―――――救護室

冬「いつも夏は私の手を握っていてくれるんです」

紬「・・・」

冬「・・・それが暖かくて・・・よいしょ」

姫子「起きて大丈夫?」

冬「大丈夫です、自分の体は自分がよく分かりますから」

姫子「そう・・・」

冬「では、行きましょう」

紬「・・・」ニコニコ

姫子「行きましょうって・・・帰りましょう、でしょ」

冬「私一人では危ないですから・・・」

姫子「うん、私も帰るよ?」

冬「それはもったいないですから、待ってます」

紬「・・・」コクリ

姫子「・・・?」

梓「『姫子先輩に任せる』そうです」

姫子「勝手な・・・夏・・・」

冬「心配をお掛けしました」ペコリ

澪「大丈夫?」

冬「はい!」

律「じゃ、移動しようぜ~」

和「帰らないの?」

唯「今帰ったら冬ちゃんが気にするよ」

冬「はい。私のせいで帰ってしまうのは嫌です」

純「嫌ですってね・・・」

風子「私と眺めていようか」

冬「いえ、でも・・・」

律「どうせ全員が一度に乗る事なんてできないんだから、順に乗ればいいだろ」

紬「・・・」コクコク

澪「ふむ・・・、じゃあ・・・行くか!」キラキラ

純「行きましょうー!」

唯「テンション戻ったよ!」

憂「・・・行こうよお姉ちゃん」

唯「そうだね、楽しもうようい!」

梓「しょうがないですね・・・」

律「・・・」

冬「・・・」オロオロ

澪「いつまでそんな顔してんだりつー!」バシッ

律「ってえ!」

冬「あ、あのっ、ごめんなさい!」

律「なんで謝ってんだよー」

冬「だ、だって・・・」

唯「りっちゃんがむすっとしてるからだよー」

澪「そうだぞ!遊園地で変な顔するなっ!」キラキラ

律「・・・へいへい」

夏香「・・・本当に冬ちゃんは大丈夫なの?」

姉「うん。私がついているし、なにより今は精神面を育てないとね」

律「あのさ、夏はいつから冬から離れていったんだ・・・?」

姉「・・・田井中さんだっけ?」

律「いえす」

姉「それは好奇心?」

律「そうだな、最終的には自分の為になるかもしれないから・・・好奇心であっているのかも」

姉「・・・自分の為って?」

律「私も探している場所があるから・・・。あの二人を通して見えるのかもしれない」

姉「若いのに・・・あえて踏み込むんだ・・・」

律「若いからだな・・・。みおー!」

姉「こりゃ一本取られたか」

夏香「・・・」

澪「ジェットコースターは待ってくれないぞりつ!」キラキラ

律「双子の件で聞いておいたほうがいいと思ってな」

澪「そうか・・・。むぎじゃなくて私なのか?」

律「今日は私たちが決めたイベントだろ」

澪「・・・そうだな」

姉「この二人はどういう関係?」ヒソヒソ

夏香「幼なじみ」ヒソヒソ

姉「面白い関係だね・・・」プクク

澪「?」

姉「ゴホン・・・。冬ちゃんは命を繋ぐ事ができた。・・・それは知ってる?」

夏香「えっ!?」

律澪「「 はい 」」

夏香「知ってたの!?」

律「二人のお母さんから聞いたんだ」

澪「・・・うん」

姉「その後かな・・・次第にお見舞いに来る回数が減ってきたのは・・・退院の日にも来なかった」

律「どうして・・・?」

姉「そこは私には分からない・・・。ただ、冬ちゃんは嫌われたってつぶやいていた」

澪「それはないな」

律「あぁ、断言できるな」

夏香「・・・」

姉「・・・うん。あの子、夏ちゃんは目を背けているような気がする」

澪「・・・」

姉「眩しいと目が眩むから暗い所を見てなれるのを待つんだけど・・・、夏ちゃんはそんな感じ」

律「・・・」

姉「これくらいだけど」

澪「・・・」

律「・・・冬は・・・どうして短期間で回復できたんだ・・・?」

澪「そういえば・・・そうだな」

姉「!」

夏香「・・・どういう事?」

澪「お母さんの話では高校に入ってからその事が起きているんだ」

律「姫子の話では・・・えぇと・・・今年の7月に入部してるから・・・」

澪「冬はいつ退院したんですか?」

姉「・・・去年の秋・・・ちょうど・・・一年前・・・」

夏香「確かに回復が早い・・・」

律「・・・」

澪「・・・」

姉「律ちゃん、探している場所・・・って・・・?」

律「え?・・・えぇと・・・『最高の場所』ってやつです」

姉「その場所ってどういう場所なの・・・?」

澪「支えてくれる場所だと思います。どんな出来事が起きても、自分を強くしてくれる大切な場所」

姉「・・・なるほど」

夏香「冬ちゃんも持っているって事?」

澪律「「 そうか・・・ 」」

夏香「・・・?」


―――――夜

ガタンゴトン ガタンゴトン

唯「」スヤスヤ

冬「」スヤスヤ

律「結局聞けなかったな」

澪「・・・うん」

姫子「・・・」ハァ

純「今の溜息は結構深かったですよ」

姫子「・・・うん。ちょっとね・・・」

純「私がお役に立てるかもしれませんよ、聞かせてもらいましょうか」ドン

姫子「・・・ううん、ありがと」

純「えー、断って御礼を言われるの嫌ですよぉ」

姫子「わざとおちゃらけて、励まそうとしてくれているんでしょ?」

純「うぐっ・・・」

和「あのね・・・、それを言ったら純の厚意が無駄になるのよ?」

姫子「あ・・・ごめん」

純「・・・」

律「照れるなって」ナデナデ

純「こんな時の優しさは辛いですからっ!」

律「知っててやってんだよ」ナデナデ

純「ひどいっ!」

姫子「ふふっ」

純「えへへ」

冬「」スヤスヤ

澪「・・・あの後、夏はどうだった?」

純「正直に言っていいですか?」

律「お?」

姫子「うん、聞かせて」

純「これ以上私たちが踏み込んではダメです。私は冬と夏の間にある溝が埋まるとは思いません」

和「・・・断言するのね」

純「はい。私たちでは夏の傷を抉るだけで、その傷をどんどん大きくしてしまうだけだと思いました」

唯「」スヤスヤ

冬「」スヤスヤ

律「そっか・・・。人の傷なんて計り知れないもんな・・・」

澪「そうだな、・・・私たちはここまでだ」

和「・・・そうね。・・・そろそろ到着するから起こすわ」

姫子「・・・・・・あっさりなんだ」

純「・・・」

姫子「・・・・・・」

律「さっきは純の厚意を汲んだのに、今は汲み取れないのかよっ」

姫子「え・・・?」

澪「純は向こうの席とこっちの席に線を引いて『私たち』と言ったんだ」

和「・・・そういう事ね」スッ

純「くすぐったい」モジモジ

スタスタ

和「むぎ、梓、憂、風子、英子・・・そろそろ到着するわよ」

紬「・・・?」

梓「ぅ・・・?」

憂「ふわぁ・・・」

風子「あと五分・・・」ムニャムニャ

英子「・・・到着して発車しちゃうよ」

姉「ほら・・・なつ」ユッサユッサ

夏香「・・・起きてるよ」グラグラ

姉「寝たフリ?」

夏香「話し相手が居ないから目を瞑っていただけ」

姉「私はー?」

夏香「本読んでいたでしょ」

スタスタ

和「・・・よいしょ」ストッ

姫子「・・・」ハァ

純「姫子先輩・・・梓だけだと思います。夏の心に触れたのは梓だけですから」

姫子「・・・そっか・・・ありがと」

純「私はなにもできませんでした・・・。なんかズレた受け取り方しか出来ませんでしたから」

律「・・・」

純「律先輩・・・こういう時は・・・」

律「知っててやらないんだけど」

純「ひどいっ!優しくしてくださいよっ」

律「わがままだな・・・みお」

澪「唯、冬起きて」

律「・・・は忙しいから和がやればいい」

和「・・・」

純「・・・」

和「偉いわ」

純「ありがとうございます!」

律「優しいのかそれ・・・」

姫子「・・・」

ガタンゴトン ガタン  ゴトン

プシュー

和「おやすみ」

律「あぁ、おやすみー」

憂「おやすみなさい」ペコリ

澪「明日な」

唯「はいよ!駄菓子屋でね」

姫子「・・・バイバイ」

冬「」スヤスヤ

唯「はいは~い」

スタスタ

澪「帰るか」

律「あぁ、今日も大変だったなー」

冬「」スヤスヤ

姫子「私ってさ・・・心狭いかな・・・」

律「なんでだ?」

姫子「さっき、電車の中で・・・純が言った事で、みんなが二人を見放すように聞こえて
   ちょっと嫌な気分になったんだよね・・・」

澪「心が狭い人なら、冬をおんぶしてわざわざ送ったりしないよ」

姫子「・・・」

冬「」スヤスヤ

律「そうだぜー。むしろその逆で大きくて余計なもんまで抱えちゃってんだよきっと」

姫子「・・・そんな事はないよ」

澪「姫子は冬を見ていればいいんだと思う」

律「そだな、二人はさすがにきっついな」

姫子「・・・」

冬「」スヤスヤ

律「代わろうか?」

姫子「・・・」

澪「おーい」

姫子「・・・」

律「ひーめーこーちゃん!」

姫子「・・・え?」

冬「・・・ぇ?」

律「だから冬をおんぶするの代わろうかって言ってるんだけど」

姫子「大丈夫だよ」

冬「えっ!?また!」

澪「びっくりした・・・。起きちゃったんだ」

姫子「降りる?」

冬「もっ、もちろんです!」

律「その返しは間違ってるぞ」

冬「あ、嫌って意味じゃなくて迷惑だろうからって事で」アセアセ

律「ブフッ」

澪「遊ぶなっ」バシッ

律「いたっ!」

姫子「よいしょっと」

冬「あ、ありがとうございました」

姫子「・・・ううん・・・気にしないで・・・これくらいしか出来ないから」

冬「・・・」

姫子「・・・?送っていくから行こう?」

冬「どうかしたんですか・・・?」

姫子「どうもしないけど・・・」

冬「やっぱり迷惑だったんじゃ」

律「疲れてんだよっ」ビシッ

冬「いたっ」

澪「・・・」バシッ

律「いたっ!・・・え?」

澪「風子から律が冬を叩いたら叱ってとの伝言を承っている」

律「はぁ・・・左様ですか・・・」

冬「ふふっ」

姫子「・・・さ、行こうか・・・」

律「さっさと帰って暖かいお風呂に入って布団に入って、・・・どうしよっかなー」

澪「勉強しろ」

律「嫌だ!布団に入って勉強させるなよっ」

姫子「・・・」

冬「・・・」

冬「上がっていかないんですか?」

律「いいって、私たちも早く帰りたいからな」

澪「うん。よろしく伝えておいて」

姫子「・・・」

冬「はい・・・。せっかく明日もお誘いくださったのに・・・」

律「そんな気にしなくていいって、夏香の姉さんにも言われてんだから」

澪「そうだぞ、明日は念の為に病院へ行くべきだ」

姫子「うん」

冬「・・・はい」

律「じゃーな」

冬「今日も楽しかったです。ありがとうございました」ペコリ

律「ったりめえよ!」

澪「じゃあね、お休み」

姫子「おやすみ」

姫子「早く帰りたいんじゃなかったの?」

律「あー、うん」

澪「翻訳すると、姫子が考えている事を聞かせてくれって」

律「心を読むなっ!」

姫子「・・・」ハァ

律「この流れで溜息吐かれると・・・」

澪「冬も心配していたよ・・・?」

姫子「え?」


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最終更新:2011年10月04日 23:22