――3-2――

梓「軽音部の3人とも、同じクラスでよかったね」

純「だねー。これで修学旅行も一緒だ!」

憂「ところで部長! 新入部員獲得の策は!」

梓「もちろんあるよ! 見てなさい! 気ぐるみとチラシで――」

憂「梓ちゃん! それ駄目だよ! 一人として入らない!」

ドア「がちゃ」

先生「始業式前のホームルーム始めるから席についてー」

純「おっと。先生来た」

梓「そうだね。……ん?」

ウメハラ「担任の梅原です」

梓「ふぇ?」

ウメハラ「昨年度で退職の予定でしたが、二足の草鞋を履くのも面白い」

梓「な……なななななんでえええええええええええええええええ!!!!!!!?」

ウメハラ「授業ノ……時間ダ」

梓「なななな、なんでウメハラ先生が!?」

ウメハラ「さっきも言ったように、昨年で退職する予定だったけど続けてみたかった。それだけ」

憂「そんな簡単に……」

純「そのうえ担任なんて」

梓「そうですよ! いったい何がどうなってるんですか!」

ウメハラ「うーん。なんていうのかな。……まあいいや。それはそうと、始業式だから講堂に向かって」

生徒「はーい」

憂「去年、お姉ちゃんのクラスの副担任で軽音部の顧問までやってた梅原先生については
 http://emiyashiro.blog21.fc2.com/blog-entry-204.htmlを参照にしてね」

梓「どうしたの? 憂」

憂「なんでもないよー。それにしても、びっくりしたね。まさか梅原先生が今年も先生をやるなんて」

梓「ホントだよ。プロに専念するからって言って教師辞めたのに」

純「それだけ、梓が心配だったんじゃないのー?」

梓「……」

純「あれ? 梓?」

梓(そう、なのかな……?)

梓(軽音部が、私一人になっちゃうってわかってたから、気を使ってくれたのかな)

憂「梓ちゃーん?」

梓(でも、今は純も憂もいる。私はもう独りじゃないんだ。だから、ウメハラ先生の心配は――)

ウメハラ「梓ー」

梓「は、はいっ!」

ウメハラ「いきなりで悪いんだけど、今年の学級委員長よろしく」

梓「なんで!?」

ウメハラ「俺、クラス持ったばかりで生徒の顔と名前一致してないんだよね。その中で、一致してるのが梓
だから、頼むよ」

梓「それなら、先生が先生続ける理由も教えて下さいよ」

ウメハラ「教師は昔から好きだった」

梓「え?」

ウメハラ「ユンと同じで、昔から好きだった」

梓「……わかりました。やりますよ。詳しい話は部活の時間によーく聞かせてもらいますから!」

ウメハラ「はいはい」

梓「純、憂、行こう。始業式、始まっちゃう」



――講堂――

校長「であるからして、新学年になっても~」

憂「そういえば、梅原先生は私達が軽音部に入ったこと知ってるのかな」

純「あー、言われてみれば言ってなかったかも。さわ子先生に入部届け出しただけだし」

梓「それならさわ子先生が伝えてるんじゃないの?」

純「うーん」ちらり

さわ子(今年は担任も持ってないし、なんかだりー)ぐだー

純「言ってないかもね」

梓「あり得る」

憂「そーだねー」

純「まあいいじゃん。梓だって、梅原先生が続投してくれるのは嬉しいんでしょ?」

梓「うう……。それは、そうだけど……」

先生「それでは、新学期の注意。生活指導の梅原先生、お願いします」

梓「!?」

ウメハラ「アッサラームアレイコム」

純「担任に続いて生活指導!?」

憂「着実に地位を上げてる……」

梓「ま、まあプロだからね」

ウメハラ「家庭用をやるようになったけど、やっぱりゲームセンターの環境は別物ですね。
    物理的に同じ場所で、実際に対戦する・・・・やっぱりいつになっても特別です。
    あれに代えられるものなんてないですね。
    プロとしてのウメハラはゲームセンターに育ててもらったようなものだと言えます」

生徒「え!?」

ウメハラ「長い間、どうやったらアーケード文化を
    もっと発展させることができるか?と色々考えていたのですが、
    みんなで一緒になにかすればいいんじゃないかと気づきました」

憂「いきなり何を……」

ウメハラ「ゲームセンターは日本の文化です。
    「ゲームセンター文化を発展させる」運動を開始したいと考えています。
    ゲームセンターで一緒にプレイしませんか。
    それが更なる発展につながります。皆さんの支持をお願いします」

純「なにが言いたいんだろ」

先生「梅原先生、ありがとうございました」(なに言ってるんだろこの人)

梓「結論、ゲーセンに来い……ってことなんだね。相変わらずだなぁ」



――3-2――

生徒A「梅原先生が担任なんてラッキーだよね」

生徒B「かっこいいもんね。しかもゲームのプロなんだって!」

生徒C「えー!? だからさっきゲーセンがどうのって言ってたんだ! 超クール! トンでるっ!」

梓「むしろ私は担任になられると困るけどね」

憂「ははは……」

純「がんばりなよ! 学級委員長! そして部長!」

梓(そうだ。私は部長なんだ! 律先輩みたいにがんばらないと!)

梓「よし! がんばるぞ! 憂、純、部活行くよ!」

ウメハラ「その前にHRね。とりあえず、それぞれの委員を決めてもらうから」

生徒「はーい」キャピキャピ

梓(みんなの様子が変わった……。これが男がいる環境か)

ウメハラ「とりあえず学級委員長は中野さんに決定」

生徒A「なんでですか?」

ウメハラ「未来からの使者が1人だけいるって感じだった」

生徒B「それなら仕方ない」

生徒C「せやな」

ウメハラ「……と、その前に自己紹介してもらおうかな。名前、部活、好きなものとか好きに話して。出席
番号1番からお願い」

生徒A「出席番号1番! ~~」

梓(行き当たりばったりだなぁ)

ウメハラ「それじゃあ、次、鈴木さん」

純「はい! 鈴木純です! 部活は軽音部! 好きなものは飼ってる猫です! よろしくお願いします!」

ウメハラ「え? 軽音部?」

純「はい! 今年から軽音部に入らせて頂きました!」びしっ

ウメハラ「なるほど。新キャラね。対策が大変になったな。それじゃあ次――」

純「ほんとに知らなかったみたいだね」

憂「だねー」

ウメハラ「じゃあ平沢さん」

憂「はい。平沢憂です。部活は軽音部で好きなモノはお姉ちゃんです。よろしくお願いします」

ウメハラ「……なるほど。軽音部ね。よろしく」

梓「あれ? 私とばされてる」

純「そういえばそうだねー。梓ー嫌われてるんじゃなーい?」

梓「そんなこと……」うるうる

純「あ! 嘘! そんなことないよ!」なでなで

梓「撫でるなぁ!」

ウメハラ「よし、一通り終わった所で学級委員長の中野梓さん、お願い」

梓「酉!?」

ウメハラ「学級委員長だからね」

梓「わ、わかりました。えと、中野梓です。部活は軽音部で」

純「部長です!」

梓「ちょっと純っ。あの、えと、好きなモノはギターを弾くことで、えっと」

憂「?」

梓「とにかく、よろしくお願いします!」

ウメハラ「――」パチパチ

梓「ウメ拍手!?」



――そして、一ヶ月後――

菫「そんなことがあったんですか」

梓「そうだよ。おかげで委員長と部長、両方やることになっちゃった」

直「中野先輩ならできるのでは? 実際、今も部長の仕事をしっかりやってますし」

梓「ありがとう。でも、やっぱり大変だよ。二足の草鞋っていうのは」

純「困ったときは、いつでも私を頼ってくれたまえよ」

直「鈴木先輩だとちょっと……」

純「なんだってー? このー」うりうり

直「ちょ、やめてくださいよ」

憂「今日はいちごのムースを作ってきましたー」

さわ子「待ってました! 憂ちゃん最高!」

菫「あ、それじゃあ私お茶淹れてきます」

ウメハラ「ありがとう」

直(プロゲーマーと教師、中野先輩も大変だろうけど、やっぱり先生のほうが大変なんだろうなぁ)

純「スミーレのお茶うめー!」ごっきゅごっきゅ

梓「ちょっと純。御行儀悪いよ。ウメハラ先生を見習いなよ」

ウメハラ「ん?」ズズー

梓「え?」

憂「ラーメン作りましたけど、どうですか?」

ウメハラ「ラーメン好きなんだよ。特にじゃんがら。これはそれにかなり近い味だね」

憂「ありがとうございます」

菫(ハーブティーにラーメン……合うのかな)

直(入部して2週間経つけど、今だにこの部はわからない)

菫(これは梓先輩、怒るのかな)

梓「憂、二郎は作れる? 二郎は」

憂「が、がんばる!」

純「私も食べたーい!」

菫直「先輩方!?」

さわ子(この子たち、去年と変わらず練習しないわね。私はどっちでもいいけど)

菫「そうだ。梅原先生、ドラムのことでご相談が」

ウメハラ「なに?」

菫「まだ手と足が一緒に動いちゃうんですけど、どうすれば……」

ウメハラ「……」

純「梅原大吾の、ドラム講座。講師はおなじみ、梅原大吾先生です」

ウメハラ「こんばんわ。ウメハラです。今日はドラムについて講義したいと思います」

菫(なにか始まった)

直(先生もノリノリだ)

ウメハラ「えと、スティックはどういうふうに握ってる?」

菫「こうですけど」ぎゅっ

ウメハラ「うーん。それでもいいんだけど、俺の持ち方は薬指と小指で挟み込み、左からかぶせるような
持ち方なんだよね」

憂「それウメハラ持ちですよ!?」

ウメハラ「これで、出来なかったことができるようになったって人が知り合いにいるよ」

直「先生、ちゃんと教えてあげて――」

菫「わかりました! がんばります!」ふんす!

梓「いいなー、菫はウメハラ先生の指導が受けられて」

直「中野先輩はドラムできないんですか? なんでもできそうなイメージがあるんですけど」

梓「私だって万能じゃないよ。ギターならいくらでも教えてあげられるけどさ」

憂「今度私にギター教えてね」

純「私にも私にも! ギターもベースも似たようなものでしょ!?」

梓「それはどうだろう。でも、頑張るよ」

ウメハラ「山中先生、どうしました?」

さわ子「誰も私を頼ってくれない……」

ウメハラ「……」

梓「そろそろ練習しないと! これじゃあ去年と同じだ!」

純「えー、もうちょっといいじゃーん」

直「そういうわけにもいかないですよ。さあさ、みなさんがんばってください」

憂「はーい!」

菫(も、持ちにくい……)

菫「わんつーすりーふぉー!!」カンカンカンカン!

梓「――♪」

ウメハラ「……」

純(梅原先生が熱いまなざしを。これは、演奏後にアドバイスを入れてくれる予感!)

梓(ウメハラ先生の指導が受けられるなんて珍しい! がんばらないと!)

憂(でも、梅原先生って音楽に詳しかったっけ?)

菫(うー、持ちにくい)

梓(さわ子先生が不貞腐れてる。演奏をまったく聞いてない……)

梓「――!」じゃーんっ

純「良い感じだったね」

憂「奥田さんが作った曲もよかったね」

直「ありがとうございます!」

梓「それで、どうでしたか!? ウメハラ先生!」

ウメハラ「こんなに良い物作ったら、こういうふうになっちゃうよって気持ちもあります。すごくよかったよ」

直「♪~」


梓「……ふぅ。それじゃあ、今日はおわりにしようか」

憂「そうだね。もう外も暗くなってきたよ」

純「演奏し始めると時間を忘れちゃうね」

梓「――!」

純「ん? どうしたの?」

梓「まさか、軽音部でそんなコトバが聞けるなんて思ってもいなかったから……」

純「今までどんな部活だったのさ」

直「斉藤さんもよかったよ」

菫「あ、ありがとう! 奥田さんの曲のおかげだよ」

ウメハラ「……」

さわ子「それじゃあ鍵は私が返してくるから、みんなは帰っていいわよ。おつかれさま」

梓憂純菫直「ありがとうございましたー」

ドア「バタン」

ウメハラ(これから新宿と……帰ったら授業の準備もしないと)



――中野区の事務所――

マゴ「暇だなー」

ときど「暇だね」

マゴ「逆にウメハラは忙しそうだよな」

ときど「そりゃ先生だからな」

マゴ「でもびっくりしたわ。まさか先生続けるなんてさ」

ときど「まあ、ウメさんも何か思うことがあったんでしょう」

マゴ「お前は先生とかやらないの? 頭いいじゃん」

ときど「そりゃお前……。ワタクシブゥロでございますから。そうそう他のことはできませんよ」

マゴ「それもそうか。ウメハラくらいだよな。俺もプロだし、なかなか他のことをするのはなー。プロだし」

ときど「アニメ見てるじゃん。なんとかかんとかとか」

マゴ「何度言えばわかるんだよ。境界線上のホライゾンだ」

ときど「ああ、それそれ。そっち系はなー」

マゴ「人を整体扱いするんじゃねえよ」

ときど「変態な」

マゴ「わかってたわ。知ってて言ったんだからな」

ときど「そうは見えなかったけど」

マゴ「うーるせっ」

ときど「プロも、大分増えたよな。去年の世界大会は俺とウメさんだけだったのに」

マゴ「そうだな。いいことなのか、それともそうではないのかはわからないけど、俺たちの戦いはこれから
だよな」

ときど「うん」

マゴ「――にしても、暇だな」

ときど「暇だな」

マゴ「なにかやることない?」

ときど「えー? 配信とか?」

マゴ「配信中毒には絶対に絶対になりたくないわ」

ときど「同意。KSKさんみたいにはなりたくありませんっ」

マゴ「それじゃあ、飯でも食いに行くか。暇だし」

ときど「だな。ファミレスでいい?」

マゴ「オーケーオーケー」


2
最終更新:2011年11月16日 00:26