冬「春日大社と気比神宮の大鳥居に並ぶ「日本三大鳥居」の一とされています。
  1996年、ユネスコの世界遺産として登録され、国内外の観光客が年間300万人台に達しています」

信代「ふーん・・・」

冬「厳島神社のある宮島は、古代より島そのものが神として――」

律「あ、もういいぞ」ポス

冬「ちなみに日本三景のあと二つは京都にある天の橋立、仙台にある――」

唯「松島だよね!」

憂「観光したんだよね」

唯「美しかったよぉ~。松島や、あぁいいところ、松島や」

冬「ちなみにそれは石川啄木では――」

姫子「もういいから」ポス

冬「は・・・っ・・・ぃ」

律「私が降りた後の話か?」

梓「そうです。厳島神社へ二人で向かったんです」

澪「・・・そうか・・・・・・」

梓「夕陽が綺麗でしたよ。むぎせんぱいと一緒に鳥居をくぐって」

風子「・・・」

梓「えと・・・その・・・。その時、私は・・・むぎせんぱいの事で・・・不安な事があったんです」

憂「・・・」

姫子「聞いていい事?」

梓「・・・」

春子「そこの話は飛ばしてもいいんじゃないの?」

いちご「・・・要所だけ聞きたい」

梓「いえ・・・。それだと、伝わりませんから」

風子「・・・」

梓「むぎせんぱいが遠くに行っちゃいそうで・・・」

唯「あずにゃん・・・」

梓「笑ってはいるんですけど、むぎせんぱいの中で・・・何かが変化していて」

澪「・・・」

梓「その笑顔が不自然で、違和感があって・・・らしくない表情をみせて・・・」

律「・・・」

梓「それは、『別れ』を恐れていたからなんです・・・」

風子「っ!」ビクッ

姫子「むぎが・・・?」

梓「はい。むぎせんぱいが、です」

春子「・・・意外っていうか・・・・・・」

いちご「・・・うん」

梓「幼い頃、大切な人とのとても悲しい別れ方をしてしまって」

夏香「!」

英子「・・・」

梓「旅の中で出会った人と別れるたびに、『その時』が心を揺さぶっていたんです
  そのせいで・・・『別れ』が怖くなってしまって」

夏(・・・大切な人)

冬「・・・」

梓「姉のように慕っていたのに、時間がその人との記憶を忘れさせてしまったようです」

風子「・・・」

梓「ついでに言ってしまうと実はその人と再会を果たせていたんです。あの旅の中で・・・」

英子「紬さんは・・・『別れ』を・・・怖さを克服できたの・・・かな?」

梓「それは分かりません」

いちご「・・・どうしてこの話を?」

梓「私たちはむぎせんぱいの帰りを待つ事で、ずっと一緒にいられると思っていたんです」

夏香「・・・」

梓「『ずっと一緒にいましょう』と旅の終着地点で約束も交わしました」

唯「うん」

律「あぁ」

澪「ずっと、な」

梓「でも、今月の28日でその約束は・・・解消されてしまうんです・・・」

風子「・・・」

梓「むぎせんぱいが空を見上げる理由・・・それは――」

風子「私は・・・乗り越えられる。乗り越えられたから」

梓「・・・」

風子「私と紬さんは違う。悲しい別れは長い人生のうちに何度でも起こる」

律「そうだけど――」

風子「私は・・・果たされなかった約束で留まったりしない」

澪「私たちは――」

風子「ちゃんと進める。前をしっかりみて進んでいる」

唯「それは――」

風子「もう・・・そんな子どもみたいな時期は過ぎたから」

姫子「・・・」

いちご「・・・」

風子「過去の悲しい事も、これから起こる悲しい事も受け止める」

夏香「まだ子どもだよ」

英子「『ふぅちゃん』のままだよ」

冬「・・・っ」

夏(冬ねぇ・・・)

風子「どうして?私は『別れ』にも耐えてみせるよ。どれだけの悲しい『別れ』でも
   それが成長の証なんだから・・・。紬さんとも――」

夏香「それを子どもだと言ってるんだよ」

英子「話を聞かない『ふぅちゃん』がここにいる」

風子「バカにしてるの・・・?」

英子「だって、梓ちゃんの話を聞いていないよね」

夏香「律さん、澪さん、唯ちゃんの言葉を遮って・・・。耳を塞いで、聞きたくないって駄々をこねているだけだよ」

風子「果たされない約束は薄れていくものだよ。・・・そうだよね?」

英子「・・・」

夏香「・・・」

風子「果たされていないのは『約束をしよう』っていう約束だけじゃないんだよ?」

英子「・・・?」

夏香「え・・・」

風子「小学校の卒業式の日、お姉ちゃん、夏香、英子、私。4人での約束」

英子「!」

夏香「!」

風子「『高校入学式、その前の日にみんなであの公園で』」

英子「・・・それは・・・・・・」

夏香「・・・」

風子「『別々の高校に行くことになっても、ここで会おう』」

英子「・・・」

夏香「・・・」

風子「指きりげんまんしていないから・・・印象に残らなかったよね・・・」

夏香「ッ!」

風子「でも、お姉ちゃんは来てくれた」

英子「・・・!」

風子「私は学園祭を成功させて、紬さんを見送る」

梓「・・・」

風子「午後の準備あるから、先に――」

冬「置いて・・・いかないで・・・ください・・・」

風子「・・・」

夏「冬ねぇ・・・」

風子「私は、進みたいから・・・。先に行ってる」スッ

スタスタ

唯「ふぅちゃん・・・」

澪「・・・」

律「・・・」

梓「・・・」

冬「・・・っ」グスッ

夏「ほら、拭いて」スッ

冬「うん・・・」

英子「夏香・・・」

夏香「そういえば・・・その日の姉さん変な顔で笑ってた・・・」

英子「風子・・・入学式の日に・・・何も無かったって顔してたよね・・・」

夏香「忘れていたなんて・・・」

憂「・・・」

純「・・・」

和「・・・」

英子「ごめんね・・・みんな・・・」

夏香「・・・ごめん」

姫子「・・・」フゥ

いちご「・・・」

信代「まずいよ・・・目的は同じでも、向かっている方向がまるで違う」

春子「・・・形だけの成功なんてなぁ」

律「言葉があっても伝えきれないのかよ・・・」

澪「・・・悔しいな」

唯「そうだね・・・」

梓「・・・ちゃんと答えてないです」

律「むぎが空を見上げた理由・・・か?」

梓「はい」

澪「・・・」

梓「やっぱり私ではダメですね。むぎせんぱいが伝えなくてはいけないと思います」

唯「そっか・・・」

夏香「・・・」

英子「・・・」

澪「そろそろお昼休み終わるな」

唯「準備だよっ!」

律「だな!」

春子「気持ちを切り替えはやいな」

律「このままで終わらせられないだろ」

澪「むぎとの『別れ』がすぐそこなんだ。俯いてられない」

唯「みんなで見送るんだよ。強くなってね!」

梓「ですっ!」

姫子「そうだね」

いちご「・・・うん」

信代「・・・」

春子「肝心の二人が下向いていいの?」

夏香「今の風子がいるのは・・・私のせい・・・だよ・・・」

英子「・・・私も」

姫子「そのせいってのはなに?・・・今の風子が悪いみたいなんだけど」

夏香「それは・・・」

いちご「離れていたら、伝わらない」

英子「・・・うん」


冬「離れて行っちゃった・・・」

夏「近づけばいいさ」

冬「・・・できるの?」

夏「やるの、冬ねぇが」

冬「・・・」

梓「・・・」



―――――放課後・3年生のクラス


「澪さんは?」

一子「部活だよ・・・」

「ふーん・・・」

一子「・・・」コンコン

「いつ戻ってくるのかな」

一子「・・・・・・・・・分からない・・・」

「そうだよね」

一子「ちゃんと抑えて、曜子」

曜子「うん」

ガチャ

曜子「・・・!」


風子「屋台班からの差し入れもってきたよ」

潮「やったぁ!」

春子「ポーポーとお茶が合うんだよな」

未知子「ふむふむ」

潮「調理の様子はどう?」

風子「順調だよ」


曜子「・・・」ガッカリ

一子「ちゃんと手元見てて、危ないよ?」

曜子「うん」

一子「練習がそんなに早く終わらないから」

曜子「・・・そうだよね」

風子「どうしたの?」

冬「私たちの準備は終わってしまったので・・・見学に・・・」

風子「そう・・・」

冬「・・・」ナデナデ

虎徹「・・・」ゴロゴロ

エリ「懐いてるね~」

冬「ふ、二人で大人しくしています・・・」

風子「・・・」

三花「大人しくする必要ないんだよ~」ホノボノ

風子「夏ちゃんたちは調理室にいるよ?」

冬「な、夏に出入り禁止にされていますので・・・」

春子「なんだそれ」

冬「あはは・・・」

虎徹「」スヤスヤ

風子「そう・・・。のんびりしててね」

スタスタ

冬「・・・」

春子「なんだありゃ・・・」

冬「・・・」

春子(まるで関心がないみたいな態度・・・)


――・・・


姫子「梓の反応はどうだった?」

夏「目が点になってましたよ。『どうして虎徹がいるの』って」

いちご「・・・ネコ嫌いなの?」

純「好きだと思いますけど・・・、虎徹は論外みたいです」

姫子「仲がいいんだか悪いんだか」

夏「さて、セットの出来はどうですかなー・・・」

純「・・・」ワクワク

ガチャ

夏「あらら」

冬「」スヤスヤ

虎徹「」スヤスヤ

姫子「こっちも順調みたいだね」

いちご「・・・風子と作業してくる」

潮「まって、今は1人でさせといて」

いちご「・・・1人でやっても進まないよ」

慶子「というか、ピリピリしてるから・・・」

姫子「なにか言われたの?」

潮「いんや、なんにも言わないから困ってる」

慶子「さっきまで未知子さんと一緒にいたんだけど、信代が連れて行った」

姫子「その信代たちは?」

潮「遊びに行ったよ」

夏「遊びに・・・?」

潮「けいおん部へね」

純「なにか企んでいるんですか?」

慶子「・・・私は反対したんだけどね・・・綱渡りっぽくて冷や冷やする」

夏純「「 ? 」」

潮「信代も大成功させたいって」

姫子「信代も・・・」

夏「姫子先輩、エリ先輩たちと合流しましょう」

姫子「・・・うん」

スタスタ

純「さわ子先生にだけ衣装を作らせてしまっていいのでしょうか・・・」

潮「大丈夫だよ。根拠ないけど」

慶子「二人ともこっち手伝って」

純「はいっ!」

いちご「うん」

スタスタ

冬「」スヤスヤ

虎徹「」スヤスヤ

夏香「一緒にやろ」

英子「・・・」

風子「いいけど・・・。今の私は腫れ物だよ?」チクチク

夏香「・・・」

英子「・・・」

風子「この座布団の布お願い」

夏香「・・・うん」

英子「任せて」

風子「・・・」ヌイヌイ

夏香「・・・」チクチク

英子「・・・」スィスィ

風子「上手だね、裁縫」

夏香「英子は中学のときから・・・上手だった」

英子「・・・そんな事ないよ」

風子「・・・」チクチク

夏香「あの・・・さ、風子」

風子「・・・?」

英子「約束忘れて・・・ごめん・・・ね」

夏香「ごめん」

風子「いいよ。時間とともに風化していくものだから・・・。改まって言われる事でもない」

夏香「・・・」

英子「・・・」

風子「手を動かして」ヌィヌィ

夏香「・・・」チクチク

英子「・・・」

風子「謝るのが目的なら、席はずしていいよ。私1人で出来る範囲だから」チクチク

夏香「・・・あのねぇ」

英子「・・・」

風子「もう完成度は目標を達成している。美冬さんと和さんが公表した数値は嘘だよ」

夏香「・・・」

英子「・・・」

風子「打ち合わせも終わっているから、・・・帰ってもいいんだよ」

夏香「・・・」

英子「・・・」

風子「後は、明日の本番を待つだけ・・・」ヌィヌィ

夏香「・・・」

英子「前夜祭するって・・・言ってるよ」

風子「・・・そう」チクチク

夏香「参加しないの?」

風子「いい。・・・今の私は空気を悪くするだけだから」ヌィヌィ

英子「・・・」

風子「今も悪くしているから・・・。早く仕上げて帰るよ」チクチク

夏香「・・・っ」

英子「子どもだよ・・・。風子は・・・」

風子「・・・そう見えるならそれでいい。泣きじゃくるだけならもう終わったから」ヌィヌィ

英子「・・・」

風子「もう、あの頃の私はいないから。それでいい」プチッ

英子「今度は目を塞いでいるんだよ」

風子「聞かないの次は、見ないって・・・?次は・・・言わない、かな?」

夏香「風子・・・笑えないって・・・」

風子「笑わそうとも思ってないよ。・・・帰るね」スッ

英子「まって・・・」

風子「・・・」

スタスタ

夏香「まて!風子!」

純「ッ!?」ビクッ

エリ「どう・・・したの・・・?」

風子「・・・なんでもない。私、先に帰るから・・・」

夏香「待てって!」ガシッ

風子「・・・」

姫子(・・・夏香?)


冬「ぅ・・・ん・・・?」

虎徹「・・・」ピクピク


9
最終更新:2011年10月06日 18:06