紬「律ちゃん大丈夫?」
律「おうよ、酔ったけど平気」
紬「あ、斎藤」
廊下で斎藤と会った。
紬「お疲れ様」
斎藤「皆ぐっすり寝ましたよ、なかなか骨が折れました」
律「あの3人相手は大変だろうなぁ」
斎藤「ははは、じゃ…私も休みます。おやすみなさいませ」
紬「おやすみね」
斎藤の片手にはしっかり法螺貝が握られていた。
もうツッコむのも疲れたのでスルー。
部屋を静かに開け、自分と律の着替えを持ち風呂場に向かう。
律「じゃ、先に」
紬「ああん、私も一緒に入るの」
律「久々だな、二人きりで入るの」
紬「いつもは子供達とだから?」
律「休日はそうだな、平日は仕事で遅いからな」
~お風呂場~
律「どした?」
紬「あっ…ううん、何でもない」
自分から一緒に入ろうと言ったものの、なぜか緊張する。
そんな紬を他所に、さっさと全裸になる律。
紬「(大丈夫…目の前にいるのは律ちゃん(女)よ…)」
自分に言い聞かせ緊張を解しながら、ヌギヌギスッポン
律「うん!やっぱ広くていいな」
紬「ねー」
体を湯で流し、タオルを体にタオルを巻く
律「露天風呂のほういこうぜ、月が綺麗だ」
紬「あっ…うん」
律「はぁー…寒い寒い」
紬「風邪引かないでね」
律「それっ」
紬「むぎゅっ」
駆け足で湯舟に浸かる。
外は月末のせいか綺麗な満月が照らし、なんとも風情がある。
律「はぁ…極楽」
紬「今日は疲れたでしょう」
律「昼寝したから平気さ、それより明日だなぁ。お節料理食べたり…初詣行ったり…」
紬「そうか…」
紬「(一緒に行きたかったな…)」
月を見上げ、ちょっぴり寂しい気分になる。
おそらく夢はもうしばらくで覚めてしまうだろう。残された時間は少ない。ならば…
紬「(甘えてやる!)」
律「~♪」ピーピー
紬「ねぇねぇ」ジリジリ
律「おぁ?」
紬「んー!」
唇を尖らせキスをおねだり。
律「それは、キスか…どれ」
紬「んっ…」チュッ
律の唇が触れる。
男とは思えないプルプル唇でどこか懐かしい感じがしたキスだった。
紬「うふふっ、やったぁ」
律「そんな喜んでもらえて何より」
紬は律の手を握り、肩に頭を乗せ寄り添う。
紬「律ちゃん…」
律「ああ」
紬「来年もよろしくね」
律「来年だけじゃねぇよ、これからもずっとな」
紬「うん…」
寂しげな気分になってしまったが、律が優しい言葉をかけてくれた。
その言葉でちょっぴり泣き出しそうになるが…
紬「(泣かないもん…)」
律に気を使わせぬように涙を堪えた。
律「いい湯だった」
紬「ね、はいお水」
律「サンキュ」
紬「…」
ほろ酔いでご機嫌な律とは対照的に、紬のテンションは下がる。
律「明日に備えてしっかり寝なきゃな」
紬「そうね…ああ、こっちこっち」
紬の部屋の前に到着。
子供達が寝ているせいかとてもとても静かで。真っ暗な部屋のベッドで3人は熟睡していた。
紬「(あっという間だったなぁ…)」
ベッドに腰掛け、3人の寝顔を見ながらそっと頭を撫でる。
紬「(もっともっと遊んであげればよかった…ごめんね…)」
律「ムギ…?」
紬「えっ…?あっ…」
紬の目から零れる涙。
紬「ちがっ…これはね…その…」ポロポロ
律「おいおい…どうしたよ」
律は泣き出した紬を抱き寄せる。律が心配しないように泣かないつもりだったが、名残惜しさに涙を堪えきれなかった。
紬「ぐすっ…」
律「よしよし…どうした?気分悪いのか?」
紬「ううん…違うの」
律「じゃあどうして」
紬「本当によかったなぁって…」
律「ん?」
紬「律ちゃんが旦那さんで、この子達の母親であることが」
律「何だよ、改まって」
紬「律ちゃんはどう?」
律「俺も同じだよ」
紬「嬉しい…」ムギュギュ
そう言うと、紬からも強く抱きしめた。
紬「(あったかい…)」
律の胸に抱かれ、暖かさが眠気を誘う。おそらく眠りについたら、目を覚ます頃には夢から覚めているだろう。
紬「(みんな…元気でね)」
紬「(これから生まれてくる新しい子も…)」
優しくお腹を摩る。
来年は新たな家族が増えさらに賑やかになるだろう。
紬「律ちゃん?」
律「ああ」
紬「寝ていいよ」
律「ムギが寝るまで起きてるよ、不安だろうし」
紬「…ありがと、けど明日も運転だから寝なきゃ」
律「そうだけども…」
律は心配しているのか、なかなか首を縦に振らない。
紬「じゃあ、一緒に…ね?大丈夫だから」
律「…わかったよ」
間もなく年が明ける頃。
静かな部屋に微かに除夜の鐘が聞こえる。
紬「ねぇ…律ちゃん」
律「ん」
紬「愛してる」
律「はは…俺もだ」
もう一度キスを交わし、律の胸の中で紬は眠りについた。
~~~
…さま!…うさま!
紬「んん…むぎゅ?」パチ
斎藤「お嬢様、おやすみのところ申し訳ありません…」
紬「ううん…」
辺りをキョロキョロと見渡す。そこには一緒に眠ったはずの律も子供達もいなかった。
紬「うん、それで?」
斎藤「ご学友の皆様が起こしになりました」
紬「はぁい、上がってもらって」
前回のように寂しいのは変わらない。だけど…
唯「ムギちゃーん来たよーん!」
律「おっす、ムギ」
澪「ムギ寝起きか?眠そうだな」
梓「ムギ先輩、お邪魔します」ペコ
紬「みんな…!」ムギュギュパァァ
軽音部のみんながいるから寂しくないもん!
澪「今度の曲のテーマは決まった?」
紬「できたできたぁ」
律「ほうほう、聞かせてもらおうじゃないかぁ」
紬「うふふっ…あのね」
紬「幸せな家族をイメージしてみたの」
夢が思わぬヒントをプレゼントしてくれたようだ。
紬番外編?終了!
最終更新:2011年10月27日 22:18