澪「そうか」

律「澪しゃん、つめたいっ」

澪「はいはい」

律「いだいよぉ…」シクシク

澪「嘘泣きするな」

律「嘘泣きじゃないもん、本当にいたいんだもん」

澪「なんだよ、もう。あの日なのか?」

律「…あの日ってなにさ」

澪「ごめん、律にはわかんなかったよね」

律「ばっ、ばかにするな!」

律「ていうかあの日じゃないし!」

律「澪がお腹さすってくんないと治んないかも」

澪「はいはい」ポンポン

律「………………」

澪「……」サスサス

律「……」

律「もっとやさしく」

澪「やさしくしてるだろ」サスサス

律「もっとちゃんと気持ちこめてくれないとやだあ!」

澪「はいはい」サスサス

律「……それ」

澪「なんだよ」サスサス

律「その『はいはい』ってやつ!全然やさしくないよ!」

律「澪のばか!冷血人間!」

澪「もうやめていい?」

律「あっ、うそうそごめん」

律「……」

澪「……」サスサス

律「……いたいよぉ」

澪「よしよし」サスサス

律「みーおー」

澪「なんだよ」サスサス

律「のどが乾きました」

澪「勝手に水でも飲めばいいだろ」

律「なんか飲んだらもっとお腹痛くなりそう」

澪「じゃあ飲むな」

律「みーおー」

澪「うるさいなあ」

澪「ていうかなんでお腹痛くなったんだ」

律「撫でるの止まってるよ、澪?」

澪「」イラッ

澪「……」サスサス

澪「うんこ?」

律「澪はきたないな……」

澪「便秘?」サスサス

律「そんな質問には答えられないぜ」

澪「(下痢なのかな?)」サスサス

律「お腹痛いときってさあ、信心深くならない?」

澪「親友が突然なにをいいだしたのかわからない」サスサス

律「神さま助けてっていう」

律「もう悪いことしないからこの腹痛をとめてって」

律「思わず神にすがりたくなるほどの絶望感というか」

澪「……」サスサス

律「そんな『ハア?』っていうような表情しなくても」

澪「ハア?」

律「口で言われた」

律「澪は痛いの苦手だからわかってくれると思っていたのに」

澪「私は律みたいに便秘じゃないからその気持ちはわからないな」サスサス

律「」

律「べ、便秘じゃねえし!」

澪「じゃあ今朝はうんこしてきたのか」サスサス

律「ハア!?」

澪「出なかったの?」サスサス

律「なんでそんなこと聞くんだよ、変態」

澪「自分で便秘じゃないって言ったんじゃないか」

澪「ということはイコールでうんこしてきたということだろ。同じじゃん」

律「同じ……いや、違う、絶対におかしい」

澪「同じだろ」

律「じゃあさ、澪は今日うんこしてきたって訊かれても困ら」

澪「私は今日してきたよ」

律「」

澪「快便だった」サスサス

律「いやいや、当たり前のようにさするのを再開するな!おかしいだろ!」

澪「は?」サスサス

律「澪はおかしいよ……」

澪「あのな、律。私やお前だけじゃない、唯やムギだってうんこはするんだ」サスサス

律「知ってるよ」

澪「だから何もおかしいことはない」サスサス

律「おかしいよ!」

律「普通そういう話は人前でしない」

澪「あのな、律。私は律のこと大切な仲間だと思ってる。
  だからそういう隠し事とかはしたくないんだ」サスサス

律「私はたとえ大事な仲間が相手でも赤裸々にそんな話はしたくないな」

澪「……残念だ」サスサス

律「私も残念だわ。なんだか澪のことがよくわからなくなったよ」

澪「唯とは普通にこういう話するんだけどな」サスサス

律「いや……唯だからだろ……」

澪「ムギともするぞ?」サスサス

律「ええー」

澪「おいおい、軽音部のメンバーはこういう話はよくしてるぞ」サスサス

律「知りたくなかった。……梓ともしてるのか?」

澪「梓は何故か赤面して俯いてた」サスサス

律「それが普通の反応だ」

澪「なんかあの時悪いことしちゃったな。しつこく訊いたりして」サスサス

律「ちゃんと反省しろよ……」

澪「思えばあの時、便秘だったのかな」サスサス

律「おい、やめろ」

澪「和はさ」サスサス

律「ん?」

澪「だいたい腸の調子はいいんだけど、テスト前とかで緊張すると下痢するんだって」サスサス

律「おいやめろ」

澪「それ聞いて、なんか意外だなって思ってさ。和みたいな人でも緊張したりするんだな……って」サスサス

律「私はお前の先ほどからの発言が意外でならないよ」

澪「和のお陰で私の上がり症も一つの個性なのかなって思えるようになったんだ」サスサス

律「澪は個性的だよ」

澪「そ、そうかな」サスサス

律「うん」

澪「私は律の方が個性的だと思う」サスサス

律「その意見には絶対賛成できないよ」

澪「律はいつも元気でさ、常識にとらわれないというか、破天荒というか」サスサス

澪「うちのバンドって、みんなどこかおかしいだろ」サスサス

澪「これは正直な話、あいつらがまとまってられるのは、律の個性がみんなを引っ張って行ってるからなんだと思う」サスサス

律「澪……」

澪「そんな元気な律が」

律「言っとくけどうんこの話につなげたら殴るからな」

澪「………」サスサス

律「図星かよ」

律「いいかげんうんこの話やめようよ」

澪「律が初めにしてきたんだろ」サスサス

律「して……ええ!?してねえよ!」

澪「お腹が痛いとか」サスサス

律「うんこの話では断じてない」

澪「律、もうお腹大丈夫か?」

律「え。あ、えー」

澪「どうだ」

律「もうちょっと大丈夫じゃないかも」

澪「そうか」

律「さすって」

澪「ん」サスサスサスサス

律「……」

澪「女子高生ってさ、なんで休み時間みんなでトイレに行くのかな」サスサス

律「やめろってそういう話」

澪「なんでかな」

律「…そりゃ、駄弁ったりするためじゃないの」

澪「会話するだけなら教室でもいいだろ。何故あえて暗くてジメジメしたトイレに行くのか」サスサス

律「さあ」

澪「もしかして変態なんじゃないか」サスサス

律「澪がな」

澪「うんこしにくいんだよ、用もない人がトイレにいるとさ…」サスサス

律「ああ、そう…」

澪「でもさ、隣の個室の人が自分と同じタイミングでうんこしてる時もなんかへんな気分になるんだよな」サスサス

律「やめようよ」

澪「そういえば、さっきの『駄弁ったり』ってだいべ」

律「次うんこの話したら罰ゲームな」

澪「……フン」サスサス

律「(なんだこいつ)」

律「みーお?」

澪「…………」サスサス

律「…………」

澪「…………」サスサス

律「澪ってば」

澪「なに」サスサス

律「なんで返事してくれないんだよお」

澪「律が黙ってろって言った…」サスサス

律「変な話題封じられたら喋れないのかよ」

澪「うん」サスサス

律「うん、じゃねえ!」

澪「あ、いまの『うん』は別にうんことかけたわけじゃないよ」サスサス

律「」

澪「偶然って怖いよな」サスサス

律「怖いのはお前だ。しつこい、しつこすぎる」

律「ていうか罰ゲームな」

澪「えー」サスサス

律「さっき言っただろ」

澪「罰ゲームするのはいいけどさあ……」サスサス

律「なんだよ」

澪「この流れで律が罰ゲーム受けるってなんかおかしくないか」サスサス

律「当たり前だろ!受けるの私じゃないよ、澪だよ!」

澪「なにそれこわい」サスサス

律「なに意外そうな顔してんだよ!」

律「よし、罰ゲーム決めた。お前、梓に電話しろ」

澪「それ罰ゲームなのか」サスサス

律「『お嬢さん、今どんなパンツ履いてるの?』って訊け」

澪「うわ……変態だな」サスサス

律「このくらいしないと罰ゲームにならないだろ」

澪「律は発想が下品だぞ」サスサス

律「お前にだけは言われたくない」

澪「じゃあ電話するぞ」ピッピッピ

律「スピーカーモードにしとけよ。私も聞きたいから」

プルルルルルルルルル

澪「考えてみたらこれ梓に対してもセクハラになるんじゃないか」

律「なるな」

プルルルルル…ガチャ

梓『はい、もしもし』

澪「…………」

律「…………」ドキドキ

梓『もしもし、澪先輩?』

律「ほらっ、早く言えよ」ボソッ

澪「ああ、うん。ごめん梓、急に電話して」

梓『いえ、全然構いませんよ』

澪「ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いいかな」

梓『はい』

澪「梓、今パンツ履いてる?」

律「みおしゃん!?」

梓『な、なに言ってるんですか!?』

澪「いや、今パンツ履いてるかどうか」

律「澪、澪、澪、澪、澪」

澪「うるさいな律、今電話してるんだから静かにしてろ」

律「今の訊き方じゃ意味が違っちゃうだろ!」

梓『み、澪先輩?』

澪「梓、答えられなかったら無理にとは言わない」

律「パンツは履いてるに決まってるだろ!なにマジ顔で訊いてんだ」

梓『……その声、律先輩ですか?』

澪「うん、律もいるよ」

澪「ごめん、変な電話して。律がかけろっていうから」

梓『はあ……なんとなくわかりました』

澪「なんか罰ゲームとかいって、律が、無理やり、変なこと言わせて……」

律「みおしゃん、みおしゃん!」

澪「ごめん、梓……」

律「みおしゃん!」

梓『いえ、いいんです。気にしてませんから。律先輩が悪いんですし』

澪「本当にごめんな。じゃあまた」ピッ

律「切るな!私が誤解されてんじゃん!」

澪「律の言う通りにしただけじゃん」プンプン

律「わざとだよな、わざとだよな?」

澪「ひどいよ律……あんな電話かけさせて…怒るんだもん」グスッ

律「あそこまでやれとは言ってねえよ!」

律「違う……もっとネタ的なかわいい悪戯のはずだろ…」

澪「クスン…」

律「質問が微妙に違うし、なんであんな堂々としてんだよ…もっと照れるだろ、普通…
  どっちかというと私に対して罰ゲームみたいになってんじゃねえか」

澪「ひっく…ぐす、ぐす」

律「……なんでそんな泣いてんだよ…。本気で怒ってるわけじゃないからもういいよ」

澪「ぐすん…くす、くすくすくすくす……律おもしろい」

律「馬鹿にしてんのか」


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最終更新:2011年12月07日 22:45