梓「いや別に結構です」
純「そんな即答しないでちょっとは乗ってよ、寂しいじゃん」
梓「何よ?藪から棒に」
純「いいえ、ぬかから釘です」
梓「は?」
純「いやね?私達も最上級生になっちゃったじゃない」
梓「そうだね、純にとっては奇跡だよね」
純「いやソコまで馬鹿じゃないし!頑張ったし!」
梓「ふ~ん」
純「流さないでよ!なんかホントに馬鹿みたいじゃん!」
梓「そういえば憂は?」キョロキョロ
純「ちょっ!?少しは私に興味持ってよぉ~」ユッサユッサ
梓「も~……じゃあ何なの一体?」グワングワン
純「え、何その態度」
梓「お疲れ様」ガタッ
純「ごめんなさい嘘ですスミマセン座って下さい」ガシッ
梓「しょうがないなぁ」ストン
純「あざっす!」
梓「んで?」
純「んで?んでんでんで」フリフリ
梓「……さてっと、そろそろ帰ろうかな」ガタッ
純「ヤだなぁ梓さん、ちょっとしたお茶目じゃないですか~」ガシッ
梓「何だったらその良くわかんない踊り、文化祭で一人で踊る?」
純「勘弁して下さいコレが何なのか全然知りません」ドゲザー
梓「じゃあ話進めてよ、聞くから」ストン
純「あのね……真面目な話なんだよ」
梓「じゃあ最初からふざけないでよ」
純「私は初めっから真面目だよ!」
梓「さっきのやりとりのドコが真面目なのよ……っていうか純が真面目?」
純「茶化さないで」ジトー
梓「わ、分かった」コクコク
純「最近本気でね?考えてる事なんだけど」
梓「う、うん」ゴクリ
純「私も尊敬されたいの」
梓「……」
純「……」
梓「……」
純「……」
梓「そうなんだ。じゃあ私生徒会室行くね 」ガタッ
純「いやそりゃアンタのセリフじゃないでしょドコ行くのよ座りなさいよ」ガシッ
梓「何の話よ一体」ストン
純「だからね?分かりやすく言うと、私も尊敬されたいの!」バンッ
梓「変わってない。一文字たりとも変わってないよ」
純「だってさ!だってさ!だってだってさ!」
梓「だってだってなんだもん?」
純「違う!」
梓「じゃあ何?」
純「梓は部長じゃん!」
梓「うん」
純「憂は完璧じゃん!」
梓「うん」
純「私普通じゃん!」
梓「うん?」
純「オーソドックスじゃん!」
梓「そんな事ないよ」
純「有るよ!」
梓「ないって」
純「先生でさえナオピーの退部を止めたりさ、バンド名命名したり大活躍じゃん!」
梓「いやま、後者はアレだけど……ナオピー?」
純「で、私普通じゃん」
梓「そんなこと無いって」
純「有るって」
梓「純だって普通じゃないって」
純「そ、そう?」
梓「うん」
純「じゃあどこが?」
梓「主に髪型が」プププ
純「そのツインテ結ぶぞこのヤロウ!」ガーッ
梓「そんな事されたら可愛くなっちゃう」
純「それはダメだね、止めとこう」
梓「その方が良いよ」
純「で、私も後輩達に『純先輩ってスゴい!』って思われたい訳」
梓「もう思ってるって」
純「え~、例えば?」
梓「雨の日とか」プププ
純「そのツインテ千切るぞこのヤロウ!」ガーッ
梓「やめて、暴れ出しちゃう」
純「梓が?」
梓「いや、髪の毛が」
純「そりゃ怖い」
梓「でしょ?」
純「うん。でさ、私も尊敬の念を抱かれたい訳なのよ」
梓「尊敬ねぇ……」
純「うん」
梓「どんな風に?」
純「『純先輩カッコイイ!抱いて!』ってなるくらい」キャッ
梓「抱きしめてトゥナイト?」
純「そうそう。『ハッ!』って、今時トシちゃんは伝わんないよ」
梓「そう?」
純「私らだってモノマネで知っただけじゃん」
梓「先生なら知ってそうだけど」
純「かも知れないけど……いや、やめとこう」
梓「うん?」
純「年齢に関わる質問するのは怖いよ」ウン
梓「……だね」ウン
純「せめて『抱いてセニョリータ』くらいにしとこうよ」
梓「何?純は後輩を抱きしめたいの?」
純「それはモノのたとえだって」
梓「あぁそう」
純「っていうか『抱いて』をフォーカスしだしたのは梓じゃん」
梓「そっかそっか。でも十分仲良いじゃん」
純「仲良しと尊敬は違うくない?」
梓「後輩が先輩を慕うから仲良くなるんでしょ?」
純「……あ~、まぁ」
梓「そういう点で見れば十分尊敬されてると思うよ」
純「う~ん……でもそうゆうのじゃないんだよね」
梓「そうなんだ。じゃあ私」
純「行かせないよ!?」ガシッ
梓「駄目?」
純「当たり前じゃん!まだひとっつも解決してないでしょ!」
梓「良いじゃん、十分仲良いんだし」
純「良かないよ。ただ仲良くなりやすいって思われてるだけかもしんないじゃん」
梓「それは純からガンガン踏み込むからでしょ?」
純「そりゃ私の性格だもん」
梓「ついこないだだって『おぉ!スミーレ!』ってやってたトコじゃない」
純「まぁソレはソレ、コレはコレだよ」
梓「あ、そう」
純「ちゅうこって『輝け!純ちゃん大作戦!』ですよ」
梓「ふぅん」
純「軽っ!?」
梓「いや、だって興味無いし」
純「ちょっと、部員が真面目に悩んでるんだから一緒に考えてよ部長~」
梓「だったらせめて部活の事で悩んでよ部員」
純「部内の親交を図るのも部長の仕事でしょ~?」ユッサユッサ
梓「必要無いと思うけどなぁ」グワングワン
純「必要有るから悩んでるんです~」
梓「……はぁ、しょうがないなぁ」ヤレヤレ
純「ひゅ~!あずにゃん部長ステキ!抱いて!」キャー
梓「お断りします!」
純「……据え膳食わねば恥だよ?」
梓「お膳だったら私だって食べるよ」
純「ヒドッ!?ちょっとソレ、ヒドすぎない?」
梓「まぁほら、私たちの仲だから」
純「そっか、私たちの仲だもんね。ってどんな仲よ!?」
梓「……織田信長と」
純「おぉ!織田信長と!」
梓「朝倉義景みたいな関係?」
純「え~っと……戦争してんじゃん、片方滅んじゃってんじゃん。ヤダよそんな関係」
梓「あれ、純がしっかり勉強してる……」
純「あのさぁ……私を何だと思ってるの?」
梓「勉強出来ない子」
純「出来ないんじゃないの、しないの」
梓「しなよ」ハァ
純「気が向いたらね」
梓「やめてよ?菫達と同輩になるとか」
純「いやいや、いくら何でもソコまで馬鹿にはなれないよ」
梓「にしても尊敬ねぇ……」
純「うん」
梓「そんな事言う先輩を尊敬しろっていうのもなぁ」
純「違うよあずにゃん」
梓「あずにゃん言うな」
純「勉強が出来るのと、頭が良いのは別なんだよ」
梓「純はどっちも駄目じゃん」
純「ごもっとも。ってコラ!」
梓「色々やってると思うけどなぁ、純も」
純「例えば何よ?」
梓「菫にあだ名付けたじゃん」
純「まず梓が『スミーレ』って呼んでないじゃん」
梓「そうだね」
純「浸透してないじゃん。私が勝手に呼んでるだけ~みたいな」
梓「奥田さんはどうするの?」
純「ナオナオは未だに公式であだ名が出てないから」
梓「公式?」
純「私も活躍しないとさ、このままじゃいつ又モブ扱いに落とされるか……」ガクガク
梓「さっきから発言がおかしいよ」
純「気にしない気にしない。ほら、梓から見た澪先輩みたいな憧れって言ったら分かるでしょ?」
梓「あぁ、うん」
純「そんな憧れを後輩たちに抱かせたいの!」
梓「そうなんだ。じゃ」
純「立たせないよ!」ガシッ
梓「駄目か……」
純「もち。てな訳でさ、何したら良いと思う?」
梓「そこから私任せ!?」
純「だって思いつかないんだも~ん」ムー
梓「知らないよそんなの。飾り付けの電飾でも巻いてれば輝くんじゃない?」
純「何処から電力持ってくるのよ。動きにくそうだし」
梓「巻くのは良いんだ」
純「もっとこうさ?心にズドンっと来るみたいな」
梓「じゃあ……部室を率先して掃除してる先輩って尊敬出来ない?」
純「そんな人が居たら尊敬しちゃうね」
梓「じゃあソレで」
純「でもスミーレと憂が細かく掃除しちゃってるからねぇ」
梓「あ~……」
純「残念だ……実に残念だっ!」クーッ
梓「思ってもない事を」
純「分かる?」
梓「分かりやす過ぎる。じゃあ勉強教えてあげなよ」
純「一年の範囲なんて覚えてないよ」
梓「オイ受験生」
純「それに奥田先生には敵いそうに無いし」
梓「確かに」ウン
純「うっ……ソレはソレで傷つくなぁ」
梓「事実でしょ?」
純「……確かに」ウン
梓「……コスプレは?」
純「私の担当じゃない」
梓「だね」
純「見る方が楽しいし」
梓「じゃあホラ、ベースを格好良く弾こうよ!」
純「べぇすぅ?」
梓「何で訝しげなのよ」
純「ふっつぅ~」
梓「普通って……っていうかソレが一番じゃん」
純「格好良くったってねぇ~」
梓「チョッパーとかタッピングとか」
純「難しい~」
梓「難しいって……練習しなさいよ」
純「う~……うん、めどい」
梓「」カチッ
純「ん?」
梓「じゃあ今から純のベースを頭めがけて振り下ろすからさ」
純「は?」
梓「白刃取りしてみせてよ?出来たらカッコイイよ~?」ニコリ
純「いやいやいやいや」
梓「ちょっと待っててね?準備するから」テクテク
純「止めて下さい死んでしまいます梓さん目が笑ってないですよ」ガシッ
梓「知らないよ!勝手にしなよもう!」ガーッ
純「うわ、怒った……」
梓「勝手に後輩の前でパフォーマンスでも何でもすれば良いじゃん!」
純「パフォーマンス?」
梓「金魚を吐いたりロウソク消したりコウモリ吹いたりペンキを塗ったり色々有るでしょ!?」
純「何そのラブラビッツ」
梓「何なら校庭に暴れた牛が百匹来る中で優雅に唄いなさいよ!」
純「おぉ」
梓「それはそれはカッコイイでしょうよ!」
純「ソレ良いね」
梓「ソコは『無理に決まってるじゃん』ってツッコむトコでしょ!?」
純「学祭のライブでどうよ。……でも牛ってレンタルしてるかな?」ウーン
梓「知らないよ!?」
純「百匹だといくらくらいかなぁ?部費で落ちる?」ムー
梓「落ちるか!っていうかそんなライブ嫌だよ!?死んじゃうから!」
純「え~。じゃあ何ならしてくれるのさ~」ブーブー
梓「……おかしいなぁ、無理難題ふっかけたのはコッチの筈なのに」
純「ほらほら、去年の部活紹介ビデオみたいにさ?何か案ないの?」
梓「疲れちゃったよ」ハァ
純「一人で白熱するから」
梓「誰のせいよ誰の」
純「私は真面目にね?」
梓「ハイハイ、真面目にね」
純「ちゃんと考えてよ~」
梓「っていうかその作戦?」
純「『かっけーんスよ、純ちゃんマジかっけーんスよ大作戦』の事?」
梓「名前変わってるし。その作戦がまず理解出来ないんだけど」
純「さっき言ったじゃん。澪先輩の様な憧れを~」
梓「抱かれてどうしたいの?純は」
純「へ?」
梓「どうされたいのさ」
純「どう……」ウーン
梓「慕われたいの?」
純「う~ん」
梓「頼りにされたいの?」
純「どう言えばいいかなぁ」
梓「ついてきてほしいの?」
純「分かり易く言えば菫→純←直」
梓「はい?」
純「だってさ!だってさ!」
梓「だってだってなんだもん?」
純「ソレさっき言った!」
梓「いやぁ、他に思いつかなくて」ポリポリ
純「別につかなくて良いよ」
梓「うん。で?」
純「やれ世間じゃ『梓菫』だの『紬菫』だの『菫直』だの」
梓「え、え?」
純「スミーレばっかりフォーカスされちゃってさ!そりゃ可愛いけど!」
梓「うん、まぁ……うん?」
純「最近じゃ『憂直も有り?』とか言うけどさ?」
梓「……」
純「純○が一個も上がんないんだもん!」
梓「……ごめん、何の話?」
純「折角メイン張る様になったってのに何この扱い」
梓「別に昔から何も変わってないと思うけど」
純「私だって『純○は公式』とか言われたいの!」バンバンッ
梓「あ、そう。ツッコんだら負けなんだね」
最終更新:2012年01月14日 00:57