~洗面所~

律「ほい梓、あーん」

梓「あーん」パクッシャコシャコ

まだ幼い梓には腕に抱えながら、歯を磨いてやる父律

唯「ねー、パパー、唯もー」グイグイ


澪「唯はもう幼稚園だろ、自分でやらなきゃ年長さんになれないよ」シャコシャコ


唯「そうなの!?じゃあ自分でやる!」シャコシャコ


律「(ナイスだ澪♪)」シャコシャコ


長女澪の助言で急いで磨く次女唯、それをドアの木陰からこっそり見つめる母の姿があった


紬「(いいなぁ…)」ウズウズ



~寝室~

律「どれそいじゃあ寝ますかねぇ」


唯「えー」ブー

澪「絵本読んでよパパ」


律「わかったわかった、じゃあ桃太郎の始まり始まり~」


唯・澪・梓「わーー」キャッキャ


律「昔々あるところに…」

10分後…

律「…であるからして…」
唯「ほらっ!ボール取ってこぉい梓!」

梓「とお」タタタ

律「お前らなぁ…もう聞かないのかー」

澪「澪は聴いてるよ」キラキラ
律「澪…お前は真面目でよろしい」ヨシヨシ


唯と梓はボール遊びに夢中で、澪は聴き入るように父親のそばいる。なんとも対象的である


紬「(写真撮りたい…)」ウズウズ


律「めでたしめでたし…と」パタン

澪・唯・梓「……」スースー


律「よっし…飲み直すかな」ヨイショ


3人ともなると寝かしつけるのも中々骨が折れる、娘達を起こさぬよう、そっーとドアを開ける


紬「あっ…!あなた」

律「おう、なんだってドアの間近に」


紬「いや…なんでもないわ(ずっと覗いてたなんて言えない…)」


律「チビ達も寝たし…これから飲み直すんだ、お前も飲むか?」


紬「うんっ、飲みましょ」


律「あっちあっち」

紬「ベランダ?」

律「夏はいいよな外で飲めるし、ほら月も綺麗だ」


紬「綺麗…」


ベランダには小さいテーブルと椅子があった。おそらく、私は律パパとここで幾度となく飲み明かしたのだろう
子供達が寝た田井中家は静かで、ちょっと寂しい気もする。しかし、この夫婦だけの静寂な空間も悪くない


紬「(夜風が気持ちいい…)」

律「さて…飲みますか」

紬「あ、注いだげる」トクトク
律「ん、じゃムギも。乾杯っと」トクトク


紬「かんぱぁい」


律「んっんっ」グビグビ


紬「(最初は少しだけ…)」チビチビ


律「ぷはぁ、おかわりぃ」

紬「あなた早過ぎじゃない?」

律「酔い醒めちゃったからなぁ、しゃーない」


紬「もう…」トクトク


紬「(これがチューハイかぁ…炭酸ジュースみたい、これなら飲めそう)」


律「ムギ、ビール飲まないのか?夏のビールは格別だぞー」


紬「私はいいわ(苦そうだし…)」


美味しそうにビールを飲む律、いつかビールを美味しいと思える日はくるのだろうか


紬「(ちょっぴりほろ酔い)」


しばし夜の静寂の中、お酒を飲みながら2人の談笑が続く。

紬「今日の運動会どうだったぁ?」


律「まー、澪も唯も楽しそうだったよ。まあー、父兄参加の綱引きやリレーもあったし、俺もはしゃぎ過ぎたかも」ケラケラ


紬「しょおなんだぁ~…うふふっ」


律「おいおい、呂律が回ってませんぜ」


紬「頑張ったパパにはぁ…肩揉みのご褒美で~す」ニコニコ


律「プッ、頼むわ(やっぱ弱いな…)」


紬「(固い…)」モミモミ


律「おっ、そこそこ」


紬「(逞しいわぁ…)」ポー


紬「(やっぱり男律っちゃんは違うのね、性格は似ているけど…)」


そんな事を思いながら、マッサージを続ける…。紬は不思議な衝動に駈られる。

紬「(ハグしたい…)」


律「ん、そろそろいいや」

紬「じゃあ…最後にサービスで…」


紬はそう言うと…後ろから…




むぎゅぎゅむぎゅう…


紬「愛情たっぷりのハグなのでした~」ニコニコ


律「うははっ、やめろぉくすぐったい」


紬「しばらくこのままで…」ムギュギュ…


律「はいはい、5分で1000円になります」


紬「意地悪…」ムギュギュウ…

律「冗談だよ」フフッ


紬「~♪」


律「……」ゴクゴク


紬「飲み過ぎよ、あなた」グイ


律「これ最後だから、な」

紬「もう…」


律「ぷはっ…そろそろ俺らも寝るかな」


紬「そうね~…」


時間は夜の1時。名残惜しくもあるが、2人の時間は終わってしまうようだ。


紬「(ドキドキしたぁ…)」

酒の勢いを借りて、ちょっと大胆になってみた自分。我に帰り急に緊張してきた

紬「(ううん、いいのよ…夫婦なんだから…)」


律「急に雨かよ~…ほら入った入った」


紬「あっ…はぁい」


リビングに戻ろうとしたその時…!


紬「きゃんっ」ドタァ


律「千鳥足かい…大丈夫かよ」


紬「あいたたた…うん」


律「………」


紬「?」


律「ムギ…俺も酔っちゃった」


紬「え……んんっ」


キス…誰がなんと言おうとキスである…突然の出来事に紬は硬直してしまう


律「舌出せよ、ムギ」


紬「は…はい…」


言われるがままに舌を出す…そこに律の舌が侵入してくる。お互いの舌が絡み合う音と雨音だけが聞こえる


紬「(とろけそう…)」


唯達の子供のキスとは違う。これが大人のキスというものだろうか


律はキスをしながら紬のパジャマのボタンをはずしていく…そして揉みしだく…!!


紬「やっ…はぁ…はぁ…」

心拍数は上がり呼吸が乱れる、紬の白い肌を紅潮し…まるで白桃のような色を帯びていく


律「ムギ……」


紬「(この流れ…間違いないわ…)」


これが…セ…セセセセ…セッ…!


紬「はぁ…律ちゃん…」チュウ


律「んっ…」チュウ


紬「(そういえば斎藤が言ってたっけ…)」


薄れゆく意識の中、紬は思い出す…


それは紬14歳の夏…

~回想~

執事・斎藤は庭の掃除をしていた…


斎藤『男は狼なのよ♪気をつけなさい~♪』


紬『うふふっ、なぁに?その歌』


斎藤『はっ!これはお嬢様…!お恥ずかしいところを…』


紬『いいのよ、それより男の子は狼なの?どういう意味?』


斎藤『そうですなぁ…お嬢様にはまだ早いと思われますので』


紬『もー、まだ子供扱いするの』ムー


斎藤『もうちょっとお歳を召されればわかりますよ』ニコニコ


紬『へぇ…』


斎藤『(気をつけなされお嬢様…!それを乗り越え逞しく成長されるよう…)』


紬『いいわ、楽しみにしておく』


斎藤『左様でございますか。ささ、お嬢様、そろそろ夕食の時間ですな』


紬『はぁい♪』


紬「(今の律ちゃんは…狼なのね…斎藤)」


野獣と化した律を目の前に、戸惑いや恐怖をすこし感じる…
しかし、体の奥から沸き上がる快楽に逆らえない


紬「(もう…ダメかも…)」

律「下脱がすぞ」


紬「えっ…!」


律「ほう…今日はピンクか」


紬「ああ…あのっ///」


律「今日のムギはなんだか初々しいな」


紬「そう…?(もう律ちゃんに…全て委ねます…!)」


狼の攻撃は止む気配はなさそうだ…

律の指先が紬の下半身に触れようとした時…!


Pi Pi Pi


紬「(あら…?携帯…)」


~~~

紬「はっ…!」ガバッ


紬「(やっぱり夢よね…いいところだったのに…)」グヌヌ…


この夢が続けば、まだ幸せな気分になれただろう。
目が覚めた後に残る虚無感はなんだろう…


紬「(皆まだかなぁ…寂しくなっちゃった…)」


1時間は過ぎただろうか…軽音部のメンバーはまだ来ない


紬「(皆可愛かったなぁ、律ちゃんはかっこよかった…)」


律「おーす!」ドガァンガラガラ


唯「あぁ!ムギちゃんいたよ~」


澪「ムギ、心配したんだぞ」


梓「何かあったですか?」

紬「みんな…!」キラキラ


律「ムギー、どこでサボってたんだー?んー?」


紬「え…授業終わったから普通に部室で待ってたんだけど…」


澪「そうだったのか、今日は6時間目まであったんだぞ」


唯「ムギちゃん…寂しかったでしょ?よしよし」ムギムギュギュウ


紬「あらあら唯ちゃん(こんなに大きくなって…)」ジーン


唯「あずにゃんもおいで。ムギちゃん慰めてあげよう」チョイチョイ


梓「ふぇっ!?わかりましたよ…ムギ先輩のためですからね」ムギュギュウ


唯「あずにゃん今日は素直だねー」ニコニコ


紬「(澪ちゃん、梓ちゃんもすっかり高校生ね)」ジーン


紬「(律ちゃんは狼からいつもの律ちゃんに)」クスッ


律「あー、お楽しみ中悪いが、紬君には罰としてお茶を入れてもらおうか」ゴホン

澪「何言ってんだ。いつものことだろう」


紬「はぁい、ちょっと待っててね」タタタ


紬「(皆がすぐに来てくれてよかった、もう寂しくない…)」


紬「いつか、今日の夢の続きが見れますように…」


紬編終了



3 ※番外編
最終更新:2011年10月27日 22:10