~部室~
紬「こんにちはぁ…って誰もいないか」
紬「ふぁ…」
紬「眠い…」
紬「ちょっとだけ…おやすみなさい」スースー
ポカポカ陽気の放課後、紬は眠りについてしまった…
エーンエーン
紬「あら?」
紬「え…!」
梓「ママ…」グスン
紬「梓ちゃん…?ママって…」
梓「お姉ちゃんたちは?」グスングスン
紬「えっ…とその…」
梓「エーンエーン」
紬「はわわわ…また泣いちゃった」
紬「(んー…どうしよどうしよ、泣き止ませなきゃ…)」オロオロ
梓「エーンエーン」
紬「(やむを得ないわ…!ごめんなさい梓ちゃん…)」
おもむろに両手を広げる紬
梓「エーンエーン」
むぎゅぎゅむぎゅう…
紬「よしよし泣かないでねー」ナデナデ
梓「えっ…ふぇっ…」グスングスン
紬「(私が小さい時はよくママにしてもらってたっけ…)」
梓「ママ…あったかぁ」
紬「(状況はわからないけど…とりあえず泣き止んでくれたみたい)」
梓「えへへっ」
紬「(3歳ぐらいの梓ちゃんかしら)」
紬は梓を溢れんばかりの母性で抱きしめた。するとどうだろう梓は泣き止んで、しかもご機嫌だ
紬「(何が起きたかわからないけど…私は梓ちゃんの母親みたいね)」
梓「ママー、チュー」チュッ
紬「!」
梓「えへへっ」
紬「(キャーキャーキャー!!)」
紬「可愛いわぁ…」
むぎゅぎゅむぎゅう…
紬は再び梓を抱きしめるのだった
紬「(そういえば…私がママってことは…パパがいるのかしら)」
梓「~♪」コロコロ
紬「(もしかしてシングルマザーかしら?苦労したのね…私…)」
梓「~♪」
紬「うふふ、コロコロしてる」
梓「ママ、ママ」
紬「なぁに?」
梓「抱っこしてー」
紬「はぁい」ヨイショ
梓「もうすぐ帰ってくるかなぁパパ」
紬「もうすぐだからねー(旦那さんはいるのね…どんな人かしら)」
梓「ホント?」
紬「うん」
梓「ホントのホント?」
紬「うんうん!」
梓「やったぁ」
紬「(天使だわ…)」キュンキュン
胸の高鳴りを覚えながら紬は旦那の帰りを待つ…!
果たしてその先に待ち受けるものは…?
紬「梓ちゃん寝ちゃった…泣き疲れちゃったのかしら」
梓「……」スースー
紬「(ほっぺた柔らかい…)」プニプニ
紬「なんだか熱っぽい…私も寝ようかな…」プニプニ
紬「……」スースー
チャイムちゃちゃちゃー
紬「あ…」
唯「ただいまー!」
澪「ただいまー!」
紬「ブホォ」
唯「ママーお熱大丈夫?」
澪「かけっこ1番だったよ!」
唯「唯もー!」
紬「二人とも頑張ったわねー」
紬「(何がどうしてこうなったの…、唯ちゃんと澪ちゃんだったのね…梓ちゃんのお姉ちゃん)」
紬「(ということは…)」
律「ただいまー帰ったぞー」
紬「(やっぱりー!)」
律「どうした?腑抜けた顔して」
紬「あっはい…!お帰りなさい律ちゃん…」
律「プッ、なんだそれ」
紬「いや違うの…!お帰りなさいあなた」
律「おう」
そこに現れたのは律だった…戸惑いを胸に秘めつつ平静を装う紬だったが…
紬「(違和感ないかも、カチューシャ取った律ちゃんね…しかも体格いいし…)」
紬「じゃー、澪ちゃんも唯ちゃんも頑張ったからおいしいご飯作ってあげる!」
唯「わーい!」澪
律「じゃーその間に唯と澪はパパとお風呂だな」
澪「澪はママのお料理手伝いたい」
律「だーめ、ほら早く脱いだ脱いだ」
澪「やめろぉ」キャーキャー
唯「唯も唯も」
紬「(すっぽんぽん///)」
律「ムギ、熱大丈夫か?無理なら俺が作るけど」
紬「大丈夫よ、ほら、子供達待ってるから」
律「そうか、ほいじゃ」
紬「さてと…」
唯や澪は体操服を着ていたところを見ると今日は運動会だったみたいだ。エプロンを着ながら今日のメニューを考える新妻紬…疲れた体を癒すスタミナ料理がいいだろう
紬「今日はカレーね」
慣れた手つきで野菜を包丁で切る、子供達が食べやすいようにできるだけ小さく小さく切り刻む
紬「ご飯も炊かなきゃ…」
手際よく次々と準備を済ませてく紬、さすが3人の母親と言ったところか
紬「しゃらんらしゃらんら~♪」
紬「(よし!完成)」
もちろん最後には愛情という名のスパイスを添えて、今日のメインは完成だ
紬「(唯ちゃん達の声が聞こえる…皆元気ね)」クスッ
紬「(こんな家族いいなぁ…)」
5人で住むには狭いかもしれないマンション…しかしそこには、暖かい家庭があった。
紬「私にも兄弟がいたら…こんなに賑やかで楽しい家庭だったのかしら…」シミジミ
梓「ママ…?」
紬「あら」
梓「おあよ…」ゴシゴシ
紬「パパ達帰ってきたからね」ナデナデ
梓「ほんとー!」
紬「うん、もうちょっと待とうね」
梓「だっこ…」
紬「はいはい」
紬「(うふふ、甘えん坊さんね)」
唯「いちばーん!」ドタドタ
澪「にばーん」プリプリ
律「こらぁ、お前ら体拭け!あとパンツぐらい履け!」
紬「あらあら」
梓「わぁ、お姉ちゃん」
唯「あっちゃん、おいでおいで」
梓「はいチュー」チュッ
唯「むちゅちゅー」チュッ
紬「(いい…すごく…)」
澪「じゃあママは澪にして」グイグイ
紬「えっ…!?はぁい…じゃあ」チュッ
澪「やたぁ///」
紬「(モジモジしてる…いいわぁ…)」ポー
紬のトキメキ指数はとっくに百パーセントを越えていたのだった
律「やれやれこのお転婆娘共は…」
パンツ一丁の旦那が出てくる
紬「ほぅ…///」
思わず目がいってしまう。そこにあるのは筋骨隆々の紛れも無い男の体であった。
紬「(逞しい…///)」ポ
律「ん、どした?」
紬「へっ!?あ…あなたもズボンぐらい履いてくださいな、もう…」
律「へいへい、夏だからいいだろー」
紬「(性格は律ちゃんぽいわね)唯ちゃんと澪ちゃんとご飯食べてて、梓ちゃんをお風呂にいれたいから」
律「あいよ、ごゆっくりと」
~お風呂場~
紬「ふぅ…」
梓「ふぅ…」
紬「ママの真似したの?」
梓「うん、そうだよふぅ…」
紬「うふふ」
紬「(これは夢かな?そうよね…何より律ちゃんが男の子だし…しかもムキムキしてたし…)」
紬「(もう少しこのままがいいなぁ…)」
夢とわかっていた…現実とは時に残酷なもので、夢から覚めてしまったら紬は普通の高校生である。
紬「(頑張る!)」
小さな梓を抱えながら紬は決意するのだった…
梓「ママ?」
紬「あっ…そろそろ出ようか」
梓「はーい」
紬は梓をバスタオルで拭いて浴室を後にする
紬「(太ってなくてよかったぁ…身長と胸は大きくなったかな?)」
さようなら…高校生の私、こんにちは大人の私
胸を撫で下ろす紬であった
リビングでは唯と澪が画用紙に何かを描いている
紬「何描いてるの?」
唯「今日の運動会の絵だよ」カキカキ
紬「(おにぎり、そんなにおいしかったかしら)」クスッ
紬「澪ちゃんは?」
澪「唯がかけっこしてるとこと、あとパパが綱引きしてるとこー」カキカキ
紬「うんうん(澪ちゃん絵上手ね…まだ幼稚園なのに)」
律「お、ムギおかわりお願い」
紬「ビール?まだあったかしら」
律「あるある、梓は預かるからさ」ヒョイ
梓「パパァ」
律「はいパパでちゅよー」
紬「えーと…ビールビール…あった」
冷蔵庫には色々な種類のお酒がある…どうやら律は中々いける口なのでしょう
紬「(私も飲もうっと♪)」
現実では高校生の紬、もちろん飲酒はできない、夢の中でしかできないことに胸が高鳴る
紬「あとはカレーをよそってと…」
リビングに戻ると梓を膝に乗せ、食べさせてる律の姿が…!!なんとも微笑ましい…一口ごとに「あーん」と言っている
紬「(律ちゃんもすっかり父親が板についたみたい…///)」ポ
律「お、お帰り」
梓「おかえりー」フリフリ
紬「はい、ビール。梓ちゃんおいしい?」
梓「んー…まぁまぁ?」
律「ハハハッ、梓は厳しいな」
紬「うふふ、もっと精進しまーす」
愛娘のダメ出しに、二人の頬は緩む
紬「(そういえば、唯ちゃんと澪ちゃんは…おねむかしら)」
先程とは打って変わり、2人は見るからに眠そうだ。運動会の疲れだろう、筆も進んでない
律「唯も澪もおねむか」グビグビ
梓「ふぁ…」ムニャムニャ
律「梓もかー、どれそぞろ寝かしつけるかねぇ」
紬「じゃあ私も…」
律「あーいい、そんなことより冷めないうちに食いな」
紬「そう…じゃあお願いね」モグモグ
律「ほれ澪、唯、寝るのは歯磨いてからだぞ」
唯「ふぁい」
澪「はぁい」
最終更新:2011年10月27日 22:08