2. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/11(日) 19:14:34.04 ID:8Tvag5feo

―――――中庭


虎徹「」スヤスヤ

エリ「あ、ここにいたんだ・・・」

サヤサヤ

アカネ「いい風が吹いているから、いい場所をみつけたんだね虎徹」

信代「休日の学校ってしずかでいいね」

潮「いただきまーす」

慶子「私たち以外には登校してないんだね」

和「えぇ。休みを返上してまで追い詰められているわけじゃないみたい」

「「  う・・・  」」グサッ

潮「ごちそうさまでしたー」

ちか「おにぎり一個でいいの?」

潮「色々つまみぐいしてるから」アハハ

虎徹「」スヤスヤ

純「置いていかないでくださいよぉ」

春子「2年生たちと食べると思ってた」

純「外で食べてくるらしくて・・・憂はいないんですか?」

英子「いちごさんと来るんじゃないかな・・・」

純「なるほど・・・。お菓子期待しようっと」

風子「外で〜なんて、いつもならそれは出来ない事だよね」

エリ「うん。休日登校の特権だよね」

純「よいしょ。・・・冬はいないんですね」

風子「冬ちゃんはクラスの子達と食べるって、夏ちゃんは外なのかな?」

英子「うん。誘われていたよ」

純「いただきまーす」パクッ

さわ子「よいしょ」

虎徹「」スヤスヤ

さわ子「なによ、この子は」モグモグ

エリ「あ、預かってます・・・」

さわ子「ふーん。教師に見つからないようにしなさいよ?」

エリ「はい」

3. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/11(日) 19:20:01.62 ID:8Tvag5feo
さわ子「屋台班の料理はないの?」

和「憂が持ってきてくれるかもしれませんね」モグモグ

さわ子「出来はどうなのよ?」

未知子「どうだった?」

多恵「お、おいしかったよ」

純「おいしかったそうです」

さわ子「聞こえたわよ」モグモグ

憂「みなさん、こんにちは〜」

ちか「こんにちはー」

和「それ、試作品なの?」

憂「はい。お一つどうぞ」

さわ子「・・・」サッ

風子「・・・」コポコポ

純「さっきのだ・・・。確か、ポーポー」

慶子「郷土料理って感じだよね」

いちご「どうですか?」

さわ子「・・・喉が渇くわね・・・、誰か水を・・・」

風子「どうぞ」スッ

信代「気が利くね・・・。さすが野点班」

風子「・・・」ブイッ

さわ子「ジャスミン茶ね」

多恵「あ、すごい・・・」

風子「正解です!ちなみに沖縄ではさんぴん茶と呼ばれているそうです」

さわ子「へぇ・・・。どうしてこの、ポーポーと合わせて出したのよ」

風子「・・・気まぐれです」

英子「違います。ちゃんと理由があります」

憂「チンビンは黒糖を使用していて、その黒糖と合うのがさんぴん茶だと調べました」

和「なるほど・・・。確かに合っているわね。二つが合わさるとさらに美味しく感じるわ」

さわ子「いい発見じゃない。やるわね」

潮「唯と憂ちゃんが発見したんですよ」

さわ子「沖縄ねぇ・・・」モグモグ

4. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/11(日) 19:21:46.83 ID:8Tvag5feo
いちご「・・・よいしょ」

春子「おつかれ」

いちご「うん」

憂「さっき梓ちゃんが、ネコじゃらしを持って教室へ向かいましたけど・・・」

エリ「ふふっ」

アカネ「すれ違ったかな・・・?」

虎徹「」スヤスヤ

エリ「波長を感じたのかも・・・ね」プクク

純「梓は?」

憂「刺激されちゃったみたい。一度演奏してから来るって」

さわ子「刺激ねぇ・・・。あの子たちクラシックなんて分かるのかしら」

未知子「朝言ってましたね。クラシックコンサートがあるって」

風子「分かりそうなのが・・・ひぃ、ふぅ・・・・・・・・・」

信代「二人だと決め付けたな・・・」

三花「ふぅは誰?」

風子「・・・ベースかリズムのどっちか」

英子「・・・」

いちご「ドラムとメインは入ってないんだ」

さわ子「・・・風子ちゃん、お茶おかわり」モグモグ

風子「はい」

エリ「音大の無料コンサートらしいですよ。駄菓子屋へ寄ってから向かいましたから」

さわ子「そう・・・」

和「結構熱心なのね」

憂「・・・そうですね」

慶子「あ、演奏が始まった」

さわ子「校内がしずかだから聞こえるのね」

純「いつもは喧騒に包まれていますからね」

信代「一休みしたら、午後も頑張るぞー」

風子「おー!」

潮「おっー!」

ちか「おぉー!」

虎徹「」モゾモゾ

5. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/11(日) 19:22:54.94 ID:8Tvag5feo

―――――夕方・3年生のクラス


梓「結局戻ってきませんでしたね。ホームシックで帰ったんですよ」ヤレヤレ

エリ「・・・」

夏「なにをムキになってんの?」

梓「ムキになんてなってないよ」

夏「あっそぅ・・・」

風子「ネコじゃらしが無駄になっちゃったね」

梓「・・・」


紬「・・・」コンコン

未知子「もうちょっと強く打っても大丈夫だよ」

紬「・・・」コクリ

ゴンッ

未知子「わっ・・・」

紬「・・・」エヘヘ

未知子「だ、大丈夫・・・。ビックリしただけ」

紬「・・・」コクリ

コンコン

未知子(無理して叩いている気配はない・・・大丈夫みたいだね・・・)

6. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/11(日) 19:24:12.10 ID:8Tvag5feo
虎徹「みゃっ」

ちか「あ、お帰り〜」ナデナデ

虎徹「みゃぁ〜」

梓「・・・帰ったんじゃなかったの」

夏「誰もそう言ってないでしょ」

虎徹「みゃ〜」スリスリ

紬「・・・」ナデナデ

虎徹「みゃみゃ〜」ゴロゴロ

梓「・・・」

虎徹「・・・」チラッ

梓「・・・」イラッ

唯「おぉ〜いい子いい子ぉ〜」ナデナデナデナデ

虎徹「みゃみゃ〜」ゴロゴロ

梓「・・・」

虎徹「・・・」チラッ

梓「いちいち確認するなっ」

虎徹「・・・」フンッ

梓「・・・」ムカッ

春子「え、何・・・?ケンカ?」

夏「ネコと・・・?」

アキヨ「・・・」

美冬「どうしてケンカできるの?」

唯「類は友を呼ぶんだよ!」

春菜「類って部分を間違えてるような・・・」

夏香「友でもないような・・・」

夏「ネコ科ですから」

梓「ほらほら、仲直りしよう」フリフリ

虎徹「・・・」ジー


風子「ネコじゃらしで・・・」

千雨「ちょっとずるいね」

来美「人間の最大の武器が知恵だからね」

由記「最大の武器まで出さなきゃいけないんだ・・・梓・・・」

7. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/11(日) 19:26:25.21 ID:8Tvag5feo
梓「ほらほら」フリフリ

虎徹「・・・」ウズウズ

梓「ふふ・・・勝利は目前・・・」

虎徹「・・・!」ダッ

梓「あ、あれ?」


「こんばんは」

唯「おぉ、おばぁちゃん」

エリ「小田おばぁちゃん!ここまで来て大丈夫なの!?」

小田ばぁ「息子に連れて来てもらったんだよ」

さわ子「中を案内したのよ」

アカネ「あ・・・さわ子先生」

エリ「こ、腰は痛くない?」

小田ばぁ「これくらい大丈夫だよ。ありがとねぇ」

エリ「い、いえ・・・」

小田ばぁ「ほれ、せんべいのレシピ」ペラッ

エリ「あ、ありがとう・・・」

夏「ご主人が一番か・・・」

虎徹「みゃ〜」スリスリ

小田ばぁ「虎徹を預かってもらったお礼さね」

エリ「う、うん・・・」

小田ばぁ「病院でヒマだったからねぇ」ヒッヒッヒ

エリ「・・・」

紬「・・・」ツンツン

唯「ん?」

紬「・・・」トントントトントン

唯「おぉ、いいね」

エリ「?」

唯「おばぁちゃん、作り方調理室で教えてもらえないかな〜」

春子「強引だねぇ」

8. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/11(日) 19:26:56.86 ID:8Tvag5feo
純「どうしたんですか?」

アカネ「・・・今からせんべいの作り方を」

小田ばぁ「いいのかね?」

さわ子「こちらは構いませんが・・・。息子さんを待たせていますよ?」

小田ばぁ「電話するさね」ピッピッピ

trrrrr

『どうした?』

小田ばぁ「少し待っとれ」

『は?』

プツッ

小田ばぁ「では行こうかね」

エリ「は、はい!」

虎徹「みゃっ」

唯「なんとっ!」

夏「一言っ」プクク

虎徹「・・・」スタス

三花「コテッチャンはこっち」ダキッ

虎徹「みゃっ!?」

小田ばぁ「よろしくねぇ」ヒッヒッヒ

エリ「こっちです」

スタスタ

さわ子「せっかくだから、行きたい人行ってきたらいいわ」

唯「むぎちゃん、行こうよ!」

紬「・・・」コクリ

アカネ「わ、私も」

テッテッテ

9. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/11(日) 19:28:23.78 ID:8Tvag5feo
風子「虎徹ちゃんに相手にされなかったから、落ち込んでいるの?」

梓「いませんよ・・・。あれ、むぎせんぱい達がいませんよ?」

純「調理室行ったよ」

虎徹「みゃ」

三花「はいはい。ここで大人しくしていようね」スッ

虎徹「・・・みゃ」

夏「言葉分かるの?」

虎徹「・・・」

夏「そうだよな・・・。会話してる風だったからビックリした」

虎徹「・・・」スタスタ

潮「あ、こら。そこの上歩いちゃダメだって」

ササッ

虎徹「みゃ〜」

潮「うむ。許す」

夏「あれ・・・?」

冬「こんにちは〜」

風子「いらっしゃーい」

冬「お邪魔します」

虎徹「みゃ〜」

冬「ふふっ、迎えてくれるんだ。ありがと〜」ナデナデ

虎徹「みゃみゃ〜」ゴロゴロ

夏「無視されたんだ・・・あたし・・・」

ちか「どんまい!」

10. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/11(日) 19:29:15.49 ID:8Tvag5feo

―――――調理室



小田ばぁ「おやおや、珍しいものを作ってるねぇ」

姫子「?」

律「誰・・・だ・・・?」

澪「おい。むぎと駄菓子屋へ行ったんじゃなかったのか」

律「あぁ!」ピコン

エリ「今からせんべいの作り方学ぶからね」

姫子「え、あ、うん」

小田ばぁ「どれどれ・・・」

律「駄菓子界の重鎮だな」

澪「はいはい」

小田ばぁ「ドーナツかねぇ?」

エリ「サーターアンダギーって言う沖縄の郷土菓子です」

小田ばぁ「そうかい・・・。ちょうど材料揃ってるねぇ・・・」

唯「私たちも研修するよ!」

紬「・・・」キリ

アカネ「・・・」

律「お茶を淹れる練習にも飽きてきたから、丁度いいな」

姫子「そうだね」

梓「・・・」

唯「あれ、あずにゃん、こてっつぁんと遊んでいるんじゃ?」

梓「誰ですか・・・。こっちが重要ですから」

11. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/11(日) 19:29:55.36 ID:8Tvag5feo
――・・・

小田ばぁ「ここまでやって、一時間寝かせてから揚げるといいよ」

エリ「ふむふむ」メモメモ

憂「・・・」メモメモ

律「真剣だな」

信代「・・・うん」

夏「こ、こんばんはー」

姫子「夏・・・?どうしたの?」

夏「よ、様子を見に来ました」

律「入って来いって」

夏「失礼します・・・」

信代「どうして制服に・・・・・・あ」

夏「えへへ」

澪「なんか冬っぽいな・・・」

夏?「な、夏ですよー」

律「不自然だな・・・。なんで制服に着替えてんだよ。今日はみんなジャージだろ?」

夏?「あ・・・」

唯「あ・・・って?」

紬「・・・」ジー

夏?「え、と・・・」アセアセ

梓「冬は髪の毛長いじゃないですか」

姫子「・・・夏が冬の真似しているだけだね」

紬「・・・」コクリ

夏?「え・・・と・・・」

梓「なにしてんの?そんな事でひっかからないよ?」

律「冬が髪を切っていたらどうすんだよ」

夏?「!」

澪「あ、驚いた」

12. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/11(日) 19:30:46.19 ID:8Tvag5feo
姫子「髪を切ったの?『冬』は」

夏?「はい。切りました」

姫子「へぇ・・・」

梓「え・・・」

『あたしが『冬』としてそこに居れば・・・』

夏?「・・・」

梓「どうして『冬』が髪を切ったのか・・・『夏』は理由は知ってる?」

夏?「う、うん」

紬「?」

澪「理由・・・」

姫子「・・・」

唯「えぇと、今日はジャージ登校でいいんだよ。でも冬ちゃんの所は制服なんだよね
    という事は、ここにいるのは制服を着ている冬ちゃんでいいんだよ。ところが、髪を切ったという事で事態は複雑になって・・・
    でもでも、口調は冬ちゃんで・・・でもでもでも、夏ちゃんが制服を着て冬ちゃんが髪を切ったという
    嘘をついているかもしれなくて・・・。今日はまだ冬ちゃんに会っていなくてー・・・」

信代「それでは判定です。ここにいるのは、『夏』、『冬』どっちでしょう」

律澪「「  冬  」」

梓姫子「「  夏  」」

紬「・・・」トントントントン

唯「分かりません!」

信代「冬が二票、夏が三票、放棄が一票と別れました。それでは正解発表を」

冬?「こ、こんばんは・・・」

律「なぬっ!?」

唯「本当に切ってたよ!」

澪「ジャージを着た・・・。冬でいいのか・・・?」

夏「そうです。正解は『制服を着た夏』でしたー!」

信代「うわ、私が騙された」

姫子梓「「  よし  」」グッ

紬「・・・」グッ

冬「髪切っちゃいました」

律梓「「  聞いたから  」」

風子「間違えたくせに・・・」ジー

律「う・・・」

信代「誰の入れ知恵さ」

ちか「私さ」

13. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/11(日) 19:32:08.75 ID:8Tvag5feo

澪「あずさ・・・」カムカム

梓「なんですか?」

澪「髪を切った理由って?」

梓「・・・。冬が入院していた時、夏と冬は同じ髪型だったそうです。親に間違えられても変える事は無くて・・・。
    その理由が『冬がそこにいる』と、誰かの心に残そうとしていたんです」

澪「・・・」

梓「冬がマネージャーとして入部したら、夏は髪を切りました。その理由が
  『冬がそこに居る』からなんです。冬を見てほしいから」

澪「・・・」

梓「今日、冬が髪を切ったのは、恐らく」

姫子「夏の居場所を作る為。今まで夏は冬の居場所を作ろうとしていた。そこに冬は居ないのに」

澪「・・・」

姫子「冬が入部した後に夏が髪を切って、部長がこう言ったんだよ
      『見分けがつくから助かる』って。夏はその為に髪を切ったんだね」

梓「・・・はい」

姫子「冬は、戻る為にじゃなく、新たに進む為に髪を切ったって事かな」

澪「・・・そうか」

梓「・・・」

姫子「梓は夏から直接聞いたんだ?」

梓「は、はい」

姫子「・・・」

澪「姫子は?」

姫子「最近気付いたくらいだよ・・・。月見会で、『姉をよろしく』って言ったでしょ」

梓「・・・」

姫子「その顔は覚えてないよね。普通の紹介だったもんね」

澪「今思えば・・・。それは特別だったんだ・・・」

姫子「うん。部ではそっけない夏が、あの時は親身になってたから。私は覚えている」

14. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/11(日) 19:32:57.76 ID:8Tvag5feo

――・・・3年生のクラス


ちか「虎徹ちゃん帰ったよ〜」

梓「し、知ってますよ」

美冬「どうだった、せんべいの出来は?」

エリ「うん。おいしかった」

和「うまく出来そうかしら」

いちご「うん。えびせんべいと醤油せんべいの二種類だけど・・・」

純「試作品ありますか・・・!」

憂「はい、どうぞ」

純「やった。では、さっそく」パリッ

信代「・・・」

純「うん。せんべいだ」バリバリ

信代「リアクションふっつうだね・・・」

純「・・・」

律「お、ここも片付け終わってんじゃん」

澪「帰ろうか」

さわ子「まだ残っていたのね。早めに閉める事になってるからさっさと出なさい」

唯「はいよっ」

夏「帰りましょう帰りましょう〜♪」ルンルン

冬「・・・」

澪(楽しそうだな・・・)

信代「澪、コンサートどうだった?」

澪「・・・!」サッ

信代「どうして顔を逸らす・・・?」

15. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/11(日) 19:33:29.01 ID:8Tvag5feo

―――――校門


夏「夕陽沈んでしまいましたね〜♪」ルンルン

冬「・・・」

姫子「どうしたの夏は」

冬「わ、分かりません・・・」

律「今日はまっすぐ帰るかー」ノビノビ

紬「・・・」ノビノビ

エリ「りっちゃんと唯ちゃん寝ちゃったでしょ?」

律「ん?」

アカネ「クラッシクコンサート。演奏中に寝ちゃった?」

律「失敬だなキミ達はー」

唯「失敬だー!」

憂「ちゃんと起きてたの?」

唯「もちろんですたい。あの旋律はすばらしかったばい」

紬「・・・」コクコク

まき「・・・」

澪「あ、いちばんぼしだー」

信代「さっきから一言もコンサートについて話さないんだけど・・・」

律「澪は寝てたからな」

純「そ、そんな・・・!」

澪「あ、ながれぼしかとおもったらゆーふぉーだった☆」

和「帰ってきなさい」

澪「眠ってしまうなんて・・・不覚だ・・・」ズドーン

紬「・・・」キョロキョロ

梓「話題を逸らす為の嘘ですよ」

紬「・・・」ガーン

ちか「い、居るわけないよねー・・・」

美冬「それじゃあ何を探していたの?」

ちか「宵の明星だよ」

風子「金星は太陽の近くにいるんだよ?」

ちか「・・・」

風子「それなのに真上を観測していたんだ」

ちか「・・・」

梓(意地悪だなぁ・・・)

16. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/11(日) 19:34:31.46 ID:8Tvag5feo
いちご「風子ってまさに金星そのものだよね」

風子「そ、そうかな」テレテレ

律「どうして照れてんだ?」

冬「宵の明星。またの名を明け方の明星と呼ぶんです。
    そのことから美と愛の女神アプロディーテーに例えられているんです」

風子「えへへ」テレテレ

ちか「・・・」

いちご「そっちじゃないよ。ルシファーだけど」

風子「え・・・」グサッ

唯「今度は引きつったよ」

冬「ルシファーは・・・天使の長だったのですが・・・」

英子「・・・堕天使の総帥となるの」

風子「別名、悪魔・・・」

ちか「あれ・・・なんだろ・・・」

紬「・・・?」

ちか「ほら、見て・・・」スッ

いちご「・・・あれは・・・本物・・・?」

律「え!?」

唯「ユーフォーだね!?」

風子「っ!?」

ちか「引っかかったね、ふぅちゃん!」ビシッ

風子「くぅ・・・」

いちご「・・・」シラー

律「迫真の演技かよ」

澪「・・・」

紬「・・・」ガッカリ

梓「・・・」

ちか「いちごちゃん、ありがと!」スッ

いちご「・・・いいって」スッ

パァン

和「やるわね」

夏「あっはっはは!」

冬「なつってば・・・。笑いすぎだよ・・・」

17. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/11(日) 19:35:46.64 ID:8Tvag5feo
姫子「・・・ふぁ」

純「・・・ふぁ〜」

和「金星は姉妹惑星とも呼ばれているわね」

憂「地球と姉妹なの?」

和「えぇ。地球と似た大きさらしいわ」

唯「太陽の側にいるんだからそっちと姉妹なんじゃないの?」

潮「いや、兄弟なのかもしれないよ」

律「えっと、太陽から水金」

ちか「地火」

美冬「・・・」

律「繋ぎサンキュ・・・木土天海の順か」

姫子「・・・目がしぱしぱする」シパシパ

冬「眠たそうですね」

姫子「・・・うん。昨日寝たの2時まわってたから」

冬「そうなんですか」

慶子「テレビでも見てい・・・!」ハッ

風子「テレビでも・・・?道場にテレビあったかなぁ・・・」

慶子「・・・間違えただけだよ」

姫子「澪と話をしてたんだよ・・・今日は早く寝よう」シパシパ

紬「・・・」チラッ

澪「た、たいした話じゃないよ・・・」

紬「・・・」ジー

澪「た、旅の話をしていたんだ・・・。そ、それだけだぞ」

紬「・・・」コクリ

律「・・・」

18. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/11(日) 19:36:53.97 ID:8Tvag5feo
梓「あ・・・」

夏「執事さんだ」

斉藤「・・・」ペコリ

紬「・・・」フリフリ

梓「また明日です」

唯「おやすみ、むぎちゃん」

律「おやすみ」

澪「明日、な」

憂「おやすみなさい」

和「おやすみ」

純「おやすみなさーい」

姫子「バイバイ」

いちご「・・・」フリフリ

風子「・・・」

英子(ふぅ・・・?)

夏「おやすみなさーい」

冬「・・・」ペコリ

信代「・・・」フリフリ

潮(あと・・・いや、数えるのは・・・やめよう・・・)フリフリ

慶子「おやすみ、むぎさん」

ちか「おやすみ・・・」

美冬「・・・あした、ね」

紬「・・・」コクリ

19. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/11(日) 19:38:32.05 ID:8Tvag5feo

あと何度約束を交わせるのだろう

また、明日  と

ありふれた約束を交わせるのだろう

きっと、長い人生の中の一瞬に過ぎない時間なんだろう

だけど


梓「・・・」

澪「梓・・・」

梓「は、はい。なんですか?」

澪「私さ――」

唯「あーずにゃん!」ダキッ

梓「ちょっ!」

唯「うへへ」スリスリ

梓「脈略のない事しないでくださいっ」グググ

唯「のぉ・・・」ムググ

澪「・・・夏」

夏「はいはい、なんでしょう澪先輩」

澪「なんでそんなに楽しそうなんだ?」

律「・・・」

夏「そう見えますか」フフフ

律「言いたいなら言ってもいいんだぜー」

潮「さて、『い』をいくつ言ったでしょうか」

慶子「んー、一回」

潮「そんなわけないでしょ!」

信代「・・・」

夏「・・・」チラッ

20. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/11(日) 19:39:32.83 ID:8Tvag5feo
冬「東の空の、おそらくあの辺りにあると思います」

風子「あぁ、見えた」

冬「あ、すいません。あっちでした」

風子「・・・」

いちご「何が見えたの?」

風子「・・・」

冬「あれはオリオン座ですね」

風子「・・・うん。それ」

いちご「ふたご座を探していたのに」

風子「・・・あっちに見えるのがふたご座で間違いないんだよね?」

冬「は、はい」

英子(意地悪されたら脆くなるんだね・・・)

21. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/11(日) 19:40:31.82 ID:8Tvag5feo
夏「さっき、調理室で信代先輩があたしが冬かどうかを当てるクイズをしたじゃないですか」

澪「あ・・・、間違えてごめん」

信代「悪かった」

夏「ち、違いますよ!親父も間違えるくらいだから、間違えられるのはいいんです」

律「・・・」

夏「『区別』と言いますか、『見分ける』為に工夫をするんですよ。大抵の人は」

潮「髪に何かをつけさせるとか?」

夏「はい。髪を結えとか・・・。でも、先輩方は誰もそんな事言わなくて・・・」

信代「・・・」

夏「唯先輩なんて、『分からない』ですよ。二択で、あたしは『冬』を演じていたのに」

澪「・・・そうだったな」

夏「適当に名前を言えば良かったのに、あえてそうしなかった事が・・・なんだか新鮮で」

律「当たり前の事だろ」

夏「はい。その当たり前を過ごせるのが・・・嬉しいんですよ〜」

律「・・・そっか」

澪「嬉しいんだな」

夏「えへへ。ちゃんと見てくれてるんだなーって」

22. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/11(日) 19:41:03.66 ID:8Tvag5feo
冬「てんびん座・・・」

純「・・・ないの?」

冬「・・・うん。初夏の星座だから」

和「面白いわよね。9月23日、今日から来月の23日生まれの人を天秤座という
    占星術で括られているのに。星空ではその日には見られないなんてね」

冬「そ、そうですね!」

憂「・・・」

夏「冬ねぇ〜!帰るよ〜!!」

冬「分かったー。それでは、ごきげんようです」ペコリ

風子「うん。明日ね」フリフリ

英子「おやすみ」

和「じゃあ、ね」

憂「おやすみ」

純「バイバイ」

いちご「・・・じゃ」

冬「・・・」ニコ

タッタッタ

23. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/11(日) 19:41:32.81 ID:8Tvag5feo
英子「風子」

風子「え?」

英子「さっき、紬さんにどうして挨拶しなかったの」

風子「!」

英子「・・・」

純(え・・・、どうしたんだろ・・・怖・・・)

唯「3人ともバイバーイ明日ねー」

夏「おやすみなさーい」フリフリ

冬「あした〜です〜」

姫子「・・・」フリフリ

スタスタ

梓「私たちも帰りましょう。ふぅ先輩」

風子「・・・うん」

英子「・・・」

梓(あれ・・・雰囲気が変わっている・・・?)

律「じゃ気をつけろよー」

唯「ろよー」

憂「おやすみなさい」

和「じゃあね」

信代「おやすみー」

潮「おやすみ」

澪「また、明日な」

いちご「・・・うん」

梓「はい。また明日です」

純「おやすみなさーい」

24. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/11(日) 19:42:39.34 ID:8Tvag5feo
――・・・


英子「紬さんと別れた後、ちかさんと美冬さんにはちゃんと挨拶していたのに」

風子「・・・」

英子「どうして?」

風子「数えちゃった」

英子「・・・」

風子「むぎさんに、『また明日』を言える回数」

純「!」

潮「・・・」

梓「4回ですね」

風子「・・・うん」

英子「今日入れて5回だったのに、風子は1回を無駄にしちゃったね」

風子「っ!」ビクッ

英子「その回数はみんな平等のはずだよ。風子だけじゃないよ」

風子「・・・っ」

信代「まぁまぁ。挨拶は大事だけど、そんなに責める事じゃないじゃん」

潮「そうだよ。風子だって、ちゃんと分かってるから出来なかったって事なんじゃないかな・・・」

風子「・・・」

純「・・・」

梓「・・・」

英子(・・・やっぱり)

風子「ごめん・・・。先に帰る」

スタスタ

信代「あ、風子!」

潮「・・・」

純「あの・・・行ってしまいますよ・・・」

梓「・・・」

英子「信代さん、潮さん。お願いできるかな」

潮「・・・うん」コクリ

信代「任せて」

タッタッタ

純「・・・」

梓「近くに公園ありましたよね」

英子「あるね・・・」

梓「少しお話しませんか?」

英子「うん、ありがと」

25. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/11(日) 19:43:57.09 ID:8Tvag5feo

英子「オレンジとコーラ、どっちがいい?」

梓「オレンジで」

純「オ・・・、早いもの勝ちかよぉ・・・」

英子「あ、ごめんね。オレンジ買ってくるね」

梓「純っ!」

純「炭酸ダイスキーです!」

英子「本当?」

純「はい」

英子「空気読む必要はないんだよ?」

梓「大丈夫です」

純「はい」

英子「分かった」

梓「ありがとうございます」

純「いただきます」プシッ

英子「・・・」

梓「私も数えていたんです、あの時」

英子「・・・そう」

梓「むぎせんぱいと、4回・・・『また会いましょう』って挨拶ができるんだなって」

純「・・・」ゴクゴク

梓「あと、4回だけ約束ができる・・・って・・・」

英子「・・・うん」

梓「だから、風子先輩の気持ち・・・分かります・・・」

純「・・・」

英子「例えば、その4回が・・・急に3回になって、最後の1回を失くしてしまったら・・・どうなるかな」

梓「!」

純「約束が出来ないって事ですか・・・?」

英子「そうだね。最後に『さようなら』、『また、いつか会いましょう』が言えないって事」

梓(それは・・・嫌だ・・・むぎせんぱいに・・・言えないのは・・・いや・・・だ)

英子「風子と私と夏香はそういう最後だった」

純「・・・」

英子「梓ちゃんと自転車で街を走り回った日があったでしょ?」

梓「・・・はい」

英子「あの時、昔のふぅちゃんに戻ってたって話したよね」

梓「はい」

英子「高校で再会して大人しくなっていた。小学校の頃とは別人のようになって
      それを人は成長したって言うんだろうね」

純「・・・」ゴクゴク

英子「でも、違っていたみたい。風子は『ふぅちゃん』を抑えていただけ」

梓「・・・」

26. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/11(日) 19:46:29.60 ID:8Tvag5feo
英子「人は誰でも、そんな子供な自分を抑えていくものなんだろうね
      周りに合わせるためにも、抑えずにはいられない。それが常識」

純「・・・なんとなく、ですけど・・・。抑えるのは成長じゃないような気がします」

英子「どうして?みんなやっている事だよ?最初は意識して行動を抑えるの
      次第に頭がそれを受け入れていって、大人はこんな行動をしないという風に
      そういう常識を積み重ねていくの」

梓(それを否定して欲しそうな・・・言い方・・・)

純「それは常識を積み重ねているだけで、自分を積み重ねていないです」

英子「自分・・・って・・・なにかな・・・」

純「・・・経験だとか、見てきた景色だとか、自分に関する全てです」

梓「・・・」

純「成長は・・・自分が認めるモノじゃないと思います」

英子「周りが決めるんだよね。常識を備えたら成長になるって事だよね」

純「ち、違います!・・・それじゃあ、楽しくないし何も残らないっ!」

英子「あるがままの心を持っていければいいのかな」

梓「!」

純「そ、そうですってなぜそれを!?」

英子「ふふっ、実は昨日の夜全部聞いていたの」

純「・・・」

英子「ごめんね。自分の考えを纏めたくて聞いたの」

純「・・・そうですか」

英子「昨日の夜、聞いていたの私だけじゃないと思うけど・・・」

梓「な、なんと・・・」

27. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/11(日) 19:47:38.05 ID:8Tvag5feo
英子「私たち小学校卒業するまでずっと一緒だったの。風子、夏香、私」

梓「・・・はい」

英子「私と夏香の中学校と別々だって分かったとき、とても泣きじゃくってね・・・風子は・・・」

純「・・・」

英子「だから、卒業した次の日に約束をしよう。って約束をしたの」

梓「約束をする為の約束・・・」

英子「『また会おうね』という約束をしようって。そして、指きりげんまんしようって」

純「・・・その時点で約束を交わしているんじゃ」

英子「その通りだよね。でもふぅちゃんがその約束をその日に設定したの」

純「なにか・・・意味でも・・・」

英子「ないよ。ふぅちゃんは子供が子供をしているって感じで子供だったから」

梓「・・・」

英子「それでカウントダウンが始まって、卒業して。次の日・・・
      約束が交わされることはなかった。約束も果たされなかった」

梓「・・・」

英子「私と夏香がふぅちゃんのお家へ行っても誰もいなくて・・・
      帰るわけにもいかないから、時間を潰して、いつもの場所で待っていたんだけど、来なかった」

純「そ、それっきり・・・?」

英子「ううん。日が暮れてお家に帰ったら電話が鳴ってね、取ったらふぅちゃんだった
      『ごめんなさい』って泣きじゃくって・・・」

梓「・・・」

英子「意地悪だけどとっても優しいふぅちゃんだから、私たちに悪いことをした
      約束を破った、って凄く傷ついていた・・・」

純「・・・」

英子「母方の実家の都合でしょうがなかったって、風子と再会してから聞いてね
      時間が経ったから『ごめんね』で済ませたようなもので・・・
      その時の電話越しのふぅちゃんはとても・・・悲しい声だったな・・・っ・・・」

梓「っ・・・」

英子「会おうと思えば会える距離だったから、大丈夫って信じていた」

純「・・・信じていた?」

英子「時間の流れって優しくて切なくて、怖いものだと感じたよ」

梓「・・・!」

英子「お互い忙しくて、夏香とも会う機会が減っていった・・・
      新しい世界っていうのかな、新鮮で楽しくて、大変だから一生懸命で」

純「・・・」

英子「3年の月日が約束を忘れさせたんだよ。入学式の日に風子が謝るまで私と夏香は忘れていた。
      約束をしようって約束が果たされないまま今日まできちゃった・・・」

梓「その約束は・・・もう・・・解消されているのでは・・・」

純「あ、梓・・・。再会できればいいって話ではないでしょ・・・」

梓「う、うん・・・」



最終更新:2011年10月06日 03:03