和「さすがオープン前のホテルだけあって綺麗ね。そこに集まったのが借金まみれの奴らって言うのはかなり皮肉だけど」
澪「うん……」
和「こんな綺麗なホテルを汚す理由……。ちょっと考えてみたのよ……あっち側のメリットってやつを」
澪「……私達を借金の担保代わりにしたいから……じゃないの?」
和「それが七割ぐらいでしょうね。数千万に利子が乗った借金なんて普通にじゃ返せないもの。
けど考えてみて。さっき澪がやったギャンブルは4/7で1000万、仮にと言えど4000万は持って行かれてるのよ?」
澪「そっか……そのままこれを持って最上階に行く人だっているかもしれない」
和「そう。そうすると主催者側は単純に1000万を失うだけ……。元々売買ゲームなんて銘打ってはいるけど負けたら主催者側はタダで人材を得られはするもののその参加者の借金は丸残り。
参加者をタダで買い取ったんだからその参加者の家族を取り立てることは出来るけど手間も費用もかなりかかるわ」
澪「……つまりどういうこと?」
和「簡単に言えばこのゲーム……私達が負けること前提なのよ」
澪「でもっ……さっき和が言ったみたいにこれを換金して出ていく人もいるんじゃ……」
和「……じゃあ聞くけど澪、あなたの目標額はいくら?」
澪「……5000万」
和「私と同じね。これも推測でしかないけど……多分ここに連れて来られた人達の借金の額は1000や2000じゃないと思う……。
最低でも3000……銀のリングをもらえるギャンブル三回か銀と金のを一回づつか……」
澪「主催者側はその二回か三回で私達を売買させる自信があるってこと……?」
和「その可能性は高いわ」
澪「ってことはもしかして……イカサマ……?」
和「私も最初はそう思ったけど……幸か不幸かその心配は薄いわ」
澪「どうして……?」
和「ここに参加するって決めた時、何か書かされなかった?」
澪「そう言えば何か色々書いた紙を渡したような……」
和「私も書いたわ。ここを紹介してもらった人に書けって言われてね」
澪「それが何か関係あるの?」
和「さっき七割は私達の借金を私達で回収するためって言ったじゃない?」
澪「うん……」
和「残り三割……いえ、もしかしたらあっちがメインかもしれないわね」
澪「……?」
和「多分……私達は……!」
賭けられている────
その生存を────
カメラの奥、奥の奥ゥ!
暗闇の中に浮かぶいくつものモニター!
それは143個に分けられおり、参加者一人一人が伺える様になっている!
中には既に砂嵐と化しているモニターもある、つまりは失格者!
その隣には巨大なモニター、1~143番人気までありそれぞれオッズつけされている!
横にはプロフィール、好きなものから嫌いなものまで連々と書きつられいる!
これは賭けるものが一回のゲームを受けるまで変動し、ゲームが始まればストップ、その者が勝てば払い戻し、負ければ全額没収!
澪達の生存を賭けたギャンブルを、賭ける!!!
そんなことが許された人物達は、当然のごとく持っている……!
金!金!金!!!
そんなVIPのみが許された場所で賭けたは行われていた!
~~~
「お嬢様。どうぞ」
「ありがとう斎藤」
「どうですか? 彼女は」
「銀のリングを1つ手に入れたわ。でも偶然と見られて倍率はかなり低いわね。和ちゃんの方はリングをとってもいないのに逆にうなぎ登りよ。今六番人気かしら」
斎藤「さようで」
「次も彼女に5億。いいわね?」
斎藤「はっ、かしこまりました」
「ふふ……りっちゃんの為に頑張る澪ちゃん……素敵ね」
「でもどこまで持つかしら……? この地獄で」
────
和「つまり私達の渡した紙は詳細データを取るためよ。それが倍率に関わって来るものもあるだろうし。ゼッケンもその為に配られたんだわ」
澪「そんな……」
和「でも逆に言えばチャンスよ。イカサマなんてすれば当然賭けている富豪達は反発する……それは主催者側としても好ましくないはず」
和「それでももし仕掛けて来るとしたら……それはそのイカサマを見破る為のギャンブル……ってことになるわね」
澪「……」
和「まあ私達に出来ることは1つだけ。ギャンブルに勝ってここを出るとこ、それだけよ」
澪「……うんっ!」
和「探しましょう……私達が勝てるギャンブルを……!」
それから二人は十一階、十二階、十三階を歩き、様々なギャンブルの名の部屋を見るも参加はせず。
エレベーターくじ引きのように誰からでも見えるギャンブルはほとんどなく、大体は入り口の上にそのギャンブルの名前のプレートが書かれた部屋がいくつもある、という様になっている。
参加者は、自分が挑戦したいギャンブルを探し、ノック、あちらから声が聞こえて来たら入室、扉を閉めた瞬間ギャンブルスタートとなる取り決め!
和「……50階もあるのにこの辺りにやけに集中してるわね」
澪「うん……この三階だけで5個はあったかな」
和「難易度はこの銀か金のプレートでわかるってわけね……」
澪「和は……どうするの? 受けるギャンブル……」
和「……銀を五回か金を挟むかってこと?」
澪「うん……」
和「当然金額的には金を受けたいとこだけど……逆にそれがあっちの狙いかもしれないわ」
和「エントランスにあった銀のギャンブルを見た感じじゃかなり優しいみたいだし、受けるとしたら回数を考えても銀五回の方がいいかもしれないわね……」
澪「……(ふぅん……」
和「難易度がわからない限り危険なことは避けたいわ。だから私は銀のギャンブルを……」
ひいいいいいい────
和「!?」
澪「!?」
澪達がいるすぐ近くの部屋から呻き声をあげながら出てきた男!
顔は憔悴しきっており、唇は紫、額には大量の汗!
まるで銃撃戦でもやって来たような顔つき!!!
その男は一瞬その部屋から生還して来たかのように見えた、しかし!!!
黒服「抑えろっ……!!! そいつは失格者だ……!!!」
すぐさま浮き彫りになるっ……!
地獄からの脱出に失敗したことが……!
「は、離せぇぇぇぇぇぇ!!!!! 死にたくねぇぇぇぇ!!! やめろぉぉぉぉぉ!!!」ガタンッ
澪「(何か落とした……?)」
──連行。
澪は、その男が落としたものを拾い挙げると同時に、その男が出てきた部屋の名前を確認する。
an exchange of shots
澪「撃ち合い……」
第二のギャンブル 撃ち合い
澪「────!」
澪「…………」
澪「和……私このギャンブルにするよ」
和「澪……? !? あんたそれ……!」
そのプレートは金、勝てば金のリングが貰えるギャンブル!!!
和「悪いことは言わないわ! やめておきなさい!」
澪「……もう決めたから」
コンコン────
躊躇なく、ノック
和「澪っ!!! あんた死ぬわよ!!? 失敗したら死んだも同じなのよ!!? それでもいいの!!?」
澪「大丈夫」
──どうぞ
扉の向こうから声が聞こえ、入室。
澪「絶対勝つから。和も頑張って」
ガチャリ──
扉を閉め、ギャンブルを受諾!!!
撃ち合いへ身を投じる澪。
和「澪……」
和「あんな怖がりだった澪が撃ち合いなんて部屋に行くなんて……」
和「変わったのはお互い様なのかもしれないわね……」
扉にそう話しかけるとその場を後にする和。
和「確認しようにも……多分もう……二度と会うことはないでしょうけど」
―――――
「やあ。ようこそ、撃ち合いへ」
澪「……」
中には机と椅子が一つづつ、向き合って置かれている。
片方にはこの部屋の支配人が既に座っており、にこやかにこちらを見ている。
机には何やら手元を隠すような仕切りが施されているようだった。
「女の子が参加しているのは知っていたけど、まさかこんな可愛いい子だとはね。ここに来てくれる何てラッキーだな。
そこに座りなよ、ゲームの説明をするから」
澪「……」
白髪の男に従い、向かい側の椅子に腰を掛ける。
座ってみると、やはり机に施された仕切りが気になる。
丁度私の肩より少し下までを被っている仕切り、一体これは何のためだろう。
「あ~残念。せっかくの眼福が隠れちゃった」
澪「……早く説明を」
「おっとそうだった。まあお互いまずは自己紹介と行こうよ。僕の名前は白(ハク)、君は?」
白「そっちの子か~。え~っと……確か怖がりで血とか見るの無理~って子だよね?」
澪「……」
白「あれ? それにしては随分冷静っぽいんだけどな~……」
白「今から血を大量に見るかもしれないって言うのに」ニコニコ
澪「ぐっ……!」
白「な~んてね。女の子は希少価値があるから殺すなって言われてるんだ~残念!」
澪「(こいつ……!)」
白「じゃあ説明を。おい」
黒服「……はい」
横に立っていた黒服が何やら持って来る。
白と言う男のところに何かを置くと、こちらにもそれを持って来た。
澪「これって……」
拳銃、真っ黒な拳銃が二丁。
確かドラマで警察官の人がよく持ってる拳銃がこんなやつだった気がする……。
黒服「こちらもどうぞ」
そう言うと黒服は机にもう一つ何かを置く。
それは一発の弾。
白「もうわかったかもしれないけど一応説明しとこうか。今からやるのは文字通り撃ち合い……1ターンに支給される弾は一発、それをこの二丁の拳銃どちらかに込め、相手はそのどちらかを選び……引き金を弾くっ……!」
澪「なっ……!」
白「安心しなよ。今回のは麻酔弾だから。死ぬことはないよ……? 君が泣いちゃうぐらいには痛いだろうけどね……!」
澪「っ……!」
白「まあ起きた時にはもっと痛いことになるから……どっちにしろ一緒だけどねぇ」
澪「……」
白「ルールは簡単。この弾の入った拳銃を相手に弾かせれば勝ち。それだけさ」
白「撃つ順番はターン制。先攻後攻は……そうだな、コインの裏表ででも決めようか。それでいいかな?」
静かに頷く。
白「黒服さん、頼むよ」
黒服「はい……」
黒服が100円玉を取り出すと、「絵柄の方が表です」と前もって確認、コイントス……。
黒服「どちらに?」
白「レディーファースト、先にどうぞ澪ちゃん」
澪「じゃあ裏で」
白「じゃあ僕は表だ」
黒服「……表です。白様から選択を」
白「あちゃ~……悪いね~澪ちゃん。じゃあ先攻で」
澪「後攻……」
いよいよ始まる……金のリングと自らの生存を賭けたギャンブルが……!
弾が出る確率は1/2……ここで決まってしまう可能性もある……。
白「さ~て、どちらにしようかな~と」
仕切りの奥で弾を込める仕草を見せる白。
白「こっちかな? やっぱこっちかな~?」
澪「……どっちを選んでも一緒なのに……」ボソ
白「ふふ、ふふふ。澪ちゃん……それはちょっと違うかな」
澪「えっ……?」
白「人は50%って言われると、不思議ともう何も見なくなる……ただその二つに一つを50%と言う数字に身を任せて選ぶ……おかしなもんだよね」
澪「……」
白「ま、いいや。こっちにしよっと」
カチャリという音が聞こえ、白が黒服に拳銃を二丁渡す。
白「そのどちらでもいい、選んで引き金を引いて見せてくれ。弾が出なければ君の勝ちだ」
黒服「どうぞ」
ゴトリと鉛めいた音を立てて置かれたのは二丁の黒い拳銃。
このどちらかには白が込めた弾が入っており、私はこれを回避することで次は相手にこの選択を迫れる。
言うなれば野球のようなもの、攻守がはっきりとした撃ち合い。
私は、このどちらかを撃って見せなければならない。
白「言っとくけど、見えないからって弾を抜くのはルール違反だからね? ま、そんなことしても音でわかるけど」
澪「……一ついいですか?」
白「ふふ、憎い借金取りが持って来たギャンブルのゲームの支配人に敬語なんてね。君はいい子だな~澪ちゃんは。
で? なんだい?」
澪「……ここはそっちが支配してる場所、そんな中で公平なギャンブルなんて出来るとは思えない」
白「ま、そうなるよね。でもそこは信じてもらうしかないよ。安心して、そこにいる黒服さんはイカサマしようもんなら僕だって連れていかれる。
そういう取り決めなんだ」
澪「……」
なるほど、和の言ってたことは当たってたってことか。
なら下手なことは出来ないだろう……。
澪「……わかりました」
白「一応制限時間があるから。5分以内に選んで引き金を引いて見せてくれ」
澪「……じゃあこっちを」
白「おっ? 早いね~。いいの? そんな簡単に選んじゃって? 失敗して弾が出たら澪ちゃんの人生終わっちゃうよ?」
ニコニコとそう告げる男を見て、内心でほくそ笑む。
引くのはお前だよ────
カチリッ────
澪「」ニヤッ
その時、私は確かに微笑んでいた。
最終更新:2011年10月27日 00:33