―――まだ終わってない


律「――ッ!」

梓「――ッ!」

紬「――!」


唯『 みんなが大好きっ!!
   延々続行ルララMiracle Sing Time
   歌って 歌って 愛伝える最強手段
   つたない曲でも微妙な歌詞でも
   届けたい精一杯のSoul 等身大のlifeを

   今日は昨日みたい?明日は今日みたい?
   大丈夫 大丈夫 楽しかったら大正解

   ロッカーはいつだってね〝今"やんちゃ盛り

   進め乙女 抱きしめて 希望をッ 』


澪唯「『 大好き 大好き 大好きをありがとう 』」

律唯「『 歌うよ 歌うよ 心こめて今日も歌うよ 』」

梓唯「『 大好き 大好き 大好きをありがとう 』」

紬唯『 歌うよ 歌うよ 愛をこめてずっと歌うよ 』


部室に戻って

先輩方は子どものように泣いた

私はむぎせんぱいの涙を拭くことでバランスをとってしまったから

泣けなかった

後になって後悔するんだろうと思った

1人で泣いて後悔するんだろうと思った


泣きつかれたのか唯先輩が寝てしまった

それにつられてむぎせんぱい、律先輩、澪先輩

出店の事なんて忘れて

5人並んで眠ってしまった

目を覚ますと和先輩、憂、純、3年生、2年生、さわ子先生が準備をしていた

その時には学園祭は終わっていた


それからはみんなで打ち上げをしてひたすら騒いだ


楽しすぎて

それらの記憶がない

むぎせんぱいも楽しんでいたから、私もそれ以上に楽しめた

どんな話をしたのか、どんなゲームをしたのか記憶に残ってないけど

楽しかったという確かな思い出だけが生まれた




とうとう来てしまった

別れの日が




9月28日



「・・・」ピップップ

trrrrrr

プツッ

「もしもし」

『もしもし、轍くんかい?』

轍「はい」

『これからフライトなんだね?』

轍「そうです。修平さんにはお世話になりました」

修平『いやいや、キミは仕事をこなしてくれて、僕はそのお礼をしただけだよ』

轍「いえ、夢を繋げる事ができましたので」

修平『ははっ、まぁそれはいいとして』

轍(そんな軽く言わないでくださいよぉ・・・)

修平『暦には電話したのかい?』

轍「後でかけようと・・・」

修平『そうかそうか、義兄としては気になっててねぇ、あっはっは』

轍「・・・」

『お義姉さんと話をさせて』

轍(うわぁ・・・もうすっかり義弟扱いだぁ)

修平『今、葉子に変わるよ。轍くん、応援してるからな』

轍「はい、本当にありがとうございました」

修平『うん。無事に帰ってきてくれよ。それじゃ』

葉子『もしもしー』

轍「お久しぶりです、葉子さん」

葉子『お久しぶりね。これから大変だろうけど、あなたならひょいと乗り越えられるわ』

轍「ははは・・・」

葉子『あと、義妹のことよろしくね♪』

轍「はい」

葉子『またやーたい~』

轍「それでは、また」

プツッ

轍「・・・ふぅ」

ピッピッピ

轍「敵わないなぁあの夫婦には・・・」

trrrrrr

ドンッ

「にゃっ」

ポロッ

轍「おっと」

カラカラカラ

「すいません」

轍「こっちこそ余所見をしてたから。ごめん」

「いえ」

ヒョイ

轍「シーサー?」

「それ私のケータイで・・・あ・・・」

轍「・・・?」

「相馬・・・轍・・・さん・・・」

轍「中野梓・・・さん・・・?」

梓「は、はい」

轍「・・・」ジー

梓「な、なんでここにいるんですか?」

轍「飛行機に乗るから・・・」

梓「そうですか」

『もしもし、もしもし?』

轍「・・・あ」

梓「どうぞ」スッ

轍「・・・」

梓「?」

轍「キミは・・・旅をしてきたんだね・・・」

梓「は?」

『もしもし・・・轍くん・・・?』

轍「出て」

梓「・・・大丈夫ですか?」

轍「俺の頭は至って通常だよ。なにか伝わるかもしれないよ」

梓「またそれですか・・・」イラッ

轍「・・・」

梓「も、もしもし・・・」

『え!?』

梓「当然こうなるじゃないですか!」

轍「名前を言って」

梓「なにがしたいんですか・・・中野梓です」

『あずさ・・・?・・・え?』

轍「ごめん、貸して」

梓「・・・」スッ

轍「ごめんごめん暦、前に話した子いるだろ?」

暦『・・・』

轍「ごめんって!」

暦『・・・どうしたの?』

轍「中野梓、彼女と空港でまた会ったんだよ」

暦『・・・』

梓「ケータイ返してください」

轍「少し、戸惑ってるみたいだからさ」

梓「なっ!」ムカッ

暦『・・・うん』

轍「少し話をしてみてくれないかな」

暦『・・・』

轍「はい」スッ

梓「そっちのケータイじゃないですよっ!」

轍「キミはこれから、ここで、大切な人と別れるんだろ?あの子と」

梓「ッ!」

轍「そんな顔では、引きずる別れになるよ」

梓「ど、どうしてそう言えるんですか!」

轍「昔の俺のような顔していたから」

梓「なんですかそれは・・・」

轍「大切な親友を失った俺のような顔だよ」

梓「!」

轍「話をしてみて」

暦『・・・』

梓「・・・」スッ

暦『もしもし・・・?』

梓「もしもし」

暦『大切な人と別れるの?』

梓「・・・・・・・・・はい」

暦『・・・』

梓「真鶴は・・・?」

暦『お母さんとアメリカへ帰ったよ』

梓「・・・海琴さんは・・・?」

暦『石垣島へ』

梓「・・・そうですか」

暦『うん』

梓「・・・」

暦『・・・』

梓「あ、あれ?」キョロキョロ

暦『どうしたの?』

梓「あっ!私の事放ったらかしにして手続きしてます!」

暦『ふふっ』

梓「なんなんですかあの人!」

暦『なんなんだろうね』

梓「・・・あなたもなんなんですか」

暦『え?』

梓「顔も知らない私とよく話ができますね」

暦『ふふっ、そうだね』

梓「これからずっと見ることがない私の顔ですよ?」

暦『だからじゃないかな?』

梓「え?」

暦『メールや手紙で、顔も知らない人とよく身の上話とかできるでしょ?』

梓「そう・・・ですね・・・」

暦『顔が見えなくても、心で伝えることができるんだよ』

梓「・・・」

暦『あなたも見てきたんじゃないかな?』

梓「・・・はい」

暦『ごめんね。踏み込んでしまったね・・・』

梓「いいです。相馬さんから聞いたんですか?」

暦『うん・・・』

梓「顔も見えない相手だからこそ、こんな話もできるんですから」

暦『そうだね・・・』

梓「・・・」

暦『どうして、轍くんが私とあなたを繋ごうとしたのか・・・分かるかな?』

梓「・・・?」

暦『あなたの状況は轍くんから少し聞いてるよ』

梓「・・・そうですか」

暦『フェアじゃないから、言うね』

梓「なんですか?」

暦『・・・私、光を失ったの』

梓「・・・?」

暦『盲目』

梓「―――ッ!」

暦『・・・』

梓「・・・っ」

暦『そんな私の居場所を教えてくれたのが轍くんなの』

梓「・・・」

暦『私と兄さん、二人だけの家族で、孤児院で育ったのね』

梓「・・・っ」

暦『兄さんは頑張って、仕事を身に付けて、生涯を共にする人と巡り会えた』

梓「・・・」

暦『自分で見つけることが出来たの。兄さんは』

梓「・・・」

暦『そんな兄に・・・迷惑をかける事になってしまって・・・』

梓「・・・」

暦『・・・梓・・・さん?』

梓「聞いてますよ。・・・どうやってあなたの『居場所』をみつけたんですか?」

暦『まだ見える事ができる先月の夏に、一緒に旅をして、見えてきたの。轍くんと沖縄を走り回って』

梓「・・・」

暦『・・・』

梓「・・・そうですか」

暦『うん』

梓「・・・」

暦『そろそろ切るね』

梓「は、話しないんですか?」

暦『・・・うん。電話すると轍くんの足を引っ張ってるみたいで、ちょっと迷ってたから』

梓「・・・大切な・・・人・・・なんですよね・・・」

暦『うん』

梓「だったら・・・言葉を交わしたいはず・・・です・・・」

暦『また、会って話をするよ』

梓「国際線ですよ・・・」

暦『うん』

梓「遠くへ行っちゃうんですよ・・・」

暦『うん』

梓「大切な人の・・・そばに・・・いられないんですよ・・・」

暦『目指す場所が同じなら、何度別れてもまた道の先で出会えるって信じてるから』

梓「!」

暦『あなたもいい旅をしてきたんだね』

梓「・・・・・・はい」

暦『それじゃ、さようなら』

梓「はい、さようならです」

暦『顔も知らないあなたに』

梓「はい。いつか出会えるかもしれないあなたに」

暦『ふふっ・・・。うん』

プツッ

梓「・・・」

轍「はい、返す」

梓「・・・」

轍「シーサーは一対でなくちゃいけないんだ」

梓「知ってますよ」

轍「・・・そっか」

梓「・・・」

轍「・・・」

梓「どうして、暦さんを置いていくんですか・・・」

轍「・・・」

梓「大切な人をどうして・・・」

轍「俺と相手が同じ価値観を持って
  立ち止まらないで歩き続けていれば
  きっとまた何処かで、何度でも・・・会えるから」

梓「・・・」

轍「『帰る場所』を暦は与えてくれた」

梓「『帰る場所』・・・」

轍「暦の隣だ」

梓「・・・」

轍「いや、リアクションが欲しいな」

梓「・・・」

轍「キミの先輩達なら、きっとなにかしら言ってくれるんだと思うけど・・・」

梓「それはどうでもいいです。これからどこへ?」

轍「・・・アラスカへ」

梓「・・・」

轍「おっと、時間だ。それじゃあね」

梓「それでは」スッ

轍「・・・え?」

梓「握手です。なんですかその反応」

轍「いや・・・嫌われているかと思っていたから・・・」スッ

梓「さようなら、です」

ギュ

轍「あぁ、さようなら。元気で」

梓「・・・」

「・・・」

梓「私、憧れていたんです。あの人の背中に」

「・・・」コクリ

梓「様々な『別れ』を通してでも、前を向いているから」

「・・・」

梓「真っ直ぐに顔を向けて進んでいくから」

「・・・」コクリ

梓「その背中を追いかけたくて、その見ている景色を、私も見たくて・・・」

「・・・」

梓「行きましょうか。先輩達が待ってます」

「・・・」コクリ

梓「これ、持っててください」スッ

「・・・?」

梓「シーサーは一対でいなくちゃいけないんです」

「・・・」

梓「あなたの道の先を守ってもらうんです」

「・・・」コクリ

梓「ありがとう、むぎせんぱい」

ギュ

紬「・・・?」

梓「行きましょう、むぎ先輩!」グイッ

紬「・・・!」


20
最終更新:2011年10月06日 18:20