唯「・・・」
唯「どうなるのかな」
唯「あんなこと言ったけど」
唯「この夢からほんとに解放されるの?」
唯「『二つの選択』の本当の意味なんてあるの・・・?」
唯「澪ちゃん・・・」
唯「ごめんね、つらい思いさせて・・・」
唯「・・・」
澪「・・・」
唯「あ、澪ちゃん、どうだった?」
澪「両方消えてたよ・・・」
唯「そっか・・・」
『あなたにはこれから二つの選択をしていただきます』
『あなたの望む扉を開けてください』
澪「・・・」
澪「ここで選択肢が変わったんだけど・・・」
唯「・・・」
澪「・・・変わらない」
唯「そうだね・・・」
澪「くそ・・・!」
唯「澪ちゃん・・・」
澪「大丈夫、大丈夫だから探そう」
澪「『二つの選択』の本当の意味を」
唯「・・・うん」
唯「じゃあ今度は私が扉を開けるよ」
澪「平沢さんが?」
唯「『澪ちゃんが扉を開ける』か『私が扉を開ける』かでまた扉の文字が変わるかも」
澪「・・・やってみるしかないんだよな」
唯「うん・・・正解なんて見当もつかないから・・・」
澪「思いつく限りの事は試してみよう」
澪「出来る事は全部やるんだ・・・!」
それから私たちは思いつく限りの方法で扉を開けた
『
秋山澪が扉を開ける』か『
平沢唯が扉を開ける』かでは和ちゃんが
一つの扉を『一人で開ける』か『二人で開ける』かではさわちゃんが
扉を『表から開ける』か『裏から開ける』かでは憂が
扉を裏から『一つ開ける』か『二つ開ける』かでは澪ちゃんのお父さんとお母さんが
それぞれ消えてしまった
私たちはあるかどうかも分からない正解を信じて扉を開け続けた
しかしどんな選択をしても扉の文字は変わらなかった
そうして状況は何も変わらないまま、澪ちゃんの大切な人たちが全員消えた
でも・・・
澪「・・・」
澪「学校行こ・・・」
澪「お父さん、お母さん」
澪「ごめんなさい」
澪「・・・行ってきます」
澪「行って・・・きます」
澪「・・・」
―――行ってらっしゃい、澪ちゃん―――
澪「!」バッ
澪「・・・」
澪「行ってきます」
学校
律「おーす澪」
澪「おはよ・・・律」
律「どうしたんだよ澪、最近おかしいぞ?」
澪「いや、なんでもないんだよ」
澪「なんでも・・・」
律「ったく、なんでもない訳ないだろ。なんて顔してんだ」
澪「はは・・・」
律(なんだってんだ澪のやつ)
律(こいつのこんな顔、初めて見たぜ)
放課後
律「しかし私たちのけいおん部ももう終わりか~」
澪「・・・」
律「結局二人しかいないまま3年間過ぎちゃったんだな」
律「ま、あたしは澪と二人でも楽しかったけど・・・」
澪「・・・」
律「・・・ごめん、やっぱ楽しくなんてなかったよな」
澪「え?」
律「二人きりなんて、ろくに演奏も出来ないし・・・ごめんな澪」
律「あたしのわがままでけいおん部に誘っちゃって・・・」
澪「そんなことない!」
澪「私は・・・楽しかったよ!」
澪「律と・・・」
澪(ムギと梓とさわ子先生と・・・)
澪(それに平沢さん・・・も)
澪(私は・・・)
澪「律と二人きりだったけど・・・楽しかった」
澪「最高の思い出だよ・・・」ポロポロ
律「え!?泣いてるのか!?」
澪「ちがっ・・・」ポロポロ
律「ごめんごめん、ちょっと意地悪しすぎたって!」
澪「そんなんじゃないんだ・・・こっちこそごめん」
律「う、うん」
澪「なあ律」
律「ん?」
澪「私、律と一緒にけいおん部やれて良かった」
律「え?いきなりなんだよ」
澪「律と出会えて・・・良かった」
律「な、なんだよそれ・・・急に真剣な顔して」
澪「律」
律「ん?」
澪「もし私がいなくなったら・・・どう思う?」
律「はあ?何言い出すんだよ」
澪「あ・・・そうだよな、ごめん」
澪「・・・」
律「・・・」
律「澪が何悩んでんのか知らないけど、きっとそれはあたしにも相談出来ないような悩みなんだろ」
律「無理に聞こうとは思わないけどさ、もし話せるときが来たら話してくれよ」
澪「・・・」
律「あたしたち・・・その・・・なんて言うかさ、一番仲良いっていうか」
律「・・・親友・・・ってやつだろ?」
澪「律・・・」
律「ちょっとくらい頼ってくれてもいいんだぞ・・・」
澪「・・・うん」
澪「ありがとう、律」
律「・・・へへっ、やっと笑ったな」
澪「えっ」
律「久々に見たぜ、澪の笑ってる顔」
澪「律・・・」
律「さ、そろそろ帰るか」
澪「うん」
律「それじゃあな」
澪「あ、あのさ」
律「ん?」
澪「手、繋いでいいかな?」
律「な、なんだよどうしたんだよ今日の澪」
澪「駄目・・・?」
律「・・・駄目な訳ないだろ、ほら」
澪「・・・」ギュッ
律「・・・」ギュュ
澪「・・・りっちゃん」
律「え!?な、なんだよその呼び方」
澪「昔はそう呼んでただろ」
律「・・・そうだけどさ」
律「なんだ澪」
澪「りっちゃんも昔みたく呼んでよ」
律「ええ~」
澪「お願い」
律「・・・」
律「・・・澪ちゃん」
澪「うん」
澪「りっちゃん!」
律「わっ、元気になった」
澪「また明日!」
律「・・・ああ!また明日!」
また、明日―――
でも
澪ちゃんはりっちゃんだけは消さなかった
最後まで一緒に居たい、そう言って・・・
つまり
この後に待っているのは
最後の選択だけになってしまった
澪「・・・」
唯「澪ちゃん・・・」
澪「・・・」
『あなたにはこれから二つの選択をしていただきます』
『あなたの望む扉を開けてください』
澪「・・・」
『消えた人間全員が戻ってくるが、秋山澪が消える』
『この夢を終わりにする』
唯「そんな・・・」
澪「最後の選択・・・か」
唯「なんで・・・?」
唯「やっぱり正解なんてないの?」
唯「私たちのやってきた事は無駄だったの?」
唯「そんなのってないよ・・・」
澪「平沢さん」
唯「え?」
澪「私はみんなを戻すよ」
唯「えっ・・・」
澪「決めてたんだ、最初から」
澪「ほんとは律とずっと一緒にいたい」
澪「ずっとずっと・・・死ぬまで一緒にいたかった」
澪「でもそれは律だけじゃない」
澪「私は私の身勝手で消した人たち皆と一緒にいたかったんだ」
澪「でも私はそんな世界をみんなから奪った」
澪「私に出来る事は、その世界をまたみんなの元へ返す事だけ」
澪「平沢さんに最後の選択の話を聞いた時から」
澪「最後になったらこうするって決めてた」
唯「そんな・・・」
澪「平沢さんの事は思いだせないけど、私のいない世界では皆と仲良くな」
唯「澪ちゃん・・・」ポロポロ
澪「・・・」
澪「この夢は」
澪「最後に自分が消える扉を選ぶ人のところにしか来ないんだよ」
澪「ムギや平沢さんみたいな優しい人のところにしか」
澪「私も、そんな人になりたい」
澪「きっと今までもそうして世界は続いてきた」
澪「誰かが一人、いない世界」
澪「そんな世界で私たちは生きていくのかも知れないな」
唯「澪ちゃん・・・」ポロポロ
澪「これが世界の正しい姿なんだよ、きっと」
唯「そんな・・・」ポロポロ
唯「やだよ・・・」ポロポロ
澪「泣いてくれるんだね、平沢さん」
澪「平沢さんの事、思いだしたかったな」
澪「きっととっても大切な友達だったんだろうって思う」
澪「記憶にはないけど・・・」
澪「5人の放課後ティータイムか・・・」
澪「きっと今よりもっと楽しくて、演奏もすごくて・・・」
澪「5人で笑ってみたかったよ・・・」
唯「うっ・・・うう・・・」グスグス
澪「じゃあ、さようなら平沢さん」
―――また明日!―――
―――ああ!また明日!―――
澪(ごめんね、りっちゃん)
澪(明日は)
澪(会えない)
澪「私の選択は―――」
唯「待って!」ガシッ
澪「!?」
最終更新:2011年12月25日 21:33