込んでしまったかな・・・と」

紬「・・・」スラスラ

梓「そうですね、私もあの人と被って見えました」

姫子「?」

梓「あ、えと・・・。夏の旅で出会った人がいて、その人は
  『自分の問題を後回しにして、今を楽しもう』と言っていたんです
  確かに旅行は楽しむものですから、その考えは尤もなんです」

風子「ふむふむ」

紬「・・・」コクリ

梓「だけど、それでは『今』を本当に楽しめないんです。
  問題を解決する事で、より『今』楽しめるとむぎせんぱいがその人に伝えました・・・」

英子「姫子さんがその人に似ているの?」

紬「・・・」フルフル

梓「いいえ、夏と冬とも似ていません。ただ、状況がそう思わされた・・・といいますか」

姫子「そっか・・・。行動しないでダメになるのは莫迦らしいよね」

紬「・・・」

梓「・・・」

姫子「あれ、違ったかな・・・」

梓「いいえ、姫子先輩がそう感じたのならそれが正しいかと・・・」

紬「・・・」コクリ

姫子「そうだよね・・・答えはないよね・・・」

梓「!」

夏香「どうするの?姉さん呼ぶ?」

姫子「今は夏と冬と一緒にいてほしい・・・かな」

英子「そうだね。二人とも嬉しそう」

風子「・・・うん、初めて見たあんな二人」

紬「・・・」ニコニコ

梓(・・・答えは・・・なかったんだ・・・)


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最終更新:2011年10月04日 23:17