ガチャリ


梓「すいません、遅れましたー」

梓「ちょっとHRが長引いちゃって……あれ?」

しーん

梓「……だ、誰もいない?」

梓「いつもならみんな、席についてお茶してるはずなのに……」

梓「もしかして、私のほうが早かったのかな」

がたがた

梓「ん?部室のほうに誰かいる……」

ガチャ

澪「あれ、梓か?」

梓「あ、澪先輩……そんなとこでどうしたんです?」

澪「うん、ちょっとな」

梓「ちょっと……なんですか?」

澪「おかたづけを……」

梓「へ?」

澪「だから、かたづけだよ。軽音部のものを部室にしまってたんだ」

梓「かたづけ……ですか?」

梓「でも、かたづけならこの前やりませんでしたっけ?」

澪「ああ、それはこっちの部室のほうな。今度はちょっと、音楽室もやっとこうかと思って」

澪「部活で一番使うのはここだからな。ちょうどいい機会だし」

梓「な、なるほど」

梓「ところで澪先輩、他のみなさんはどうしたんです?」

澪「いや、梓こそどうしてここにいるんだ?」

梓「え……」

澪「何か忘れ物か?用事でもあるのか?」

梓「そ、それって私はもう、部活にくるなってことですか……?」

澪「へ?ち、違う、そういう意味じゃなくてな……もしかして忘れてるのか?」

梓「?」

澪「今日、部活休みだぞ」

梓「ええっ!?」

梓「ど、どうして休みですか?てか、そんな話いつ……」

澪「メール送らなかったか?今日は律とムギが用事あってこれないし」

澪「3時から合唱部の集まりでここ使いたいみたいだから、だから部活は休もうってことになったんだ」

澪「それを昨日メールでみんなのとこ送ったはずだけど」

梓「えっ、き、きたかな?」

パカッ

梓「………」

梓「……きてた」

澪「気づかなかったか」

梓「すいません……後から来たメールが被ってたみたいで」

澪「まあ、よくあるよ。私もメールじゃなくて電話にしたほうがよかったな」

澪「そういえば唯も朝きたとき忘れてたから、今日でこの会話二回目だ」

梓「あう……すいません」

澪「こっちこそごめんな。梓一人だけ伝えきれなくて」

梓「い、いえしょうがないですよ。学年違うんですから」

梓「それより澪先輩。先輩こそ部活ないのに、どうしてかたづけするんです?」

澪「部活がないから空いてる時間にちょうどいいと思ったんだよ」

梓「だからいい機会、ですか」

澪「うん、前々からやっておきたいって思ってたけどね」

澪「でも放課後はみんなここ使うし、それに軽音部だけのものじゃないから、なかなかできなかったんだけど」

梓「え、でも、3時からここ使うんですよね」

澪「だから、それまでできるだけやるつもりだ」

澪「一人なら整理整頓くらいできるだろうし、あと軽く掃除もしておきたいけど」

梓「………」

澪「そんなわけで今日は部活ないから、梓。来てもらったとこ悪いけど……」

梓「え……えっと、あの」

澪「ん?」

梓「私も、手伝っていいでしょうか?おかたづけ」

澪「え……別にいいよ。こんなの自己満足だしさ」

梓「いえ、手伝わせてください。澪先輩がやるなら私もやりたいです」

澪「別に後輩だからって気を使わなくていいけど……」

澪「でも、それなら手伝ってもらおうかな」

梓「はいっ、ありがとうございます」

澪「うん」

澪「………」

梓「先輩?」

澪「ああ……違うぞ梓」

梓「へ?」

澪「手伝ってもらうのは私のほうなんだから、私がお礼言わないと。ありがとな」

梓「あ、いえそんなっ、気にしなくていいですよ」



澪「じゃあ、まずはその辺の棚のかたづけから始めよっか」

梓「はい、あ、でも勝手に開けたりしていいんですか?授業で使うのもありそうですけど」

澪「先生に聞いたらいいってさ。楽器とかはさすがに動かしちゃまずいけど」

澪「そこの棚は軽音部でもよく使ったらしいから、かたづけといてって言ってたよ」

梓「これ、軽音部で使ってたんですか」

澪「私らは全然使わないけどね。一応そうらしいよ」

梓「あ、だったらバンドスコアとか音楽雑誌が出てくるかもしれませんね」

澪「そうだな、参考になるのとか残ってるかも」

梓「開けてみますね」

ぱか

梓「………」

澪「………」

梓「……ゴミの山ですね」

澪「……うん、これはひどい」

梓「と、とりあえずどうします?全部出しちゃいますか?」

澪「そうだな……とりあえず出してみて、捨てるやつととっとくやつを分けよう」

澪「大半が捨てることになりそうだけど……」

梓「ですね……なんか音楽雑誌じゃなくてファッション誌とかアイドル誌ばっかなんですけど」

澪「軽音部って、一体……」

がさごそ

梓「うわっ、紙類がすごいです」

澪「無理矢理詰め込まれててクシャクシャだけどな」

澪「ほとんどゴミ箱行きだ」

梓「あ、私ゴミ入れる袋とか持ってきましょうか?」

澪「うん、そうだな。頼むよ」

梓「わかりました」



がさごそ

梓「お待たせしましたー……って、すごいですね」

澪「ああ、ありがと。まあ見ての通りの量だ」

梓「袋入りきるかな……なにかいいものはありましたか?」

澪「なんにも。楽譜とか歌詞とかあったけど……」

梓「それは、部活で使えませんかね?」

澪「いや……たぶん、音楽の授業で使ったやつだろうから」

梓「それって、この中に捨ててったってことですか……」

澪「ほとんどいらないからここに押し込んでっただけだと思う」

澪「……答案らしきものもあったから」

梓「そ、それはあんまり見ないほうがいいですね」

澪「もうクシャクシャでだいぶ古いしな」

澪「あ、あとこんなのもあった」

梓「ストラップですか?」

澪「キーホルダーかな?よくわかんないけど、処分に困るんだ」

梓「落し物として届けましょう」

澪「そうするかな」


がさごそ

梓「ん?」

澪「どうした?」

梓「部活の申請書と……勧誘で配るチラシですかね」

梓「裏面は落書きされまくってますけど」

澪「なんか、軽音部員だった人の性格がわかってくるぞ……」

がさごそ

梓「ふう、袋パンパンです」

澪「全部燃えるゴミだったな。よし、じゃあ出してくるよ」

梓「一階までですよね?私も行きます」

澪「あ?ああうん、別にいいけど……」

梓「えへへ、じゃあ行きましょう」

――――

梓「とりあえずかたづけ終わったけど、どうします?」

澪「うーん……まだ時間結構あるな」

梓「それならもうちょっと続けましょうか?」

澪「梓はいいのか?」

梓「はい、全然問題ないですよ」

澪「それなら……戻ってから何やるか考えてみよう」

梓「そうですね」

澪「あ、ちょっと待った梓。ジュース買ってこう」

澪「梓はどれがいい?」

梓「え?」

澪「手伝ってくれたお礼、かな」

梓「え、いえ、いいですよっそんな」

澪「遠慮しないでいいからさ。ちょっと奢りたいだけなんだ」

梓「は、はあ……じゃあ、これをお願いします」

澪「うん、わかった。買ったら休憩して飲んでこう」

澪「その後、また頑張ろうな?」

梓「はいっ!」

――――

澪「他に軽音部で使うものというと……」

梓「机とか長椅子とか、あとムギ先輩の食器棚とか」

澪「それはムギのものだから……無理にいじらないほうがいいかな」

梓「そうですね……高そうなものとかありますし」

澪「それに、ムギはよく自分で掃除してたからな。綺麗だと思うよ」

梓「そうすると、あとは机とかでしょうか?」

澪「それより床が気にならないか。さっきかたづけてて思ったんだけどさ」

梓「そういえば……毎日掃除してるはずですけどね」

澪「ちゃんと掃除してるのかな。ほこりとか結構ある」

梓「この、床についた汚れも気になります」

澪「拭けばとれるかな……」

梓「掃除道具持ってきましょうか?」

澪「まだ時間はあるし、そうだな。そうしよう」

梓「はい、わかりました」


澪「梓は今掃除どこ担当?」

梓「私は四階のLL教室です。箒担当ですよ」

梓「澪先輩はどこですか?」

澪「私は教室。黒板担当だ」

梓「あれって、粉がつくから大変ですよね……」

澪「まあね。でも綺麗になった黒板って気持ちいいから、やりがいはあるかな」

梓「あ、わかります。黒板消しのムラがないと、見てて気持ちいいですよね」

澪「そうそう」


梓「えーっと、雑巾とバケツと……雑巾は二枚でいいですよね?」

澪「うん、二枚で足りると思うよ。水はトイレの洗面台でくもう」

澪「あとは……その道具持ってこっか。雑巾つけるやつ」

梓「ああ、このモップみたいなやつですね」

澪「そうそう、だけどそれってなんて名前なんだろうな。よく知らないんだけど……」

梓「た、確かにそうですね。モップみたいだけど、それはこっちにあるし……」

梓「使い方わかってても、名前知らないやつって結構ありますよね」

澪「あるある。あと明らかに掃除とは関係ないものまで入ってることあるよな」

梓「ありますねー。私もこの前会議室担当だったときに……」


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最終更新:2011年10月30日 21:02