梓「冬がマネージャーとして入部したら、夏は髪を切りました。その理由が
 『冬がそこに居る』からなんです。冬を見てほしいから」

澪「・・・」

梓「今日、冬が髪を切ったのは、恐らく」

姫子「夏の居場所を作る為。今まで夏は冬の居場所を作ろうとしていた。そこに冬は居ないのに」

澪「・・・」

姫子「冬が入部した後に夏が髪を切って、部長がこう言ったんだよ
   『見分けがつくから助かる』って。夏はその為に髪を切ったんだね」

梓「・・・はい」

姫子「冬は、戻る為にじゃなく、新たに進む為に髪を切ったって事かな」

澪「・・・そうか」

梓「・・・」

姫子「梓は夏から直接聞いたんだ?」

梓「は、はい」

姫子「・・・」

澪「姫子は?」

姫子「最近気付いたくらいだよ・・・。月見会で、『姉をよろしく』って言ったでしょ」

梓「・・・」

姫子「その顔は覚えてないよね。普通の紹介だったもんね」

澪「今思えば・・・。それは特別だったんだ・・・」

姫子「うん。部ではそっけない夏が、あの時は親身になってたから。私は覚えている」



――・・・3年生のクラス


ちか「虎徹ちゃん帰ったよ~」

梓「し、知ってますよ」

美冬「どうだった、せんべいの出来は?」

エリ「うん。おいしかった」

和「うまく出来そうかしら」

いちご「うん。えびせんべいと醤油せんべいの二種類だけど・・・」

純「試作品ありますか・・・!」

憂「はい、どうぞ」

純「やった。では、さっそく」パリッ

信代「・・・」

純「うん。せんべいだ」バリバリ

信代「リアクションふっつうだね・・・」

純「・・・」

律「お、ここも片付け終わってんじゃん」

澪「帰ろうか」

さわ子「まだ残っていたのね。早めに閉める事になってるからさっさと出なさい」

唯「はいよっ」

夏「帰りましょう帰りましょう~♪」ルンルン

冬「・・・」

澪(楽しそうだな・・・)

信代「澪、コンサートどうだった?」

澪「・・・!」サッ

信代「どうして顔を逸らす・・・?」



―――――校門


夏「夕陽沈んでしまいましたね~♪」ルンルン

冬「・・・」

姫子「どうしたの夏は」

冬「わ、分かりません・・・」

律「今日はまっすぐ帰るかー」ノビノビ

紬「・・・」ノビノビ

エリ「りっちゃんと唯ちゃん寝ちゃったでしょ?」

律「ん?」

アカネ「クラッシクコンサート。演奏中に寝ちゃった?」

律「失敬だなキミ達はー」

唯「失敬だー!」

憂「ちゃんと起きてたの?」

唯「もちろんですたい。あの旋律はすばらしかったばい」

紬「・・・」コクコク

まき「・・・」

澪「あ、いちばんぼしだー」

信代「さっきから一言もコンサートについて話さないんだけど・・・」

律「澪は寝てたからな」

純「そ、そんな・・・!」

澪「あ、ながれぼしかとおもったらゆーふぉーだった☆」

和「帰ってきなさい」

澪「眠ってしまうなんて・・・不覚だ・・・」ズドーン

紬「・・・」キョロキョロ

梓「話題を逸らす為の嘘ですよ」

紬「・・・」ガーン

ちか「い、居るわけないよねー・・・」

美冬「それじゃあ何を探していたの?」

ちか「宵の明星だよ」

風子「金星は太陽の近くにいるんだよ?」

ちか「・・・」

風子「それなのに真上を観測していたんだ」

ちか「・・・」

梓(意地悪だなぁ・・・)

いちご「風子ってまさに金星そのものだよね」

風子「そ、そうかな」テレテレ

律「どうして照れてんだ?」

冬「宵の明星。またの名を明け方の明星と呼ぶんです。
  そのことから美と愛の女神アプロディーテーに例えられているんです」

風子「えへへ」テレテレ

ちか「・・・」

いちご「そっちじゃないよ。ルシファーだけど」

風子「え・・・」グサッ

唯「今度は引きつったよ」

冬「ルシファーは・・・天使の長だったのですが・・・」

英子「・・・堕天使の総帥となるの」

風子「別名、悪魔・・・」

ちか「あれ・・・なんだろ・・・」

紬「・・・?」

ちか「ほら、見て・・・」スッ

いちご「・・・あれは・・・本物・・・?」

律「え!?」

唯「ユーフォーだね!?」

風子「っ!?」

ちか「引っかかったね、ふぅちゃん!」ビシッ

風子「くぅ・・・」

いちご「・・・」シラー

律「迫真の演技かよ」

澪「・・・」

紬「・・・」ガッカリ

梓「・・・」

ちか「いちごちゃん、ありがと!」スッ

いちご「・・・いいって」スッ

パァン

和「やるわね」

夏「あっはっはは!」

冬「なつってば・・・。笑いすぎだよ・・・」

姫子「・・・ふぁ」

純「・・・ふぁ~」

和「金星は姉妹惑星とも呼ばれているわね」

憂「地球と姉妹なの?」

和「えぇ。地球と似た大きさらしいわ」

唯「太陽の側にいるんだからそっちと姉妹なんじゃないの?」

潮「いや、兄弟なのかもしれないよ」

律「えっと、太陽から水金」

ちか「地火」

美冬「・・・」

律「繋ぎサンキュ・・・木土天海の順か」

姫子「・・・目がしぱしぱする」シパシパ

冬「眠たそうですね」

姫子「・・・うん。昨日寝たの2時まわってたから」

冬「そうなんですか」

慶子「テレビでも見てい・・・!」ハッ

風子「テレビでも・・・?道場にテレビあったかなぁ・・・」

慶子「・・・間違えただけだよ」

姫子「澪と話をしてたんだよ・・・今日は早く寝よう」シパシパ

紬「・・・」チラッ

澪「た、たいした話じゃないよ・・・」

紬「・・・」ジー

澪「た、旅の話をしていたんだ・・・。そ、それだけだぞ」

紬「・・・」コクリ

律「・・・」

梓「あ・・・」

夏「執事さんだ」

斉藤「・・・」ペコリ

紬「・・・」フリフリ

梓「また明日です」

唯「おやすみ、むぎちゃん」

律「おやすみ」

澪「明日、な」

憂「おやすみなさい」

和「おやすみ」

純「おやすみなさーい」

姫子「バイバイ」

いちご「・・・」フリフリ

風子「・・・」

英子(ふぅ・・・?)

夏「おやすみなさーい」

冬「・・・」ペコリ

信代「・・・」フリフリ

潮(あと・・・いや、数えるのは・・・やめよう・・・)フリフリ

慶子「おやすみ、むぎさん」

ちか「おやすみ・・・」

美冬「・・・あした、ね」

紬「・・・」コクリ


あと何度約束を交わせるのだろう

また、明日 と

ありふれた約束を交わせるのだろう

きっと、長い人生の中の一瞬に過ぎない時間なんだろう

だけど


梓「・・・」

澪「梓・・・」

梓「は、はい。なんですか?」

澪「私さ――」

唯「あーずにゃん!」ダキッ

梓「ちょっ!」

唯「うへへ」スリスリ

梓「脈略のない事しないでくださいっ」グググ

唯「のぉ・・・」ムググ

澪「・・・夏」

夏「はいはい、なんでしょう澪先輩」

澪「なんでそんなに楽しそうなんだ?」

律「・・・」

夏「そう見えますか」フフフ

律「言いたいなら言ってもいいんだぜー」

潮「さて、『い』をいくつ言ったでしょうか」

慶子「んー、一回」

潮「そんなわけないでしょ!」

信代「・・・」

夏「・・・」チラッ

冬「東の空の、おそらくあの辺りにあると思います」

風子「あぁ、見えた」

冬「あ、すいません。あっちでした」

風子「・・・」

いちご「何が見えたの?」

風子「・・・」

冬「あれはオリオン座ですね」

風子「・・・うん。それ」

いちご「ふたご座を探していたのに」

風子「・・・あっちに見えるのがふたご座で間違いないんだよね?」

冬「は、はい」

英子(意地悪されたら脆くなるんだね・・・)

夏「さっき、調理室で信代先輩があたしが冬かどうかを当てるクイズをしたじゃないですか」

澪「あ・・・、間違えてごめん」

信代「悪かった」

夏「ち、違いますよ!親父も間違えるくらいだから、間違えられるのはいいんです」

律「・・・」

夏「『区別』と言いますか、『見分ける』為に工夫をするんですよ。大抵の人は」

潮「髪に何かをつけさせるとか?」

夏「はい。髪を結えとか・・・。でも、先輩方は誰もそんな事言わなくて・・・」

信代「・・・」

夏「唯先輩なんて、『分からない』ですよ。二択で、あたしは『冬』を演じていたのに」

澪「・・・そうだったな」

夏「適当に名前を言えば良かったのに、あえてそうしなかった事が・・・なんだか新鮮で」

律「当たり前の事だろ」

夏「はい。その当たり前を過ごせるのが・・・嬉しいんですよ~」

律「・・・そっか」

澪「嬉しいんだな」

夏「えへへ。ちゃんと見てくれてるんだなーって」

冬「てんびん座・・・」

純「・・・ないの?」

冬「・・・うん。初夏の星座だから」

和「面白いわよね。9月23日、今日から来月の23日生まれの人を天秤座という
  占星術で括られているのに。星空ではその日には見られないなんてね」

冬「そ、そうですね!」

憂「・・・」

夏「冬ねぇ~!帰るよ~!!」

冬「分かったー。それでは、ごきげんようです」ペコリ

風子「うん。明日ね」フリフリ

英子「おやすみ」

和「じゃあ、ね」

憂「おやすみ」

純「バイバイ」

いちご「・・・じゃ」

冬「・・・」ニコ

タッタッタ

英子「風子」

風子「え?」

英子「さっき、紬さんにどうして挨拶しなかったの」

風子「!」

英子「・・・」

純(え・・・、どうしたんだろ・・・怖・・・)

唯「3人ともバイバーイ明日ねー」

夏「おやすみなさーい」フリフリ

冬「あした~です~」

姫子「・・・」フリフリ

スタスタ

梓「私たちも帰りましょう。ふぅ先輩」

風子「・・・うん」

英子「・・・」

梓(あれ・・・雰囲気が変わっている・・・?)

律「じゃ気をつけろよー」

唯「ろよー」

憂「おやすみなさい」

和「じゃあね」

信代「おやすみー」

潮「おやすみ」

澪「また、明日な」

いちご「・・・うん」

梓「はい。また明日です」

純「おやすみなさーい」


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最終更新:2011年10月06日 17:51