唯「はい、むぎちゃん。あーん」

梓「ちょっ!」

紬「・・・」モグモグ

唯「どうかな、おいしい?」

紬「・・・」カァア

唯「ん?」

律「恥ずかしがっているぞー・・・」


風子「・・・」モグモグ

美冬「・・・」モグモグ

ちか「楽しそうだね」モグモグ

エリ「あ、そうだ・・・。春菜ちゃんたち布団もってきた?」

春菜しずか「「 布団!? 」」

アカネ「持参するものじゃないよ」モグモグ

春子「広い寝茣蓙があるけど、上からかけるものは限られててさ」モグモグ

圭子「朝方は冷えるから油断したら風邪ひいちゃいそう」

信代「やけに慣れてるけど、よくやってるの?」

春子「うん、合宿とかね。名ばかりで遊んでばっかだけど」モグモグ

潮「ほぉ」

春菜「みんな泊まるの?」

エリ「んー・・・。みんなではないんじゃないかな?」

アキヨ「・・・」モグモグ

千雨「・・・」

信代「2年生食が進んでないねー。萎縮しちゃってるのかな?」

来美「それもあるんですけど・・・」

由記「あの二人がその・・・」

憂「見た事の無い素顔っていうのかな、新鮮だよね」

千雨「・・・うん・・・特に梓」


紬「・・・」シュルルルル

澪「耐え切れず解いたか・・・」

梓「あ・・・」

夏「梓が積極的すぎるから・・・」フゥ

紬「・・・」ニギニギ

律「大丈夫なのか・・・?」

紬「・・・」ヒョイヒョイ

さわ子「お箸くらいは問題ないみたいね」

紬「・・・」モグモグ

唯「どう?」

紬「・・・」パァア

冬「おいしいですよね~」

姫子「過保護だったかな」

梓「・・・」

風子「・・・」モグモグ

冬「ここ座ってもいいですか?」

風子「うん・・・。どうぞ」

冬「あ、あの・・・」

風子「なにかな?」

冬「よそいます!」

風子「あ、うん・・・」

英子「・・・」モグモグ

冬「えと・・・嫌いなものとかありますか?」

風子「この鍋の中にあるもの全部食べられるよ」

冬「わ、分かりました」ヒョイヒョイ

夏香「嫌いなものってあったっけ?」

風子「・・・レーズンくらいかな」

冬「私も嫌いでしたよ。はい、どうぞ」

風子「ありがと・・・。過去形だね」

冬「はい。食感が苦手で、どうしてわざわざぶどうを干すのか・・・って」

夏香「・・・なるほど」

風子「うんうん」

冬「でも、私が入院している時に夏が持ってきたんです。『身体にいいよ、Fe成分が豊富なんだよ』って」クスクス

風子「・・・っ」

冬「でもその時はFeが鉄分だなんて知らなかったんです夏は」

夏香(姉さんから聞いたことある・・・)

冬「先生に身体にいい食べ物はなにか聞いていたそうで・・・。それを看護師さん、夏香先輩のお姉さんから聞いて
  食べるようになりました」

風子「・・・そっか」

冬「ありがとうございます」

風子「?」

冬「いつも遊んでくれて、一緒に居てくれて」

風子「っ!」

冬「風子先輩もいてくれたから、縁が遠い先輩方とも一緒にいられるんです」

風子「そ、そんなことっ」

英子(限界かなぁ・・・)

律「すまん、こっちの鍋をつつかせてくれ」

冬「どうしてですか?」

律「唯がまた変なの入れたんだよ・・・。はい、お願い冬ちゃん」ウフ

冬「は、はい」

律「鶏肉と白菜と長ネギと豆腐ともやしを黄金比で頼む」

冬「え、えぇと、鶏肉と・・・豆腐と・・・もやしと・・・白菜・・・」ヒョイヒョイ

風子「律さん、苦手なのってある?」ヒソヒソ

律「まいたけだな」

冬「長ネギ・・・まいたけ・・・っと。よし」

律「なんで!?」

冬「すいません・・・黄金比は難しかったです」

律「ちげえ!まいたけ苦手って言っただろ!」

冬「そうなんですか・・・?」

風子「よそったものはもう戻せないよね」

律「そ、そうだけどさ・・・」

英子「ふぅの声が小さかったから、冬ちゃんには聞こえなかったみたい」

夏香「相変わらずいじわるだね・・・」

ガラガラッ

姉「こんにちはー!」

夏香「なんで!?」

夏冬「「 あっ! 」」

紬「・・・」ニコニコ

テッテッテ

春子「え、と・・・?」

姉「私、夏香の姉やってます。荷物を持ってきました」

春子「はぁ・・・。夏香ー」

テッテッテ

夏香「・・・どうして、ここへ?」

姉「それはねぇ」

春子「ここで立ち話もなんですから、よければご一緒してください」

姉「お言葉に甘えまして~」

テッテッテ

夏香「・・・」

風子「なっちゃん、お姉ちゃんが来て顔が青くなった」

英子「・・・びっくりしてるだけだよ」

律「まいたけうめえ」モグモグ

姉「ここ失礼するねぇ」

アキヨ「どうぞ」

姉「いい香り~」

冬「どっ、どうしたんですか!?」

姉「紬さんに誘われててね~」

憂「どうぞ~」

冬「紬先輩が?」

紬「・・・」コクリ

姉「ありがとうー。憂ちゃんだよね?」

憂「はい」ニコニコ

姉「仕事終えて・・・この癒し空間は満たされるなぁ・・・」ウットリ

さわ子「分かるわぁ」

姉「あ、先ほどはどうも」

さわ子「こちらこそ、ありがとうございました」

姉「いえいえ。紬さん、手は?」

紬「・・・」ブイッ

姉「・・・よさそうね」

純「馴染むのはやいな~」

姫子「・・・うん」

いちご「・・・職業柄なのかな」

夏「看護師さん、よそいますよ!」

姉「ここでそれは止めてほしいな」

夏「では、なんとお呼びしましょう?」

姉「お姉ちゃんでいいよ」

夏香「・・・」ハァ

ちか「すごいね、この場の空気をもっていっちゃった・・・」

潮「私たちは端っこで、もそもそと食べていようか」

由記「え・・・」

信代「変なこと教えないでね」

夏冬「「 お、お姉ちゃん・・・ 」」

姉「・・・」バタン

多恵「?」

夏香「放っておいていいから」

風子「雰囲気が似てるね」

姫子「・・・うん」

未知子「誰と似てるの?」

姫子「・・・ちょっとね」

姉「冬ちゃんが入院していた時、姫子さんの話よく聞いてたよ」

姫子「?」

夏「さて、と・・・」スッ

冬「夏ってば・・・」

姫子「なんですか?」

姉「遊園地行ったときは話せなかったけど、もういいよね」

英子「はい」

夏香「うん」

和「・・・」

姫子「?」

姉「送球をミスったりとか」

姫子「夏はどこへ行ったの?」

冬「お、お手洗いです」

姫子「・・・」ゴゴゴ

澪「興味あるな」

唯「うんうん、他にはなにがあるのかな?」

姉「それはねぇ」

冬「あーはやくたべないとこげちゃいますよー」

律「焦げねえよ、なんだよその棒読みは」モグモグ

風子「知らないんだ・・・鍋って焦げるものなのに・・・」

律「どうせ長時間火に通していたらー、とかだろ?ひっかかりませーん」

風子「・・・ふふっ」

律「ちょっとまて、鍋料理なんだから水分でこげたりしないだろ」

風子「誰も鍋料理なんて言ってないよ。雑炊を焦がしちゃう事もあるって話だよ」

律「そ、そうか・・・」

風子「この後楽しみだね~」

冬「は、はい・・・」

律「た、卵だな。卵雑炊にしようぜ!」

風子「雑炊なんてしないよ?ラーメンにするんだけど」

律「もうやだ」シクシク

スタスタ

夏「・・・?」

冬「なつ・・・野菜を取ってぇ」

夏「うん、持って行くよ」

冬「ありがとー」

姉「・・・」ナデナデ

冬「あ、あの?」

姉「よく頑張ったね」ナデナデ

冬「・・・・・・はい」

律「うむ・・・」ナデナデ

冬「あ・・・の・・・」

夏「どうぞ」

姉「ありがと~」

姫子「・・・何をお話したって?」

夏「さて・・・席に戻ろうかな」スッ

姫子「・・・」クイッ

夏「違うんです・・・」

つかさ「・・・」モグモグ

グツグツ

紬「・・・」ガサゴソ

唯「・・・甘いね」

梓「どうしてマシュマロ入れたんですか」

唯「それは・・・その・・・」タラタラ

さわ子「・・・まだ具が残ってるわよ」

澪「はい・・・。律・・・上手く逃げたな」

紬「・・・」ジャン!

梓「カレーのルウ・・・いつの間に買っていたんですか・・・?」

紬「・・・」トントントトン

梓「手・・・痛くないですか・・・?」

紬「・・・」キリ

梓「・・・」ホッ

澪「買出しに行ったとき・・・?」

唯「その時に買ったの?」

紬「・・・」コクリ

さわ子「そういえば、他の学生服の子たちもいたわねぇ」

梓「そういえばそうですね・・・、その人たちがどうしたんですか?」

紬「・・・」トントトントトン

梓「闇鍋を・・・しようとしていたんですか・・・」

澪「冒険心あるな」

紬「・・・」トントントントトン

澪「『最終的に鍋にカレーさえ入れちゃえば大概のものは結構なんとかなるから、ね?』」

梓「ずいぶんとこなれた風の助言ですね・・・」

紬「・・・」コクリ

さわ子「でも、闇鍋するわけじゃなかったのにどうして買ったのよ」

紬「・・・」チラッ

唯「・・・へい、すいやせん」

梓「なるほどです。この鍋はこれからカレー鍋でいいでしょうか」

澪「うん。異議なし」

さわ子「えぇ、いいわよ」

唯「おぉ、いいね!」

紬「・・・」ポキッ ヒョイ

グツグツ


・・・・・・


俊美「あれ、カレーの匂いがするよ?」

ますみ「・・・あっち」

美冬「カレー鍋に変更したんだね、紬さんたちのところ」

ちか「・・・」

愛「どうしたの、ちかさん?」

ちか「あ、うん・・・。学園祭過ぎちゃったらどうなるのかなぁって・・・」

愛「28日は振り替えで休みだから・・・、ちょうど来週からですよね・・・」

いちご「普通に戻れるのかなって・・・?」

ちか「う、うん・・・」

愛「普通・・・」

和「もう夏前の日常には戻れないわね」

ちか「!」

未知子「・・・」

和「私たちクラスの席が一つ空くのよ」

美冬(そんなはっきりと言わなくても・・・)

ちか「・・・」

いちご「もう、みんな乗り越えているの?」

和「なにを?」

いちご「・・・むぎと、卒業できないという事実を」

和「・・・どうかしら、ね」

いちご「曖昧に答えるんだ・・・。どうして、そんな『席が空く』なんて表現したの?」

ちか「い、いちごさん・・・?」

未知子「寂しい表現だったよ、紬さんと一緒にいられなくなるって事実を突きつけられた」

和「その事実を受け止めているのよ」

いちご「・・・」

和「そして、乗り越えるのはこれから・・・」

未知子「まるで見てきたかのようだね」

和「えぇ、見てきたわ。唯とむぎと、あの夏の中でね」

いちご「・・・」

和「いちごはどうかしら」

いちご「私は、その旅に参加していない」

和「姫子を通して見えたモノは無い?」

いちご「・・・」

和「姫子は冬と夏の間にある、切れそうな糸を繋げようともがいていたわ」

未知子「・・・そう・・・なの?」

和「・・・はっきりと出さないから、なんとなくだけど」

いちご「・・・」

ちか「繋げたのは姫子・・・さん・・・?」

いちご「・・・ちがう」

未知子「・・・」

いちご「きっかけをいつも作っていたのが、姫」

和「・・・」

ちか「それじゃあ・・・?」

美冬「ひょっとして・・・あの中に居ることで繋がった・・・?」

愛「あの中・・・?」


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最終更新:2011年10月05日 20:14