梓「少し、いえ・・・大分時間かかりますがいいですか?」

澪「あぁ」

律「時間はまだ、ある」

唯「うん!」

紬「・・・」

梓「すぅ・・・」

紬「・・・」

梓「・・・はぁ」

紬「・・・」

梓「音楽をやっていて、本当によかったです」

紬「・・・」コクリ

梓「けいおん部に入ることができました
  先輩方と音で繋がることができました
  技術より大切なものを学びました
  なにより

  むぎせんぱいの声を聴くことができました

  今までの自分を少し誇りに思います」

紬「・・・」ギュ


むぎせんぱいの小指に力が入った気がした


梓「2年生が率先して、3年生の皆さんのために
  演奏中出店を、私たちが製作した店を守ってくれています
  正直、こんなに熱を持つクラスメイトだと思っていなかったので
  ちょっと感動しちゃいました」

律「・・・」コクリ


律先輩が私の言葉を遮らないように優しく頷いてくれた


梓「さっき、夏と冬に泣かれました
  『ありがとう』って・・・
  まだ、なにもしていないのに。これからやろうとしているのに
  私の目を見て何かを伝えようとしていました
  この先もずっと、その何かは分からないと思いますけど
  忘れることの出来ない目をしていました」

唯「・・・」


唯先輩が強く優しく綺麗に微笑んでくれた


梓「きっと、これから先、私たちは別々の道を歩む事になると思いますが
  同じ道を歩んでいる『今』を踏みしめて
  刻み付けて、進んでいきたいです」


澪「・・・」


澪先輩の瞳の奥に、とても頼りになる輝きが見えたような気がした


梓「私、これからむぎせんぱいに、最低なことを聞きます」

紬「?」

梓「寂しくないですか?」

紬「――!」

唯「ッ!」

律「!」

澪「・・・」


鍵盤が遠くにある

右手を塞いでいる

伝える手段が無い

この状況でワタシはヒドイことをシタ

デモ聴カナクテハイケナイヨウナ気ガシタ


紬「・・・」パクパク


言葉を伝えないその口から

言葉がこぼれる

『さびしい』『いきたくない』


ごめんなさい


梓「私も行ってほしくないです」ホロリ

紬「・・・」

梓「ごめんなさい・・・っ・・・こんな事聞いて・・・ごめんなさいっ」ボロボロ

紬「・・・」ギュウ

唯「まだ手を離しちゃダメだよ」

梓「・・・!」グスッ

律「梓、まだ続きがあるんだろ」

梓「・・・っ」グスッ

澪「これからの時間を、梓の言葉で進めよう」

紬「・・・」コクリ

梓「・・・はいっ」

紬「・・・」

梓「一生忘れる事のできない『今』をつくりましょうッ!!!!」

紬「・・・」コクリ

律「おっしゃあー!!!」

唯「やるよぉ!!!」

澪「あぁ!」

紬「・・・」

ギュウ

梓「!」


ナンデアンナ言葉ヲ発シタワタシヲ

抱キシメラレルンデスカ

身勝手デスケド

トテモ救われます

ありがとうむぎせんぱい


唯先輩がころんで

幕は上がった

おかげでさっきまでの気分が吹き飛んだ


―――――・・・


パチパチパチパチ

唯『みんなーありがとー』

律「・・・ふぅ」

澪「・・・」

梓「・・・」

紬「・・・」フゥ

「いいぞー唯ー!」

唯『えへへ、ありがと~』

律「・・・」ドドンドジャジャン

唯『どうだったかな?メドレー・・・』

「よかったよー!」

唯『カレーのち恋はボールぺんなんだけど~』

「曲はよかったけど、そのタイトルおかしいぞー!」

唯『そんな事ないよ!』

ワハハハハ

澪「ゆ、唯!」

唯『へ?』

澪「和が!」

唯『和ちゃん?』

和「時間が押してるのよ!」

唯『あ、そっか・・・では3曲目の曲です!』

律「4曲目だ!」

唯『あれ・・・、えっと・・・ふわふわ、ぴゅあぴゅあ、メドレー、ほんとだ』ウッカリ

アハハハハ

唯『次の曲はね~、最初に出来上がった曲がボツになって変わりに出来上がった曲なんです』

梓「・・・」ヒヤヒヤ

唯『ボツになった曲がね、ごはんはおかず、だったんだけど~』

和「ゆい!」

唯『あ、ごめんなさい!では次の曲です。U&I』

タタタタッ

チャーララーラーラーラ

ダンッダンダンダンッ

唯『 キミがいないと何にもできないよ 
   キミのごはんが食べたいよ
   もしキミが帰ってきたら
   とびっきりの笑顔で抱きつくよ

   キミがいないと謝れないよ
   キミの声が聞きたいよ
   キミの笑顔がみれればそれだけでいいんだよ

   キミがそばにいるだけでいつも勇気もらってた
   いつまでも一緒にいたい
   この気持ちを伝えたいよ 

   晴れの日にも雨の日も
   キミはそばにいてくれた
   目を閉じればキミの笑顔輝いてる 』


律「・・・はは」

憂ちゃんが風邪をひいたときに出来あがった曲なのにな

この状況は

ダブってしまう


律「・・・」

紬「・・・」

唯『 キミがそばにいることを当たり前に思ってた
   こんな日々がずっとずっと
   続くんだと思ってたよ 』


   ゴメン今は気づいたよ
   当たり前じゃないことに

   まずはキミにつたえなくちゃ
   「ありがとう」 を


律(むぎ――)

   ――ありがとう



唯『 キミの胸に届くかな?今は自信ないけれど
   笑わないでどうか聴いて
   思いを歌に込めたから

   ありったけの「ありがとう」
   歌に乗せて届けたい
   このきもちはずっとずっと忘れないよ 』


   思いよ 届け


ダンダンダンダーンッ


パチパチパチパチ

「ゆいー!」

「ゆいちゃーん!」

紬「・・・」

梓「律先輩・・・」

律「・・・ッ!」

澪「りつ」

律「わ、分かってるよ!」ゴシゴシ

「りつー!!」

「りっちゃーん!」

律「ははっ、応援されちった」グスッ

唯『じゃ、続けて行くよ!
  この曲はむぎちゃんが作成した曲です!では』

紬「・・・」

ポロロロロン

唯『ん?』

紬「・・・」ポン

梓「ド#」

紬「・・・」ポンポン

澪「ラ、レ#」

紬「・・・」ポポンポン

律「レレ、ド#」

紬「・・・」ポンポン

唯『ド、ラ#』

紬「・・・」ポン

律梓唯「「「『 ファ# 』」」」


澪(こんなに・・・)

こんなに綺麗な音は聴いたことがなかった

多分、これからも聞く事は無い

美しくて、素敵な音だ

姫子「『ありがとう』」

冬「・・・」

夏「・・・」

いちご「・・・うん」

春子「こっちも・・・返さないと」

姫子「むぎぃー!!ありがとぉー!!!」

いちご「!!!」

冬夏「「 ありがとーーッ! 」」

春子「ありがとおー!!」

いちご「あ、ありがとお!」


紬「!」

梓「・・・ぁ」

律「・・・はは」

澪「・・・」

唯『・・・』


信代「一斉のーでっ」

潮慶子圭子信代「「「「 ありがとぉー!!! 」」」」

風子「むぎさぁん、ありがとー」ボロボロ

夏香「っ・・・あ、ありがとぉー!」

英子「ありがとー!」

エリアカネ三花「「「 ありがとぉー!! 」」」

まきとし美「「 ありがとー!! 」」


紬「・・・」ホロリ

梓「・・・!」

律「むぎ・・・」

唯『むぎちゃん・・・』

澪「むぎが・・・」


今まで泣かなかったむぎが

梓を支えるために

迷わずに前を見ていた

とっても強かったむぎが

泣いた


ちか「むぎさぁーん、ありがとー」ボロボロ

美冬「っ・・・ありがとー!」

未知子「ありがとぉー!!」

多恵文恵「「 ありがとぉー!!! 」」」

しずか春菜「「 ありがとー! 」」


紬「・・・」ボロボロ

梓「っ・・・」

律「・・・ッ」

唯「ぅ・・・」グスッ

澪「・・・」


むぎに届くたくさんの声

一つ一つ胸に染み込ませるように


むぎが届けた一つの声

一つ一つ紡いだむぎの声

みんなに届いた


つかさ愛俊美ますみ「「「「 ありがとー!! 」」」」

一子曜子「「 ありがとぉー!!! 」」

響子キミ子「「 ありがとー!! 」」

よしみちずる「「 ありがとぉー! 」」

アキヨ「・・・っ」

いちご信代春子「「「「 ありがとう! 」」」

風子夏冬姫子「「「 ありがとぉー!! 」」」


『さわちゃん、いいクラスに恵まれたな~』

さわ子「えぇ。恵まれたわ」

和「むぎ!」

純「紬先輩ー!」

憂「紬さん!!!」


紬「・・・」ボロボロ

唯「む、むぎちゃん!最後の曲!」

梓「い、行きましょう!」

律「あぁ、最後にでっかいやつ!」

澪「・・・」

紬「・・・」ゴシゴシ

澪「・・・」

紬「・・・」コクリ


まだ不安定な顔に

決意が少しずつ宿る

それはむぎが人を紡いだ証


梓の言葉で律と唯の心が揺れた

むぎの心の声を掬い出した梓

それが引き金となって、むぎが初めて揺れた

私はみんなを支えよう

みんなを繋ぐこの曲をこのベースの音で支えよう


唯『むぎちゃんが遠く離れて行っちゃうので
  この曲を最後に
  私たち放課後ティータイムは解散します!』


紬「・・・」

梓「・・・」

律「・・・」

澪「・・・」


唯『 Utauyo!!MIRACLE 』

デンデンデデデデーン デンデンッ


唯『 みんなが大好きっ!!
   延々続行ルララMiracle Sing Time
   歌って 歌って 愛伝える最強手段
   つたない曲でも 微妙な歌詞でも
   届けたい 精一杯のSoulをっ! 』


唯『 どうしてもホームワークよりも重要課題
   放課後のお茶 おしゃべり 練習
   ユーモア ナチュラル めくるめく笑い ウケ過ぎてお腹痛い 』



律(手・・・震える・・・)


唯『 呼吸(いき)ぴったしexcellent! でも苦手なリフまだあったの
   特訓つきあってくれる?も少し 門限まで だって帰りたくない
   never never・・・Can't Say Good-bye 』


唯『 めちゃめちゃ大好きっ!!
   超絶ぞっこん ルララWonderfull Show Time
   音楽って 音楽って もう私たちまんま
   スタンディングオベーション 賞 オーディエンスなしでも

   奏でたい 瞬間のrealを

   昨日の後悔って明日の心配って
   ぶっちゃけぶっちゃけ誰得?何得?

   ラッキーはいつだってね“今”つかむもの

   頑張れ乙女 与えられん、さらば ッ』


梓(指が・・・動かない・・・!)

紬「・・・」

澪(唯の声が・・・)



唯『 どんな本にも書いてない授業じゃちょっと教わんない
   けど一生忘れない
   この世にないと思ってた奇跡一緒にね歌えば
   信じられるんだ 強くなれる・・・っ・・・だっ 』


一つずつ

音がこぼれていく

すぐそこにある

終わりが

別れが

みんなのこころをズタズタにしていく

りつ あずさ ゆい

むぎ


澪「―――まだ」


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最終更新:2011年10月06日 18:18