澪「…」カキカキ


澪「うーん…」


悩んでばかりでなかなかペンが進まない。どれも見覚えのある問題のはずが…


唯「澪ちゃーん」


紬「お疲れさま」


澪「唯、ムギ!」


やはり2人は別のクラスみたいだ。


唯「あれれ、律ちゃんは?」


澪「ああ、先に帰ってると思うけど…会わなかったか」


紬「さっき、いちごちゃんと手を繋いで帰ってたような…」


澪「なにぃ!?」


私と遊べないや否や、もう浮気したのか…もういい!連絡してやんないもん!


唯「澪ちゃんは帰らないの?ムギちゃんとケーキ食べに行くんだぁ」


澪「あう…」


試験勉強をしなければいけないのに甘い誘惑が…。


澪「私はいいや、試験終わったら行こうよ」


唯「えー…澪ちゃんのいけずー。左利きー」


澪「なんだそれ」クス


紬「澪ちゃん、真面目だからしょうがないわ」


唯「ちぇっ、わかったよ…あずにゃんに来てもらお」

紬「そうしよう、じゃあ…澪ちゃん頑張ってね」


澪「ああ、悪いな二人とも」


唯「バイバーイ」


澪「(いいなぁ…ケーキ…)」


その後も澪は勉強を続けた。しかし、時間だけが過ぎていくばかりで、問題を解くことができない。


澪「駄目だ…、もうこんな時間か…」


昼過ぎから勉強し始めて、思えば昼食もとってなかった。


澪「ちょっと休憩しよ…」

途方に暮れる澪。ジュースでも買いに行こうかと思った矢先。教室の扉が開いた。


曽我部「秋山さん、お疲れ様」ピョコ


澪「あ、先輩。こんな時間まで」


曽我部「生徒会の雑用があってね」


澪「そうなんですか」


曽我部「秋山さんは試験勉強?」


澪「はい…かれこれ3時間ほど…。ちょっと休憩しようかなと」



曽我部「そんなに難しい?」


澪「まぁ…はい」


曽我部「そう…」



先輩は何やら考え込んでいる。秋山澪ファンクラブの発起人であり生徒会長の曽我部恵(18)


曽我部「秋山さん、よかったら教えてあげようか?」

澪「いいんですか?」


曽我部「うん、もうすぐ先生が見回りにくるから…私の家でどう?」


澪「はい!お願いします」

苦戦していた澪に頼もしい味方が現れた。澪は顔を輝かせる。


澪「そういえば先輩、朝は本当にありがとうございました」


曽我部「いいのよ、けど、とっさに悪知恵があんなに働くなんて思わなかった」クスクス



2人で並んで下校する。
思えば先輩と帰るなんて初めてだ。



澪「…」


曽我部「どうかした?」



澪「なんか先輩嬉しそう」


曽我部「だって…秋山さんと一緒だから…」モジモジ


澪「…!」キュルルンポーン



澪のハートにエンジンがかかる。徐々にスピードを高め首都高を爆走しそうな勢いだ。



曽我部「…いきましょっ、もう少しで着くから」


澪「そそそうですねっ…」

澪「(うぅ…恥ずかしい)」

曽我部「(大胆なこと言っちゃった…)」


お互い照れてしまい、ドギマギとしてしまった。


澪「(ん、律からメールか)」


メールには画像が添付されていた。見てみるといちごとのプリクラだった。



澪「(イチャイチャしやがって…近すぎじゃないのか)」



ボーイッシュな律はまるで、いちごの恋人のよう…。苛立ちを気づかれぬよう必死に深呼吸する澪であった。



その後、しばし歩くこと20分…


曽我部「秋山さん、こっちこっち」


澪「わぁ…綺麗…」


曽我部「そう?上がって上がって」


澪「お邪魔します」


曽我部「今日は家は誰もいないからゆっくりくつろいでね」


澪「はぁ…勉強しなきゃですけどね」


曽我部「ふふっ、そうだったわ」


部屋の場所を教えてもらい先に上がらせてもらった。

澪「(これが…先輩の…生徒会長の部屋か…)」


よく整理整頓された8畳ほどの部屋。選挙戦を戦い抜いた強者とは思えない。


澪「(ぬ…)」


ふとあるものが目に入る。ベランダに干された洗濯物(下着)だった。


澪「(ピンクに…ホワイトか…)」


イメージ通りだった。しかし、それらに隠れて奥に干してあった物に澪は言葉を失う。


澪「(黒…!)」


「それ」は明らかにピンクやホワイトとは違う雰囲気を漂わせていた。
まるで澪を誘惑するような魔性の色。太陽の逆光に照らされ輝いて見えた。


澪「……」ゴク…


誘われるようにベランダに近づく澪。「触れてみたい」というあらぬ衝動に駈られた。

ベランダまで残り僅かという所で部屋のドアが開かれた。


曽我部「お待たせ、秋山さん」


澪「ひゃあ!」


曽我部「ふふっ、驚かせるつもりはなかったんだけど」


澪「ははは…すいません、大袈裟でした」


曽我部「暑いから冷房入れるね、あと麦茶」


澪「はい」


汗ばんだ体を冷気が包む。飲み物を用意してくれたみたいだ。ありがたい…!!


曽我部「じゃ…始めましょう、どれから?」


澪「数学からお願いします」


曽我部「ふむふむ…これはね、ここをこうして…」


澪「ふむふむ…」チラッ


先輩に悪いと思いながらも、黒のパンティーが気になる。けど、今は勉強に集中だ。


曽我部「ね…簡単でしょ」

澪「はい、先輩!」


さすが生徒会長といったところか、頭脳明晰、容姿端麗、風林火山。しかも教えるのが上手ときてる。こんなパーフェクト超人がこの世に存在するとは思いもよらなかった。


曽我部「これは…この公式を使って…」


澪「ふむふむ」カキカキ


見違えるように問題をスラスラと解いていく澪。


曽我部「(やっぱり可愛い…)」



その頃の律は…


律「ぐぁあっ…」ゲボォ


いちご「もうちょっと楽しませてくれると思ったけど…」


律「(血が…こんなに…)」


それでも律は諦めない。
拳で血を拭い立ち上がる。

律「まだ勝利宣言は早過ぎるぜ…」ペッ


いちご「…いいよ」


律「おう!」


光男「(とんでもねぇ化け物が現れやがった…)」


澪に連絡することなどとうに忘れ、死闘を繰り広げていた。



~曽我部家~


澪「こうですよね…」


曽我部「うん、完璧」


澪「やったぁ」


あれから一時間少々、先輩のおかげで試験勉強は捗る捗る。


曽我部「ちょっとソファで休憩しよっか」


澪「はい」

麦茶を片手にソファに腰掛ける。

曽我部「試験が終わったら夏休みね、もう予定は決まった?」

澪「いや…例年通り合宿はすると思います。あっ…あと夏祭りかなぁ」

曽我部「そう…」

澪「先輩…?」


先輩の表情が曇る。
何か悪いことでも言ったのだろうか…


曽我部「羨ましいなって思って」

澪「へ…?」

曽我部「もう私は3年だから、来年の受験のために塾ばっかだから…」

澪「…」

曽我部「たまにね、高校生活を振り返るの。生徒会ばっかりだったな…」

澪「…」

先輩の寂しげな表情や口調に何も返すことができない。

曽我部「秋山さんが羨ましいな…」


曽我部「けれど…」


お財布を取り出す先輩。
なんだお小遣か…。


曽我部「これが1番の思い出の証かな」


澪「これって…」


曽我部「そう、ファンクラブのカード」


差し出されたのは、会員No.1 曽我部恵と印されたカード。


澪「なんだか恥ずかしいです…」


曽我部「ふふっ、けど、よく出来てるでしょ?」


澪「はい、手作りとは思えないです」


先輩の表情が和らいだ。
このカードには澪への愛がギュウッとつまっているのだろう。



曽我部「秋山さん…」


そういうと先輩は澪の手に自分の手を添えてきた。


澪「…!」


不意を突かれ、体が固まってしまった澪。


曽我部「ファンクラブのメンバーは100人を越えたんだけどね…」


澪「ふふ…ふっ…増えすぎ」


駄目だ。
緊張で呂律が廻らない。先輩はどうしたのだろう、いつもの雰囲気とは違う。



曽我部「その100人よりもね、私の方が大好きよ…秋山さんのこと…」


澪「へっ…うわっ…!」


気がついたら私は先輩に押し倒されていた。


澪「せっ…先輩」


曽我部「私の好きは、LikeじゃなくてLOVEの方だから…」


澪の膝の上に馬乗りになり、澪の頬を撫でてきた。緊張で冷房が効いているはずなのに体が熱い。


澪「けどっ…他のファンクラブの会員達の目もあるし…」


曽我部「関係ないもん、今は二人きりだから…」


澪「うぅ…」


力いっぱい突き飛ばせば先輩を払いのけるのは簡単だ。けど、できない。正確にはしたくない。


曽我部「…」モミュ


澪「ふぁっ…」


曽我部「私じゃ嫌…?」


澪「うっ…」


澪「(そんな目で見られたら…断れない…)」


曽我部「ね…気持ちよくなるから…澪ちゃん」


澪「めぐたん…」


恵「ソファは狭いから、あっち行こ」


澪「うん…」


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最終更新:2011年10月27日 22:43