夜は更け、4人は眠りについた。ムギのベッドは大きくて4人寝てもまだ余裕がある。


紬「…」スースー


梓「…」ピーピー


律「(気持ち良さそうに寝てるな)」


律はそっと扉を開け、バルコニーの椅子に腰かける。煙草に点火し、口から紫煙を吹かす。


律「ふぅ…」


律「真ん丸お月さん」


涼しい風を感じながら月を見上げる。なんとも風情がある。


澪「…律」ガラガラ


律「ん、澪」


澪「寝てなかったのか?」

律「はは、ベッドが大きすぎで落ち着かないみたい」

澪「ふふっ、なるほどな」

澪「煙草いいか?」


律「はいよ」


澪「ん…サンキュ」


澪は煙草を受け取り、椅子に腰かける。


澪「…涼しいな」


律「うん、もうすぐ秋かな秋山さん」


澪「うん、そうだな」


律「(秋と秋山さんをかけたのに…)」


澪「…なぁ、律」


律「ん?」


澪「軽音部…大丈夫だよな…」


律「不安か?」


澪「まぁ…少しな」


律「あたしもだよ」


澪「え…」


律「あんだけ仲良かった唯と梓がさ、喧嘩するなんて思いもしなかったし」


澪「うんうん」


律「ま、梓自身が何とかするしかないな。あたしらは見守ることしかできない」

澪「酷な気もするけど私もそう思う」


律「まぁ、喧嘩して仲直りしたら前よりも仲が深まるって」


澪「そうだな、私と律みたいに」クスクス


律「へへ」


付き合いが長くとも何度か喧嘩した律と澪。今となっては笑い話になった。


律「さて…寝るかなっと」

澪「明日も学校だしな」



朝!


梓「んん…」パチ


梓「朝…」


律「…」クゥクゥ


澪「…」スゥスゥ


梓「(可愛らしい…下着)」


寝顔って普段見れない一面だよね


紬「あ、おはよう」ガラガラ


梓「おはようございます、あれ…それって…」


紬「皆の朝食でーす」


梓「何から何まですいません…」


紬「ううん、お客様はちゃんともてなさなきゃ」


澪「ふぁ…梓、ムギおはよ…」


梓「澪先輩!」


澪「やれやれ…律のやつ、また脱いでるな」


梓「…」ゴクリ


律はキャミソールに下はパンツだった。かなり際どい姿だ。


澪「律~…起きろって」


律「ん~…っ」ゲシッ


澪「うわっ!」


寝ぼけた律に足蹴にされてしまう澪。


澪「ぬぬぬ…」


澪「おらぁ!」


ペシペシペシペシ!
澪は勢いよく律のお尻を叩いた!


律「あぅ…なんだよ~」


澪「朝だって」ニコ


律「あぁ、そっか…うぃー」


梓「おはようございます、律先輩」ハラハラ


紬「おはよ…」ドキドキ


律「はは、また下脱いじゃったよ」


朝から修羅場が垣間見えた気がしたが、なんとか丸く収まった。


紬「さ…さぁさぁ、皆、朝ごはんにしましょ」


トーストにバターをぬりぬりし始める紬。


一風変わった光景。
4人で朝食をとるなんてさ

紬「梓ちゃんは苺ジャム?」


梓「はい、お願いします」

手伝いましょとは言わなかった。とても楽しそうなムギを目の前にして


紬「りっちゃんはハムチーズね、はい」


律「サンキュー」モシャモシャ


紬「澪ちゃんはブルーベリー♪」


澪「ありがと、ムギが母親みたいだな」


紬「そう?うふふっ」


梓「(確かに…私は末っ子かな)」パクパク


律「(ハムうめぇ!)」モクモク

平和な食卓がいつまでも続けばいいなと思った。


朝食を終え、車で送ってもらうことになった。


律「いやぁ~、まさか車で登校するなんてなぁ。快適快適」


紬「ちょっと寝坊しちゃったしね」


律「またお邪魔したい」


紬「いいわよ、毎日でも」

律「はははは」


紬「うふふふ」


車内の前の席は盛り上がっていた。しかし、梓の心境は穏やかではない。車から見える景色をぼーっと眺めていた。


澪「梓」


梓「はい…澪先輩」


澪「緊張してるか?」


梓「少し…ですかね」


澪「そうか、それじゃあ…」


澪は鞄から筆箱を取り、中からサインペンを取り出した。


澪「手、出してみて」


梓「…?」


言われたままに手を差し出す梓。


澪「…よしっと」キュッキュッ


梓「人…あぁ、緊張した時に舐めるやつですね」


澪「そうそう」


澪らしい緊張を解し方にちょっぴりおかしくなってしまった。


梓「ありがとうございます、私、頑張ります」


澪「その意気だ」


不安だった心が少し晴れた気がした。


斎藤「…着きましたよ」キリッ


――――

先輩達と別れ、教室に向かう。


梓「(ありがとうございます、先輩方)」


具体的な解決策は見つからなかったものの、皆で一夜を過ごし気分が楽になった。


梓「(やっぱり放課後かな…)」


授業は頭に入らず、唯に謝る時間帯を考えていた。


純「ねぇ、梓」


梓「…」ブツブツ


純「ねぇったら」


梓「…」ブツブツブツブツ


純「えいっ」サワッ


梓「やっ!な…何?純」


純「さっきから呼んでるじゃんよー」ブーブー


梓「あ…ごめん、何?」


純「何かあったの?」


梓「あ、うん…ちょっとね」


純「ふーん…恋?」


梓「なっなっ何をおっしゃるかぁ!」


純「そんな梓にこれ、リップなんだけど…」ヌリヌリ


梓「ん…ん?」


純「はいオッケー」


梓「あ…プルプルだ…」プルリリーン


純「でしょ」


梓「うんうん、なんかいい香りもするし」


純「その顔」


梓「え?」


純「梓が元気ないとあたしも調子出ないからさー」


梓「純…」


純「リップ貸したから、そのお礼に元気出してよね」

梓「ありがと」


梓「(ちょっとリラックスできたかな)」


その頃、唯は…



唯「…」ボケー


律「魂が抜けたような感じだな…」


澪「やっぱり元気ないな、仕方ないが…」


紬「一応、お菓子は持ってきたんだけど…」


律「仲直りしたらだな、食べんの」


澪「そうだな…」


紬「うん…」


律「(梓…頼んだぞ!早く仲直りしてくれ)」


それぞれの思いを胸に時は過ぎていく。


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最終更新:2011年10月27日 22:54