……30分後
澪「で、これがこうなって、こうだから……」サラサラ
律「ふむふむ」
紬『いい密着具合よ、りっちゃん』
律「いきなり変なこと言うな!」
澪「えっ。なに、私なんか間違ってた?」オロオロ
律「なんでもない。こっちの話だ」
澪「うん……?」
紬『あらあら、今のはダメよ、減点。怒鳴ったりしちゃー…』
律「(ムギのせいだろ!)」
紬『えへへー』
律「(褒めてないし)」
紬『それより!そろそろ作戦実行にちょうどいい頃合いよ!』
律「(作戦……)」
紬『そう、名付けて「キュンキュンキュイ! 幼馴染のハートわしづかみ大作戦~りっちゃんはいちゃいちゃちゅっちゅできるのか、の巻」よ!』
律「(できれば名付けないでほしかった)」
紬『必要なものは全部りっちゃんの机の引き出しの中に入ってるから』
律「(ああ……いろいろ突っ込みたいけど大人しく従うことにしよう)」
紬『さっきアドバイスした通り、強気でいくのよ!』
律「(はいはい)」
澪「りつー?どうしたんだ、さっきから一人でぶつぶつ……」
律「いやあ、なんでもない! ちょっと疲れちゃっただけだから!」
澪「そっか。私はてっきり律がついに頭おかしくなっちゃったのかと思ったよ」
律「そういうことはオブラートに包め。てっきりって言うな。ていうか『ついに』ってなんだ。そもそもそんなこと言うな」
澪「あはは、冗談だよ、律。まったくかわいいな」
紬『!』
律「は!? か、かわいいとか何言ってんだ!」
澪「いや、私ってお茶目でかわいいなと思って」
律「自分かよ!」
澪「うん。律もそう思わないか」
律「うるせーよ!」
澪「律が怒鳴った……」
律「しょんぼりするな! ああ、もうかわいいなあ!かわいいとか言っちゃったし!」
紬『りっちゃんたちの会話って変ね』
律「余計な御世話だし!」
澪「え?」
律「いや、なんでもない、なんでもないぞ澪」
澪「今日の律はますます変だな」
律「ますます言うな」
澪「あはは」
律「ともかく、ちょっと疲れたし息抜きにゲームでもしないか?」
澪「ゲーム?そう言ってずっと遊ぶつもりだろ、どうせ。何をやるんだ?マリオカートとか?」ワクワク
律「えっ、ノリノリ……台詞の前半と後半つながってないよ」
澪「律に教えるのも疲れてきたからな、なかなか憶えないし」
律「悪うござんしたね」
澪「なんか今日はいつにもまして集中力がないっていうか、気もそぞろだし。張り合いがない」
律「………」
紬『あらあら、澪ちゃんのおっぱいばかり見てたの見透かされてたみたいね』
律「(見てない!) えっと、マリオカートじゃなくて、机のここら辺に」ガサゴソ
澪「なんだなんだ」
律「あった………え?なんだこれ」
澪「なんだそれ」
律「というか、これはどう見ても……」
紬『四次元ポケットよ?』
律「(ドラえもんかお前は!)」
紬『まあまあまあ、その中にはりっちゃんと澪ちゃんが仲良くなるためのグッズがたくさん入ってるから。
言わば二人の生活応援フェア―ね』
律「(ああ、はいはい。ともかくこの中になんか入ってるわけね)」ガサゴソ
紬『そうそう』
律「…よし、澪ー、これで遊ぼうぜー!」
紬『テテレテッテレー!バイブレーター!』
澪「……………」
律「(ぶっ殺すぞ!)」バシーン!
澪「りつ、今何か……」
律「あはは、なんでもない!気のせい気のせい。(オイイ、琴吹いいいいっ!)」
紬『りっちゃん…………ことば乱暴……ひどい』
律「(あのな、ムギ、あのな、あのな……)」フーフー
紬『うふふ、あれはちょっとした冗談よ』
律「(次はないかんな!『よし』とか言っちゃって、まるっきり変態じゃん私)」
紬『ところでりっちゃん、さっきずいぶん奥まで手を挿しこんでいたけれど、
もしそのポケットの中が澪ちゃんの体内につながっているとしたら………?』
律「(え。いみわかんないこと思わせぶりに言うのやめて)」
紬『うふふ、冗談冗談。それより、澪ちゃんが不審がってるわよ。早く次の道具を出した方が』
律「お、おう。いやー、澪ごめんなー」ゴソゴソ
澪「うん。なあ律、もし律がさっきので本当に遊びたいなら」
律「ノー!」
ヴィーン! ヴィーン!
澪「あ、バイブ音」
律「!?」
澪「はい、もしもし」ピッ
律「なんだ、電話か……」
紬『りっちゃん、ひょっとして澪ちゃんがあらかじめバイブを装着してきてると期待しちゃった?』
律「(そんなひょっとしてはお前の身にしか起こらない)」
澪「ああ……私だ」
律「え、何その電話の受け方」
澪「私は今忙しいと言ったろう……なんの用だ」
澪「例の件か?」
澪「ふむ……ふむ」
律「みおしゃん、それ何の電話なんですか」
澪「そうか、やつらがついに動き出したか……」
律「(やばい、澪がここではないどこかを見据えている。ていうかなに言ってんだコイツ)」
澪「……」ピッ
律「誰からの電話だったんだ?どーせ唯とかだろ」
澪「ああ、お母さんからだった」
律「肉親とあんな中二病的な会話してんのかよ!?」
澪「なにか変か?うちはいつもあんな感じだけど」
律「いや、澪が本当におかしくないと思うなら別にいいが……」
澪「身内と喋ってるところ見られるとかちょっと恥ずかしいな」テレテレ
律「照れるべきところはそこなのか?」
律「で、なんだって?」
澪「p……お父さんが出張から帰ってくるって」
律「今『パパ』って言いかけなかったか」
澪「うちのお父さん半月くらい海外に出張に行ってたんだ」
律「無視か。顔赤いぞ澪しゃん」
澪「うるさい。それで家族で食事に行くから、あんまり遅くならないうちに帰って来いって」
律「あの電話のどこにそんな情報伝達が……ってまじで?」
澪「うん」
律「そっか……」
澪「そんな今すぐは帰らないから心配しなくてもいいよ。
律の宿題もまだ終わってないしな」
律「べ、別に心配なんかしてねーし」
澪「だからそんなどぶ川で餌を欲しがる鼠みたいな顔しなくてもいいから」
律「そんな顔は生まれてこの方したことがねえよ」
紬『いい雰囲気ね』
律「(え!?)」
紬『それより、あんまり時間がないみたいだから巻きで言った方がいいんじゃないですか!
りっちゃん、巻きで、巻きで!』
律「(巻きって業界用語最近覚えたんだな……)」ゴソゴソ
紬『さあ、りっちゃんはやく次のアイテムを!』
律「(ていうか今この場で私がすべきことは本当に四次元ポケットに手を突っ込むことなのか………………?)」ゴソゴソ
律「よーし、みおーこれで遊ぼうぜー…」
澪「なんでテンション低いんだ?」
紬『テテレテン!ドキドキサイコロー!』
澪「……」
律「(……うん。念のため聞くけどなんなんだこれは?ムギ)」
紬『ドキドキサイコロはとってもドキドキするサイコロなの。』
律「(はあ…そうなんですか)」
紬『具体的にはサイコロを振って、出た目に書いてある文章の指示に従って何かをするのよ。ねっ、とっても楽しそうでしょ!』ワクワク
律「(で、それがどう幼馴染のハートわしづかみ作戦につながるんだ?)」
紬『えっと、その……話のきっかけ作り、とか?』
律「(初対面か!私と澪は!)」
紬『あう……』
律「……」ハァー
紬『ちっ、ちがうの!サイコロを強気で振るりっちゃんの雄姿に思わず澪ちゃんは惚れちゃうのよ
決して私がテレビに影響されて面白グッズを用意したとかそういうわけじゃあ!』
律「(うん、いやなんかもういいよ……すっげー微妙な空気流れちゃってるし)」
澪「……」
律「(ムギに相談した私が悪かったんだよきっと)」
紬『ああん!りっちゃんちょっと待って!』
紬『大丈夫!なぜか冷えてしまった場の雰囲気を取り戻す秘策がきっとあるから!』オロオロ
律「(何故かてオイ)」
紬『えっと、その秘策とは、えっと、その』
『あっ、お嬢様!なんて格好をしてるんですか!?』
紬『ひゃああ/// これはそういうことじゃないのよ!?
ただ服が血で汚れちゃっただけで……着替えをする余裕が……』
律「(ム、ムギ?)」
『紬お嬢様の趣味に口出しはしませんけど……あんまりこういうのは……』
紬『だからそういうんじゃありません!』
律「(おーい、ムギー?)」
『なんでもいいから早く服を着てください!』グイグイ
紬『ああん!今取り込み中だから待ってお願い!』
『ダメです、お風邪を召しますよ!』
紬『せっ、せめてあと一分』
『いけません!こんなに身体冷えちゃってるじゃありませんか!着替える前にお風呂です!』
紬『いやーん!お風呂だなんて……家人に手をかけられるー!禁断の手出しをされるー!』
『人聞きの悪いことをおっしゃらないでください!?』
律「(む、ムギー……?)」
紬『(ご、ごめんりっちゃん!私もうだめそう……力になれないわ……)』
律「(うん……よくわかんないけどもういいよ。考えてみれば最初からあんまり役にたってなかったし)」
紬『りっちゃんひどい!』
『お嬢様、行きますよ』グイグイ
紬『行くから!行くからひっぱらないで……はじめてなんだから優しくしてください///』ポッ
『そういう冗談をセクハラというそうですよ』
紬『(りっちゃん、ふがいない私からできる最後のアドバイス……)』
律「(あ、ああ……)」
紬『(とにかく押して押して押しまくれ。むしろ押し倒せ)』
律「(押し倒せ!?)」
紬『(ごめんね、りっちゃん。せっかくいいところなのに役に立てなくて……ああ、もうお別れよ……さよなら)』
律「……(ほんとに役に立たないアドバイスだったな)」
澪「……りつ?」
律「う、うん……」
律「……」
澪「……」
律「(やばい、澪のいぶかしげな表情と気まずい雰囲気が耐えられん………)」
律「(ええい、もうヤケだっ!)」
律「みお!」ビシッ
澪「は、はい」ビクッ
律「私と一緒にこのファンシーなダイスで遊ぼう!!」
澪「え、えっちな方の遊びか……?」ドキドキ
律「どうしたらサイコロでえっちな遊びを想像できるんだ?」
澪「……よし、律が胴元をするのか? 私は強いけどお小遣いの量は大丈夫か?」
律「丁半じゃないですよ!?」
律「このサイコロを振って、出た目の指示に従って何かをするんだ!えっちな遊びでもギャンブルでも決してない!」
澪「ちょっと貸して。……あ、これムギの字だ」
律「うん、ムギの字だ」
澪「ムギが作ったのか?これ?」
律「そうだ。それはムギが作ったのだ。それには深ーいわけがある。とても話せないような深いわけだ。だから話せない」
澪「なんかいやな予感がするな……」
律「ほーら、あまりまじまじ見るな、楽しみが減るだろ!」
澪「ほんとうに楽しいのか、その遊び……?」
律「きっと楽しい」
澪「本当に?」
律「なーあー、やろうよー!たーのーむー!私を救うと思って!」
澪「なんだよそれ……重いからぶら下がるな」
律「みお、一生のお願い!」
澪「私に対して何度目の一生のお願いだよ…………しょうがないな、まったく。
ちょっと遊んだらすぐ勉強再開するぞ」
律「ほんとっ、澪!? よーし、じゃあ振るかんな」
律「よーし、じゃあ振るぞー。私振っていいよな、振っていいよな?」
澪「早くしろ」
律「どりゃああああ!」ブン
ポテッ ポテッ トン トン トン……
『二人で王様ゲームをする』
澪「えっ」
律「よーし、王様ゲームだー!!割り箸とか用意
……って、二人でできるかボケー!!!」
澪「無理だろ」
律「私か澪かどっちかが王様に決まってるじゃんか」
澪「無理だろ」
律「無理だよな」
澪「やりたくない」
律「やりたくないよな」
澪「むしろやりたくない」
律「えっ、なんでもう一回言ったの?」
澪「……」
律「ごめんな」
澪「いや、別に……」
律「もう一回、もう一回振らせてくれ……」
澪「どうぞ」
律「(心なしか冷たい……まるで私があほうのようだ……ていうかアホだろ……つらい……)」
澪「(なぜ律はこの遊びに必死なのだろう。よく分からないが面白い……)」
律「さー、次はなにがでるかなー」ブンッ
『誰にも言えない自分の秘密を話す』
律「わー、『誰にも言えない自分の秘密を話す』だってー!わー……えっ」
澪「秘密……か」
律「(だ、誰にも言えない私のひみつって……澪を好きなこと!?)」
律「(い、言わなくちゃいけないのか・・・?いやいや、秘密なら他にも色々……だいたいこれは単なるゲームだし)」
律「(はっ……でも、ムギが言ってた『強気で行け』ってこのことなのか?)」
律「(押すべきタイミングは今なのか!?)」
律「(で、でも……)」
澪「――りつ」
律「は、はいっ!」ビクッ
澪「あのさ、律。私、今まで律にも内緒にしてたことがあるんだ」
律「え?」
澪「ずっと、そのことを考えると、胸が痛んでつらかった」
律「澪……?」
澪「私、怖かったんだ……それを話したら、みんなが、律が離れていってしまうんじゃないかって」
律「な、なんだよ、その秘密って……」
澪「りつを驚かせて、気持ち悪いって思わせてしまうんじゃないかって……」
澪「律に…………嫌われるんじゃないかって」
律「わ、私が澪のこと……(嫌いになるわけない)」
澪「でも、私気付いたんだ。好きだって気持ちを、誤魔化すのはよくないって」
律「!」ドキッ
澪「だから私、言うよ。いままでずっと隠してた私の気持ち」
律「(これって、まさか…澪も私のこと好きなの!?)」
澪「ムギのサイコロが私に勇気をくれたんだ」
律「ま、待って澪!」バッ
澪「聞いてくれ、私実は……」
律「こころのじゅんびがっ…///」
澪「わたし実は!ホモとホモがいちゃいちゃしてる漫画とかすごく好きなんだああっ!!!」
律「み、澪!私もっ…………っておいいい!!??」
澪「えっ」
律「先週のあれでうすうす知ってたわいそんなこと!!」
澪「律もBL好きなのか!?」わくわく
律「好きじゃない!!」
澪「まさかこんな身近に腐女子がいるなんて……私としたことが嗅覚が鈍っていたようだ」ドキドキ
律「だーかーらー違うって!どきどきわくわくすんな!」
澪「ちなみに私は弟が実のお兄ちゃんを攻めちゃったりするのが好きなんだ。具体的に言うと……」
律「詳しく知りたくないよその趣向!?」
澪「えっ……律、もしかしてBL好きじゃないのか」
律「当たり前だろ」
澪「だましたな!田井中っ!!私を騙したんだな!?」
律「騙してないし!えっ、なんで急に名字呼びなの。今ので好感度急落!?」
澪「よくも私をォ!!だましたなァ!!」
澪「よくもっ!よくも今まで!!」
澪「ずっと今まで!!」
澪「よくも私を騙してくれたなァァ!!!」
律「こんなことでそんなアフタヌーンの歴史漫画みたいに叫ばれても……」
澪「ぐああああああっ!!くそおおおおおおおおお!!」
律「み、みお……近所に迷惑だから」
最終更新:2011年12月07日 22:53