唯「というわけで憂、わたくしの隣に」

憂「うん」

唯「もうちょっと近くに……」

憂「……えへへ」

唯「さて、こちらにあるのはいたって普通のサイコロ」

唯「1から6の目があるだけのなんでもないサイコロです」

憂「わざわざ買ったの?」

唯「ううん。1年生のときに使ってたさんすうセット(※)から引っ張りだした」

憂「わ、懐かしい」

唯「憂のは私のおさがりだったよね」

憂「うん、大事にしまっておいた覚えはあったけど、まだ残ってたんだ」

唯「憂が使ったものだもん。捨てたりしないよ」

(※)わかる人だけわかればよいもの。


憂「でも、このサイコロがどうかしたの?」

唯「あのね、サイコロを使ったゲームを考えたんだ。だから一緒にやろ、憂」

憂「どんなゲーム?」

唯「まず、先攻の人がサイコロをふるの」

唯「1回の攻撃で3回までサイコロをふることができて」

唯「もう一度サイコロをふるかどうかは、出た目を見てから決められる」

憂「うんうん」

唯「それで、攻撃をやめるときに出てたサイコロの数字の合計が偶数なら、その数だけ相手にキスができる」

憂「えっ」

唯「逆に合計が奇数なら、その数だけ相手にキスされちゃう」

憂「ちょ、ちょっと待って」

唯「何かわかんないところあった?」

憂「……えっと」

憂「わたしたち、こないだ初めて……えっちしたばかりだよね?」

唯「でも私は寝てる憂に何度も何度も、ちゅーを始め色々してたよ」

憂「そ、それは聞いたけど……ゲームでキスって!」

唯「だめ?」

憂「だめっていうか、お姉ちゃんとはもっと、まじめにしたいっていうか……」

唯「心配しないで。このゲームは常にお互い、真剣にキスしあうルールだから!」

憂「で、でも」

唯「私は憂と、もっとたくさんキスしたい」

唯「ひとつひとつのキスにちゃんと気持ちをこめるから、ね」

憂「……」

唯「それでもやめる?」

憂「……ううん。私もお姉ちゃんとちゅーしたい」

唯「うん。じゃあ説明の続きね」

唯「偶数なら相手にキスできる」

唯「奇数なら相手にキスされちゃう」

唯「たとえば1回サイコロをふって、奇数だったらもう1回サイコロをふって、偶数にすることが可能だよね」

憂「……でも、奇数のままってこともあるよね?」

唯「その場合はもちろん、3回までだからもう1回サイコロが振れるよ」

唯「当然、それでも偶数にならないこともあるけどね」

憂「そしたら、お姉ちゃんにキスされる……」

唯「そう。3回サイコロをふった合計の数字だから、かなりポイントを稼がれることになるよ」

唯「しかも自分のポイントはゼロのまま相手のターンになるから、戦局的にかなり不利になるね」

憂「つまり、確実に奇数を回避するのが一番大事なのかな?」

唯「そうとも限らないよ。最初に憂が1を出して、偶数にしようと躍起になって6を続けて出したとしたら」

唯「憂は私に13回もキスされちゃうんだよ」

憂「……」

唯「そういうリスクをふまえて、あえて奇数のままターンを終わらすのもありだね」

憂「え、えっと……それで、何回繰り返したら勝ちなの?」

唯「とりあえず、先に50回キスしたほうが勝ちってことで!」

憂「50回!?」

唯「驚きすぎだよ憂~」

憂「で、でもそんなにするなんて……」

唯「私たち、毎日50回なんて余裕でやってるよ?」

唯「この1週間かぞえてたけど、越えない日がなかった」

憂「うそぉ……」

唯「憂ってキスしてると夢中になっちゃうからね。覚えてなくてもしょうがないよ」

憂「なぐさめられても……」

憂「それで、勝ったほうはどうするの?」

唯「え? そりゃあ、ガッツポーズ!だよ」

憂「負けた罰ゲームとかは……」

唯「……憂、罰ゲームほしいの?」

憂「!! ち、ちがくって、そうじゃないと勝負に熱くなれないっていうか」

唯「いいんだよぉ隠さなくたって。考えといてあげるね、ふふふっ」

憂「違うってば……」

唯「さて、それじゃあいいかげん始めようか!」

憂「う、うん」

唯「サイコロふって、出た数のおっきいほうが先攻だよ」

唯「とりゃ!」

 [3]

唯「びみょうん……」

唯「では、憂どうぞ!」

憂「えいっ!」

 [3]

唯「……ありゃ、引き分け」

唯「では仕切り直して、ぽいっと」

 [4]

憂「それっ」

 [4]

唯「うーん……」

憂「……じゃんけんで勝ったほうが先にしない?」

唯「そうしよっか」


唯「せんこうこうこうきーらっぴっ」

唯(チョキ)

憂(チョキ)

唯「きーらっぴ」

唯(パー)

憂(パー)

唯「……きーらっぴ!」

唯(チョキ)

憂(パー)

俺(グー)

唯「……あれぇ?」

憂「もうお姉ちゃんが先攻にしようよ、お姉ちゃんだし」

唯「ううん……では甘えさせていただいて」

唯「一投目!」

 [2]

唯「うん……スタートダッシュがかからないね」

憂(2回……)

憂「まだ振る?」

唯「うーん、最初は堅実に攻めておきたいね」

憂「それじゃあ」

唯「しかし、まだまだ!」

憂「えっ」

 [6]

唯「やった!」

憂「は、はちかい……」

唯「ここはしっかり先制しておこう」

憂「す、するの?」

唯「ドキドキしすぎだよ、憂。いつもみたいに……目、とじて」

憂「……」

唯「すきだよ、憂」

 ちゅっ

憂「んっ」

 ちゅっ ちゅぅっ

唯「うい……」

憂「はぁ、ぁ……」

 ちゅっ ちゅ

 ちゅー ちゅっちゅ

唯「んー。もう終わっちゃった」

憂「……うぅ」

唯「憂?」

憂「ドキドキする……」

唯「当たり前だよ。大好きな人とキスするんだもん」

唯「私だって……ね?」

憂「ほんとだ。ドキドキしてる」

唯「はい、憂の番ね」

憂「うん。……ふぅっ」

 [5]

憂「うげっ」

唯「いきなりピンチだねぇ」

唯「いいんだよ? 憂は受けなんだから罰ゲーム受けるためにわざと負けたって……」

憂「う、受けじゃないもん! 私だって……」

 [4]

憂(9回……)

唯「ういー、このままストレート負けなんてやだよ?」

憂「ま、まだまだ……!」

 [3]

唯「む。ちぇっ」

憂「どやっ!」

唯「しょうがないなあ……おいで、憂!」

憂「えへへっ。お姉ちゃーん♪」

唯「ほらほら、んー」

憂「んー、ちゅ……」

唯「ふふっ……んむっ、ん」

憂「お姉ちゃん、んっおねえちゃん……」

唯「はふ、はぁ……んんっ!」

憂「んちゅ、ちゅぷ……んっ、ん……ぷは」

唯「ふぁ……も、もう憂っ、いきなりベロはずるいよ……」

憂「だって、こうでもしないとお姉ちゃんに勝てない気がするし……」

唯「ふふーん……ま、憂がそこまで本気なら、私も遠慮しなくていいのかなぁ」

憂「え、あっ、それはちょっと」

唯「さあーさあ第2投、いっちゃおうか!」

憂「待ってえぇー!!」

 唯8‐12憂

唯「6でろ、ろくー」

 [4]

唯「よしよし、そこそこ」

憂「偶数のうちにやめておいたほうがいいかもよ?」

唯「大丈夫大丈夫。今は私に勢いがあるよ」

 [6]

憂「!」

唯「ふっふっ……これで10回」

憂「と、当然まだまだ攻めるよね? お姉ちゃんなら」

唯「無論だね。そりゃ!」

 [4]

憂「奇数でてよぉーっ!」

唯「うふふ……14回だよ、憂」

憂「あ……あぁう」

唯「しっかり、まじめに、だいじに、14回、憂にちゅーするからね」

憂「う、ん……」

 ちゅっ……

唯「……1回」

憂「うん……」

 ちゅっ……

唯「……2回」

憂「うん……んっ」

 ちゅぱっ ちゅっ

唯「4回……んっ」

憂「おねっ……んむ」

唯「んんっ……5回、んふっ、6、ななっ……」

憂「は、んあっ……ちゅうぅ……れろっ」

唯「くちゅ、はひっ……ん、くぅっ」


――――

憂「飛ばしすぎだよ、お姉ちゃん……」

唯「ごめん……」

憂「いや、いいんだけどね?」

唯「でもこれから先、憂の攻め方にどう変化をつけようものか悩むというか……」

憂「……わたしは普通にお姉ちゃんとちゅうできるだけで幸せだよ」

憂(……口の中がお姉ちゃんの味でいっぱい)

唯「えへへ……ありがと」

憂「じゃあ、私の番だね」

 [1]

憂「うーん……」

憂「お姉ちゃんに差をつけられてるところだし、巻き返しを狙っていこう」

 [2]

憂「なんで私ばっかり辛い展開になるの」

唯「まだまだ序盤だから偏るのはしょうがないよ」

憂「お願い、私にも攻めさせて……」

 [2]

憂「……」

唯「現実は非情である」

憂「お姉ちゃんは嬉しそうである」

唯「口先では恨めしげにそう言う憂も内心嬉しそうである」

憂「そんなこと……」

唯「いただきます!」

憂「んんぅっ……」

 唯27‐12憂

唯「さて、半分まできたねぇ……」

憂「私はまだ4分の1にすら達してないんだけど」

唯「罰ゲームはもう決めたけど、聞く?」

憂「……聞いたら運の巡りが悪くなりそう」

唯「運か。運は大事だよねぇ、うんうん」

憂「? ……えっ、えっ!?」

唯「そういうことなら、内緒のまま。後半戦いってみよう、っと」

憂「ちょっ……本当に?」

 [5]

唯「ふーむ……」

憂「お姉ちゃん、私ここ最近出なくって……」

唯「え、出ないって何が?」

憂「だから……うぅー!」

唯「まあとにかくもう一投」

 [2]

唯「むっ。まずい予感……」

憂「ここで6が出たら私の逆転だよね」

唯「でもそれはほんの6分の1の現象にすぎないわけですよ、ほれっ」

 [4]

唯「……ね?」

憂「『ね?』じゃないよぉ……」

唯「さあ! さあ!」

憂「うん……っ」

 ちゅっ

唯「ん……はむっ」

憂「ん、ずるいよ……ちゅう」

憂「ん、ん」

唯「ふふ、くすぐったいよ」

憂「お姉ちゃん……はふ」

唯「っ、耳ぃ……」

憂「んちゅ、ちゅっ」

唯「はっ、ぁ……」

憂「お姉ちゃんっ、お姉ちゃんっ!」

唯「んっむ……ふぁ、憂っ」

憂「はあっ……はあ」

唯「……11回?」

憂「うん……」

唯「よし……次、憂の番だよ」

憂「……」

唯「早くぅ」

憂「ねぇ、もう普通にしよ?」

唯「だーめ。せっかく考えたんだから」

憂「うーん……よいしょ」

 [3]

唯「3だね」

憂「……ちゅーして、お姉ちゃん」

唯「え、1回でいいの?」

憂「いいもん。勝ち負けなんか……」

唯「んもー。わかった、目とじてー、憂」

憂「ん……」

 ちゅっちゅっ……


2
最終更新:2011年10月30日 02:09