次の日


Prrr、Prrr

律「電話? あ、菫ちゃん!」

ピッ

澪「ん?」

菫『も、もしもし!』

律「おー、もしもーし! 例の件どうなったの」

菫『はい! やりました、やりましたよー!』

律「マジで!?」

菫『ええ、お父さんが許してくれました! 思う存分、お友達と遊んできなさいって』

菫『私とっても嬉しいです! 待ち遠しいです!』

律「そっかぁ…あははっ」

律「うん、うん、それじゃあ今週の日曜に。うん、じゃあなー!」

ピッ

澪「誰と電話?」

律「ないしょー」

澪「ふぅん…」

キャッキャキッキャ

律「おーい、何楽しそうに話してんのさー?」

紬「うふふっ、唯ちゃんがね~」

唯「あのね 和ちゃんがー」

律(早く日曜ならないかなぁ)

唯「おーい」

律「ん?」

唯「りっちゃん、またボーっとしてるー」

唯「最近多いよ?」

律「そ、そう?」

澪「律は今お楽しみ中らしいからなー…」チラッ

唯・紬「?」

律「」ボーケー



部室


紬「さきにお茶してよっかー」

律「お、そうだな」

紬「みんな遅れてくるみたいだし…よいしょ、と」

律(…ムギと2人きり、今なら)

律「ねぇ、ムギー」

紬「はぁーい?」

律「たくわんの部屋の事、聞きたいんだけど」

律「ほら、こないだムギの家にお邪魔した時にあった…」

紬「……」ニコニコ

律(無視された――――!?)

律「お、おぉい……ムギー」

紬「……りっちゃん」

律「え?」

紬「私だって聞かれたくない事の1つや2つあるの」

紬「だから、ね」

律「あ、ああ…ごめん…」

律(意地でも話してくれそうにないな)

紬「はい、お茶。お菓子はみんなが来てから」

律「うん」

「……」

律(なんか気まずいかも)ズズー…

紬「ね、りっちゃん。ちょっと話したい事あるの」

律「…ムギ?」

紬「この辺で○○って魚肉ソーセージ…」

紬「ご、ごめんなさいっ やっぱりなんでも…」

律(ソーセージって)



数日後


律「いい天気だなぁ 頭ぼーっとしちゃうぐらいに」

律(もうデジャヴってところじゃないけど、まさか)


らんらん♪るんるん♪


律「!」

ジャラジャラジャラ

紬「ふふふ~♪」

菫「……///」

律「な――――!?」

紬「あったかいから今日はお洋服もいらないわねー。ね、たくわん?」

菫「わ……っん……」

律(どういうことだおい)

律(アレじゃほぼ裸じゃねーか!)

律「おいおいおいー!」

紬「あら、りっちゃん いつもお散歩の時会っちゃうね」

菫「っ!?」

律(そんな悠長にお喋りしてる場合じゃないだろ)

律「なぁ…ムギ、これは……」

紬「お散歩だけど…?」

律「だ、だって…これ……」

菫「……///」

律(め、目を合わせてくれない)

律(しかも今にも泣き出しそうじゃない。顔なんか沸騰してるのかってぐらい真っ赤で)

律「……」ゴクリ

紬「いつもはお洋服を着せてたもんね、でもワンちゃんだしお洋服はうっとうしいかなって」

律「そ、そうか」

菫「っぐ……」

律「でも、ちょっと恥ずかしいんじゃ」

紬「どうして? だってこの子は犬なのよ?」

律「ああ……」

律(そうか、犬だった)

じーっ

菫「ひいっ…ぃや、ぁ……み、見なっ」

グイッ

菫「うっ、げ」

紬「……」ジャラ…

律「ムギ!」

律「……そんなにリード引っ張ったりしたら、痛いんじゃないかな…?」

紬「……そうね」

菫「……」

律「す、菫ちゃ――」

紬「それじゃあ私たちはこれで。じゃあね、りっちゃん」

紬「さ、たくわん。行きましょー」

菫「わん……」

ジャラジャラジャラ…

律「……」ポカーン

律「すげぇ…」

律「すげぇけど」

律(なんか嬉しくないや、しかも腹立つ)

律「菫ちゃんがああいう顔していいのは私といる時だけでいいんだよ」

律「……」

律「かーえろっと」

律「」ボケー

律「いよいよ明日かぁ」

律「~♪」ゴロゴロゴロ

律「あー、楽しみすぎて死んじゃいそうだぁ」

ブー、ブー

律「メール?」

律「菫ちゃんからだ!」

『夜分遅くにごめんなさい。今日は大変お見苦しい物を見せてしまい、すいませんでした』

『明日、楽しみにしています♪ 楽しみすぎてしっかり寝れるかどうか心配です。それでは』

律「そんなに期待してくれてるのか」

律「大丈夫、大丈夫。いっぱい2人で楽しもうなぁ!」

律「……」ニタニタ



待ちに待った日曜日


律「」ピッピッピ

律(早く来すぎたかな)

タッタッタ…

菫「律さ~ん!」

律「!」

菫「お、遅れちゃって…はぁはぁ、申し訳…はぁはぁ…」

律「ううん、大丈夫。私も今来たとこだしな」

菫「ですけど」

律「気にすんなって言ってんだからいいの! さ、行こうぜー!」ギュッ

菫「あ……」

菫「……」パァァ


…ギュッ


律「え、UFOキャッチャーしたこのないの?」

菫「実は…」

律「よしよし、それじゃあお姉さんがお手本を見せてあげよう」

チャリン

菫「わぁぁ…! く、クレーンが動いてますよ!」

律「動かなきゃどうすんだよって」

律「も、もうちょい左かな」

菫「あ! 私こっち側から見てみますね! もっと、もっと左です!」

律「お、お、お、おおっ?」

ウィーン

菫「や、やったぁー!! やりましたねぇ、やりましたねぇー!」ピョンピョン

律「そんなにはしゃぐ事かぁー?」

菫「あ、えっ……てへへ…///」

律「お、コレ可愛くないか?」

菫「帽子ですか?」

律「菫ちゃんによく似合いそう」

菫「わ、私なんかよりもきっとお嬢様の方がお似合いに…」

律「そうー? じゃ、試しに被ってみー」

カポッ

菫「……ど、どうでしょうか?」

律(お、お嬢様みたい。ムギとは違うベクトルの)

律「」グッ

菫「じゃあ私買っちゃいます…!」

律「え、そんなよく決めないでいいの?」

菫「律さんが似合うよって言ってくれたから……だ、ダメでしょうか」

律「買いなさい」

菫「~♪」

菫「ハンバーガー…」

律「まさか、食べたことない?」

菫「い、いえ ありますあります!」

菫「ただモスバーガーってソースが美味しいのに下に溜まっちゃってちょっと残念で…」

律(なるほど)

律「ペロペロ舐めるわけにもいかないもんなぁ」

律「……あ、犬ってことになってるし、それもいいんじゃないかな」

菫「え……?」

律「あ、いや 冗談、冗談!」

律「素直に店員さんにスプーン貰えばいいんだよ! すんませーん」

菫「はぁ」

律「そっか、いつも休む暇なく」

菫「使用人ですし、仕方がありませんよ」

菫「それになれちゃいましたし!」

律「慣れたいもんじゃあないな…」

菫「明日のご飯を食べるためですし」

律(本当にハードモードだな)

菫「律さんは何かお仕事はー」

律「え、私? あはは、私学生……あ」

律「ば、バイトなら2回やりましたー!」

菫「すごいです! 多忙そうなのに!」

律(毎日グダってるよ)

律「私、軽音部に入っててさ」

律「そこの部長なんだぜー! みんなには頼りになるりっちゃん隊員と」

菫「部長で隊員?」

菫「あの、軽音部…って何をするところなのですか?」

律「軽音、軽い音楽じゃないからな。ほら、ギターとかベースとかやって」

律「バンド組んでみんなで演奏すんだよ。楽しいぜ~」

菫「バンド……」

菫「それは、素敵ですね!」ニコ

律「うん。聞かせてあげたいぐらいだっ」

菫「是非っ! 是非聞きたいです!」

律「じゃあ…いつかな!」

菫「はい、楽しみに待っています!」



公園


律「いやー」

律「結局ここに落ち着いちゃうね」

菫「くすっ…そうですねぇ」

菫「でもここでゆったりと律さんとお話しているの、大好きなんです」

律「そっかー」

カァーカァー

菫「ああ…気づいたらもう夕方だったんですね…」

律「今日は楽しかった?」

菫「はい! それはもう!」

菫「……あの、またこうやって私と遊んでもらえますか?」

律「もちろん!」

菫「わぁぁ…!」パァァ

菫「私、律さんと出会えて本当によかったです」

菫「毎日キラキラしてる感じで…えっと、えっと」

律「幸せ?」

菫「…です」

律「そっか!」

律「……」ニコ

律「そんな幸せそうな菫ちゃんにプレゼントをあげよう」

菫「えぇ!? ぷ、プレゼントですか!? そ、そんなっ」

菫「こんなに良くしてもらっているのに、その上……」アタフタ

律「いいんだよ! 私もあげたかったらさ。ずっと」

菫「律さん……」

律「……そ、それじゃあさ 後ろ向いててくれない?」

菫「え、後ろ? はい…」ドキドキ

律「……」


菫(律さん、何をくれるんだろう)

菫(もう、胸がドキドキしすぎちゃって壊れちゃいそうだよ)

ガチャリ

菫「……え?」

律「はい、こっち向いていいよー」

菫「え、えっと……律、さん……?」

律「あ、よく……似合ってる…」ニタァ

菫「こ…これは、何ですか……律さ、ん……」ガクガク

律「犬のリード」

菫「っ――――!!」

菫「ど、どうして!?」

律「ムギのよりこっちの方がいい感じだろ? へへ」

菫「律さぁんっ…!」

律「なぁ…わんって鳴いてみろよ……!」

菫(どうして? どうして!)

菫(どうしてこうなるの――――!?)

菫(律さんは私の友達じゃないの!?)

菫(なのにっ――――)

律「ほら、いつもみたいにさぁ……ねぇ?」

律「できたらさ…四つん這いになってみて…えへへ」

菫「っ……」

律「ど、どうして泣くんだ?」

菫「り、りつ…さ、んは……ぅぐ、わぁ…私のこと、を……っ」

菫「私の、ことを……! どう思って、いるんです、かっ…?」

律「あ…」

律「……」

律「菫ちゃんは犬なんだろ?」

菫「え――――」

律「じ、自分でも言ってたじゃんか。な?」

律「それに、嬉しいんでしょ? そんな自分が」

律「嫌じゃないんだろ? それともあれか?」

律「飼い主はムギじゃないとダメなのかな? わ、私じゃ不満なのか…?」

菫「ううっ……!」

律「なぁ、私 菫ちゃんの笑った顔も好きなんだよ。好きなんだけどさぁ」

律「恥じらってる顔もさ……好きな事に気づいちゃったんだよぉ…」

菫「そんな……」

律「だから見せてくれよ…私だけに見せてくれよ。ムギじゃなくて、私に!!」

菫「あ……ああぁ…………」

菫(私の中の律さんが音を立てて崩れていってる…)

律「菫ちゃぁんっ!!」ガシッ

菫「!」

菫「いやぁ!!」バッ

律「えっ……」

菫「……あ」

律「……」

律「菫ちゃ」

菫「…ご、ごめんなさい。私、もう帰ります」

律「菫ちゃん!」

菫「かっ、帰ります!! お仕事があるので!!」

律「なんでだよ…ムギは良くて、私はダメなのかよ…!?」

菫「……」

菫「さようなら、律さん」ス

タタタ…

律「なんでだよぉ……」

律「うあぁ……」


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最終更新:2011年11月14日 20:37