889. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/10(土) 00:37:04.81 ID:LfYoVJIxo
――・・・

風子「むぎさんと一緒のチームじゃなくなったね、梓ちゃん」

梓「棄権します」

夏香「梓ちゃんが抜けたから6人・・・2で割れるね」

梓「あっ!」

風子「ラケット4つしかないよ?」

唯「じゃーん、6つ借りてきました!」

梓「ななっ!」

紬「・・・」シュッ

冬「それっ」シュッ

風子「勝ってカステラ食べようね!」

冬「はいっ」

紬「・・・」フンス!

英子「食べてみたいなぁ」

夏香「うん」

唯「負けないからね!」

梓「それでは・・・サーブを・・・どうぞ・・・」

890. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/10(土) 00:39:25.80 ID:LfYoVJIxo
――・・・


梓「それっ」ポン

シュー

紬「・・・」ポン

シュー

梓「えいっ」ポン

シュー

紬「・・・」ポン


律「なにやってんだ・・・あの二人」

風子「梓ちゃんがどうしてもむぎさんとラリーをしたいっていうから・・・」

英子「そういう風ではあったけど」

夏香「早かったね」

澪「さわ子先生が車出してくれたから短時間で済ませたよ」

さわ子「生徒だけで外に出せないからね」

唯「お腹すいたよ〜」

冬「はい・・・」

律「おっ、朝に焼いたカステイラじゃん!」

さわ子「もぐもぐ」

律「先に食べんなよ!」



・・・・・・



いちご「・・・」

未知子「なにを見てるの?」

いちご「・・・別に」

未知子「さわ子先生も中庭でお昼なんだ・・・」

いちご「・・・買い出しに行ってくれた」

未知子「そうなんだ・・・。だから遅いお昼なんだね」

いちご「・・・」

未知子「純ちゃんと憂ちゃんがカステラ持って来てたよ、食べないの?」

いちご「・・・いい」

未知子「・・・姫子さんたちが全部食べちゃうよ?」

いちご「・・・いいよ、別に」

未知子「・・・」

いちご「私に構わなくてもいいよ」

未知子「・・・構っている訳じゃ」

いちご「1人で考えたい事があるから」

未知子「・・・うん」


891. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/10(土) 00:40:33.49 ID:LfYoVJIxo

・・・・・・



和「・・・」

姫子「いい出来だね」モグモグ

エリ「うん。あと何度か練習すれば文句なしだよね」モグモグ

潮「おいしいおいしい」モグモグ

信代「食べてみて、結構上手に出来たよ」

春子「う、うん・・・」

「私もおひとつ」

潮「どーぞ」

「もぐもぐ」

姫子「どう?」

「うん、おいしい」

信代「うん、嬉しい」

和「・・・どうだった?」

未知子「?」

春子「いちごの様子は」

姫子「・・・」モグモグ

未知子「うーん・・・孤高の花って感じかな」

和「そう・・・」

エリ「・・・」

潮「え、意味が・・・」

「?」

春子「あー、文恵、潮・・・ちょっと打ち合わせがあるから席移動しよっか」

文恵「いいけど、潮ちゃん屋台班だよ?」

エリ「いいからいいから〜」

潮「お茶に詳しい慶子呼ばないと」

信代「勝手な設定つけないでね」

スタスタ

姫子「・・・気を利かしてくれたのかな?」

和「えぇ・・・。二人の雰囲気をみんな知っているからね」

姫子「・・・」

未知子「え・・・と・・・私も席外そうかな・・・?」

和「姫子と二人になるから、三者として聞いててくれないかしら」

未知子「・・・なにが始まるの・・・?」

姫子「話だよ」

和「人の目を引きつける絶壁に咲いた花ってどう思う?」

未知子「?」

892. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/10(土) 00:43:29.80 ID:LfYoVJIxo
姫子「遠い場所にあるから綺麗に見える・・・とか?」

和「そうね。でも、その花がもっと近くで見て欲しいと思っていたら、どうするかしら?」

未知子「・・・」

姫子「人が近づくしかないよね・・・。花は動けないから」

和「えぇ。私たちもそういう人に出会ったのよ。・・・呼んでくるわ」

スタスタ

姫子「・・・・・・やられた」

未知子「?」

姫子「花はいちごで、私が人になれって事でしょ・・・。3人で話をしろと・・・」

未知子「和さんと姫子さん、私の3人じゃなくて?」

姫子「・・・悪いね未知子」

未知子「・・・どうして私なの?」

姫子「私と姫子の事情を知らないよね?」

未知子「・・・うん」

姫子「・・・だから」

未知子「・・・」

姫子(あの雰囲気のいちごに声かけたのも未知子だったから・・・)

未知子「そういう人に出会ったってどういう事?」

姫子「むぎと旅先での話・・・」

未知子「先月けいおん部で旅行に行ったっていう・・・」

姫子「・・・」

いちご「話って・・・?」

未知子(和さん策士だぁ・・・)

姫子「アカネの席だけど座ってよ」

いちご「・・・」スト

未知子(すでに・・・なんともいえない空気が・・・)

姫子「今日は冬だったでしょ?」

いちご「・・・うん」

未知子「・・・」

姫子「どうして一緒に食べないのかはさ、夏が冬を避けているから。冬が夏に遠慮しているから」

いちご「・・・」

姫子「双子なのに、姉妹なのに、家族なのにねぇ」

いちご「・・・間に入ればいい」

姫子「入ろうと思ったけどね」

いちご「諦めたんだ」

姫子「・・・」

未知子「そんな言い方・・・」

いちご「・・・その距離はなに?」

姫子「・・・」

893. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/10(土) 00:46:57.90 ID:LfYoVJIxo
いちご「近づいたかと思ったら離れて、よくわからない」

姫子「私では・・・」

いちご「・・・」

姫子「・・・」フゥ

未知子「・・・」

姫子「私は、二人を特別視しないって決めたから」

いちご「・・・」

姫子「二人にどんな過去があっても、どんな事が起きても私にとっては後輩で友達だから」

いちご「・・・」

姫子「だから」

いちご「時間は限られてるよ。少なくとも学園祭まで」

姫子「・・・」

いちご「それが過ぎれば自然と今ある問題は薄れていくと思う。けど、元には戻らない」

未知子「・・・」

姫子「まるで経験したかのようだね」

未知子(姫子さん・・・!)

いちご「・・・うん。挨拶もできないで離れて行った友達がいたから」

姫子「ケンカ別れ?」

いちご「・・・うん。今思えばどうでもいい事だった。けど、当時の自分はそれが許せなかった」

未知子「・・・」

姫子「・・・」

いちご「『さようなら』も言えない別れってなにも残らないよね」

姫子「うん・・・」

未知子「・・・」

いちご「あの二人はそのうちそうなる。私はそれがいや」

姫子「・・・」

いちご「どうにかできる立場にいるのに、傍観している姫はもっといや」

姫子「・・・」

いちご「むぎ達に押し付けているだけ。それがすごくいや」

姫子「・・・」

いちご「・・・」

姫子「・・・」

いちご「・・・・・・なにかいう事無いの?」

姫子「・・・・・・・・・うん」

いちご「・・・そう、・・・じゃ」ガタ

スタスタ

894. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/10(土) 00:47:38.34 ID:LfYoVJIxo
未知子「・・・あんないちごさん・・・初めて見た」

姫子「・・・私も」

未知子「・・・うまくいかないよね」

姫子「・・・・・・そうだね・・・。私ムキになってた?」

未知子「ううん、全然。・・・どっちかっていうと、冷めてた」

姫子「はは」

未知子「冷めようと必死にしてた・・・」

姫子「・・・」

和「相談に乗るわよ」

姫子「このタイミングで・・・ずるいよ?」

和「そうかしら」

未知子「・・・」

姫子「和・・・やっぱりすごいよ、あの人は」

和「どっち?」

姫子「玉恵さんね・・・」

未知子「?」

和「どうして?」

姫子「いちごにも何かを残していってるから・・・」

未知子「・・・だれ?」

和「女性ライダーよ」

姫子「・・・時間がない・・・かぁ・・・」

895. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/10(土) 00:49:12.40 ID:LfYoVJIxo

―――――放課後


ジャジャッジャジャッジャーン

紬「・・・」キリ

梓「・・・ふぅ」

澪「・・・今日はこんなものかな」

唯「そだね」

律「うし・・・。そんじゃ制作に行こーぜ!」

シーン

律「なんだよ」

澪「この中で屋台班は律だけ・・・なんだ」

紬「・・・」コクリ

梓「そうです」

唯「バイバイ、りっちゃん!」

コンコン

律「差し入れ持っていってやんねーからな」

澪「どうして卑屈になっているんだ・・・」ガサゴソ

梓「きっと寂しいんですよ」ガサゴソ

唯「そうだよね、寂しいよね」ガサゴソ

紬「・・・」

コンコン

律「おいしいやつ作って食べてやる!」

澪「・・・うん」

梓「行きましょうか、むぎせんぱい」

唯「さぁ、頑張るぞー!」

紬「・・・」

コンコン

律「もういいよ!バカー!」

タッタッタ

澪「拗ねた・・・」

ガチャッ

律冬「「  あ・・・  」」

紬「?」

律「・・・」ニヤリ

冬「う・・・」

律「いい所に来たな、冬ちゃん」ワキワキ

唯「冬ちゃん?」

896. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/10(土) 00:50:28.10 ID:LfYoVJIxo
冬「な、なんで・・・す・・・?」

律「ふふ、私のストレ・・・!」ギクッ

風子「何してるの、律さんは調理室でしょ?1人で・・・」

律「な、なんだよ1人でって!」

風子「さ、どうぞ行ってらっしゃいませ。1人で・・・」

律「強調すんな!」

紬「・・・」ツンツン

冬「あ・・・、私は・・・えぇと・・・なんでしたっけ?」

澪「いや、聞かれても困るな・・・」

風子「行かないの?一人で・・・」

律「行くよ!一人でなっ!」

タッタッタ

梓「やぶれかぶれって言うんですかね」

唯「息巻いて行ったね」

風子「行ってしまったね・・・。屋台班は調理室集合じゃないのに」

冬「・・・それはひどいですよ。風子先輩」

風子「いい子だねー」ホノボノ

澪「二人はどうしたんだ?」

紬「・・・」コクリ

風子「野点班調理室に集合だよ」

唯「おぉ、空きが出たんだね!」

風子「うん」ニコニコ

澪「りつ・・・」

梓「それで、冬は・・・?」

冬「先日行った遊園地でのお化け屋敷の体験を取材しに来ました」

澪「ッ!」

タッタッタ

冬「見えなければどうって事ないですよね」

風子「ねー♪」

紬「・・・♪」

梓(ツッコミ役がいないから・・・まとまりがないですよ・・・律先輩・・・)

897. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/10(土) 00:53:46.69 ID:LfYoVJIxo

―――――2年生のクラス


純「律先輩到着しましたー!」

律「遅れてきたんだから大々的に言うなよっ!」

潮「おっそーい!」

信代「まぁまぁ、演奏の練習していたんだから大目に見てあげようよ」

律「それだけじゃないんだぜ?風子が罠をしかけてさぁ、一度調理室へ行ったんだよ」

英子「罠・・・」

ちか「おっそいよりっちゃん!もう準備終わっちゃったんだよ!?」

律「はい・・・。すいません」

つかさ「い、いいすぎだよ・・・」

姫子「大丈夫。大目玉を食らっているだけだから・・・。いわゆるコント」

つかさ「・・・そうですか」

俊美「日本語の難しさだよね」

澪「・・・ふぅ」

未知子「澪さんは野点班だよね?」

澪「そうだけど、今冬がいるから・・・嫌だ」

冬「そんな・・・」ポロッ

バサッ

澪「ッ!?」ビクッ

律「なんで冬がいんだよ・・・キミのせいで風子に・・・!」ギクッ

風子「・・・1人じゃなくてよかったねー」

律「さーて、ちか、これから何を作るんだ?」

ちか「屋台のセットだよ」

律「任せろ!頑張るぞー」

冬「・・・」ズドーン

澪「ちっ、違うんだっ!」アセアセ

信代「どういう状況なんだろうね・・・」

姫子「ね・・・」

風子「あのね、冬ちゃんが遊園地のお化け屋敷の体験談を取材したいらしいの」

潮「・・・なるほど、冬ちゃんとこの出し物お化け屋敷らしいからね」

風子「そう。それで、怖がる人の意見を取り入れたほうがリアリティが生まれるのではないか、
      そう思って、澪ちゃんに取材したらどうかと私が提案したの」

姫子「・・・うん」

冬「・・・」ションボリ

澪「冬が嫌なんじゃなくてだなっ、怖い話が嫌なんだっ」オロオロ

風子「調理室に着くや否や澪ちゃんが冬ちゃんの顔見たらこっちへ走って行ったの」

信代「ややこしいなぁ」

898. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/10(土) 00:54:58.39 ID:LfYoVJIxo
風子「そして、冬ちゃんが澪ちゃんを追っかけて行ったから、私もついてきたって訳だよ」

英子「それ・・・完全にイタチごっこだよ・・・ふぅ・・・」

風子「そうなの?」

姫子「そうだよ・・・」

澪「嫌いって意味じゃないんだ!」

冬「・・・よかった」

澪「嫌いになる理由がないだろ」

冬「そ、そうですか・・・」テレテレ

純「む・・・」

澪「・・・ふぅ」

冬「それじゃ取材を受けてくださるんですね?」

澪「嫌だっ!」

タッタッタ

冬「待ってください!」

タッタッタ

英子「ほら・・・」

風子「冬ちゃんが気になるから行ってくる」

タッタッタ

信代「風子遊んでいるんじゃ・・・?」

姫子「澪はお化け屋敷入ってないのにね」

純「・・・作業に戻りましょうか」

899. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/10(土) 00:57:12.57 ID:LfYoVJIxo

―――――中庭


冬「っはぁ・・・はぁっ・・・!」

澪「走るのキツイんだったら追いかけなければいいのに・・・」

冬「・・・っ・・・はぁ・・・」

風子「ほら、これ飲んで」

冬「すっ・・・いませんっ・・・」ゴクゴク

澪「・・・落ち着いた?」

冬「・・・ふぅ・・・はい。大分」

風子「・・・無理しちゃ駄目だよ」

冬「すいません・・・」

澪「・・・こんな事で身体を悪化させたら嫌だぞ」

冬「・・・・・・はい」

風子「逃げなければいいのに」

澪「追いかけてくるとは思わなかった・・・」

冬「・・・ちょっと無茶しちゃいましたね」

風子「・・・」

澪「なにかあった?」

冬「・・・はい。クラスの制作に携われる事が嬉しくて・・・。楽しくて・・・。いいモノにしたくて」

澪「・・・」

冬「心配かけさせちゃ・・・駄目ですね」

風子「そうだよ。・・・でも、ごめんね。私が蒔いた種だね」

冬「いえ・・・。そんな事はないです。いい提案だと思います。怖がる人ほどリアルに恐怖を感じているって」

澪「・・・参考にならないと思うけど・・・わ、私でいいなら」ゴクリ

冬「・・・い、いえ!他の人に聞いてきますから!」ガタッ

澪「他って・・・目星ついてる?」

冬「そ、それは・・・」

澪「夏と夏香も怖がっていたよね」

冬「!」

風子「そうなの?」

澪「うん。夏はお化け屋敷から出てきたとき、むぎの腕にしがみついてたくらい」

風子「そうなんだ・・・。見てみたかったな」

冬「・・・」

風子「なっちゃんも野点班だから・・・。一緒に行こう?」

冬「・・・」

澪「・・・無理なら」

梓「冬ッ!」

澪「梓・・・?」

冬「?」

梓「夏が病院へッ!」
900. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/10(土) 00:59:07.93 ID:LfYoVJIxo
・・・・・・

・・・

夏「代わりが無いんだからしょうがないだろっ!」

梓「しょうがないじゃないって!」

紬「・・・」オロオロ

純「また始まったー・・・。作業進まないからやめて欲しいんだけどなー」

夏「ほらっ!純がこう言ってるでしょ!だからやるしかないの!」

梓「危ないって!無理やりやって壊されたら余計時間がかかるって分からないの!?」

夏「そんなヘマしませーん」

梓「あのね夏!」

夏「心配してくれんのー?」

梓「誰が!」

純「はぁ・・・この二人毎回めんどい・・・」

スタスタ

夏「よいしょ」

ギシッ

紬「・・・!」ガシッ

夏「あ、すいません・・・。すぐ済みますからちょっとだけ支えててくれると助かります」

紬「・・・」コクリ

梓「むぎせんぱいに迷惑かけないでくれる?」ジロッ

ギシッギシッ

夏「はいはい。後でお礼しますって・・・」ヒョイヒョイ

梓「な・・・」イラッ

紬「・・・」

夏香「梓ちゃーん!」

梓「は、はい!・・・さっさと済ませててね」ギロ

テッテッテ

夏「脚立が無いと作業できないってのに・・・、少しボロっちいだけでうろたえすぎですよねー」ヒョイヒョイ

紬「・・・!」

ミシミシッ

夏「お礼ですけど何がいいですかね・・・。っと、こんなもんかなぁ・・・」

紬「・・・!」キョロキョロ

夏「今降りますね・・・どうしたんですか?」

紬「!」ググッ

唯「どーしたのむぎちゃん?」

901. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/10(土) 01:00:43.60 ID:LfYoVJIxo
ミシミシッ

紬「!!!」

唯「ど、どうしたの!?」

グラグラッ

夏「おっと・・・?」

バキッ

夏「――え」

紬「!」サッ

ドサドサッ

唯「夏ちゃんッ!!」

純「?」

春子「むぎッ!!」

・・・

・・・・・・

冬「・・・」

医「そのまま手を握っていてやれ」

冬「なつ・・・」

ギュウ

夏「・・・ぅ・・・ん?」

医「しかし、夏が運ばれてくるとはな・・・」

夏「あ・・・れ・・・、せんせい・・・・・・ふゆ・・・?」

冬「・・・よかった・・・ぁ」

医「目が覚めたか」

夏「ここ・・・病院?」

冬「うん・・・。夏・・・脚立から落ちたって・・・」

夏「え・・・」

医「頭から落ちたらしいぞ、お転婆も程ほどにしとけよ」

夏「頭・・・?」

冬「・・・・・・紬先輩が・・・とっさに守ってくれたって」

夏「紬先輩が?」

医「頭と背中を両腕で守ってくれたらしいぞ・・・今手当てしてるよ」

夏「・・・りょう・・・うで・・・・・・?」

冬「なつ・・・」

ギュウ

夏「な・・・に・・・また・・・私は・・・っ」

冬「・・・っ」

902. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/10(土) 01:02:50.19 ID:LfYoVJIxo
夏「・・・紬先輩の・・・声まで・・・うばった・・・の・・・?」

冬「ッ!」

ギュウ

医(まだ癒えてないのか・・・)

看「失礼します」

医「どうぞ」

シャーッ

看「夏さん目を覚ましましたか?」

医「あぁ・・・。ほら」

夏「・・・っ・・・また・・・」

冬「・・・」

看「覚ましたそうよ。入って」

梓「・・・」

姫子「夏・・・?」

夏「あ――」

紬「・・・」

夏「両手・・・!」

紬「・・・」フリフリ

冬「・・・包帯・・・・・・っ」

夏「奪う事しかできないの・・・っ」

梓「・・・包帯は私が巻いて欲しいとお願いしたの」

夏「先輩たちのライブも・・・」

姫子「な、夏・・・」

梓「学園祭のライブの為にって無理言って巻いてもらったんだよ、夏」

夏「つ、つむぎ・・・せんぱいの・・・こえも・・・っ」ボロボロ

紬「・・・!」

夏「どう・・・して・・・わたし・・・は・・・」ボロボロ

紬「・・・」シュルシュル

看「・・・」

梓「・・・夏・・・むぎせんぱいを見て」

夏「いっつも・・・いつもっ」ボロボロ

紬「・・・」シュルシュル

梓「夏・・・。まえを・・・みて」

夏「もういやだ―」ボロボロ

梓「なつッ!」

バシィッ

夏「―ッ!」

冬「!」

梓「むぎせんぱいを、前をみて!」

903. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/10(土) 01:05:18.86 ID:LfYoVJIxo
夏「え・・・」

紬「・・・」スッ

看「内出血も、骨折も無いから・・・」

紬「・・・」ニコ

夏「っ・・・」ボロボロ

冬「・・・」

ギュウ

梓「・・・」

夏「ごめん・・・梓・・・っ・・・忠告を・・・っ」ボロボロ

梓「どうして包帯を解いたか分かってないでしょ・・・」

夏「え・・・」

梓「夏が自分を責めているからっ・・・それを伝えてるの・・・『大丈夫』って!」

夏「ッ!」

梓「夏はむぎせんぱいを知らないから・・・。だけど、ちゃんと守ってくれた人にそこまでさせないでっ」グスッ

夏「・・・!」

梓「夏が自分を責めると・・・むぎせんぱいも・・・悲しむんだから・・・っ」グスッ

夏「・・・」グスッ

紬「・・・」

梓「すいません・・・外行ってきます」グスッ

スタスタ

冬「・・・」

夏「・・・」

医「・・・どうする?帰っても大丈夫だぞ」

夏「・・・」

看「検査をしたけど、異常はないわ」

夏「・・・」

冬「・・・」

姫子「・・・」

紬「・・・」

904. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/10(土) 01:07:02.55 ID:LfYoVJIxo
母「ありがとうございました」

医「二人とも目立った外傷は無いですけど、体調には気をつけてください」

母「はい」

梓「・・・はい」

医「今度は冬が・・・元気を分けてやれ」

冬「はい」

ギュウ

夏「・・・」

姫子「・・・」

夏香「・・・姉さん・・・二人とも・・・大丈夫なんだよね?」

看「えぇ、大丈夫よ」

夏香「・・・よかった」

ウィーン

唯「むぎちゃん達も出てきたよ!」

澪「なっ!?」

律「両手包帯って・・・!」

紬「・・・」フリフリ

梓「大丈夫ですよ。特に異常も無いとの事です。私がお願いしたんです。念のために」

唯「そっかー」ホッ

律「よかったー」ホッ

澪「不幸中の幸いだな・・・。夏も・・・怪我はないみたいだ・・・」

梓「・・・」

夏「・・・」

冬「お母さんは先に帰ってて、行く所があるから」

母「?」

姫子「二人を心配している人たちがいますので・・・」

905. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/10(土) 01:08:58.55 ID:LfYoVJIxo
夏「・・・手・・・・・・はな・・・して・・・・・・」

冬「・・・」フルフル

姫子「ちゃんと掴まえててね」

ギュ

冬「はい」

夏「・・・歩きにくい・・・から・・・」

冬「・・・」

姫子「歩調が遅いんだよ。それではむぎ達を待たせてしまうでしょ」

夏「待たなくて・・・いい・・・」

姫子「・・・」

夏「置いていってください・・・」

冬「梓が言ってくれた事、少しも理解してないんだね、夏は」

夏「!」

姫子「・・・」

唯「おーい!夕陽が沈んじゃうよー」

律「・・・」

澪「・・・」

夏香「・・・」

梓「・・・」

テッテッテ

紬「・・・」

夏「・・・?」

紬「・・・」スッ

夏「包帯・・・巻いているから・・・握れません・・・」

紬「・・・」ションボリ

姫子「代わりに私が」

ギュ

夏「!」

紬「・・・」コクリ

冬「ほらっ、行くよ」グイッ

姫子「行くよ」グイッ

夏「〜っ!」

906. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/10(土) 01:09:37.94 ID:LfYoVJIxo

―――――河川敷


風子「なっちゃん、二人は・・・むぎさんの・・・手・・・!」

夏香「大丈夫って姉さんが言ってたから・・・。あれは念のためだよ」

風子「ほ、本当に・・・?」

夏香「うん。安心させる為の嘘じゃないからね」

英子「そうなんだ・・・。よかった・・・」

夏香「先にみんなに知らせておくよ、ビックリするだろうから」

英子「そうだね・・・」

風子「・・・」

夏香「ふぅは・・・風子は一緒にいてあげて」

風子「・・・うん」


907. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/10(土) 01:14:17.66 ID:LfYoVJIxo
夏「みなさんに・・・心配を・・・」

姫子「そうだね、心配かけてしまったから・・・後で謝ろうか」

冬「はい。行こう、なつ・・・」グイッ

グッ

夏「・・・」

冬「?」

夏「あたしが・・・どうして・・・冬ねぇを避けていたか・・・気付いてる・・・?」

冬「・・・ううん。知らない」

夏「・・・」

梓「・・・」

冬「ごめん・・・ね」

夏「・・・!」ズキッ

紬「・・・」

冬「気付いてあげられなくて・・・」

夏「だから・・・なんで・・・謝るの・・・っ!」

冬「え・・・?」

夏「あたしが奪ってきたじゃん!生まれる前から!あたしの分まで冬ねぇに負担かけてるんだよ!?」

冬「・・・」

夏「もう・・・っ・・・奪うのはいや・・・っ・・・」

冬「・・・」

夏「冬ねぇにばっかり嫌な思いを・・・冬ねぇだけ辛い思いを・・・冬ねぇ・・・に・・・あたしは・・・!」

冬「久しぶりだね・・・そう呼んでくれるの・・・」

夏「・・・!」

冬「私が入院してから呼んでくれなくなったよね・・・」

夏「・・・・・・うん」

冬「奪ってないよ。与えてくれたんだよ・・・『最高の場所』を」

梓「!」

姫子(それ・・・)

夏「『最高の場所』・・・?」

冬「うん。その場所があれば、人は強く生きていける」

夏「・・・」

冬「それを見つけたのは・・・『あの時』」

夏「ッ!」

紬「・・・!」

姫子(・・・命を繋いだ時)

夏「・・・っ・・・・・・ッ・・・!」

冬「なつ!?」

紬「!」

908. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/10(土) 01:16:26.79 ID:LfYoVJIxo
風子「夏ちゃん!?」

夏「だっ・・・だい・・・じょう・・・ぶっ!」

姫子「なにこの震え方・・・っ!」

冬「ひどい汗だよっ!?」

夏「・・・っ・・・っ!」

ギュ

梓「だいじょうぶ・・・。ちゃんといるから。むぎせんぱいと、姫子先輩とふぅ先輩とここにいるから」

紬「・・・」コクリ

風子「・・・うん」

姫子「うん」

夏「・・・っ・・・」

梓「ちゃんと冬の手を握ってて」

夏「う・・・っ・・・うんっ」

ギュウ

梓「ちゃんと私たちの中にいるよ・・・冬は」

冬「!」

夏「うん・・・・っ・・・」ボロボロ

冬「『あの時』ね・・・」

夏「・・・っ」ズキィッ

ギュウ

冬「真っ暗で、とても寒くて、とても寂しいんだけど、なぜか居心地のいい所にいたの」

夏「・・・ッ」ズキィッ

冬「このままそこに居てもいいと思っていたの」

夏「―ッ!」ズキィッ

冬「でもね、一箇所だけ・・・違った・・・」

夏「ぇ・・・?」

冬「ほんの小さな・・・暖かい場所があった・・・」

夏「・・・」

冬「その場所へ引き寄せられるように辿り着くとね・・・。声が聞こえるの・・・」

夏「・・・」

冬「『ふゆ』って私の名を呼ぶ声が・・・」

夏「ッ!」

冬「目を開けると・・・夏が手を握っていてくれたの」

夏「―ッ!」

冬「そこが私の『最高の場所』・・・」

夏「ぅ・・・」ボロボロ

冬「今の私がこの場所に居られるのは・・・夏が『最高の場所』をくれたからなんだよ」

夏「・・・ッ」ボロボロ

冬「だから・・・夏は私にとって大切な場所」

909. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/10(土) 01:17:07.06 ID:LfYoVJIxo
夏「・・・・・・うん」ボロボロ

冬「・・・っ」

夏「あたし・・・っ・・・冬ねぇに・・・なれたら・・・ってずっと思ってた」グスッ

冬「・・・」

夏「あたしが・・・全部持っていけばいいって・・・思ってた・・・!」グスッ

冬「・・・っ」

夏「でも・・・無理だ・・・っ・・・冬ねぇ・・・に勝てないっ」グスッ

冬「・・・」

夏「あたしは・・・妹でいい・・・っ・・・!」

冬「うん。私も姉がいい・・・」

夏「あり・・・がと・・・・・」

ギュウ

冬「ううん・・・。ありがとうは・・・私だよ・・・なつ・・・」

梓「・・・」

姫子「・・・っ」

風子「・・・ッ」グスッ

紬「・・・」

910. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/10(土) 01:18:49.08 ID:LfYoVJIxo
律「メール送っただろ?」

信代「まぁ・・・ねぇ・・・。でも心配するでしょ?」

唯「そうだよね〜」

和「びっくりしたわよ・・・。でも何事も無くてよかったわ」

澪「・・・うん」

ちか「みんな心配して、作業に手がつかなかったんだよ」

憂「はい。私たちも・・・ね」

由記「・・・うん」

三花「・・・ここ、よく来るの?」

純「はい、のんびりするには最適な場所なんですよ」

未知子「確かに、川のせせらぎ・・・太陽の傾き・・・どれもいい感じだね」

風子「・・・っ」グスッ

夏香「変わらないね、ふぅは」ナデナデ

風子「嬉しいっ・・・」ボロボロ

英子「・・・うん」

風子「・・・ちゃんと・・・っ・・・繋がった」ボロボロ

夏香「・・・」ナデナデ

風子「うれしいっ」ボロボロ

英子「うん。嬉しいね」

いちご「・・・」

春子「・・・いちごが背中を押したお陰なんじゃないのかな」

いちご「・・・さぁ。それは分からないよ」

春子「本人に聞くわけにもいかないよねぇ」

911. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/10(土) 01:19:29.53 ID:LfYoVJIxo
・・・・・・

・・・

唯「姫ちゃん!夏ちゃんがっ!」

姫子「?」

唯「病院へ!」

憂「え・・・?」

文恵「なにがあったの・・・?」

唯「脚立から落ちて気を失ったんだよ!むぎちゃんも一緒に!」

姫子「!」

律「行くぞ姫子!」

唯「さわちゃんと向かうから一緒に行こうよ!」

姫子「・・・」

いちご「・・・行ってきて」

姫子「・・・」

いちご「後はやっとくから」

姫子「・・・うん」

タッタッタ

いちご「・・・」

・・・

・・・・・・

姫子「よいしょ」スト

いちご「・・・」

姫子「河川敷か・・・。いい場所だね」

いちご「・・・」

姫子「私が出来ることなんてほんの些細な事なんだけどさ・・・」

春子「・・・」

姫子「それでも、そんな些細な事ができる事に気付けた事が嬉しいよ」

いちご「・・・そう」

姫子「・・・うん」

いちご「・・・」

姫子「・・・私が出来ることなんてさ、ほんっとうに小さくて、それに気付く人なんているのかなってくらい」

いちご「・・・」

姫子「ちっぽけだった・・・。むぎとは正反対で」

いちご「・・・」

姫子「それでもいいやって思えた。たくさん教えてもらおうって、吸収していこうって」

いちご「・・・」

姫子「そして、少しずつかえして行こうって」

いちご「・・・そう」

姫子「そう・・・」

912. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/10(土) 01:20:27.14 ID:LfYoVJIxo
いちご「・・・」

姫子「私がさ、迷っていたらまた・・・声かけてよ」

いちご「・・・?」

姫子「いちごの意見を聞きたいから」

いちご「・・・私が間違っていたら・・・余計に迷うよ」

姫子「その時は一緒に迷ってくれると助かる・・・かな」

いちご「・・・なにそれ」

姫子「・・・そうしてくれたら・・・確実に残るから」

いちご「・・・」

姫子「先の事なんて分からないから・・・『さようなら』も言えないで、いちごと別れる時が来るかもしれない」

いちご「・・・!」

姫子「でも、今この時は残る。二人でこんな風に話した時が」

いちご「・・・」

913. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/10(土) 01:22:33.69 ID:LfYoVJIxo
・・・・・・
      


律「どうした?」

梓「・・・」

律「唯から聞いた・・・。その時の状況をさ」

梓「・・・私も聞いてましたから」

律「傍にいれば、防げたかもしれない・・・か?」

梓「はい・・・」

律「・・・」

梓(夏に注意もできなくて・・・周りに助けを求める事もできなくて・・・
    ただ支えている事しか・・・って、思いつめているのかな・・・むぎせんぱい)

律「・・・」

梓「声をかけられないです・・・」

律(落ち込んでるってレベルじゃないもんな・・・)

梓「・・・」



・・・・・・



紬「・・・」

夏「あ、あの・・・」

紬「・・・?」

夏「す、すいませんでした」ペコリ

紬「・・・」ニコ

冬「・・・」

夏「・・・」

紬「・・・」

冬「そうじゃないよ」

夏「あ、うん・・・」

紬「?」

冬夏「「  ありがとうございました  」」

紬「・・・」フリフリ

冬「いいえ!夏の恩人です!」

夏「ぜひお礼を!」

紬「・・・」アセアセ

冬「その手ではなにかと不自由だと思いますので、メイドなりなんなりやります!」

夏「はい!・・・ん?」

唯「おぉ、それはいいね!」

紬「・・・」アセアセ

冬「困ってる事ありませんか!?」

唯「私も手伝うよ!」

914. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/10(土) 01:23:37.26 ID:LfYoVJIxo
・・・・・・



律「困らせてんだけどなー」

梓「その手があった!」ダッ

タッタッタ

律「はは・・・」

澪「モテるなむぎは」

律「でも、あの押しの強さは救われたな」

澪「・・・うん」



・・・・・・



姫子「ミッシングリンクを作りたくないからね」

いちご「・・・?」

姫子「・・・思い出を失って、その先に居る自分は納得できるのかなって」

いちご「・・・分かりづらい」

和「失われた環・・・。連続性の中にある非連続性・・・。言いたい事は分かるけど」

姫子「う・・・」



・・・・・・




最終更新:2011年10月06日 01:59