353. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/03(土) 19:44:02.10 ID:/tE7ZYkDo
梓「・・・ハンカチ使ってください」

唯「あり・・・がと・・・」ビィイイイイ

姫子「鼻かんだ・・・」

澪「お約束だよな」

梓「そうです」

紬「・・・」ニコニコ

轍(なるほど・・・)

唯「自分の夢があってね、その夢を叶える為に頑張っていたんだよ
    だけど、社会の厳しさが、現実の厳しさが、あの子の夢を潰そうとするの」

和「まだ高校一年15歳の子が・・・ね」

風子「あ、そうか・・・あの子がそうだったんだ」

律「やっと気づいたか風子〜」

風子「だ、だって・・・前のあの子の姿見たことないから。私あまりテレビみない」

轍(テレビに出てくる子なのか・・・。アイドル・・・?)

唯「その夢はとっても素敵なんだよ。『みんなが笑顔』という言葉が入っているんだもん」

姫子「うん、素敵な夢だね」

唯「道が険しくても、見えない力で潰されそうでも、あの子は頑張ったんだよ。頑張っているんだよ」

轍「勇気を貰ったから・・・貰っているから、じゃないかな・・・」

紬「・・・」コクリ

梓「・・・」

唯「そうだと嬉しいよ〜」

純「そうですよ、今でもこれからも応援していくじゃないですか!」

唯「そうだよ!」

和「ふふっ、あの子も大変ね、止まる事は許されないみたいじゃない」

唯「疲れたら休んでいいよ〜」

憂「そうだね、ゆっくり休んで・・・いいよね」

唯「そうだす!」

律「うわ、また使い出した」

いちご「?」

澪「お気に入りらしい」

姫子「ふふっ、変なの」

玉恵「人は独りでは生きていけない。生きちゃいけないんだね」

唯「うん・・・だって、寂しいもん」

澪「そうだな・・・」
354. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/03(土) 19:44:53.00 ID:/tE7ZYkDo
風子「・・・ふぅ」

信代「どうしたのさ?」

風子「話が少し大きくて・・・お腹いっぱい・・・」

唯「マシュマロあるよ〜」

さわ子「焚き火で少し焼くとおいしいのよね〜」

律「マジかっ!」

唯「やってみよ〜」

ジュー

憂「近づけすぎだよお姉ちゃん」

唯「だいじょうぶだよ〜。・・・ふぅちゃん、聞くの疲れちゃった?」

風子「ううん・・・。大丈夫、もっと聞きたい」

律「そんじゃ次は澪」

澪「ライブをやったんだ。名古屋で」

玉恵「聞いたよそれ」

唯「焦げちゃった」

澪「楽しかった」

春子「それも知ってる」

憂「焦げた部分ははがせるんじゃないかな」

唯「おぉ、ほんとうだ」

澪「そう!名古屋の遊園地でジェットコースターに乗ったんだ!」

「「  えぇっ!?  」」

轍玉恵「「  ん?  」」

澪「すっごく楽しかった!」キラキラ

律「あ、やべ・・・」

梓「少しずつテンションが上がってきましたね」

紬「・・・」コクリ

澪「長島スパーランドは・・・私にとって楽園だ・・・桃源郷だ」キラキラ

姫子「ちょっ・・・澪!?」

和「大丈夫よ、正常だから」

信代「いやいや、こんな澪は正常じゃないよ」

澪「スペースショット・・・ホワイトサイクロン・・・ジャンボバイキング・・・」キラキラ

風子「全部迫力のあるアトラクションだ・・・」

春子「おいおい・・・」

いちご「・・・どうしたの」
355. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/03(土) 19:45:58.59 ID:/tE7ZYkDo
姫子「和・・・例えじゃなかったの・・・?」

和「例えにしておけば、イメージ崩れないでしょ?」

轍「なるほど」

玉恵「キャラが激変したからみんな驚いているのね」

純「また行きましょうね、澪先輩!」

澪「よしっ!」ガタッ

律「今からでは間に合わねえよ。ってかどこへ行こうとしてるんだよ」

さわ子「・・・こうなると少しやっかいなのよね〜」

憂「・・・」モグモグ

風子「み、澪さんがこれくらいハイになる程楽しいんだ・・・」ゴクリ

澪「近いうちに一緒に行こうな、風子!」

風子「うん!」

紬「・・・!」

唯「いいね!」

春子「あはは、紬も便乗したな」

梓「・・・」

純「・・・」

憂「・・・」

律「・・・」

和「・・・」

姫子「・・・」

さわ子「・・・」

轍「?」

澪「・・・あ・・・・・・」

紬「?」

信代「どうした?」

玉恵「今度は澪ちゃんの話を聞かせて欲しいな〜」

澪「はい・・・」

春子「あれ、テンション急降下?」

律「素に戻ってしまったんだ、言ってやるな」

風子「?」

唯「一番最初に乗った絶叫アトラクションがフリーフォールなんだよね」

澪「うん」
356. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/03(土) 19:47:50.01 ID:/tE7ZYkDo
いちご「最初は怖くなかったの?」

律「文字通り絶叫してたぜ〜」

澪「いうなっ!」

轍「・・・」

唯「あれ、どうして乗ろうと思ったの?」

澪「そ、それは・・・」モジモジ

春子「それは?」

澪「じ、自分を変えたかったから・・・
    り・・・みんなに引っ張ってもらってばっかりで、弱いままだったから」

姫子「・・・」

澪「きっかけが欲しかった。ただ、それだけの理由で乗ったんだ」

さわ子「・・・」

梓「知らなかったです」

紬「・・・」コクリ

律「言ってないからな」

澪「言うものでもないしな」

和「そうね・・・」

憂「・・・」ヒョイ

パキパキパキパキ

唯「うい・・・?」

憂「うん・・・?」

唯「どうしたの?」

憂「ううん・・・なんでもないよ・・・」

唯「・・・」

轍(なんだろ・・・5人を中心としてるけど・・・どこか崩れそうな感覚・・・)

澪「私の旅は・・・列車に乗車する前から始まっていたんだ」

玉恵「・・・どうしてそういえるの?」

澪「乗車する前に出会った人たちがいたから。その人たちと一緒に景色をみてきた」

律「そうだったな。他人にすぐ気を許していたから、むぎと私はびっくりしたんだぜ」

紬「・・・」ニコニコ

澪「その人たちと出会って、私の旅の方向性が決まっていたんだ。その時は全然気づかなかったけど」

春子「方向性・・・」

澪「強くなる事・・・。みんなについて来いって言えるくらいの自信を持つ事」

さわ子「・・・そうだったのね」
357. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/03(土) 19:50:18.11 ID:/tE7ZYkDo
澪「その人たちはコンビで、出会って10日くらいでお互いを信頼していて、唯一無二の存在になったんだ」

轍「・・・へぇ」

澪「お互いを引っ張り合って、お互いを高めあって、お互いを補い合って・・・強く突き進んでいくんだ」

律「とても頼りなさそうな雰囲気で、ずっとおちゃらけているんだけど、心の中では支えあっていた」

澪「うん・・・。私もりつと、むぎと、ゆいと、あずさと、そういう関係になりたいと思った」

姫子(澪がこんな事言うなんて・・・)

澪「だから私はその二人に付いて行って、一緒に観光地を周ったりして、学んでいったんだ
    とても楽しかった。二人といるのが・・・、お互いを引っ張り合っていく二人をみているのが」

春子「・・・」

澪「でも、そんな二人がなんの前触れも無く、別れる事になった
    二人でいればどこまでも突き進んでいけるのに、お互いを支えあえるのに
    足りないものを補っていけるのに、強く・・・いられるのに・・・だ」

梓「・・・っ」

澪「一緒に自分の夢を追いかけ続ける選択肢もあったと思う。
    けど相棒の将来を大切に想って決断したんだ。別れる事を」

風子「・・・」

澪「二人は全く同じ景色をみて、同じ経験を積んでいたんだ。だからこの先もずっと繋がっていける」

いちご「別れたんでしょ?」

澪「うん・・・。別れても、二人は互いを想っている。それほど強固な絆なんだ」

信代「・・・」

澪「私は焦っていたんだ。旅をしてきて、りつもゆいもあずさもどんどん自分を高めていった
    先を歩くみんなに置いていかれるような気がして・・・な」

律「・・・」

澪「だけど、あの二人をみて、それぞれの道を歩んでいった姿をみて・・・私は震えて立ち止まってしまった」

純「・・・」

澪「私は・・・嫌なんだ、大切な人と別れるのが。お互いを高めていける存在を失うのが
    私には耐えられない事だと・・・知った」

梓「・・・!」

澪「みんなに追いついて、別れの時がくる事が。離れてしまう時が、怖くなった」

轍「・・・」

和「・・・」

澪「だけど、迎えに・・・っ・・・来てく・・・っ・・・れた・・・人がいた・・・っ」

玉恵「・・・」

澪「・・・」スゥ

唯「・・・」

澪「・・・」ハァ

律「・・・」
358. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/03(土) 19:51:15.19 ID:/tE7ZYkDo
澪「むぎ・・・なんだ」

紬「・・・!」

澪「むぎは・・・私に・・・手を・・・差し伸べてくれた・・・私の手を掴んでくれた・・・私を引っ張ってくれた
    みんなと一緒にいると、教えてくれたんだ」

梓「・・・」

澪「人と人は必ず別れる時がくる。どんなに望んでいなくてもだ
    だけど、むぎが教えてくれた。それは意味のあることなんだって」

玉恵「・・・」

澪「とても・・・大切な事なんだって」

紬「・・・」

澪「今、変われた自分がいるのは・・・あの二人と・・・むぎの・・・おかげなんだ」

紬「・・・」
    
澪「・・・」フゥ

唯「・・・」ジーン

純「・・・」ジーン

姫子「・・・」ジーン

轍(・・・うん)

風子「・・・っ」グスッ

澪「・・・え!?」

憂「感動しちゃいました」

和「えぇ・・・」

信代「胸にきたよ」

いちご「・・・いい経験だったんだね」

春子「・・・なるほど、納得だ」

梓「・・・」

澪「・・・ぁ・・・ぅ・・・」オロオロ

律「と、まぁ・・・大して変わっているわけでもなく」

澪「うるさいっ」バシッ

律「あいたぁ!」

紬「・・・」

さわ子「・・・」モグモグ

玉恵「いい具合に焼けてるよ」

梓「・・・そうですね」

澪「よし、これおいしそうだ・・・。・・・はい、むぎ」

紬「・・・」

澪「・・・」
359. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/03(土) 19:52:06.79 ID:/tE7ZYkDo
純「なんか会話してるっ!」

玉恵「じゃあ私達もこころで会話してみよう」

轍「は・・・?」

玉恵「・・・」

轍「・・・」

唯「・・・」ゴクリ

玉恵「・・・」

轍「なにも考えてないだろ?」

玉恵「うん」

律「くだらねえ・・・」

姫子「ふふっ」

いちご「クスクス」

信代「いい話の後だけに・・・」

春子「脱力感が・・・」

梓「・・・」

さわ子「順番的には梓ちゃんじゃないの?」

風子「聞きたいな」

梓「・・・」

澪「梓・・・?」

紬「・・・?」

梓「わ、私・・・みなさんの飲み物もってきます」

憂「私も手伝うよ」

テッテッテ

唯「おぉ、もうなくなってたよ」

純「手伝ってやるかなー」

テッテッテ

律「梓のヤツ・・・」

玉恵「なにかあったの?ずいぶんと毛嫌いされてるけど」

轍「・・・プライバシーに触れてしまってな。・・・真鶴ちゃんに注意されていたのに」

さわ子「しょうがないわねぇ」

360. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/03(土) 19:54:29.25 ID:/tE7ZYkDo
梓「『勇気を貰ったから・・・貰っているから』・・・むぎ先輩が言うハズだった言葉だよ」

憂「お姉ちゃんの話を聞いたとき?」

梓「うん」

純「それで、どうしてイラついてんのさ」

梓「知らないよっ」

憂「知らないままだと、焚き火の場所へは戻れないよ?」

純「そうだよ、一人だけ変な空気纏っているわけにいかないじゃん」

梓「・・・」

憂「相馬さんのどこが嫌なの?」

純「ストレートな疑問だな」

梓「・・・外から入ってきた人なのに、知ったモノの言い方するから」

憂「相馬さんがどういう人か知らないからじゃないの?」

梓「憂は知ってるの?」

憂「・・・知らない・・・ね」

純「・・・私もよく知らない。・・・けど」

梓「けど?」

純「玉恵さんの事も知らないじゃん」

梓「!」

憂「うん・・・。あの旅で梓ちゃんが出会ってきた人も最初はそうだったよね」

梓「・・・っ」

純「なんだ・・・、梓の一人相撲か〜」

梓「違うよ・・・ただ、一つ一つ的を射た言葉が嫌なんだよ」
361. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/03(土) 19:56:15.67 ID:/tE7ZYkDo
憂「・・・」

梓「私たちは一緒に悩んで、行動して、辿り着いたんだよ
    それをあの人は一足飛びで辿り着いちゃう・・・。私たちが苦労しているのに」

純「苦労ねぇ・・・」

梓「別に、答えを出して欲しいわけじゃなくて・・・。楽をしたいわけでもないんだけど」

憂「玉恵さんと同い年くらいだよね」

純「そうだな・・・。年が近いと気軽に話せるって気いた事がある」

梓「・・・」

憂「私たちより7つ上・・・。7年の経験差があるから、それはしょうがないんじゃないかな」

梓「・・・うん」

純「解決した?」

梓「・・・」

憂「もう大丈夫だよね、戻ろうよ」

純「紬先輩と一緒にみてきた旅の話・・・するの?」

梓「・・・分からない」



・・・・・・



轍「封印するの?」

律「しないっ!」

轍「どうして?結構固い決意に見えたけど」

律「もっと高みへ連れていってくれそうなんだ
    なくした歌を取り戻す為に・・・なんつって」

轍「そうか・・・」

律「なんだよ、変な事言ったのに納得すんなよー」

轍「なんとなく、意味は分かったから。さっきの話を聞いててさ」

律「あっそ・・・」

轍「そろそろ俺は失礼しようかな」

律「ひき止めはしないぜ」

轍「キミ達面白いよね」

律「お褒めに預かりまして嬉しく思いますわ」オホホ

澪「・・・」

律「そこ!変な目で私をみない!!」
362. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/03(土) 19:57:22.41 ID:/tE7ZYkDo
轍「玉恵も、あまり邪魔するなよ」

玉恵「え、邪魔ってなに?」

轍「学校?がりで来ているんだから、部外者が入ると変な空気になるだろ」

玉恵「そうなの?」

さわ子「どうなの?」

風子「え・・・と春子ちゃん、どうなのかな?」

春子「えーと・・・唯どうなんだよ?」

唯「ん・・・?澪ちゃんどうしたの?」

澪「・・・変な空気になってないかって話だよ・・・どうなんだろ?」

姫子「変な空気・・・なにがあったの?」

いちご「・・・なにもないけど・・・なにかやるの信代?」

信代「・・・まだイベントがあったのか・・・あ、アレかな?」

和「・・・実行するの?」

純「アレってなんですか?」

憂「さっき言ってたフォークダンスだよね、梓ちゃん」

梓「それはないよ」

紬「・・・」ガーン

玉恵「ないんだってさ!」

轍「話の流れみてただろ」

律「なにやってんだか」

純「みなさんどうぞ〜」

風子「ありがと〜」

玉恵「気が利く後輩ちゃんですね〜」

轍「まったく・・・」

憂「あ、相馬さん・・・。相馬さんの旅の話を聞かせてくれませんか?」

梓「・・・」

轍「え・・・?」

玉恵「いいじゃん、話なよ」

轍「玉恵もそういう仕事してるんだろ、俺よりそっちがいいんじゃないか?」

唯「それじゃ北海道の話も聞きたいな〜」

轍「・・・」

玉恵「私が北海道で、轍さんが沖縄の話ね」

轍「はいはい」

律「お、興味あるな〜。北海道は4年前なんだよな」
364. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/03(土) 20:53:03.07 ID:/tE7ZYkDo
澪「沖縄は・・・?」

轍「先月だよ」

さわ子「新鮮なネタじゃない。みんな、おやつ用意して!」

唯「なにを言ってるんだい、さわちゃん」

轍「真剣に聞いてくれるんだね・・・それはこっちも気が抜けないな」

玉恵「そうだね」

律「あ、なんかスマン」

唯「うちの妹を甘く見てもらっては困るよ!」

憂「ど、どうぞ・・・」

さわ子「あら、言うまでもなかったのね」

和「・・・気を取り直して・・・、どうぞ」

轍「・・・」
365. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/03(土) 20:54:22.77 ID:/tE7ZYkDo
玉恵「4年前、私は釧路港に辿り着いた。一台のバイクと共に」

姫子「・・・」

玉恵「その時の私は、無知で、世間知らずで、無謀そのものだった」

紬「・・・」

梓(雰囲気が・・・)

澪(さっきまでとは全然違う)

律(なんだ・・・?)

玉恵「どうして無謀かといったら、買ったばかりのバイクで北海道を走ろうとしていたから」

風子「・・・?」

春子「よく分からないな。どうしてそれが無謀なの?」

玉恵「バイクのメンテナンスなんてした事なかったからだよ」

轍「・・・うん」

姫子「・・・そうですね。北海道の距離を走るのなら、バイクを整備する知識は必要ですよね」

玉恵「その通り。案の定、タイヤ空気が抜けて立ち往生しちゃった訳だ」

信代(・・・さっきまでおちゃらけていたのに・・・なんか怖いな)

純(どうしたんだろ・・・)

玉恵「そこを通りがかったのが轍さん。その時は顔見知りだったから声をかけてくれた」

唯「どゆこと?」

轍「船の上で出会っていたんだ」

唯「なるほどぉ」

さわ子「・・・」ヒョイ

パキパキパキパキ

玉恵「あっという間に直してくれてとても助かった。それでも私は自分の愚かさには気づかなかった」

憂「愚かさ・・・」

玉恵「うん・・・。自分の意志で北海道の大地に降りて、自分の力を試していたハズなのに
      初っ端から無力さを思い知らされたのに、助けられた事自体にきづかなかったんだよ」

梓「・・・」

紬「・・・」

玉恵「『なんとかなった』ってね」

さわ子「『運が良かった』よね」

玉恵「そうなんだ。自分の力で乗り越えたような、自由になれた気分でいたんだよ」

唯(・・・怖い)

玉恵「轍さんと別れて、とりあえず走った。目的地なんてなかった。
      後ろから来るなにか、から逃げるようにひたすら前に進んだ」

風子「・・・」ブルッ
366. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/03(土) 20:55:10.71 ID:/tE7ZYkDo
姫子「・・・」ヒョイ

コロコロ

姫子(・・・コントロールが・・・・・・)

紬「・・・」スッ

姫子(あ・・・拾ってくれた・・・)

紬「・・・」ヒョイ

パキパキパキパキ

律(なんだよ、この空気・・・)

玉恵「それからは轍さんと何回か観光名所で会って、話をするようになった。
      話を聞けば『最高の一枚』を撮りたい・・・とね」

唯「うまさんのお父さんの?」

轍「うん・・・親父が撮った『最高の一枚』を越える為に、俺は北海道を旅していたんだ」

純「それは・・・越えることが出来たんですか?」

轍「それはまた話が変わるから。今は玉恵の話ね」

梓「・・・」

純「は、はい」

玉恵「・・・被写体を探しているけど中々みつからないと言って焦っていた」

轍「そんな風に見えていたのか・・・?」

玉恵「うん。『最高の一枚』は別に人を写さなくてもいいはずでしょ?」

轍「・・・」

姫子「あの雑誌のように・・・ですね」

いちご「・・・うん。他にもいい写真がたくさんあった」

玉恵「・・・それで、私を被写体に撮りたいと言い出した」

轍「言い出したってなんだよ、俺が必死に催促してるみたいじゃないか」

律「うわ・・・」

信代「うわぁ・・・」

梓「・・・フッ」

轍「見ろ、ドン引きだ!」

玉恵「あっはっは!」

唯「あはは」

風子「ふふっ」

純「梓・・・鼻で笑った・・・」
367. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/03(土) 20:56:13.93 ID:/tE7ZYkDo
轍「・・・ったく」

さわ子「・・・引き受けたんですか?」

玉恵「ううん。すっぽかした」

轍「旭川で約束したんですよ。キャンプの段取りを教える代わりに、被写体になるって」

和「・・・どうして・・・?」

玉恵「・・・事故っちゃいまして」エヘヘ

紬「!」

梓「え!?」

轍「嘘つけ・・・。俺、警察に調べてもらったんだぞ。近くの病院にも連絡したけど
    それらしい人は運び込まれてない、診察されていないってな」

玉恵「・・・」

轍「・・・1週間、調べたんだからな」

玉恵「・・・てへっ」

轍「腹立つ・・・」

律「嘘かよ・・・」

轍「4年前の話だから・・・もういいけど、なんともなくて良かったよホント」

玉恵「痛み入る」

憂「侍ですね」

姫子「・・・玉恵さんは、その旅で得たものってありますか?」

轍「いい質問だ」

唯「どうなの、どうなの!?」フンフン

澪「落ち着け」

玉恵「得たものは無かった。という事実を得たかな」

風子「何もなかったって事ですか・・・?」

玉恵「うん・・・。家に戻って、虚無感・・・っていうのかな。とてつもない、やりきれなさを感じた
      私は・・・北海道へ・・・何をしに行ったんだろう?」

律「・・・」

澪「・・・」

唯「・・・っ」

紬「・・・」

憂「・・・」

純「・・・」

梓「っ!」ゾクッ
368. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/03(土) 20:56:53.92 ID:/tE7ZYkDo
さわ子「・・・それからどうしたんですか?」

玉恵「バイクに乗って・・・走った。ひたすら・・・走った・・・」

信代「それで・・・」

クイッ

信代「姫子?」

姫子「待って・・・そこから先は・・・」

いちご「・・・き、聞きたくない」

春子「・・・」

轍「お前は・・・!」

玉恵「・・・」

轍「ちょっと来い。話がある」

玉恵「いいじゃんここで」

轍「・・・なにがしたいんだよ」

玉恵「黙っていることが悪いことだと、教えたいだけだよ」

梓澪律「「「  !  」」」

和純姫子「「「  ・・・  」」」

さわ子「・・・」

憂「・・・」

轍「・・・」

唯「どうしたの、みんな?」

紬「・・・」

玉恵「轍さん、気づいていたの?」

轍「どっちだよ」

玉恵「私の方だけど・・・」

轍「今もそんなに冷えていないのに、一人だけジャケット着てるからな・・・
    話の流れもおかしいから、もしやとは思っていたんだよ」

和(そういう意味だったのね・・・)

玉恵「・・・さすが轍さん・・・4年前より頼もしいよ」

轍「今さらおちゃらけるなよ。沖縄の話がひかえているんだから、さっさと話してしまえ」

玉恵「・・・うん。ごめんね、空気を換えてくれたのに」

梓「・・・」

姫子「・・・」

玉恵「ひたすら走って、本当に事故った」

梓「!」

姫子「!」

紬「・・・!」
369. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/03(土) 21:00:46.79 ID:/tE7ZYkDo
玉恵「これ・・・みて・・・」ズルッ

律「・・・っ」

澪「ッ!」

信代「うわ・・・・・・あっ・・・ごめんなさい・・・」

玉恵「ううん・・・正直な感想だもんね、気にしてないよ
      目が覚めたら病院のベッドの上。4日寝てたみたい。その後1年ちょっとのリハビリ」

律「ま、マジかよ・・・」

風子「・・・っ」

玉恵「この腕の傷が証拠だよ。でもね、そのおかげで今の私がいるんだよ」
      
紬「・・・」

玉恵「とっても強くなれた自分がね。それが北海道の旅で得られたモノになった」

梓「・・・」

春子「・・・よく・・・バイクに乗り続けていられますね」

玉恵「好きになったからね。旅が、バイクで走るのが」

姫子「・・・」

律「・・・」

梓「・・・」

紬「・・・」

風子「・・・」

玉恵「おしまい」

シーン

玉恵「・・・」
370. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/03(土) 21:02:20.31 ID:/tE7ZYkDo
轍「冷えきったぞ」

玉恵「沖縄の暖かさで上昇させてよ」

轍「勝手なことを・・・」

さわ子「あの料理の名は・・・なんでした?」

轍「あぁ、スクガラスですよ」

さわ子「スクガラス・・・はご自分で?」

轍「いえ、お土産に持たされたものです。もちろん自家製」

唯「最初は塩辛くて大変だったけど、噛んでいると味が出ておいしかったよ」

梓「のどに骨がささって大変でしたよ」

轍「頭から食べて、って言ったのに・・・。骨が硬いからよく噛まないと」

梓「・・・聞いてませんよ」

轍「・・・」シーン

憂(相性悪いのかな・・・)

澪「どうして沖縄へ?」

轍「『ニライカナイ』から手紙がきたから」

「「  ?  」」

轍「シャンバラ、マグ・メル、シャンゼリゼ、さっきも出てきた桃源郷などが・・・」

「「  ???  」」

轍「あー・・・、まぁ、理想郷だよ」

唯「うむ」

和「分かってないでしょ」

唯「なんとなく分かったよ」

律(この表情は・・・分かってねえな)

風子「ユートピアですよね。とても理想的な場所だけど、どこにもない場所」

轍「そう・・・。詳しいね」

風子「本に出てきたのを思い出しました」

轍「大抵は死後の世界として認識されているんだ。手紙もそこから来たんだ」

信代「オカルト・・・?」

澪「・・・」ゴクリ

紬「・・・」ゴクリ

轍「・・・相棒からの手紙だったんだ」

玉恵「・・・!」

澪「・・・」ホッ

梓(澪先輩はこういう話苦手のはず・・・)

純「・・・?」
371. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/03(土) 21:04:08.65 ID:/tE7ZYkDo
律「・・・」

さわ子(死後の世界のニライカナイ・・・そこにいる相棒さんからの手紙・・・ってことかしら)

姫子(・・・詮索しないほうがいいかな)

風子「律さん・・・、相棒さんって・・・?」ヒソヒソ

律「あぁ・・・、親友だった人・・・だってさ・・・」

風子「・・・だった・・・って・・・」

律「そういう事だ」

風子「・・・!」

轍「導かれているような気がしてさ、沖縄へ、ニライカナイへ」

風子「ど、どうしてそう思ったんですか?」

轍「旅が好きだからこの仕事をしていられるわけだけど、旅から旅へ身を投じて
    俺の辿り・・・いや、俺の話はいいか」

梓「・・・」

轍「ニライカナイは海の向こうの遥か遠くに、その場所は存在すると云われている
    そこから神様がきて、五穀豊穣や祝福、生命などをもたらし幸福を与えてくれる・・・とね」

紬「・・・」

唯「いいですな」

轍「様々な恩恵を受けているけど、その逆もある」

さわ子「・・・」

轍「病気や災厄、人に不幸をもたらすあらゆるものも海を越えてくると」

風子「それなのに理想郷と呼んでいるんですか?」

轍「うん・・・。そうだな、それじゃ俺が聞いた話を一つ」
372. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/03(土) 21:05:04.33 ID:/tE7ZYkDo
玉恵「短めにね」

轍「分かってるよ!・・・砂浜を歩いていた男が櫛を見つけるんだ
    それはとても綺麗で持ち主が大切にしているだろうと一目で分かるくらいの物だった
    それを持ち主に返そうと砂浜をあるいてみたけど、持ち主らしき人は見つからなかった」

憂「・・・」フムフム

轍「次の日の朝、砂浜で何かを探している女性の姿を男はみつける」

唯「出会いだね」キラン

轍「・・・う、うん。・・・案の定その櫛は女性のものだった
    そのお礼にと、女性は男を海の底へ連れて行くんだ。竜宮城へね」

信代(竜宮城と言ったら・・・)

律(トンちゃんか・・・)

轍「城の者たちは男を歓迎した。男は連日宴会で時間が経つのを忘れるくらい楽しんだ」

和「・・・」

轍「男はふと故郷の事を想い出す。そして帰る事に決めるんだ
    だけど、女性は引き止める。男はそれでも家族や友達に会いたいがために振り切るんだ
    女性は言う。この包みを持っていってくれ、と
    これはこの場所とあなたの世界を行き来することが出来る物だから
    だけど、決して包みを開けてはいけない、と念を押す」

春子(似ている話だな・・・)

轍「男は故郷へ辿り着くと、雰囲気が違うことに気づく。風景が変化していたんだ
    家があった場所へ行くと見覚えのない家が建っている。知らない人が住んでいて、
    勝手に上がりこんだ男を白い目で見る
    家族がいない。友達もいない。知り合いもいない。独りぼっちだと気付く」

姫子「・・・」

轍「竜宮城で過ごしている間、外では数百年の時が過ぎていたんだ
    男は思い出す。女性がくれた物を・・・」

紬「・・・」ゴクリ

轍「包みを開くと無数の髪の毛が入っていたんだ」

澪「ヒィッ!」

いちご「・・・」ブルブル

轍「・・・その髪の毛は男を包み込み、やがて男は老人となり、衰弱して死んでしまう。というお話」

「「  ・・・  」」シーン

轍「・・・」

梓「風子先輩の質問の答えがそれですか?」

轍「うん。ニライカナイは竜宮城を指しているのかもしれないでしょ?」

梓「・・・」
373. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/03(土) 21:06:07.96 ID:/tE7ZYkDo
さわ子「海の向こうにあると言っていましたよね?」

轍「海の向こうの空の上、海の底・・・と、色々説があります」

和「時が忘れる程の場所であるのに、女性が男にもたらした物は・・・理想郷とはかけ離れていませんか?」

轍「うん。その包みは男にとって幸福でもあり、災厄でもあった。・・・ってね」

風子「なるほど・・・だから、ニライカナイ」

律「御伽噺じゃん」

轍「似たような話は全国各地にあるんだよ。沖縄にだって羽衣伝説はあるからね」

風子「・・・ふむふむ」

春子「ふ、風子・・・?」

純「浦島太郎ですよね」

紬「・・・」コクリ

いちご「・・・うん」

梓「・・・災いですか」

律「?」

轍「そう。感謝の心と畏怖の念を抱いて・・・」

玉恵「話が硬いよ。年齢層を考えてくださいな」

轍「うっ」グサッ

姫子(・・・あまり面白い話ではなかったかな)

風子「一つのモノで対称的な感情を持つ事になるんですね・・・面白いです」

姫子「え・・・」

轍「そ、そう言ってくれると助かる」

純「・・・話を戻しますけど、北海道で『最高の一枚』は撮れたんですか?」

轍「それは俺の過去に踏み込む事になるんだけど・・・。それでも聞く?」

純「そ、それは・・・」

梓「勝手に人のプライバシーに踏み込むあなたがそれを言うんですか」

轍「・・・ッ」

唯「あずにゃん・・・」

憂「・・・」

轍(この子・・・・・・面白い・・・)

紬「・・・?」

梓「・・・」

純「はい!」

玉恵「元気良し!」

律「なんだよその評価」
374. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/03(土) 21:07:28.11 ID:/tE7ZYkDo
姫子(ご両親の話・・・)

轍「キミは写真見た?」

純「写真?」

姫子「見ていないです。私、唯、和、律、いちご、風子・・・は観ています」

轍(誰がどの子なのか分からない・・・)

春子「あの雑誌・・・?私見ていないね」

澪「見ました」

紬「・・・」コクリ

さわ子「8人が見たという写真・・・。内容は?」

律「女性が笑顔で写った写真だ。当時は・・・結婚していた?」

憂「当時は?」

轍「親父とお袋が周囲の反対を押し切ってアラスカを目指し、
    オーロラの下で永遠を誓った瞬間の写真」

さわ子「あら」キラキラ

玉恵「まぁ」キラキラ

憂「素敵ですね」キラキラ

いちご「うん」キラキラ

律「・・・」キラキラ

信代「律も!?」

純「おぉ・・・」

轍「全てを委ねた最高の笑顔のお袋。その視線の先には若き日の親父
    撮る側と被写体の心が完全に一つになって完成した、一枚の写真
    それはお袋と親父の『最高の場所』、『最高の瞬間』だったはずだ」

唯「『最高の場所』・・・」


澪「それが『最高の一枚』・・・」

姫子「その写真を越える為に北海道を・・・」

轍「うん」

和「撮れたんですか・・・?」

轍「うん・・・。撮れたよ」

玉恵「・・・!」

さわ子「・・・」
375. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/03(土) 21:08:27.83 ID:/tE7ZYkDo
律「両親の話を恥ずかしげもなく・・・」

和「・・・」

轍「そんな両親を俺は誇りに思っているのさ!」

玉恵「カッコつけた!」

姫子「ふふっ」

和「あははっ」

律「あはは!」

唯「あっはは、おっかしー!」

澪「・・・」

梓「・・・」

紬「?」

憂「・・・?」

春子「そ、そんなに面白いかな?」

風子「面白いとは思ったけど・・・、ちょっと違和感があるよね・・・」

さわ子「どういう事?」ヒソヒソ

玉恵「轍さんのご両親は亡くなっているの・・・」ヒソヒソ

さわ子「・・・りっちゃんたちは知ってるのね」

玉恵「恐らく」

いちご「そうだったんだ・・・」

風子「知っているから、笑えるんだ・・・」


最終更新:2011年10月05日 23:25