木の葉が枯れ落ち、凍える季節の中に暖かな彩を演出する商店街

行き交う人々をあざ笑うかのような風が吹く


ビュュウウウウ


「・・・っ!」


温もりを求め身を竦ませながら歩く二人


「さ、寒いわねっ」ブルブル

「は、はいっ」

「・・・けほっ」

「だ、大丈夫ですか・・・むぎ先輩?」


不安な表情の瞳に彼女は答える


紬「大丈夫よ、あずさちゃん」

梓「・・・」ホッ

紬「もう大丈夫だから、心配しないでね」

梓「は、はい・・・」

まだ不安が拭えない顔を冬の冷たい風が吹き飛ばす

ビュュウウウ

紬「・・・っ!」

梓「さ、寒いです!」

紬「がちがち」ブルブル

梓「そこまで寒いんですか?」

紬「お店を出る前にお冷を一気飲みしたの」

梓「どうしてそんなことを・・・」

紬「喉の渇きを潤す為よ」キラン

梓「・・・温かいお茶の方がよかったのでは?」

紬「あずさちゃん、ごめんね」

梓「な、なんで謝るんですか」

紬「たくさん心配かけたものね」

梓「ま、まぁ、いいじゃないですか。心配していたというより・・・勇気付けられていたんですから
  それより、みなさんが来る前にはやく準備しましょう!」


厳しくも暖かい時間の中に―――


紬「・・・うん!」


―――二人はいた



―――――梓の部屋


紬「お邪魔しま~す」

梓「どうぞ~」

紬「おぉ~、ここがあずさちゃんの皇室なのね」

梓「皇室は日本に一つしかないですよ。さ、座ってください」

紬「あっ、キーボード!」

梓「あー、一応そのぅ・・・」

紬「うふふ、弾いていいかしら」

梓「体温めないんですか? コタツに入ってください」

紬「そうね。卒業写真は無いの?」

梓「中学校のです・・・よね?」

紬「もちろん」キラン

梓「・・・無いです。押入れの奥深くで眠ってます」

紬「小学校のは?」

梓「同様です」

紬「そこの押入れね」キラン

梓「違います。どうぞ、座ってください」

紬「了解よ」

梓「少し落ち着いてくださいね」

紬「うふふ、唯ちゃんも同じ行動するわね」

梓「・・・うわ、想像つく」

紬「・・・あら?」

梓「どうかしたんですか?」

紬「温かくない・・・」

梓「点けてすぐには無理です。徐々に温まるんです」

紬「そ、そうなのね」

梓「そうですね、向こうにはコタツがありませんから」

紬「あら?」

梓「今度は何ですか?」

紬「あれって・・・」

梓「・・・? あ、はい。そういうことです」

紬「・・・」ジー

梓「まさか、同類だとか思ってないですよね」

紬「お、思ってないわよ?」

梓「目が泳いでますよ。・・・いいですけど」

紬「今は?」

梓「純に預かってもらってます。しばらくしたら来るんじゃないですかね」

紬「いい事思いついちゃった」

梓「?」


――・・・


紬「みんな遅いのね・・・」

梓「退屈ですよね、テレビでもつけましょうか?」

紬「ううん。それよりお話をしましょう」ニコニコ

梓「・・・はい。なにか飲み物用意しますけど」

紬「いいのよ。揃ってからにしましょう」

梓「・・・そうですか」

紬「あずさちゃんがみんなに連絡をしてくれたのよね・・・?」

梓「そうです。みなさんが揃う機会ってあまりないですから」

紬「も、もしかして・・・みんな日にちを間違えたんじゃ・・・」ゴクリ

梓「今日大晦日ですよ? いくらなんでも」

ピンポーン

紬「・・・よし」モゾモゾ

梓「どうしてコタツの中に隠れるんですか・・・って、熱いですよ!?」

紬「大丈夫よ」モゾモゾ

梓「・・・あ、誰か来たんだった」スッ

ヒョコ

紬「スイッチオフにしてください」

梓「・・・」ポチッ

紬「・・・内緒ね」モゾモゾ

梓「テンション高いのかな・・・」

スタスタ

ピンポーン

「あーずにゃーん!」

梓「うわ、玄関先で名を呼んでる!」

「あーそーぼー!」

ガチャ

梓「やめてください!」

「うぉおおお! あずにゃああん!」ダキッ

梓「うっ!」

「久しぶり~」スリスリスリスリ

梓「・・・はぁ、いい加減にそういうの・・・」

「どういうの?」

梓「いえ、なんでも。さ、入ってください」

「邪魔するよぉー!」

梓「こっちもテンション高いんですね」

「ん?」

梓「ふふ、なんでもないです」

「ぬぉ、キーボード!」

梓「うんうん。まったく同じで安心します」

「あずにゃんの卒業写真がみたいな」

梓「無いです。座ってください・・・飲み物何がいいですか?」

「むぎちゃんの紅茶をくださいな」

梓「・・・それだと私が動けないじゃないですか」

「そろそろ来るんでしょ? 待ってようよ、それよりおこた~!」ササッ

梓「あ・・・」

「ふんふふん~♪ あったかあったか・・・くないよ?」

梓「スイッチが入ってないんです・・・。節電してるんで・・・」

「おこたの意味無いよ!?」

モゾモゾ

「そういえばむぎちゃんは・・・ぬっ!?」

梓「・・・」

「中にネコにゃんがいるのかな?」ペラッ

紬「みゃ~」

「おぅ・・・むぎちゃん・・・」

梓「む、むぎ先輩がネコの声を・・・」

「びっくりしたよ・・・」

紬「うふふ。唯ちゃん秋以来ね」

唯「・・・うん」

梓「・・・」

紬「・・・唯ちゃん?」

唯「秋からそんなに時間経ってないけど・・・っ」グスッ

梓「・・・!」

紬「うん・・・」

唯「その前の時間が長かったよ・・・っ」

紬「・・・うん。ありがとう、唯ちゃん」

唯「あ、違うんだよ! えっと、久しぶりにむぎちゃんの紅茶が飲めるな・・・って・・・」

紬「分かったわ!」フンス!

梓「台所自由に使っていいですから」

紬「ありがと~」シャランラ

唯「・・・えへへ、嬉しいね」

梓「・・・」


――・・・


唯「ふぃ~・・・」マッタリ

梓「ふにゃ~」ノンビリ

紬「このあと雪が降るらしいわ」

唯「積もったら雪合戦しようか」

梓「頑張ってください。見てますから」

唯「一緒にやろうよ」

梓「遠慮します。ですから、そういうのは」

唯「ガーン」

梓「それ口にしたら格好悪いですよ」

紬「一緒にはしゃぎましょう?」

梓「そうですね。やりましょう」

唯「」ガーン

ピンポーン

唯「おや、誰か来たよ」

紬「誰かしら、予想しましょう」

梓「え・・・放置ですか・・・」

唯「アイドルの突撃訪問! 今回は中野あずにゃんの家に参りました!」

梓「どうしてアイドルが一般人の名を知っているんですか!」

唯「打ち合わせしたんだよ」

梓「突撃じゃないじゃないですか」

ピンポーン

紬「こんばんは、お昼のニュースです」

梓「こんばんはって言いましたよ」

紬「今回は中野さん宅の前から読み上げます」

梓「その放送がニュースになりますよ」

紬「先日未明、木星を襲撃した隕石の群れですが」

梓「隕石の群れってなんですか」

ピンポーン

梓「あ、はーい!」

唯「待って!」ガシッ

梓「な、なんですか?」

唯「危険な香りがするよ」

紬「そうよ。この匂い・・・」クンクン

唯「ラベンダー・・・」

紬「ハーバル・・・」

梓「意見が割れましたね。って、どっちも癒しじゃないですか」

ピンポン ピンポン ピンポン ピンポン ピンポン ピンポン ピンポン ピンポン ピンポン

紬唯「「 りっちゃんだ 」」

梓「・・・」

律「はやく開けろよな」プンスカ

梓「・・・はい」

律「なにしてたんだよー?」

梓「えっと・・・。特には・・・」

律「? なんだ、まだ誰も来てないのか・・・お、こったつ~♪」

梓「・・・」

律「はぁー、寒さで凍えた体を暖めることができねえな~。なんでだよ!?」

梓「それが・・・その・・・。・・・テンション高いですね」

律「梓、さっきから変だぞ・・・? なんだ、スイッチオフじゃねえか」ポチ

梓「あ!」

「きゃっ!」

「あつっ!」

律「え、えぇ?」ペラ

紬「みゃ、みゃ~」

唯「りっちゃん! スイッチオフにして!」

律「いや、出て来いって・・・」

梓「・・・」

紬「りっちゃ~ん」

律「むぎ・・・」

紬「お久しぶりね~」ニコ

律「う・・・うん・・・っ」

紬「うふふ、ありがとう」

律「もうお礼は聞いたからいいんだよ!」

紬「足りないわ~」

律「っ・・・!」

唯「あずにゃん・・・」

梓「・・・」シーン

唯「あれ?」

梓「・・・なんですか?」

唯「わたしたちも秋以来久しぶりの再会なんだよ?」

梓「そうですけど・・・。憂に会ってるから、そんな感覚は・・・」

唯「感動なんてないんだね・・・ひっく・・・」シクシク

梓「今年も残り8時間ですね~」

唯「話題を変えちゃだめだよっ!」

紬「りっちゃん、世界中の写真をとってこなかったの?」

律「ん? あぁ、想い出のフィルムは無限ですからね」キリ

梓「意味が分かりませんよ、それにパクリじゃないですか」

律「ばれたか」ウシシ

唯「誰が言ってたの?」

紬「うふふ」

律「あとは、澪か・・・?」

梓「いえ、もっと来ると思いますけど・・・どうですかね。みなさん忙しそうですから」

紬「そうね~・・・。あ、りっちゃんも紅茶飲むかしら」

律「うん。頼む」

紬「はいは~い」

唯「・・・」

梓「・・・」

律「・・・やべえ、嬉しい」


――・・・


律「ほっ」

唯「りっちゃんから幸せの溜息がこぼれました」

梓「ふふ・・・」マッタリ

紬「・・・あ、見て」スッ

唯「おぉ、雪ですな・・・」

紬「・・・妖精みたいね」

律「よせやいよせやい」テレテレ

唯「・・・」ズズーッ

梓「・・・」

紬「・・・こ、こほん」

律「このノータッチっぷりも久しぶりだな」ズズーッ

ピンポーン

梓「あ・・・」

律「みんな戦闘配置につけっ!」

唯紬「「 おー! 」」


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最終更新:2011年12月03日 21:54