唯「ムギちゃんの家のみなさんこんにちわ!! 私達が、放課後ティータイムです!」

 ―――ワーワーワーワー!!

執事「あれが紬お嬢様のお友達かぁ」

メイド「可愛い…紬お嬢様が羨ましいわぁー!」


 そして恒例通り、唯の司会でライブは盛り上がりを見せる。

唯「いつもは5人なんですけど、今日はなんと、純ちゃんとさわ子先生も来てくれました!」


さわ子「本日はよろしくお願いしまーす♪」

純「が…頑張りまーす!」



憂「純ちゃん! 先生! 頑張ってくださーい!」

和「みんなー、すごくかっこいいわよー!」

斎藤「ほっほっほ…私も、若い時を思い出しますなぁ」

紬父「いつだったか、母さんと行ったライブを思い出すな…」

紬母「2年目の結婚記念日でしたねぇ、あれは…」

紬父「ああ、確か、そうだったな…」



 そして、メンバーの紹介を終えた唯は曲目を告げる。

唯「じゃあ、まずは有名なのから行こうかな…まずは、『翼をください』!」

 それは純ちゃんがいる事を考慮してだろう、比較的楽な曲を選んだ辺り、気が利いているな…

 そう、今回は予定を立てる時間もなかったうえに、軽音部じゃない純ちゃんがいる影響で、いつもの演奏ができない現状なのだ。

 でもそれは純ちゃんの存在が邪魔ってわけじゃない。 むしろ逆。

 純ちゃんの存在が…私達の演奏に色を立てる…一つでも多くの音が重なる事で…私達の音楽は…より一層の輝きを増すんだ……!

――――――――――

澪「彼女のフォローは私がやる、だから唯、お前はお前のやりたい曲を言ってくれ…それに私達は全力で応えるからさ…」

純「すみません……私が足引っ張って…」

梓「違うよ、純」

純「…………あずさ…」

唯「純ちゃん、演奏ができなくてもいいんだよ…大事なのは…『私達が純ちゃんと一緒に演奏する事』…それなんだよ……!」

純「唯先輩…ありがとうございます!」

――――――――――

唯「~♪♪…わんつーすりーふぉー!」

 ドコドン…ジャラララーーン……♪

 演奏が始まる…休日に開かれる私達の放課後が…今、幕を開けた……!!



 ~~~♪ ~~♪

唯「つばさーはためかーせーーー♪」

一同「行ーきーたーいー♪」


 ――――ワーワーワー!!


 一曲目を終え、会場から大量の拍手が巻き起こる。

 一曲目を無事終え、続いて2曲目…


澪(純ちゃん、なかなかだった、全然大丈夫だったよ?)

純(…えへへ…ありがとうございます!)

梓(純、次ふわふわ時間はどう?)

純(うん、それなら大丈夫、家で何回も聴いてたから…やれると思うよ!)


 唯が司会で時間を繋ぎ、その間に私達は何を演奏するかを決める…

 それは打ち合わせでもなんでもなく、即興で決まった流れ、いわばアドリブだ。

 そのアドリブを難なくこなし、私達の息は完全に一つになる…!

 阿吽の呼吸、いや、もはやシンクロと行っても良いぐらいだ……


 そうだ…私達は、ここまで完璧になれるんだ…それが、私達放課後ティータイムなんだ……!!


梓(唯先輩……!)

 梓が唯に合図を送り、唯が演奏の準備に入る。

律「じゃー次、ふわふわ時間!! ワンツースリー!」

~~♪ ~~♪

 私のリズムに合わせ、唯、梓、さわちゃんのギターが音色を奏でる…

 それに合わせるようにドラムが、ベースが、キーボードが音を奏で、その音が徐々に一つになって行く……。


澪「キミを見てると…いつもハートドキドキ♪」

唯「揺れる思いはマシュマロみたいにふーわふわ♪」

梓「いーつもがんばるー♪」

純「いーつもがんばるー♪」

―――♪ ――♪


 ライブは続いて行く…

 私達の放課後が……続いて行く………。


 …それから4曲もの演奏をやり切り、2回のアンコールに応え、私達のライブは終わったんだった……。


唯「いっやぁぁぁぁ……なんとかなったね~♪」

紬「みんな、お疲れ様…♪」

澪「アドリブ…なかなかだったよ…」

律「唯も、だいぶライブ慣れしたんだな…すげーよ、お前ってやつはさ」

さわ子「みんなよく頑張ったわね、私も鼻が高いわよ

純「っっく…うん…私…わた…し……!」

梓「純もお疲れ様、すごかったよ? 純の演奏、私達と息ぴったりだった…」

澪「ああ、ほとんどフォローが必要なかった…さすが、厳しいジャズ研で鍛えられてるだけあったよ」

純「あずさぁぁ…みおせんぱい…ありが…ありがとぅ…ございます…ぅぅうっっ……!」


 それは嬉し涙だろう…純ちゃんの涙は、とても輝いていた…。

 私達に付き合ってくれた事に、私自身も、感謝の気持ちしか出てこなかった…。


紬父「みなさん…お疲れ様でした…! 不覚にも感動してしまいましたよ…」

紬母「みなさん、紬…最高のライブをありがとう…私達、幸せです…」

紬「パパ…ママ…」

憂「お姉ちゃん! 純ちゃん! 梓ちゃん! 紬さん! すごく…すごくかっこ良かったよ!」

純「憂…うんっ! 私達、やったよ!」

和「澪も律も先生もお疲れ様です、みんなお疲れ様…素敵だったわよ」

澪「和、ありがとう…!」


唯「やったね、ムギちゃん!」

紬「…うんっ!」

律「へへっ、放課後ティータイム…大 成 功 !! だよな?」

紬「ええ…もちろんよ!」

さわ子「みんなと演奏出来て、私も楽しかったわよ♪」

紬「パパ…ママ…これが、私の仲間です…」

紬「これが、私がこの学校で見つけた、宝物です…」

紬父「ああ…よく伝わったぞ……紬、よくやった」

紬母「あなたの親で、私達も鼻が高いわ…」

紬「パパ…ママ……っ!」

 泣き声と共にムギが両親に抱きつく。

 照れも恥じらいもなく親と抱き合うその姿を見て、思わず面食らったけど…。何故かその光景はとても綺麗なものに見えた…。



唯「なんか…邪魔しちゃ悪いね…」

律「そーだな…私達は一足先に行ってるか…」

梓「ですね…」


 そして私達は一足先に舞台袖を抜ける。

 振り返った時のムギの涙は、純ちゃんをそれとは違う輝きに満ちていた……

 ―――よかったな…ムギ…


 そして、メイドさんたちが腕によりをかけて振舞ってくれた夕食を堪能し、日もすっかり落ちた頃、私達は帰る事になった。


唯「じゃあムギちゃん、今日はありがとう、また学校でね♪」

澪「おじさん、おばさん、素敵な時間をありがとうございました」

律「また、落ち着いた時にでも遊びに来るよ、みんなでさ」

紬「ええ…またいつでも遊びに来てね? 待ってるから」


紬父「みなさん、今日は本当にありがとうございました…」

紬母「素敵な休日でしたわ…これからも娘の事を、よろしくお願いします…」


純「じゃあ…私達はこれで、ムギ先輩、ありがとうございましたー!」

梓「おじさん、コレクション、また見せて下さい♪」

憂「おばさん、またレシピ教えてください、私、楽しみに待ってます♪」

和「じゃあ、私達はこれで…おやすみなさい」


紬父「ええ…今後も、娘と仲良くしてやって下さい…」

紬母「みなさん、また遊びに来てくれる事、心よりお待ちしてますわ」

紬「みんな、またねっ♪」

 手を振り、さよならを告げる3人に向かい、私達はムギの家を後にする。

 そして、門の前で停まっていた車にお邪魔し、私達はそれぞれの家路に着いたのだった…


――――――――

紬「行っちゃった…」

紬母「ねえ紬」

紬「…はい?」

紬母「今日は、ママと一緒に寝よっか?」

紬「そんな…もう18歳なのに?」

紬父「たまにはいいじゃないか…そう、子供の頃のように、親子3人で…な?」

紬「………ええ……それじゃ、今日ぐらいは…3人で…」

紬父「はははっ、まさか、この歳になって娘と一緒に寝られるとはな…」

紬母「もうっ、あなたったら…うふふっ♪」

紬「あははっ…あははははっ♪」

紬父「はっはっはっはっは……♪」


 暖かい笑い声が響きあう…。

 そこに少し前まで感じていた窮屈さは無く、ありのままの家族の姿があるだけだった……。

 彼女達は、私を救ってくれただけじゃないんだ……。

 みんなは、家の確執に囚われていた…パパとママも…救ってくれたんだ………。


 みんな、大好きをありがとう。

 みんなが大好き とっても大好き…

 そしてその大好きは、みんなだけじゃない…パパとママにも言えるんだ。


 最初は嫌っていた琴吹って名前も好きになれた……。 むしろ、今では誇りすら持つことが出来た。

 それ全部、全部みんながいなければ始まらなかったこと。

 みんな……ありがとう……


 両親に囲まれた布団の中で…両親の温もりを感じながら…

 私は、一番の幸せに包まれていきました……





おしまい



最終更新:2011年10月26日 21:48