――昼休み・部室――

直「なにかあったんですか? いきなり呼び出したりして」

憂「うーん。なんでもないよ。みんなでお昼ごはんでも食べようかなって思っただけだよ」

菫「そうなんですか。それじゃあ、お茶淹れますね」

梓「うん。ありがとう」

憂「私も手伝うよ。スミーレちゃん」

直「……」

梓「奥田さん?」

直「は、はいっ!? どうしましたか!?」

梓「いや、呆としてるからどうしたのかなーって」

直「なんでもありませんよ! むしろなんでもないです!」

梓「?」

直「と、ところで! 鈴木先輩はどうしたんですか? お姿が見えないようですが」

梓「ああ。純なら――」

憂「走ってもらってるよっ」

ドア「がちゃん!」

純「おまたせ!」ゼーハーゼーハー

梓「うん。座りなさい」

憂「お疲れ様。はい、冷たいお茶だよ」

純「サンキュー憂。ファッキュー中野」

梓「黙りなさいよ。この負け犬」

純「……ふぅ。買ってきたよ。ゴールデンチョコパン」

直「なんですかこれ?」

憂「あ。奥田さんは知らないだっけ? これ、一日限定3個の超レアパンなんだよ。一緒に食べよう」

直「おお。それは素晴らしいですね。いただきます」

梓「菫も食べな」

菫「は、はい。いただきます」

ウメハラ「お疲れ様」

純「なんで先生も食べてるんですか……」

さわ子「ゴールデンチョコパンもぐもぐ」

憂「先生はゴールデンチョコパン食べたことあるんですか?」

さわ子「私は在学中に食べてたわよ。忘れてたかもしれないけど、私、ここの卒業生だし」

梓「さわ子先生の時代にもあったんですね」

さわ子「それ、どういう意味かな?」

梓「い、いえ……」

ウメハラ「俺は初めて。これはじゃんがらに通じるものがある」

さわ子「本当ですかぁ? 私もそう思ってましたぁ」きゃぴっ

純(き、きつい……)

菫「あの、じゃんがらってなんですか?」

ウメハラ「秋葉原のラーメン屋さん。すごく美味しいから行ってみるといいよ」

菫「は、はい! 奥田さん! 今度行ってみよう!」

直「うん。早速明日行ってみようか」

憂「して、梓部長! 今日の部活は!?」

梓「うーん。今日はお休みかな。学年集会があるから、二人を待たせちゃうことになりそうだし」

直「わかりました。斉藤さん、明日と言わず今日行ってみようね」


――放課後――

学年主任「――というわけで、明後日から修学旅行だ。遊びにいくんじゃないぞー」

ウメハラ(あのチョコパン甘すぎるでしょ)

学年主任「特に、毎年はぐれる生徒がいる。昨年も2つの班が逸れ、夕飯ギリギリになったことがあった。
いいか、地図は読めるようにしておけよ」

ウメハラ(和のことか……)

憂(お姉ちゃんのことだ……)

純(ウメハラ先生は2年連続で修学旅行行けるのか。いいなぁ)

学年主任「そういうわけだから、全員準備はきちんとしておけよ。生活指導の梅原先生からだ」

ウメハラ「えーと……特には、ないです」

梓「ないんかい」

学年主任「ありがとうございます。それじゃあ、解散」

生徒「――」ぞろぞろぞろ

純「ねえ、修学旅行楽しみだね! 全国大会があるんだよ! 全国!」

梓「ままま、私は世界大会見てきましたけどねー」どやっ

憂「私は世界大会決勝までいきましたー」どやぁ!


――平沢宅――

憂「ただいまー」

憂母父「おかえりー」

憂「あれ? 帰ってきてたんだね」

憂母「お姉ちゃんがいなくなって、寂しいでしょ? だから、今年は帰ってくる頻度を増やそうと決めたの」

憂父「父さんはやっぱり出張が多くなっちゃうけどな。まあ、愛娘が家で独りになるよりもずっといい」

憂「えへへー。よかった。最近ちょっと寂しくって……」

憂母「憂っ!」だきっ

憂(お母さんあったかーい)

憂父「なにを隠そう、唯と憂の抱きつきグセは母さん似だからな。無論、抱き心地も」

憂母「さてと、明後日から修学旅行でしょ? しっかり楽しんできなさい。あと、今日のごはんは憂が好きな
冷やしトマトよ」

憂「うんっ! ……って、えっ? トマトだけ?」

憂母「はい」

憂「わ、わーい」

憂父(唯の料理が不得手なところも母さんに似たからな。全く、憂が僕に似てよかったよ)


ドア「がちゃバタン」

憂「ふぅ。まさか本当にトマトだけだとは」

憂「でも、広い家に一人よりもずっといいな。お父さんは出張がまだ多いみたいだけど、お母さんは家にいる
ことになるみたいだしね」

憂「さて、修学旅行の準備しよっと」

憂「……あの日は、大丈夫かな」

憂「でも、一応ね。女の子のエチケットですから」

憂「梓ちゃんたちは大丈夫かな。もし持ってきてなかったら大変だから、スペア持って行こう」

憂「傘もスペアがいるよね。あとは下着も――」

憂「……あれ? 荷物が大きい」

憂「困ったなぁ」

憂「お姉ちゃんの時はこんなことなかったのに」

憂「まあいいや。明日やろう」

憂「さて、今日は寝ようかな」

憂(その日、平沢家にはちょっとした地震がありました)


――そんなこんなで修学旅行当日――

純「眠い……」

憂「純ちゃん、昨日も夜更かししたの?」髪とかしとかし

純「うーん。興奮して眠れなかった……髪ありがと」

梓「まったく。これだからモップは」

純「黙れチビ」

ウメハラ「はい。それじゃあ点呼終わったね。今から新幹線に乗り込むよ」

生徒「はーい」

梓「ほら、純。乗るよ」

純「ふぁい……」どんっ

?「いたっ」

純「あ、ごめんなさい!」

?「大丈夫大丈夫(笑)」

梓「まったく、気をつけなよ」

ネモ「……女子高生の修学旅行か(笑)マゴがいたら大変だな(笑)」

梓(ネモさんも同じ新幹線だったんだ。全国大会の前乗りかな)

憂「おーい、梓ちゃん、純ちゃん。ここここー」

純「お、私窓際ー! ヤーウェーイ!」

梓「せんせー、純がうるさいでーす」

ウメハラ「君たち、騒ぐのはいいけどアドバイスをされると逆に……ね」

梓「はーい」

憂(梓ちゃん、今のでわかっちゃったんだ)

純「ちょっ。わかりましたよぅ。先生、これ食べてください。二郎の飴です。なんか売ってたんで」

ウメハラ「ありがとう」ころころ

梓「私にも寄越せよ」

純「さあ、どっちの手に入ってるでしょう!」

梓「こっち!」

純「ぶっぶー! はっずれー! 正解はー? どっちの手にも入ってませーん!!」

梓「あっ! このずるいぞ!」ぷんすかぷんすか

憂「せんせー! 二人がやかましいでーす!」

ネモ「なんだなんだー(笑) やかましいぞー(笑)」

ウメハラ「あ、すいません。……って、なんだネモか。ならいいや」

ネモ「なんだとはなんすか(笑) 注意ですよ。注意(笑)」

ウメハラ「申し訳ありません。この車両は貸切ですのでー」

ドア「ガチャン」

ネモ「ちょ(笑) ウメハラ勘吉だな(笑)」

梓「今のネモさん……?」

憂「ネモさん? 同じ新幹線だったんだね」

梓「そうみたい。さっき純がぶつかったんだよ」

憂「純ちゃーん」

純「私のせいじゃないもん! でも、とりあえず会釈しておきます」ぺこり

ネモ「誰でしょうか?(笑)」

ウメハラ「先は長いな。寝てよう」

生徒A(梅原先生の寝顔ゲット!)にやっ

梓「たけのこの里もぐもぐ」

憂「あ、富士山だー」

純「おお! 撮るよ! 私撮りまくるよ!」パシャパシャ!

梓「きのこの山もぐもぐ」

純「カーッ! 最新のデジカメですら新幹線から富士山は撮れねぇー! カーッ! 最新なのになー!」

憂「私は撮れた!」

梓「パイの実もぐもぐ」

純「いやー、なんだか修学旅行っぽくなってきたね! いいよいいよ! 最高の人生だよ!」

憂「純ちゃんテンションたかーい」

梓「アルフォードもぐもぐ」

純「こら中野! お菓子ばっかり食べてないでトランプしよー!」

梓「はぅぅ(´・ω・`)」

憂「?」

純「……もしかして、梓、酔った?」

梓「お菓子食べても、酔いは紛れないんだね……。むしろ気持ち悪くなってきた。トイレ行ってくる」

?「うっぷ……」

梓「?」

?「あ、すいません」

梓「もしかして、酔ったんですか?」

?「はい……」

梓「……」

?「おえっ……」

梓「大変ですね。お互い」

?「どうにも、乗り物に弱くって……」

梓「私もです……」

?(いやいや、こんな可愛い子の嘔吐とか絶対見たくない……)

梓「うっぷ」

?「ささ、どうぞ」

梓「ありがとうございます。ところで、どうして酔うかわかりますか?」

かずのこ「やる気がないからです」


梓「ただいま」

純「おかえり。大丈夫? ほら、水」

梓「ありがと。うん、大分楽になったよ」

憂「酔ってる時は食べちゃダメだよ。背中さすろうか?」

梓「うん。まさか、自分でもここまで弱いとは思わなかったよ。新幹線でも酔うんだね」

純「そうだね。ほら、膝枕しようか?」

梓「うわー、VIP扱いだー」ふらふら

憂「私の膝枕と純ちゃんの膝枕、どっちがいいー?」にこっ

梓「うーん……。とりあえず純で」

憂「そんな!」Σ(゚д゚lll)ガーン

純「そんな、顔文字使うくらいショック?」

憂「梓ちゃんを膝に乗せると、セレブになった気がするのに……」

梓「あたしゃ猫か」

生徒ABC「アカン、梅原先生の寝顔かっこよすぎる……」

梓「うわー、純の膝冷たくって気持ちいい……」

純「それはどうもー。ああ、私も眠くなってきた」

憂「ふたりとも寝ちゃっていいよ。私はこれ持ってきたから」

梓「3DS?」

憂「これでも少しは練習になるんだー」

ハカン「いくでぇ!」

憂「あー、ハカンちゃんかわいいー!」

純「それじゃあ、お言葉に甘えて寝るね。ほら、梓、あっちいきな」

梓「うなー」

憂「いらっしゃーい」

梓「……」くー

純「……」すぴー

ウメハラ「――!」ハッ! バッ

生徒ABC「うわっ! いきなり3DS!?」

ウメハラ「――」アニューウォーリアーはどエンターザリング!

憂「梅原先生が入ってきた……」なでなで

梓「なー……」

憂「かわいい……」

ウメハラ(とりあえずガイルかな。昔から好きだった)

憂「……」

ガイル「ソニックブームソニックブームソニックブームソニックブーム!!」

憂「……えー」

ウメハラ「これは……いいのかなってレベル。まあ、ガイル使うからいいけど(笑)」

生徒ABC(ゲームしてる梅原先生もかっこいい……)

先生(いくらプロとはいえ、これは注意するべきなのだろうか)

――他車両では――

ネモ「あれ? かずのこさん、ギルティ勢なのに乗り物酔っちゃいます?(笑)」

かずのこ「ちょっ。うるさっ……なんでもないです」

ネモ「うらうらー(笑)」

かずのこ「やめろ……まじで……」


――そして――

駅員「京都ー京都ー、お降りの際はお忘れ物に注意してくださいー」

ウメハラ「降りるぞー」

憂「梓ちゃん、純ちゃん、着いたよ。着いたよー」

純「えっ? もう?」

梓「流石は新幹線……」

ネモ「流石はギルティ勢(笑) 最後まで耐えた、えらいえらい(笑)」

かずのこ「あとでころ……なんでもないです」

憂「うわー、京都だー」

梓「古風かと思ったけど、駅前は近代的なんだね。あと、これからバス移動だってー」

純「次も乗り物!? よし! 飽きた! 旅館で温泉入りたい!」

梓「意外、純ってこういうの好きだと思ってたのに」

純「基本的に体力がないからね。わたしゃ」

憂「純ちゃんマラソン大会でもいつも大変なことになってるもんね」

梓(菫たちは大丈夫かな。さわ子先生と一緒にやることがない状態の辛さ、私が一番良く知ってるから)


――桜高――

菫「遅れてすいません」

直「斉藤さんの失態です」

菫「なんで!?」

さわ子「遅かったわね。さあさ、お茶を淹れて頂戴!」ふんす

菫「はーい」

直「そういえば、先輩方と梅原先生は修学旅行でしたね」

さわ子「そうよー。お陰で、今日は静かにお茶が飲めるわね」

直「山中先生、練習は……」

さわ子「私ドラムできないから、菫ちゃんに教えることないもの。あ、それと私のことはさわ子でいいわよ」

直「さわ子」

さわ子「先生をつけてね」

菫「わかりました。さわ子先生、はい、これレモンティーです」

さわ子「ありがと……。ところで、菫ちゃん。あなたのお茶の淹れ方、去年までいた子に似てるわね」

菫「そ、そうですか!? そんなことないですよ!」

さわ子「……まあ、貴女が隠したいというのならそれでもいいわ。私もあなたたちに隠してることもあるしね」

直(たくさんありそう)

さわ子「それと……よし、この際だから顧問らしいことをしよう」

菫「?」

さわ子「あなたたち、少し他人行儀じゃない? もしかして仲悪いの?」

菫「そ、そんなことないですよ! ねえ、奥田さん!」

直「うん」

さわ子「それよそれそれ。あなたたち、どうして苗字で呼び合ってるの? やっぱり友達なんだから名前で
呼び合いなさい! バンドとして!」

菫「な、なるほど! 丁度よかった! 私も提案しようと思ってたんです! 直!」

直「斎藤」

菫「ひぃ!」

さわ子「こらこら。奥田さん……いや、直ちゃんも先輩たちを下の名前で呼んでもいいのよ?」

直「……いいんですか?」

さわ子「さあ? それはわからないけど、きっとあの子たちもそう思ってるんじゃないかしら?」

菫「よぅし! それじゃあ三人が帰ってきたら梓先輩、純先輩、憂先輩と呼ぼうね! 直!」

直「そう、だね。うん。がんばってみる!」

さわ子「よしよし。それじゃあ、お茶おかわり!」

菫「はーい。あ、それと今日は私がお菓子を持って来ました。おまんじゅうです!」

さわ子「素晴らしいわね。去年はお高いお菓子だったけど、今年の庶民的なお菓子も大好きよ」

菫「よかったです。おく……直はどうする?」

直「――」カタカタカタ

菫「はい。緑茶がいい? 紅茶?」

直「――」カタカタ

菫「緑茶ね。わかった」

直「――」カタカタカッタ

菫「どういたしましてー」

さわ子「私、なんだかすごいものを見てる気がする」

菫「そうですか?」

さわ子「もしかして、あなたメイドでもやってるの?」

菫「そそそそそそそ、そんなことないです! それはないです! 断じて! 否!」


4
最終更新:2011年11月16日 00:29