~放課後~
教師「はい、終わりー帰れ帰れー」
梓「(来た…!)」ガタッ
一番に教室を出て駆け出す。出遅れるわけにはいかない。
梓「はっ…はぁ…」
唯がどこに向かうか先に待ち伏せし探ろうという魂胆だ。
梓「(唯先輩はっ…いた!)」
唯「じゃねー…」
梓「(よかった、何処に向かうんだろ…)」
梓「(あっちって…部室?)」
唯は音楽室にトボトボと階段を登っていく。悟られぬように階段下で待機することにした。
梓「すぅ…はぁ…」
緊張を落ち着かせるために深呼吸をする。しばらくするとレスポールの音が…
梓「ふわふわ時間だ…」
梓「よし…!」
澪に書いてもらった手の平の「人」をペロペロし、梓は部室に向かう。
軽音部を取り戻すために…
梓「うっす!」バァン!
勢いよく部室のドアを開いた。
唯「あっ…なんだ…」
梓「失礼…します…」
振り返った唯の刺すような視線に身震いした。逃げ出したくなる自分を抑え、梓はマスタングを取り出す。
唯「(ぬ…)」ジャカジャカ
梓「(勝手にセッションしてやらあ!)」ギュイーン
唯「……!」
梓「ふっ…ほっ…!!」
唯のギターを聴きながら、その上達の早さに驚かされる。ボーカルを兼務し、この腕前…
唯「……!!」
梓「……!!」
無言でギターを奏で続ける2人。ついて来れるかと言わんばかりにピッチをあげる唯。それについていく梓。
唯「…やーめた」ポイッ
梓「あ…」
お互いギタリストとしての情熱に呼び掛けたが虚しくも失敗に終わった。
梓「(やむを得ないか…)」
梓は強攻策に出る。
床に置かれたレスポールを手に持つと…
唯「ちょっと…!」
梓「……」ニヤリ
梓「ちょっと借りますね!」ダダダッ
唯「待てコラァ!」ダダダッ
部室を飛び出した梓をすかさず追い掛ける唯。
~屋上~
梓「はぁっ…はぁっ…レスポール重いな…」
唯「あずにゃん!」
梓「へへへ…」
唯「はぁ…手間かかせやがって…」
梓「唯先輩…抱き着いてきてくれないんですか…?」
唯「え…」
梓「いつも部室に入った時には必ず抱き着いてくれましたよね…」
唯「いいから返してよ…!」
梓「じゃあ、私から抱き着いていいですか…?」
むぎゅぎゅぎゅ…
唯の険悪な態度が和らいだ気がした。
梓「(…唯先輩の温もり)」
唯「なんでよ…」
梓「先輩、どうぞ投げてください…それで、おあいこにしましょう」
唯「本当にいいの?」
梓「はい」
梓「やっぱり私達は5人揃って軽音部です、1人でも欠けたら駄目なんです…!」
梓「また一緒に…練習とか…お菓子食べたり…」グスングスン
堪えてた涙が溢れてしまった。
唯「…」
梓「うぇ…えぇっ…えぇ…」ポロポロ
唯「…馬鹿にゃん」
梓「あうっ…」
梓「いたた…」
唯「これでおあいこだよ」
梓「へ…」
唯「仲直りしよ、あずにゃん」
唯が梓にしたのは「デコピン」だった。それは柔道技とは比べられないソフトなものだった。
梓「えぇーんっ…ぇっ…」
唯「泣かないでよ、こっちもちょっぴり泣きそうだよ」
唯の胸の中で梓は思い切り泣いた。
梓「わたしっ…わたしっ…軽音部が…どうなっちゃうのかと…」グスングスン
唯「大丈夫だよ、あずにゃん」ヨシヨシ
梓から抱き着く、いつもとは違う光景。
それを見守る3人の影…。
律「ふぃー…やれやれ…」
澪「どうなるかと思ったがな…梓がレスポールを誘拐した時は」
律「まぁ、これにて一件落着…ムギ…泣くなって」
紬「うっ…うぅ…ごべん…りっちゃん…、梓ちゃんよかった~…」
律「ああ、映画化するからさ」
澪「馬鹿言ってないで、先に行くぞ部室に」
律「あぁ…ほれムギ」
紬「ふぇ…ぇっ…うん…」グスグス
3人は胸を撫で下ろし、部室に向かった。
~部室~
唯「えへへっ、そうだったんだ」
梓「…///」
唯に手を繋がれ部室にたどり着いた。
律「おう、待ってたぞ」
唯「りっちゃん、澪ちゃん…!ムギちゃん」
梓「なんで…」
澪「二人が仲直りしたっていう噂を聴いてさ。今日からまた部活だ」
唯「そうなの、うわーい」
梓「(見てたんですね)」クスッ
いつもの軽音部が戻ってきた。
紬「お茶入りました~」
律「うむ、ご苦労」
唯「おいしいねー」
何事もなかったのように振る舞う先輩方。ありがとうございますた。
澪「梓、手の平舐めた?」コショコショ
梓「はい、たくさんペロペロしました」モショモショ
澪「そっか…、効果あったかな」
梓「おかげさまで」
梓「さぁ、食べ終わったら練習しましょう!」
よかったねあずにゃん
めでたしめでたし
梓編終了!
最終更新:2011年10月27日 22:57