スーパー

律「何で私ばっかりにお使い頼むかなぁ」

律「えっとー」

うろうろ

律「んん?」

菫「~……」

律「おーい」

菫「ひっ」ビクゥ

律「何もそんな驚かなくても」

菫「す、すみません…」

律「ウロウロして、何探してたの?」

菫「な、何も!」

律「声裏返ってるぞー」

菫「やっ……すみません…///」

律「」クスクス

菫「……あの、昼間のアレ」

律「え?」

菫「ごめんなさい」

菫「今度会ったときは気づかないフリして無視して下さって結構ですので…」

律「いや、私が声かけたんだから…」

律「なんかごめんなぁ」

律「触れちゃいけない世界もあるんだよな」

菫「ぅう……」

律「あれはムギが無理強いさせてああなってるの?」

菫「ち、違います!!!」

律「!」

ざわざわ、ざわざわ

律「ば、場所変えよう……?」


公園

律「ほい」

菫「ま、また 飲み物なんて私なんかのために…!」

律「私も飲みたいからいいの。文句あるのか?」

菫「いえ…いただきます…」

律「よろしい」

菫「……」

律「家でもあんな感じなのか?」

菫「え、えっと…そうなります」

律「ひぇ、ご苦労だなぁ」

菫「いえいえ! お嬢様のためならあの程度!」

菫「なんともないです……」シクシク

律(なんともあるんじゃない)

菫「明日、お屋敷の方へ遊びに来られるとか」

律「ああ、そういうことになってる」

律「犬を見にな」

菫「い、犬……」

菫「私で良ければ…いくらでも見てやってください…」

菫「…面白いものでもありませんけれど」

律「あ、えっと」

律(確かに 犬=この子 を見に行くってことではあるけど)

律「なんかごめんな。私がムギに言ったから…」

菫「いえ、あなたは悪くないんです」

菫「せめていつかの分と今日のジュース代の代わりになるのなら」

律「自分を売り物にすんなよ!」

菫「使用人の私はこうすることでしか恩を返せないです…」

律(てことはメイドさん?)

律「」ゴクリ

菫「……?」

律「いや、なんでもないよ」

律(リアルメイドとか初めて見たー……しかも犬!)

菫「私、明日は精一杯のおもてなしをさせていただきますね」

菫「犬、ですけど…」

律「あはははは…はは」

律「そう暗くなるなよ~ そういやさ」

律「歳は? 名前は?」

菫「え?」

律「前会ったとき聞きそびれちゃったから。君帰るの早いんだもん」

菫「私はただの犬で構いませんよ…」

律「いやいや!」

菫「えっと……斎藤菫、です」

菫「歳は、15になります。すいません」

律(なんで謝られた)

律「てことは中3かな?」

菫「はい」

律「学校にも行って、家では犬…メイドで大変だなぁ」

菫「もう、慣れちゃいましたから」

菫「それにお仕事をキチンとこなさなきゃ、私たち家族は暮らしていけませんし」

律(なにやら深い家庭事情がっ)

菫「それに私自身、お仕事を辛いだなんて思ったことないんです!」

律「お」

菫「お嬢様のことだって、大好きですから……///」

律「だから犬なのか?」

菫「……」

律「その割には散歩のときは複雑そうってか、悲しそうな顔してたけど?」

菫「そ、そんなっ! 滅相もありませんよ! そんな顔…!」

菫「楽しいですよ…はい…」ニ、ニコ

律「あんなごっつい鎖に繋がれてもか?」

菫「は、はい……」

律「はぁ、律儀なもんだな」

菫「……」

律「……」

律「……な、なぁ」

菫「は、はい?」

律「……わんって鳴いてみてくれよ」

菫「え」

律「犬みたく、昼間みたいにさ」

律「頼むよ、菫ちゃん」

菫「そんな……え、え……」

律(すごい戸惑ってる)

菫「そのっ、そのぉっ……」

律(いい、いい)

律(この顔……いい)

菫「ああぁぁぁ……っ」

律「た、頼むから、聞きたいんだよ……あはは…」

律「菫ちゃん!」ガシッ

菫「ひぃっ!?」

菫「わ、わん! わんわん!」

律「お、おお……」

律(何だろう、この感覚? てか感情……)

律「ふー、ふー、ふー」

菫「……///」

菫「……も、もういやぁ…」ジワァ

律「!」

律「ご、ごめんねっ ちょっと調子に乗り過ぎた!」

律「ほら、ハンカチ」サ

菫「ううっ、ぐすん……」

じー

律「」ボケー

菫「すんすんっ……ど、どうしましたか?」

律「え!?」

菫「私の顔をじっと見たりして……」

菫「あんまり見られると、照れてしまいます……」

律「ご、ごめんな」

「……」

菫「あの、私そろそろっ」

律「え、あ! うん!?」

菫「…ボーっとしてますけれど、大丈夫ですか?」

律「大丈夫、大丈夫!! ぜ、全然大丈夫だから!」

律「帰るの? わ、私もそろそろ帰らなきゃだなー! あははは」

菫「はぁ」

菫「あのー! ハンカチ汚してしまってすいませんでしたー!」

律「ああ、それくらい」

菫「お渡ししていただければ、明日にでも綺麗にして…」

律「いいって。それじゃ、帰り気をつけてな」

菫「はい! …あ、あのー!」

律「ん?」

菫「お名前、あなたのお名前は!」

律「……田井中律だよ。よろしくね、菫ちゃん」

菫「はぁぁ…!」ワッ

菫「こ、こちらこそ! こちらこそよろしくお願いします!」

菫「こんなダメダメな犬ですが!」

律「あははは、それじゃあな。菫ちゃん」

菫「は、はいっ!」

菫(これが、これが友達なのかな! で、でも年上の方みたいだし…)

菫「……えへへっ」ニコニコ


―――

律「てなことがだな」

澪『へぇ、へぇ、へぇー』

律「なんだよ 何か返事が投げやりなんですけどー!」

澪『別にー』

澪『でもそっか、その子は色々大変そうなんだな』

澪『明日会えたら挨拶しよう。律、私の事もしっかり紹介してくれよ?』

律「うん、わかってる。それじゃあ明日なー」

ピッ

律「明日かぁ」


菫『ち、違います!!』

菫『私で良ければ…いくらでも見てやってください…』

菫『わ、わん! わんわん!』


律「おおっ」ビクン

律「…な、なんかゾクゾクきたぁ」



琴吹宅


紬「さぁ、みんな上がってー」

澪「予想以上に大きな家…」

唯「犬は、犬はー!」

紬「うふふ、慌てなくてもすぐに会えるから」

梓「ムギ先輩いいんですか 私まで」

紬「うん。梓ちゃんなら大歓迎だからぁ」

律「」チラチラ

澪「こら、律 人様の家をジロジロ見るなんてはしたないぞ」

律「あ、いや…そういうわけじゃ」

律(菫ちゃんは、菫ちゃんは)

梓「律先輩」

梓「律先輩ってば!」

律「え?」

梓「何ボーっとしてるんですか 置いてかれますよ?」

律「あ、ごめん」

律「……」

梓「何かあったんですか?」

律「いや、そういうわけじゃ」

わんわん! わんわん!

律「!」ダッ

梓「ちょ、ちょっと律先輩!?」

律(犬の鳴き声! 犬だ、犬!!)

律「菫ちゃ――――」

唯「ぃよぉ~し、よしよしよし~」ナデナデナデ

わんわんお「へっへっへっ…」

律「あ…」

唯「お、りっちゃーん! この子とっても可愛いよぉ~」

律「そうだな…」

わんわんお「へっへっへ」

澪「よ、よしよし……えへへ」ナデナデ

唯「この子が噂のたくわん?」

梓「沢庵じゃなく?」

紬「ううん、その子はゲル。どう? 人懐っこくて可愛いでしょ」

唯「うんー!」

律「なぁ、ムギ。すみ…たくわんは」

唯「おぉ! この子は毛並みがよろしい! ツヤツヤでふかふかだよ~」

紬「その子はー」

梓「すごい、こんなに高そうな犬ばかり…」

澪「ああ…」



律「……」


「お嬢様。お茶が入りました」

紬「ああ、ありがとう。みんな、お茶でも飲みましょ?」

唯「いぇーい!」

梓「うっ…高そうなお菓子」

唯「いつも高そうなお菓子じゃない?」

梓「いや、ここは言っとく流れかなって思いまして……」

澪「お菓子…」

律「あ、あの! ムギー」

紬「はい?」

律「トイレどこかな?」

紬「あ、お手洗いならこの部屋を出て突き当りを右に曲がって」

律「わかった。じゃあ借りるよ」ガチャリ

紬「ああ、りっちゃん! …迷わないといいけれど」

唯・澪・梓(家で迷う――――!?)


律「……」

律(菫ちゃんはどこにいるんだ)

律「勝手に部屋あけて悪いけど、トイレの場所間違えたってことで」

律「えいっ」

ガチャリ

律「……!」

斎藤「……」

斎藤「……わんわん」

律「!」ビクゥッ

斎藤「わんわん」

律「ひぃっ、ま、間違えましたぁー! ごめんなさい!!」

ガチャン

律(なんだよ今のおっさんは)ゼーゼーヒューヒュー

ガチャリ

律「ひっ」

斎藤「先程は驚かせてしまい、申し訳ありませんでした」

律「何で犬のマネなんかしたんですか!?」

斎藤「ええ…ここはたくわんの部屋ですから」

律「は?」

律「てことは……ここが菫ちゃんの部屋?」

斎藤「菫? 私の孫のことでしょうか」

律「お孫さん…?」

斎藤「ええ、斎藤菫。私めの孫でございます」

斎藤「そして、ここは菫の部屋ではございませんが」

律「?」

律「でもだって、たくわんは菫ちゃんなんでしょ?」

斎藤「え? あ、ああー」

斎藤「それには深い訳がございまして…」

律(どうも話が分からない)

「お爺様?」

斎藤「おお、菫」

律「えっ!」


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最終更新:2011年11月14日 20:34